『ハナ~奇跡の46日間』を「Garden theater in 虎ノ門4丁目」で見ました。
(1)この映画館は、日比谷線神谷町の虎ノ門パストラルがあった場所(「Mori Trust Garden TORA4」)に時期を限って設けられている移動式のものです。
なかなか面白い試みだなと思って行ってみたのですが、映画館は、空気を膨らませて出来るエアビームを使ったシロモノですから、強い風が吹いたりすると上映中止となります。
それに、会場内はそれほど暗くならず、大画面のTVモニターを見ている感じで、また外部の音がいろいろ入ってきます(空を飛ぶヘリコプターの大きな音とか、会場のすぐ前に設けられているカフェでアルコールを飲んで騒ぐ若い人たちの声など)。
また、余り宣伝がなされていないせいもあるのでしょうか、見に行った日の観客はわずか3人でした。
(2)今回はこの移動式映画館を体験してみることの方に重点を置いたため、上映される映画の方は二の次で事前の情報を余り持たずに見たところ、本作(注1)は韓国映画で、卓球を巡っての実話に基づいたスポ根物ながら、まずまずの出来栄えで拾い物でした。
主な舞台は、1991年に千葉の幕張メッセで開催された第41回世界卓球選手権。
それに向けて、南北統一の「コリア」チームが結成されることになります。
そのメンバーに選ばれた女子選手のうち、韓国のヒョン・ジョンファ選手(ハ・ジウォン)と北朝鮮のリ・ブニ選手(ペ・ドゥナ)は、これまでも世界大会で宿敵同士(注2)で仲がよくありません。
かつまた、練習方法なども北と南で随分と違ったりしています。
統一チームを結成するのが望ましいとしても、そんなに簡単にいくはずはありません。
そんなさなかに、ヒョン・ジョンファ選手と仲が良いチェ・ユニョン選手(チェ・ヨンジョン)が北の男子選手に一目惚れしたりして騒動が持ち上がり、ついには北の選手は統一チームから抜けてしまいます(注3)。
それでも、南の選手だけで準決勝のハンガリーを破りますが、次の中国との決勝戦ではどうしても北の選手の参加が必要です。
さあどうなることでしょうか、……?
スポ根物独特のストーリー展開でそれほど新鮮さを感じられないものの(注4)、中国との団体戦決勝のシングルスで1勝2敗となり、これをはずすと3敗となって敗北してしまうギリギリに追い詰められた挙句に、北のスンボク選手(ハン・イェリ)の打ったボールが決まってダブルスに勝敗が持ち越しとなり、ついには、ヒョン選手とリ選手のペアが中国のペアを破って「コリア」チームが勝利した瞬間は、心から拍手を送りたくなってしまいます。
また、今のような時期に上映されると(注5)、わずか20年ほど前の出来事に基づく作品にもかかわらず、遙か遠い昔のことのように思えてきます。本来的には、こうした映画自体が南北合作で制作されるべきと思えるところ、両国の現状はとてもそんな雰囲気ではありません(注6)。
なお、クマネズミは韓流映画をほとんど見ていないため、登場する俳優はほとんど知りませんが、ただ北朝鮮のリ選手を演じるペ・ドゥナは、『空気人形』を見たのでお馴染みであり、本作でもさすがの演技を披露しています(特に、病気持ちながらも頑張るリ選手を演じるのですから!)。
とはいえ、男子選手も同じように「コリア」チームとして選手権に出場しているにもかかわらず、専ら女子選手の撹乱要因としての位置付けしか与えられていないのは(最後には熱心な応援団となりますが)、いくら本作の焦点が女子選手の活躍に当てられているからとはいえ、ちょっとやり過ぎではと思いました(注7)。
(3)映画評論家の柳下毅一郎氏は、「まあ何が起こるかは誰だってわかっている。でも、わかっていてもやはり感動してしまうのである。すべての伏線がきっちり回収される決勝戦の大盛り上がり。正しいスポ根映画として広くお勧めしたい」と述べています。
(注1)本作の原題は「KOREA」(実際にはハングル)、英題は「As One」。
なお、邦題の「ハナ(HANA)」は「ひとつ」という意味のハングル。
(注2)1990年のアジア大会(北京)では、ヒョン選手が銀、リ選手が銅でした。
その際に金メダルを獲得した亞萍(トウ・アヒョウ)が、今回も「コリア」の前に立ち塞がります。
(注3)映画『かぞくのくに』の中でヤン・イクチュンが演じていたヤンと同じような監視人が、本作においても選手の規則違反を見つけ出し、北の選手の出場を禁じてしまいます。
(注4)それでも、南のチェ・ユニョン選手はハンガリー戦で足首を捻挫するものの、なんとか決勝戦に出場しますし(負けてしまいますが)、また北のスンボク選手は国際大会が初めてで大観衆に呑まれて実力を発揮できずにいたところ、経験豊富な南のヒョン選手に効果的なアドバイスをもらったりします。
(注5)4月には北朝鮮によるヒステリックな「恫喝や威嚇」が繰り返しなされました!
(注6)南北統一の「コリア」チームが結成されたのは、同じ年にポルトガルのリスボンで開催された「1991 FIFAワールドユース選手権」くらいのようですから!
