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映画を見た後にネタバレOKで映画を、展覧会を見たら絵画を、など様々のことについて気楽に話しましょう。

るろうに剣心 京都大火編

2014年08月15日 | 邦画(14年)
 『るろうに剣心 京都大火編』をTOHOシネマズ渋谷で見てきました。

(1)これは、2部作の前編に過ぎずどうしようかと思っていたのですが、一昨年に第1作目の『るろうに剣心』を見てなかなか面白かったことと、強力なPR戦術に押されて、映画館に行ってきたものです。

 本作(注1)の冒頭は、1878年(明治11年)の摂津鉱山。
 斎藤江口洋介)が率いる警視局の警官隊が鉄砲を持って鉱山を取り囲みます。
 斎藤が「ほんとうにヤツはここにいるのか?」と尋ねると、部下は「20日前から張り込んでいました」と答えます。
 それで、警官隊は坑道に突入しますが、見えない敵に次々にやられてしまいます。
 かまわず斎藤が進むと、巨大な溶鉱炉(全体が製鉄所になっているようです)が燃えていて、その上から警官が何人も吊り下げられています。
 そして、志々雄真実藤原竜也)の登場です。



 彼は斎藤に対し、「お前も俺と同じように幕末を生き抜いた。しかし、こんなくだらない世になってしまった。お前もこっちにこないか?ここにいれば、誰の指図も受けなくて済む。現世こそが地獄だ」などと言って、炎の中を立ち去ってしまいます。

 場面は変わって、東京・浅草にある芝居小屋。
 舞台には「人斬り抜九斎」が登場し、それを緋村剣心佐藤健)らが面白がって見ています。



 芝居が終わって帰りの人混みの中で、神谷薫武井咲)が「人斬り抜刀斎は過去の伝説なのね」と剣心に言います。

 さらに場面は神谷道場。
 薫が門弟に稽古をつけていると、高荷恵蒼井優)が現れ「お客が」と言って警視総監を案内します。彼は剣心に対して、「あなたにお目にかかりたいという人がいる。内務卿の大久保だ」と告げます。
 そこで、剣心と相楽左之助青木崇高)が大久保利通宮沢和史)に会いに行きます。

 場面は内務省の大久保の部屋。
 大久保は、「志々雄は斬られた上に全身焼かれて殺されたはずだったが、逃れて京都の裏社会に潜伏し、今や大きな勢力を持っている。彼の狙いは維新政府の転覆だ。討伐隊を差し向けたが壊滅した。頼みの綱はお前だけだ。1週間後の5月15日に良い返事を待っている」と剣心に言います。

 第1作目では、悪徳企業家・武田観柳香川照之)を倒して、今や、薫の道場で安穏に居候する剣心。内務卿からの依頼を受けるかどうか悩むものの、その大久保が5月14日に暗殺(注2)されたこともあり、薫らが止めるのを振りきって(注3)、剣心は、志々雄が暗躍する京都に向います。
 志々雄は、剣の腕も頭脳の回転も剣心と互角とされています。果たして、剣心はうまく志々雄を討ち果たすことができるでしょうか、………?

 本作は、漫画を原作とし、139分という長尺でもあり、おまけに前編ですから、見る前はかなり危惧しましたが、実のところは、内容の面白さでその長さを全く感じさせず、かつまた本作は本作で一応のまとまりを付けてもいる優れものであり、ラストの流れがどうなるのか後編をぜひとも見たい気にさせます(注4)。

(2)本作において抜群に面白いのはチャンバラです。
 特に、剣心と瀬田宗次郎神木隆之介)との対決では、瀬田が微笑みながら実に素早い動きをするのに驚かされます(剣心が手にする逆刃刀が折れてしまいます)。



 また、剣心と沢下条張三浦涼介)との対決も、神社の床下までも使った激しい物で圧倒されます(赤ん坊を助けるために人斬りに戻らざるをえないのかどうか、ぎりぎりのところまで剣心は追い詰められます)。

 ところで、剣心が志々雄に戦いを挑む大義ですが、内務卿の大久保は、剣心と会った際、剣心から「大久保さん、随分とやつれましたね」と言われたのに対し、「古い時代を壊すことより、新時代を築く方がはるかに難しい」と応じ(注5)、それに答えるべく剣心は京都行きを決意します(注6)。
 なんだか雰囲気的には、大久保らが率いる明治新政府は時代の流れに沿ったポジティブな方向を向いていて、志々雄らはその方向性に反逆するネガティブのアナクロ的な存在のように思えてしまいます。
 でも、「新時代を築く」という点においては、志々雄たちも負けてはいないのではないでしょうか?たとえその目指すものが、志々雄をトップとする独裁国家だとしても(ヒトラーを総統とするナチス国家が思い浮かびます)、明治天皇をトップとする国家を作った薩長藩閥とやることはあまり違いがないようにも思えます。そして、そういう国家を作るべく、志々雄らは明治新政府を転覆しようとしているわけではないでしょうか?

