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映画的・絵画的・音楽的

映画を見た後にネタバレOKで映画を、展覧会を見たら絵画を、など様々のことについて気楽に話しましょう。

ジゴロ・イン・ニューヨーク

2014年08月13日 | 洋画(14年)
 『ジゴロ・イン・ニューヨーク』を新宿武蔵野館で見てきました。

(1)監督として大活躍するウディ・アレンが映画出演するというので、遅まきながらも行ってきました。

 本作(注1)の舞台はニューヨークのブルックリン。
 本作の主人公は、花屋でアルバイトをしているフィオラヴァンテジョン・タトゥーロ)と本屋のマレーウディ・アレン)の二人組。

 ですがマレーは、閑古鳥が鳴いている本屋を閉店することに。
 鞄に本を詰めながら、マレーは、「この書店は、祖父が始め、父が引き継ぎながら、俺がたたむことに」とか、「本当に世も末。希少な本を求める人が減ってしまった」などと、フィオラヴァンテに愚痴ったりしています。

 その際、マレーはフィオラヴァンテに対し、「女医のパーカーシャロン・ストーン)から、「二人のレズの間に男を入れたいが誰かいないか」と訊かれたから、「一人いるが1,000ドルかかる」と答えた」と話し、「その一人というのは君だよ」と付け加えます。
 フィオラヴァンテが「なぜ俺が女医を愉しませることに?」と訊くと、マレーは「君は定職に就いていないから」と答えますが、フィオラヴァンテは「長年の友人だろ」と応じます。

 パーカー女医からは、「金は支払うけど、まずはお試しということで。ただし、エイズは嫌よ。淋病も」と催促の電話がマレーの元に。



 これに対して、マレーは「バッチリだ。彼はプロだ」と答えますが、フィオラヴァンテは、「ジョージ・クルーニーの方が条件に合う」とか、「俺はもう若くはない」、「親友を男娼にするのか」と言って尻込みします。
 でも、マレーは「君はモテたよね。君のとりえはセックス・アピールだ。取り分は60対40で、君が60だ」と強引に話を進めてしまいます。

 実際にはこれが図に当たり、二人は「ヴァージル&ボンゴ」というコンビ名を名乗って商売に精を出します。
 特に、フィオラヴァンテは、花屋でのアルバイトの経験を活かして花束を持って行くなど、処世に対する繊細な心遣いにあふれています。



 とはいえ、この先どうなることでしょう、………?

 話としては、ウディ・アレン扮するポン引きが、友人(ジョン・タトゥーロ)をジゴロとして売り出すという実に他愛ないもので、物静かなジョン・タトゥーロとお喋りのウディ・アレンとの対比が面白く最後まで惹きつけられるものの、ユダヤ人特有の話が随分と入り込んできて、そうした事情に疎いこともあり、余り乗りきれませんでした(注2)。

(2)マレーとフィオラヴァンテのジゴロ稼業は、フィオラヴァンテが未亡人のアヴィガルヴァネッサ・バラディ)に恋心を抱くあたりから変調をきたしてきます。
 アヴィガルは、ユダヤ教の正統派のハシディック派(注3)に属していて、酷く禁欲的な生活を送っています(注4)。そこにマレーが入り込んで、フィオラヴァンテのセラピーを受けさせることになるものの、フィオラヴァンテはアヴィガルの優しさに心を惹かれてしまうのです。



 でも、彼らの行動を地域パトロールのドヴィリーヴ・シュレイバー)が見張っていて(注5)、ついにマレーはラビ審議会に連れて行かれ、被告として裁かれることに(注6)。

 まあこうしたものは単なるエピソードと受け取れば構わないのでしょうが、その経緯や実情をよく知らない者にとっては、カルト教団内部でのリンチ(杓子定規に言えば国家内国家でしょうか)のような感じがしてしまい、どうも映画の中にうまく入り込めませんでした(注7)。

(3)森直人氏は、「本作は一風変わったバディームービーと呼べるかもしれない。一見冴えない中年男と愉快な老人がコンビを組んで、男娼ビジネスを始めるという設定がまずユニークだ。そして主人公よりも相棒の存在感が派手なところに、作品としての面白さと微妙さが入り交じっている」と述べています。
 宿輪純一氏は、「監督・主演のジョン・タトゥーロが、かすむ、ウディ・アレン色の強い、得意のロマンティックコメディとなっている」と述べています。