(注7)さらに言えば、本作では、南北統一「コリア」チームの意味が発揮される団体戦の模様が専ら描かれますが、実際には個人戦も同時に行われていて、そこではやはり亞萍が金で、リ選手が銀でした。
★★★☆☆
(1)この映画館は、日比谷線神谷町の虎ノ門パストラルがあった場所(「Mori Trust Garden TORA4」)に時期を限って設けられている移動式のものです。
なかなか面白い試みだなと思って行ってみたのですが、映画館は、空気を膨らませて出来るエアビームを使ったシロモノですから、強い風が吹いたりすると上映中止となります。
それに、会場内はそれほど暗くならず、大画面のTVモニターを見ている感じで、また外部の音がいろいろ入ってきます(空を飛ぶヘリコプターの大きな音とか、会場のすぐ前に設けられているカフェでアルコールを飲んで騒ぐ若い人たちの声など)。
また、余り宣伝がなされていないせいもあるのでしょうか、見に行った日の観客はわずか3人でした。
(2)今回はこの移動式映画館を体験してみることの方に重点を置いたため、上映される映画の方は二の次で事前の情報を余り持たずに見たところ、本作(注1)は韓国映画で、卓球を巡っての実話に基づいたスポ根物ながら、まずまずの出来栄えで拾い物でした。
主な舞台は、1991年に千葉の幕張メッセで開催された第41回世界卓球選手権。
それに向けて、南北統一の「コリア」チームが結成されることになります。
そのメンバーに選ばれた女子選手のうち、韓国のヒョン・ジョンファ選手(ハ・ジウォン)と北朝鮮のリ・ブニ選手(ペ・ドゥナ)は、これまでも世界大会で宿敵同士(注2)で仲がよくありません。
かつまた、練習方法なども北と南で随分と違ったりしています。
統一チームを結成するのが望ましいとしても、そんなに簡単にいくはずはありません。
そんなさなかに、ヒョン・ジョンファ選手と仲が良いチェ・ユニョン選手(チェ・ヨンジョン)が北の男子選手に一目惚れしたりして騒動が持ち上がり、ついには北の選手は統一チームから抜けてしまいます(注3)。
それでも、南の選手だけで準決勝のハンガリーを破りますが、次の中国との決勝戦ではどうしても北の選手の参加が必要です。
さあどうなることでしょうか、……?
スポ根物独特のストーリー展開でそれほど新鮮さを感じられないものの(注4)、中国との団体戦決勝のシングルスで1勝2敗となり、これをはずすと3敗となって敗北してしまうギリギリに追い詰められた挙句に、北のスンボク選手(ハン・イェリ)の打ったボールが決まってダブルスに勝敗が持ち越しとなり、ついには、ヒョン選手とリ選手のペアが中国のペアを破って「コリア」チームが勝利した瞬間は、心から拍手を送りたくなってしまいます。
また、今のような時期に上映されると(注5)、わずか20年ほど前の出来事に基づく作品にもかかわらず、遙か遠い昔のことのように思えてきます。本来的には、こうした映画自体が南北合作で制作されるべきと思えるところ、両国の現状はとてもそんな雰囲気ではありません(注6)。
なお、クマネズミは韓流映画をほとんど見ていないため、登場する俳優はほとんど知りませんが、ただ北朝鮮のリ選手を演じるペ・ドゥナは、『空気人形』を見たのでお馴染みであり、本作でもさすがの演技を披露しています(特に、病気持ちながらも頑張るリ選手を演じるのですから!)。
とはいえ、男子選手も同じように「コリア」チームとして選手権に出場しているにもかかわらず、専ら女子選手の撹乱要因としての位置付けしか与えられていないのは(最後には熱心な応援団となりますが)、いくら本作の焦点が女子選手の活躍に当てられているからとはいえ、ちょっとやり過ぎではと思いました(注7)。
(3)映画評論家の柳下毅一郎氏は、「まあ何が起こるかは誰だってわかっている。でも、わかっていてもやはり感動してしまうのである。すべての伏線がきっちり回収される決勝戦の大盛り上がり。正しいスポ根映画として広くお勧めしたい」と述べています。
(注1)本作の原題は「KOREA」(実際にはハングル)、英題は「As One」。
なお、邦題の「ハナ(HANA)」は「ひとつ」という意味のハングル。
(注2)1990年のアジア大会(北京)では、ヒョン選手が銀、リ選手が銅でした。
その際に金メダルを獲得した亞萍(トウ・アヒョウ)が、今回も「コリア」の前に立ち塞がります。
(注3)映画『かぞくのくに』の中でヤン・イクチュンが演じていたヤンと同じような監視人が、本作においても選手の規則違反を見つけ出し、北の選手の出場を禁じてしまいます。
(注4)それでも、南のチェ・ユニョン選手はハンガリー戦で足首を捻挫するものの、なんとか決勝戦に出場しますし(負けてしまいますが)、また北のスンボク選手は国際大会が初めてで大観衆に呑まれて実力を発揮できずにいたところ、経験豊富な南のヒョン選手に効果的なアドバイスをもらったりします。
(注5)4月には北朝鮮によるヒステリックな「恫喝や威嚇」が繰り返しなされました!
(注6)南北統一の「コリア」チームが結成されたのは、同じ年にポルトガルのリスボンで開催された「1991 FIFAワールドユース選手権」くらいのようですから!
(注7)さらに言えば、本作では、南北統一「コリア」チームの意味が発揮される団体戦の模様が専ら描かれますが、実際には個人戦も同時に行われていて、そこではやはり亞萍が金で、リ選手が銀でした。
★★★☆☆