 それに「古い時代を壊す」という点については、江戸幕府を倒すことは大変に困難でしたし(それで300年近く存続したわけでしょう)、現に明治新政府の転覆だっておいそれとは出来ません。なにしろ、時の体制に食い込んでいる既得権益者は大勢いて、彼らがその体制を支えているわけですから、そんなに簡単に倒れるはずもないのです。逆に、そういったものがひとたび倒れてしまえば、何もない大地に家を建てるのと同じで、新しい制度を樹立することはそんなに難しいことではないようにも考えられます。

 もっといえば、志々雄らは決してアナクロ一点張りというわけでもなさそうです(注7)。
 彼らのアジトで志々雄は駒形由美高橋メアリージュン)とともにソファに座ったりしますし、親衛隊ともいうべき十本刀との会議は洋式の机に向かい椅子に座って行うようです。
 さらには、ラストで少々姿を見せましたが、彼らは、摂津鉱山で製造された鉄を用いて軍艦を作り上げているのです(注8)。
 むしろ、近代的装備を持った軍隊ではなく剣心一人を討手として志々雄に差し向ける明治新政府のほうがアナクロではないかとも思われます(注9)。

 そんなこんなで、剣心が内務卿の要請に従って京都に出向くことを決意するというのに少々引っ掛かりを感じたところですが(注10)、まあどうでもいいことでしょう。
 なにはともあれ、9月に公開される後編では、いったいどんな兵器を繰り出して志々雄たちは新政府に立ち向かおうとするのか(注11)、大いに期待されます。

(3)渡まち子氏は、「大ヒットアクション映画の2部構成の続編の前編「るろうに剣心 京都大火編」。アクションのスピード感とストーリーの面白さがパワーアップしている」として80点をつけています。
 前田有一氏は、「前作の大ヒットをうけての続編ということでさすがの好景気。すごい豪華キャストである。しかし、実にもったいないことであるがそれでも本作が「世界を驚かす」ことはない」として65点をつけています。
 相木悟氏は、「前作よりパワーアップしたアクション満載、全編かっ飛ばす快作ではあるのだが…」と述べています。



(注1)本作の原作は、和月伸宏による漫画『るろうに剣心―明治剣客浪漫譚』、監督・脚本は第1作と同じ大友啓史

(注2)史実としては不平士族6名によって暗殺されますが(Wikipedia)、本作では、志々雄の側近である瀬田宗次郎によって殺されます。その際に瀬田は、「緋村を差し向けるとはよく考えた。だが、この国は俺がいただく」との志々雄の言葉を大久保に伝えます。

(注3)薫は、剣心が以前の人切りに戻ってしまうことを恐れて、「冗談じゃない。絶対に京都なんかに行かせない」と叫ぶのですが。
 なお、その薫は、剣心が京都に行ってしまうと、門下生の明神弥彦大八木凱斗)とともに京都に剣心を追って出向きます。

(注4)最近においては、佐藤健は『カノジョは嘘を愛しすぎてる』、藤原竜也は『サンブンノイチ』、江口洋介は『脳男』、伊勢谷友介は『人間失格』、青木崇高は『渇き。』、神木隆之介は『桐島、部活やめるってよ』、武井咲は第1作目の『るろうに剣心』、蒼井優は『春を背負って』、田中泯は『永遠の0』で、それぞれ見ました。

(注5)大久保の台詞は、本作の公式サイトに掲載の「登場人物Characters」にある「大久保利通」の項によります。

(注6)それに、志々雄たちに殺された何人もの警察官の遺骸を取り囲む家族の泣き叫ぶ様を警視総監に見せられたことも与っているでしょう〔第1作において、剣心によって斬られた清里窪田正孝)の遺骸に許婚者・雪代巴がすがるのを剣心が見てしまったことに対応するのでしょう〕。

(注7)本作で一番のアナクロは、四乃森蒼紫伊勢谷友介)と柏崎念至田中泯)との対決でしょう。なにしろ、四乃森は小太刀二刀流ですし、柏崎はトンファーなのですから。
 それにしても、四乃森は執念深く剣心を付け狙いますが、隠密御庭番衆の最強を示すためだという理由がよく理解できないところです。

(注8)1875年(明治8年)に進水式を挙げた日本初の国産軍艦「清輝」と比べて性能等はどうなのでしょうか?

(注9)前年に起きた明治10年の西南戦争では、「士族を中心にした西郷軍に、徴兵を主体とした政府軍が勝利した」のですから(Wikipediaによります)、大久保は政府軍を志々雄に向けるべきだったのではないでしょうか(警視総監あたりが、諸外国に日本の混乱した様を見せたくないから軍隊を派遣できない、などという理屈を言っていましたが)?

