映画的・絵画的・音楽的

映画を見た後にネタバレOKで映画を、展覧会を見たら絵画を、など様々のことについて気楽に話しましょう。

不灯港

2009年09月02日 | 邦画(09年)
 渋谷ユーロスペースで「不灯港」を見ました。

 それなりの資金が投下され有名俳優も出演し商業ベースに乗って公開されている映画ばかりでなく、ミニシアターで細々と上映される劇映画も少しは見てみなければと、出かけてみました。

 制作されても公開されずに〝お蔵入り〟になってしまう映画も随分あるとのことですから、こうしてミニシアターながら公開された映画はそれなりの出来映えなのだと思います。加えてこの映画は8月末まで40日間ほど上映されましたから、評判もマズマズなのでしょう。

 監督の内藤隆嗣氏は、弱冠29歳、都立大学理学部数学科卒という変わりダネで、「ぴあフィルムフェスティバル」にて企画賞を受賞したことからスカラシップを受けられることとなって、長編物としてはデビュー作となるこの作品を制作したとのことです。

 初めての作品となると誰しも肩肘が張って、独りよがりのシーンが多くなりがちなところ、この映画にはそういった面は余り見受けられず、オシマイまで違和感なく見ることが出来ます。
 とはいえ、監督の意図として、「とことんお芝居をおさえる、抑揚をおさえる」ようにしたことから、主人公の台詞回しが幾分不自然な感じになっていますが(主人公に扮するのは、作家・演出家・役者の小手伸也氏〔36歳〕)。

 もう少し申し上げると、映画の主人公の万造(38歳)は、父親の残した漁船に乗って漁師稼業をやっていますが未だ一人暮らし。風貌は漁師そのものながら、身のこなし方などはダンディという妙な人物に設定されていて、漁師町で開催された集団お見合いパーティーに、洋品屋の口車に乗せられて超ダサイ格好で現れ、誰にも相手にされない悲惨な目にあったりします。
 その彼が、ある日思いもよらない偶然から都会的な女性に出会い、一緒に暮らすことになります。可愛い女性をゲットできたために有頂天になり、彼は彼女の要求を何でも黙って聞いている内に…、というよくある話の通りに事態は進んでいきます。

 まさに〝面白うて、やがて悲しき〟というありきたりのストーリーなのですが、そしてこの映画のストーリーの難点をいくつも挙げることは簡単なのですが、そんな野暮なことをせずに、今や殆ど見かけなくなってしまったこんな朴訥なロマンチストがいたらなという若き監督の思いを素直に受け止めてあげるべきなのかもしれません。