団塊的“It's me”

喜寿老(きじゅろう77歳)の道草随筆 月・水・金の週と火・木の週交互に投稿。土日祭日休み

セカンドライフ問題 外国留学生の引き受け

2007年06月22日 | Weblog
アメリカ人の英語教師デイブ・ハントは、駅蕎麦が大好きだった。

 駅蕎麦と言っても、電車を増結するため停車時間が5分ある駅の上りホーム内の蕎麦屋である。 彼は駅蕎麦が食べたくなると、電車が到着する時間を見計らって駅に行く。入場券を買ってホームに入る。

 乗客が駅蕎麦の店に殺到する。「月見一つ」 「おばちゃん、てんぷら蕎麦一つ」 「たぬき一つ」 客は我先にと注文を浴びせる。ハントさんも負けてはいない。押し合い圧し合い、「蕎麦一つ」と注文。遠慮なんてしていられない。外国人だからといって、なんの特別扱いもない。 

 蕎麦をゲット。刻みネギをたっぷり放り込み、七味唐辛子をネギが見えなくなるほどたっぷりかける。どんぶりを片手に持ち、割り箸を口に咥え、片手で割る。箸を左手に持ち、どんぶりの中の蕎麦、ネギ、汁、七味唐辛子を、すばやく混ぜる。音を立て、汁を飛ばして食べる。あともう少しで終わる頃、発車のベルがけたたましく鳴る。最後の汁を飲み乾す。「おばちゃん、ごっそお」とどんぶりを返す。乗客は、慌てふためいて電車に戻る。ハントさんは、ゆうゆうと改札口に引き返し、駅の売店へ直行。

 リポビタンDを買い、腰に片手を添えて、グーッと一気飲み。戦うように食べた蕎麦の後のリポビタンDは、なぜか良く効く感じがすると言った。 

 彼は休暇でアメリカに帰ると、家族や友人に、駅蕎麦の食べ方を自作の寸劇で披露し、大受けされた。アメリカに戻っていることを忘れて、失敗も多かった。あちこちで、スープの器を手で持って、口を当てて音を立てて飲み、スープのヌードルを『チュー、スッポン』とやってしまった。周りの人々の反応で、我に帰り、気まずい思いをしたという。 

 ハントさんは新幹線が開通して、在来線が廃止された年に、アメリカに帰国した。「駅蕎麦のあの食べ方は最高だった」と、最後まで惜しんでいた。 

 今日本に住む多くの外国人がニッポン症候群という病気なのだそうだ。どういう病気かというと、日本で自国では考えられないほどの収入をあげているが、日本の生活が好きになれない。満員電車、蒸し暑い夏の気候、交通渋滞、規制だらけの役所の規則。一方文化的に東京にいればコンサート、スポーツ、演劇と何でも観ることができ、食べ物もどこの国の食べ物もほとんど入手できる。便利さ、安全さも捨てがたい。帰国しようか、するまいかと悩む。そしてどんどん時間が過ぎ、自国に戻っても自分の居場所、ポジションがない。あせる。何もできない。どうしようと悩む。これがニッポン症候群である。 

 日本が好きで日本に根をおろして、日本人以上に日本人になりきって生活している人びとも多い。団塊世代がこれから多くの外国人留学生を家庭に受け入れることを提案する。日本はアメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドへと多くの留学生を送り出している。にもかかわらず反対にそれらの国々から受け入れる留学生の数は少ない。せめて50-50の関係でいたいものである。この辺を改善しないとグローバル化はまだまだである。世話になるだけなって、こちらで知らん顔では、ますます日本人はずるいと思われる。ニッポン症候群はさらに増加する。正直、増えて欲しい。団塊世代が少しでもこれから彼らの役に立てるよう、まず積極的に留学生を受け入れよう。特に自分の子供が海外留学でホームステイしたならば、これは義務だと私は思う。

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