(注10)明治新政府か志々雄一派かと言っても、近代文明対反近代文明ということよりも、むしろ権力闘争とも言えるのではないでしょうか?そうだとしたら、剣心の判断は甘いのではないかという気がします。

(注11)第1作ではガトリングガンが登場しました。



★★★★☆☆



象のロケット:るろうに剣心 京都大火編

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6 コメント

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歴史 (iina)
2014-08-20 09:01:59
つい最近に、明治時代初期の警視庁名簿に新選組「斎藤一」の名が発見されて話題になってましたから、
「るろうに剣心」に警視局の警官隊として出ても適っていました。

また、内務卿・大久保 利通は、東京の紀尾井町で暗殺されてますから、歴史的背景を織り込んでますから、
心憎い演出です。

第3作は、たぶん坂本龍馬が歴史を無視して暗躍するのですよ。<嘘>

Unknown (クマネズミ)
2014-08-21 21:38:56
「iina」さん、TB&コメントをありがとうございます。
「iina」さんもご自身で「嘘」とおっしゃっているように、本作のラストで坂本龍馬を演じた俳優が顔を出したからといって、明治11年にもなって龍馬が活躍するとはまず考えられないでしょう!
(18日に、「比古清十郎」役であることが発表されたそうです)
Unknown (ふじき78)
2014-08-26 00:08:21
> 近代的装備を持った軍隊ではなく剣心一人を討手として志々雄に差し向ける明治新政府のほうがアナクロではないかとも思われます

明治政府はあくまで戦争でなく、テロリスト殲滅という形態を取りたかったのでは。日本国内に軍隊を差し向けなければ鎮圧できない大きな勢力がある事を認めたくはない。又、認めた時、その勢力に加担する外国が現れるかもしれない。なので、事が大きくならないなら暗殺は合理的だと思います。
Unknown (クマネズミ)
2014-08-26 06:18:05
「ふじき78」さん、コメントをありがとうございます。
「ふじき78」さんがおっしゃっていることは、上記エントリの「注9」で触れましたように、本作における大久保内務卿らの意向と一致しています。
ただ、明治政府はすでに、明治10年の西南戦争(およそ3万名が決起したとされています)のような大規模な反乱のみならず、小規模な反乱(明治7年の佐賀の乱、明治9年の神風連の乱や秋月の乱、萩の乱)に対しても、いずれも軍隊を動員して鎮圧しています。例えば、神風連の乱は、大田黒元雄らが率いる敬神党の約170名程度が決起したものであり、まさにテロリスト集団ではなかったでしょうか?
そして、それらに対して軍隊を差し向けても、「その勢力に加担する外国が現れる」ことはありませんでした(逆に、軍隊を用いて完全に反乱を制圧したからこそ、明治政府は諸外国から評価されたのではないでしょうか)。
とすれば、軍艦を建造したりとかなり大規模な反乱を引き起こしている志々雄一派に対しては、明治政府が「合理的」に行動するのであれば、西南戦争と同様に軍隊を差し向けるべきではないでしょうか?
Unknown (ふじき78)
2014-08-26 23:09:43
そもそも江戸幕府と維新軍の争いの際、欧米列強が維新軍に肩入れして、軍事用品を用意したって話があったような気がします。上手い事橋渡しする人材がいれば、志々雄側が欧米列強と手を結ぶのは十分ありえそうです。軍隊の派遣は欧米列強に対しての示威行動で考えるなら、負けない事が大前提です。例に挙げた鎮圧では政府側に負けない自信があったが、今回はなかったという事かもしれません(擬似軍隊である警察隊が何回も煮え湯を飲まされているようでもありますし)。
Unknown (クマネズミ)
2014-08-27 07:59:21
「ふじき78」さん、再度のコメントをありがとうございます。
「江戸幕府と維新軍の争いの際、欧米列強が維新軍に肩入れ」については、幕末、イギリスが「維新軍」にフランスが「幕府軍」に「肩入れ」しています(『幕末高校生』でもちょこっと描かれています)。
ただ、その後フランスは、普仏戦争などもあって一時日本から手を引きましたが、維新政府に対しては「軍事顧問団」を送って支援しています。イギリスやフランスの支援を受けた維新政府は、西南戦争で勝利して士族の反乱を抑えこんだということだと思います。
とすれば、西南戦争後、「志々雄側が欧米列強と手を結ぶ」可能性はあまりなかったのではと考えられます。
とはいえ、ハイカラ好きの志々雄側は立派な軍艦も建造しているのですから、どこかの欧米列強と手を結んでいたのかもしれません(ドイツとかロシア?)。
ただ、それにしては、戦法が旧式に過ぎて、「警察隊が何回も煮え湯を飲まされている」にしても、ずっと近代化された政府軍の敵ではないように思われるのですが。



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