アルベール・カミュの『シーシュポスの神話』で考察したのは、神によって罰を受け、岩を押して坂道を上ることを永遠にくり返す運命に落とされた男の物語である。男は、その宿命から逃れることができない。死ぬこともできない。永遠にそのような意識の流れの中に閉じこめられてしまっている。 . . . 本文を読む
どんな病人を診ても「これはもう手遅れだ。どうしてもっと早く診せないのだ」と咎める。この病人がうまく回復しなければ、それは手遅れだったのだから自分のせいではない。かりに幸運にも回復してくれれば、まさに手遅れだったのを救ったのだからワシは名医だ、と言う。 . . . 本文を読む
佐々木もそうだ。どうせ眼があってもなくても同じだから、あすからは、班長に直突だけを教えてもらい、目をつぶったまま、対手がいると思う所に、唯まっすぐに銃剣をつきつづけるのだ。お前のからだは、小牛のようにつよい。からだが動かなくなる迄、何十本でもつづけて突き出すんだ。敵の剣が、どこを突いて来ようが、一向それにとんちゃくしないで……。 . . . 本文を読む