(注1)本作の監督・脚本は主演のジョン・タトゥーロ。原題は「Fading Gigolo」。

(注2)最近では、ジョン・タトゥーロは『トラブル・イン・ハリウッド』(ブルースのエージェントのディック役)で、ウディ・アレンは『ローマでアモーレ』で、それぞれ見ています。

(注3)例えば、このサイトの記事とかこのサイトの記事を参照。

(注4)亡くなったアヴィガルの夫がラビだったこともあり、その死後ずっと喪に服してきたわけです。なにしろ、住んでいる街の外へ出るのは夫の墓参りに行く時ぐらいというのですから!

(注5)ドヴィは、アヴィガルの幼馴染でもあり、彼女にズッと恋心を抱いてもいるようです。

(注6)マレーは、「ユダヤ人としての誇りは?」と尋ねられたり、ポン引きの罪で有罪になると石打の刑だなどと言われたりするのですが、アヴィガルがその審議会に現れ、「私の罪は、慎みを忘れたこと、男性と二人きりになって髪を見せ(かつらを脱いで地毛を見せたこと)、体を触らせたこと」などと証言したことで、マレーは放免されたようです(アヴィガルが「その後で泣きました」と付け加えたことに対し、裁判官のラビが「恥じて?」と問うと、彼女は「いいえ、寂しくて」と答えます)。

(注7)さらに言えばは、ラストのシーンでマレーは、カフェで見つけたフランス人女性を加えた新しい3人組について「This could definitely be the beginning of a very beautiful relationship between the three of us.」(imdb)と言いますが(加えて、フィオラヴァンテに対し「ところで、君はいつ街を出るんだっけ?」との嫌味も)、この台詞の元ネタは、このサイトの記事によれば、映画『カサブランカ』のラストの台詞“This is a beginning of beautiful relationship!”」とのこと。こんな深い映画知識があれば、本作に対する興味がズッと増すことでしょう!
 
 ちなみに、Wikipediaの「カサブランカ」の項によれば、リック(ハンフリー・ボガード)がルノー署長(クロード・レインズ)に言うこの台詞は、アメリカ映画協会 (AFI)選定の 「アメリカ映画の名セリフベスト100」(2005年)の第20位にランクされているとのこと。
 また、ウディ・アレン脚本・主演の『ボギー!俺も男だ』(1972年)は、『カサブランカ』のパロディとなっているそうです(未見ですが、『ボギー!俺も男だ』でもリックの台詞は出てきて、このサイトの記事によれば、「くされ縁の始まりだな」と訳されているそうです)。
 ただ、あまりこんな脱線をしていると、本作がまるでウディ・アレンの監督・脚本によるものと誤解されてしまうかもしれません!



★★★☆☆☆



象のロケット:ジゴロ・イン・ニューヨーク


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4 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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こんにちは (タカヤン)
2014-08-14 09:58:21
こんにちは
感想を拝見して、面白そうでものすごく観たくなりましたが、
田舎町に暮らしてるので、上映はされてないようだしDVD化しても地域の小さなレンタル店(大手のレンタル店が遠い)に入荷されるかな…とションボリしています…

なんとか、レンタル店に行ってDVDを借りてなにか映画をみることから始めたいです
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ほんと映画もいいですね~ (画家)
2014-08-14 16:20:22
映画的、、、絵画的はいかが?
http://blog.goo.ne.jp/1129goodmeat/
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Unknown (ふじき78)
2015-02-19 23:09:31
アレンとタトゥーロが正反対の役だったら、もっと珍作になったんでしょうけど、タトゥーロ原案で、アレンの監督脚本としてもし撮ったらアレン(もしくはアレンに似てる若い俳優)がジゴロになった気もしますね。
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Unknown (クマネズミ)
2015-02-20 06:03:18
「ふじき78」さん、TB&コメントをありがとうございます。
「タトゥーロ原案で、アレンの監督脚本」というのは至極面白いアイデアながら、御年79歳のアレンが、いくらなんでも自分でジゴロ役を演じることはないと思いますが、そうなると「アレンに似てる若い俳優」をもってこようとし、ならばいっそのことタトゥーロ(57歳)にやってもらおうかといったことになるようにも考えられます。
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