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映画を見た後にネタバレOKで映画を、展覧会を見たら絵画を、など様々のことについて気楽に話しましょう。

インポッシブル

2013年07月12日 | 洋画(13年)
 『インポッシブル』をTOHOシネマズシャンテで見ました。

(1)ナオミ・ワッツユアン・マクレガーが出演するという情報だけを持って映画館に行ってきました(注1)。

 本作は実話(true story)を基にしており、2004年12月にスマトラ島沖地震で発生した大津波に襲われたタイのリゾート地(注2)が舞台です。
 大津波の直前、ヘンリーユアン・マクレガー)とマリアナオミ・ワッツ)が、子ども3人を連れてクリスマス休暇中にこの地のホテルへ、勤務地の日本からやってきたというわけです。



 そして、彼らが滞在して3日目の26日のことです。子ども達がクリスマスプレゼントを楽しんでいると、突然ホテルの前庭に植えられている椰子の木が倒れ、次いですぐさま大津波がやってきて、アッという間に皆が呑み込まれてしまいます。
 サア、この家族はどうなるのでしょうか、…?

 実際には遭遇していないものの、3.11の被害の有様を様々な映像などを通じて知っている者としては、いくら迫真の作品を見せられてもやはりドラマにすぎないのでは、それにしては随分単調なドラマの作りになっているなと思ってしまいます。

 確かに、CGではない大津波の場面は迫力がありますし(注3)、津波に襲われた後のリゾート地の有様や、負傷者などでごった返す病院の有様などは真に迫るものがあります。
 また、本作でアカデミー賞の主演女優賞にノミネートされたナオミ・ワッツの演技もさすがに素晴らしいものがあります。



 さらには、ストーリー的には、長男ルーカストム・ホランド)の活躍には目をみはります。



 ですが、ただそれだけの映画といえないこともありません。
 そのくらいの映画ならば、これまでにいく度となく作られてきているのではないでしょうか(注4)?
 何より、この映画にはめぼしいドラマがありません。なにか捻りの利いたドラマを創出して貰わないと、同じような場面の連続では飽きてもこようというものです。

 とはいうものの、やはりこの作品が事話(true story)に基づいていて、映画のラストに、実際の家族5人(スペイン人のマリア・ベロン一家)の画像が映し出されると、そんな感想でオシマイにしていいのかという気になってきます。

 大津波に遭遇した5人が再会するのは、とにかく生き残ってさえいれば、様々な紆余曲折があるにしても時間の問題でしょう(注5)。でも、あの5人が大津波の中で生き残るということ自体が跳び越えられそうもない途轍もなく高いハードルではないかと思いました。
 なにしろ、母親のマリアでさえ、脚に大怪我をしてやっとの思いで病院に運び込まれ、そこでも命が危なかったくらいなのです(注6)。
 まして、幼い子ども達(注7)が3人とも濁流の中に巻き込まれたものの(注8)、溺れもせずに、さらには襲ってくる様々な物体にもぶつからずに無傷で助かるなどということが起こったのですから、驚くほかはありません。

 各人が助かる確率自体がものすごく低かったでしょうし(特に、3人の子どもが無傷で助かる確率は極端に低かったでしょう!)、その5人が皆助かる確率となると、それらを全て掛け合わせたものとなって、限りなくゼロに近づいてしまいます。
 普通だったら、そんなことはありえないとして諦めることでしょう(注9)。
 でも、現実に、そのゼロに近い確率のことが起きたのですから、これは凄いことだと思いました。

(2)渡まち子氏は、「スマトラ島沖地震に遭遇した家族が再会を果たした奇跡の物語「インポッシブル」。人間の生命力と家族愛に満ちた感動作」として70点をつけています。




(注1)ナオミ・ワッツは、最近では、『恋のロンドン狂騒曲』とか『愛する人』などで見ていますし、ユアン・マクレガーは、『砂漠でサーモン・フィッシング』や『人生はビギナーズ』を見ました。

(注2)プーケット国際空港から北に車で約1時間のところにあるカオラックのビーチ。

(注3)劇場用パンフレットに掲載の「Production Notes」には、「最初の巨大で破壊的な波が海岸をのみ込む10分間のシークエンスを作るのに1年を要した」とあり、担当したスタッフは、「デジタルの水は十分にリアルとはいえない」と考え、「唯一の選択肢は本物の水を使うことだった」云々と述べられています。

(注4)例えば、最近ではクリント・イーストウッド監督の『ヒア アフター』。そこでは、パリの超売れっ子TVキャスター(セシル・ドゥ・フランス)が、東南アジアのリゾート地で大津波に出遭って、あやうく死にそうになります。

