巣窟日誌

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ライブドアのニュースに、リクルート事件を思い出す

2006-01-23 22:59:58 | ニュース
ライブドアの一連のニュースをみていて、いまや懐かしきリクルート事件(1988~1989年)を思い出してしまった。こんなふうにリクルート事件を思い出すのは、わたしのほかにも結構いるのではないかと思う。


当時リクルート(以下、「リ社」)は、子会社のリクルートコスモス(以下、「コ社」)の株を店頭公開する予定だった。当時のコ社は、マンションのデベロッパーとしては大京に継ぐ業界2位であり、この会社の株が店頭公開されれば、高い値をつけることが多いに期待されていた。

コ社は無事株式を店頭公開し、高い値をつけた。

時期を同じくして、リ社の会長である江副氏の政・財・官界への働きかけが、目につくようになった。リ社は経団連等の経営者団体に入り、江副氏は文部省の教育課程審議委員などに選ばれるようになり、与党の政治家とのパイプもできたらしかった。特に、当時の中曽根政権とはなんらかのコネをつけたという噂だった。リ社本体も、急激に成長した情報産業として、注目を集めていた。

そこに、リクルート事件が起こった。正確には「明るみに出た」というべきだろう。店頭公開後値上がりが確実だったコ社の未公開株を、リ社が政治家や官僚に良い条件(融資付)で売るという実質的な利益供与をやっていたことが、判明したのだ。

この事件の概要が白日の下にさらされるやいなや、マスコミは手のひらを返したように、一時は時代の寵児としてもてはやした江副氏を、そしてリクルートという企業そのものを批判し始めた。

東証は「リクルートの店頭公開株の廃止もありうる」と発言した。当時の中曽根首相は、スキャンダルとの関連を否定するために、江副氏をわざわざ「江副某(なにがし)」なんて呼んでみたが、かえって失笑を買った。リクルート・グループ内の企業は、「経験のない若い者がのさばっている企業」(金曜日の銀座で、深夜タクシーをバンバン使いまくり!)で、その社風は「宗教がかっている」とたたかれた。

リクルート事件で世の中が大騒ぎをしているさなか、コ社の社員が社内イベントでおおはしゃぎしている記事が、写真週刊誌に掲載された。実はこの記事と添付の写真には裏があった。わたしが聞いた話では、本当に掲載予定だった写真は、まさに乱痴気騒ぎの様子だったらしい。が、お金を払って、直前におとなしい写真に差し替えてもらったそうだ。そのため写真に添えられた扇情的な解説(「こんな時期に、コ社の社員は反省せずに、大ハシャギしている」といった内容だった)にもかかわらず、写真のほうは「社員たちが体育座りして、ミーティングしている」といった風情の写真になった。

いま、堀江貴文氏が逮捕された。ライブドア自体も批判されている。

前回の選挙で堀江氏をあれほど持ち上げていた自民党は、いまや「ライブドアとは関係ない」との弁明に躍起だ。東証は「ライブドア(東証マザーズ上場)の上場廃止を検討している」としている。ライブドア自体も「虚業」として批判されるとともに、「ライブドアは新興宗教だ」と言う人さえいる。

ちなみに、わたしはリクルート事件の直前まで、リクルートコスモスで働いていた。「リクルートの常識は世間の非常識」と社員たちが自ら誇るその社風には、最後までなじめなかった部分があった。だが、わたしが基本的に若い世代の、とくに20代の人間の能力を信じているのは、この時代の経験が元になっている。

その後いくつか会社を変わったが、どの会社もその会社独自の社風があり、リクルート系の企業の社風だけが、突出して変だということではないことがわかった。しかし、大卒採用が基本なのに、従業員の平均年齢が25歳に満たない企業(当時)が、マンションをつくって売っているなどというのは、やっぱり世間からみればそれだけで変だったろう。