目覚めた時は、土砂降りの雨の中で倒れていた。何とか旅館にたどり着き、風呂に飛び込んだら冷たい水。ようやく布団に潜り込んだのは明け方で、すぐに「加山ちゃん、時間だよ」と起された。「雨じゃないか。撮影は中止だろ」「一応、支度して待機することになっているんだ」。起きあがって、食堂を見て仰天した。全員がちょんまげを結って、食事をしている。 . . . 本文を読む
「東洋道徳、西洋芸術」の言葉を残した佐久間象山は、幕末の科学者である。当時、芸術とは技術の意味であった。年下の義兄となった勝海舟は『氷川清話』で、象山の不遜(ふそん)な人となりを指摘している。しかし、象山が自ら書いた文章に目を通すと、そうは思えない。 . . . 本文を読む
NHKの製作陣と経営陣は、日本国民をなめてはいけない。これ以上、傲慢な姿勢を続ければ、自分たちの首が飛ぶことを肝に銘ずるがいい。私達は、それをするつもりである。それをしなければならぬ。 . . . 本文を読む
物質礼賛のMaterialist(実利主義者)は、あるいは、「時は金なり」というこの言葉に心からの共鳴を惜しまないであろう。しかし、金は失っても取り返すことはあえて不可能ではないが、時はいったん失ったら永久に現在の意識に決して戻ってこない。 . . . 本文を読む
自らは動き回れない植物は、生存域を広めるため、動物と共存する形で進化してきた。甘くて食べやすく、ビタミンCなどの栄養価が高い果実が種子を含んでいるのは決して偶然ではない。それらを食べる動物に種を広範囲に運んでもらうためである。他方で植物は、根や幹といった食べられては困る部分を守るための進化も遂げてきた。 . . . 本文を読む
今回の恐慌が突きつけた「人間のありよう」を巡る問題は、まだ何一つ解決していない。金融危機が我々に問うたことの本質とは、株価の高低やサブプライムローンの是非ではない。人間の生き方、資本主義において傷ついた価値観や人倫をどう回復していくかという根源的な問いだったはずだ。 . . . 本文を読む
不況の長期化で欧米人のライフスタイルも一変した。例えば、靴屋やカバンの修理屋(英語でコブラーと呼ぶ)が繁盛している。かつての好況時には消費者が新品のブランド物を買い求めたから、廃業するコブラーも多かった。しかし最近では中古品を修繕して使う消費者が増えている。 . . . 本文を読む
東京都調布市にあるオフィスビル。土曜日の朝、人けの少ない玄関に1台の大型トラックが横付けされた。依頼を受けた企業などに出向き、不要になったデータをその場で炭にして完全消去する特殊車両だ。今回の依頼主はアメリカンファミリー生命保険(アフラック)。個人情報がぎっしり詰まったCDやフロッピーディスク、磁気テープなど約2300本を消去する。 . . . 本文を読む
つまり西洋人は〈我〉とか〈自我〉を、実在する最も信ずべきよりどころであると固く信じている。ところが仏教徒は、そういう〈自我〉は幻影、夢、幻のごときものであるとする。西洋に根強く見られる仏教と相反する思想を取り上げて、ハーンはそれがいかに多くの人類の不幸を引き起こしたかを記している。 . . . 本文を読む
現在でも私は、研究の最も有効な方法は対象が何であれ、仮に複雑系であっても、まず要素に徹底的に還元して、その基本を理解すべきであると思う。ただし例えば物質の根源的要素がクオークであるとしても、その性質だけから、陽子・中性子、原子核、原子、分子、固体、宇宙の性質が直ちに理解できるわけではない。ここに不易流行の考えが浮かんでくる。 . . . 本文を読む
宇宙の冷却とともに素粒子群が誕生し、生命、そして脳と心へとつながるが、人の心が生み出す哲学、倫理学、美学などの人文学も、詰まるところ脳の働きである。開発してきた近赤外光トポグラフィや機能的磁気共鳴描画(fMRI)は、安全に脳の働きを観察できる。すると、自然科学の方法論で人文学を扱うことが一部可能となってくる。 . . . 本文を読む
神には過去をつくり変えることができない
そこで歴史家の存在を黙認せざるをえなくなった
(サミュエル・バトラー)
God cannot alter the past, that is why he is
obliged to connive at the existence of historians.
( Samuel Butler, British novelist, 1835-1902 )
. . . 本文を読む
現実には人は必ず自己利益にならなくても他人のために行動することがある。こうした「利他的」な行動が行動ゲーム理論で考える人間の不合理の1つ目の側面である。また、人は自己利益を追求するなかで最善の選択に至る途中であきらめるかもしれない。このような人を「限定合理的」であるといい、行動不合理性の2つ目の側面とされる。 . . . 本文を読む