(注5)例えば、病院での細菌感染もあるでしょうし、あるいは言葉が通じないことから来る齟齬もあるでしょうから、こんな場合の人捜しも難事業ではあるでしょう。

(注6)マリアは、何度も水の中に沈みながらも、木にしがみついてやっとのことで濁流を逃れたものの、流れてきた物体に当たって負ってしまった脚の怪我で満足に歩けず(胸も怪我をしました)、出会った現地人に地面に引きずられて運び出されるという有様。
 病院では、脚の怪我が化膿して悪化してしまい、一時は病室の戸棚の中で見つかった抗生物質を飲んで凌いだものの(マリアは医者なので、薬瓶のラベルを見て識別できました)、緊急な手術が必要なまでの事態となってしまいます。

(注7)映画の中で子ども達の年齢についてどのようにいわれていたのか、クマネズミははっきりと覚えておりません。
 ただ、こちらのサイトの記事では、「15歳の長男ルーカス」、「7歳の次男トーマス、5歳の三男サイモン」と明記されているところ、サイトによってはルーカスの歳は「10歳」だったり「12歳」だったりします〔なお、こちらの記事によれば、ルーカスを演じたトム・ホランドが15歳のようです(1998年6月1日生まれ)〕。
 とはいえ、「7歳の次男トーマス、5歳の三男サイモン」という点は、サイトの間で共通しています。

(注8)尤も、父親ヘンリーの話によれば、次男トーマスは高い木の上に、そして三男サイモンはヤシの木の上にいて助かったようです。それにしても、大津波が襲来する際には、ヤシの木などが何本もなぎ倒されているのですから、助かったのはやはり奇跡としか考えられません。

(注9)現に、ルーカスは、少なくともトマスとサイモンは死んでいるものと思っていましたし、ヘンリーも、マリアとルーカスは生きているに違いないと思いつつも、病院に置かれている死体を調べたりもしています。




★★★☆☆




象のロケット:インポッシブル

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10 コメント

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助かったことこそが奇跡 (KGR)
2013-07-12 23:08:08
津波の直撃を受けて、映画では表現されなかったものの、引き波もあったろうし、第二波、第三波もあったはずで、まさに一家全員が助かったことこそが奇跡で、そこから後はある意味時間の問題だったかもしれません。
当人たちは必死でしたでしょうが、「唐山大地震」と比較するのもなんですが、意外とあっさり見つかったなって印象でした。
もちろん早い段階で会えてよかったとは思いますが。
インポッシブルな映画 (milou)
2013-07-13 12:42:55
この手の作品は苦手で、まったくというほど乗れなかった。
なお最初に出る文字は“based on”ではなく“This is a true Story”、つまり“基づく”のではなく“事実”であることを売りにしているわけです(ただしエンド・クレジットでは基づいているという意味の表記だったが)。

であれば最初の場面から引っかかる。なぜ飛行機で家族の席があんなにも離れているのか。もちろん家族だからといって必ずしも近い席が取れるとは限らないが、ラストを見ればかなり裕福だと思われるので違和感を感じた。そしてテーブルの上には“さりげなく”あるいは“堂々と”チューリッヒ保険の青い資料(契約書?)が置かれている。まさか空港の自販機で買った保険じゃあるまいし、あるいは大変な事故を予想したわけでもないのに、そんな資料は荷物の奥に入れてるはずで飛行中に席で見るとは思えない。

そして、父親(当然家族一緒に)は日本で働いているらしいが上司の名前が何と“ユニオシ”、恐らく100%そんな名前の日本人がいるとは思えず、言うまでもなく『ティファニーで朝食を』でミッキー・ルーニーが演じた“変な日本人”の名前…監督か脚本家の好みの映画だとしてもひどすぎる。

“事実”だとしたら、ほかにも“インポッシブル”なことは色々あるが無視するとして、最初に書いたチューリッヒ保険。わざわざ一個人のために会社から担当者を現地に派遣して迎えに行きVIP専用のような専用飛行機で“あの家族だけ”(あるいはほかの加入者のために何機も?)を国外に運ぶ(パスポートは、いつ再発行したの?)を運んでくれるとは、どれぐらいの保険料を払っているのか、こんなことは普通にポッシブルなのか保険会社に聞いてみたい。
Unknown (クマネズミ)
2013-07-14 06:37:35
「KGR」さん、TB&コメントをありがとうございます。
おっしゃるように、クマネズミも、「意外とあっさり見つかったなって印象」を持ちました。ヘンリーが遺体を調べているシーンもあることはありましたが、専ら生存者の方に注意を払っていたためなのでしょうか?
Unknown (クマネズミ)
2013-07-14 06:38:15
「milou」さん、コメントをありがとうございます。
この映画は、おっしゃるように、冒頭で“This is a true Story”とされているものの、一家5人が助かるという奇跡が実際に起こったことを描き出しているのがミソで、それ以外のことについては、5人がスペイン人からイギリス人に変わっていることから始まって、いろいろフィクション等が織り交ぜられ、それに伴って様々のおかしな点(特に、チューリッヒ保険の件)も生じ、とても評価できないのではと思いました。
Unknown (ブリ)
2013-07-16 20:10:15
あのイキナリの津波はビックリ。つか地震なかったの?けっこう細かくリサーチしているようなんだけどイキナリ津波はアレでしょう。地震大国日本をなめんなよw。

