団塊的“It's me”

喜寿老(きじゅろう77歳)の道草随筆 月・水・金の週と火・木の週交互に投稿。土日祭日休み

サマータイム

2018年09月08日 | Weblog

 お詫び:都合で9月11日(火)の投稿を本日に変更します。

 夏時間で忘れられない失敗がある。アフリカのセネガルに住んでいたが、妻がパリの会議に出席するために出張した。私は同行してネパールにいた時一緒だったTさんに会うためにオランダのハーグへひとりで電車に乗って行った。土曜日だった。Tさんとは日曜日の午前10時にハーグの駅で会う約束だった。その頃はまだ腕時計をしていた。10時にハーグ駅に行った。会う場所としていた喫茶店にTさんがいた。でもとても不機嫌そうだった。彼は言った。「約束、10時でしたよね」私は自分の腕時計を見た。9時55分だった。私の腑に落ちないという態度に語気を強め、「今日から夏時間って知っていました?」

 オランダでは3月の最終日曜日の深夜2時に時計を1時間遅らせる夏時間制度がある。私はそのことを失念していた。Tさんは待つのが嫌いな人で限界は10分と公言していた。Tさんは機嫌を直してハーグの町を案内してくれ有名なオランダ料理の店で昼食までご馳走してくれた。ネパールの思い出話に花を咲かせて楽しい時間を過ごした。でも私の心には大きな失敗として深い傷が残った。

 夏時間はカナダへ留学していた時に経験済みだった。カナダでは3月の第2日曜日の午前2時に実施された。3月といえば、まだ雪が降る真冬であった。6月の中旬まで雪が降るところだった。日の出は午前9時過ぎで、日の入りは午後3時頃。夏なんてまだまだ先の3月から11月まで夏時間は続く。最初の学校は全寮制だったので、夏時間になり、時計が1時間進んでも寮内のベルで起床就寝時間が知らされたので、何とか生活できた。カナダで夏時間に戸惑うことなく受け入れられたのは、朝夕の明るさ暗さと夏休みの長さだった気がする。夏は朝3時に夜が明け夜の10時ころまで明るく、冬は午後3時に陽が沈み、朝10時に朝日が昇る。時間が1時間早くなろうが遅くなろうが大した違いを感じない。

 日本政府は2020年のオリンピックにそなえて夏時間の導入を検討し始めた。やめておきなさい。こういう付け焼刃的な変更は混乱を招くだけ。そんな折、EUでは夏時間をやめようという機運が出てきたという。なんでも欧米の真似をするのが良いことという時代は終わっている。ましてや今やITやAIの時代である。これらの変更は経費がかかり、思わぬ問題が起こりかねない。もし日本政府にこれだけの変更を実行できるだけの力量があるならば、日本政府がなさねばならない他の案件はいくらでもある。現政権の中で誰がこのような思い付き行き当たりばったりの案を作成発表するのかは知らない。どのような変更も10年、20年いや100年先のことまで考えることなく決定されてはならない。今回の台風21号で関西空港の防波堤、北海道の大地震での大停電、お得意の「想定外」を連発して頭を下げればよいものではない。想定外を見据えて準備検討するのが専門職がなさなければならないことであろう。

 私の好きなグループ、サーカスが歌う『ミスターサマータイム』の最後のフレーズに「♪ミスターサマータイム さがさないであの頃の私を ミスターサマータイム あれは遠い夏の日の幻♪」(作詞 ピエール・ドラノエミッツエル・フュガ 日本語詞 竜 真知子)がある。夏時間を探さない。夏時間は夏の日のま・ぼ・ろ・し。


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