チューリッヒ保険というのは・・細かいところをチェックしてますね。スポンサーなのかしらん。
津波の予兆 (クマネズミ)
2013-07-16 21:51:12
「ブリ」さん、コメントをわざわざありがとうございます。
ただ、「けっこう細かくリサーチしているようなんだけどイキナリ津波はアレでしょう」とありますが、1960年のチリ地震津波の場合は、「地震発生から約22時間半後の5月24日未明に最大で6.1mの津波が三陸海岸沿岸を中心に襲」ったとのこと(Wikipedia)。この場合、当然のことながら、事前の地震なしの「イキナリ津波」でした。2004年のスマトラ島沖地震の場合でも、「タイのプーケットに津波が到達したのは、地震発生から2時間30分後」とのことで、これも両者の位置が離れており、「イキナリ津波」だったと思われます。
僕は旅行保険に入らないが (milou)
2013-07-16 22:12:18
ちょっと英語で検索してみると、やはりチューリッヒ保険に対し“disgusting”という意見が多いようだ。飛行機内で読んでいたのも、やはり保険の概要らしいが(僕に分かったのはテーブルの上で何かの下に斜めに見える青い紙のZurich という文字だけ)、やはりこの“露骨”なシーンの評判が悪い。まったく僕同様に感じた人がいて

BUT the thing that really pissed me off was the fact the movie was just one big fat advert for Zurich insurance.
Why was he completing his Insurance Forms on the flight to his holiday destination ?
…The man from Zurich turned up …, to take the family to Singapore on a private jet, their own jet... no one else, just this family. Lame, lame, lame.... They should be ashamed of this!!

(僕は嫌いだが)せっかくの感動の物語りを台無しにしたようで逆効果のような気もするが、まあ悪評でも、こうして騒がれることが宣伝になる?

ところがところが、チューリッヒ保険によると、にわかには信じられないが、まんざらウソでもないようです。

Zurich also said that, in the wake of the 2004 tsunami, the IAG and WTP chartered several aircraft to repatriate 117 people to Europe, South Africa and North America, and carried out a further 214 medical evacuations and 23 repatriation of bodies.The medical cases managed amounted to 900 and included people who were not insured by Zurich, the company said.

しかしねえ…マリアさんは“この映画で唯一事実でないのはボールは赤じゃなくて黄色だった”なんて白々しいことを言っている。

どうでもいいが、母親は読んでいた本からメモが風で飛ばされガラスにくっつき、取りに行ったとき異変を感じ不安そうに海の方を見る。しかし(幻想の場面も多いが)ツナミが襲ったときはガラスが割れるシーンを効果的に見せるため濁流はガラスの反対側(海ではない方だぞ!)から押し寄せる。また(映画ではよくあるミスだが)ルーカスは胸に名札を貼り付けているが、母に飲み物が欲しいと言われ探しに行くときは消えてなくなり、次のシーンではまた現れる。
Unknown (クマネズミ)
2013-07-18 07:03:58
「milou」さん、再度のコメントありがとうございます。
特に、チューリッヒ保険を巡る英語記事のご紹介には感謝申し上げます。
なお、ルーカスの名札の件ですが、最初の内は付けておらず、途中で子ども達が収容されているテントに連れて行かれてから付けるようになったのではと思ったのですが。
遊び心 (milou)
2013-07-18 08:49:53
もちろん名札は途中から付けます。立食パーティじゃあるまいしピンで止めるとかしないと両面(?)テープじゃ、いつはがれても不思議じゃないけど。僕が指摘した場面は最後の父親と再会する直前です。階段を降りて…外へ出るまで。DVDなどで細かくチェックすれば当然ながら名札の位置も一定ではないはず。

言うまでもなく、こういうミス(imdb の Goofs)はスクリプターがしっかりしているアメリカメジャーの作品でも必ずあることで、そのこと自体は作品の評価などに関係なく見る側の遊びです(ときには作る側の遊びでもある)。

9割ぐらいのアメリカメジャーの作品では食事の場面で実際に皿から取って口に入れる場面はありません。理由は簡単で例えばステーキを切って食べたら何度もテイクするたび元の大きさのステーキを用意しなければならないからです。しかし独立系などの低予算の作品では(テイク数も少ないが)実際に食べる場合もあります。
ヨーロッパ映画では、そんなことは重要ではないと考えるのか半分以上の映画で実際に食べます。

そして文化の違いなのか、アジアの映画では異常なぐらい食事場面が多いが8割ぐらいは実際に食べています。
Unknown (クマネズミ)
2013-07-20 05:48:05
「milou」さん、またまた貴重なお話をありがとうございます。
「9割ぐらいのアメリカメジャーの作品では食事の場面で実際に皿から取って口に入れる場面はありません」とは知りませんでした。映画をじっと見てブログを書くので精一杯でしたが、できればこれからは、もっと「遊び心」をもって映画を見ることとしてみます。

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