映画的・絵画的・音楽的

映画を見た後にネタバレOKで映画を、展覧会を見たら絵画を、など様々のことについて気楽に話しましょう。

ロフト.

2009年12月22日 | 洋画(09年)
「ロフト」を渋谷のシネマ・アンジェリカで見てきました。

前田有一氏が、「117分間、つまらない部分なし。ベルギーで人口の10%が見たのもわかる傑作。こういう、面白いだけじゃなく厳密に作られた優秀なミステリが、なぜこんなにも小規模上映なのか、つくづく悲しい。本来ならば、六本木ヒルズの巨大スクリーンで、上の人たちも呼んで華々しくプレミアをすべき傑作なのだ」として85点を与えているので、そこまで言うのならと、初めての映画館に足を運んだ次第です。

この映画館は、渋谷のマークシティを通り抜けてすぐのところ(道玄坂の坂の上のそば)にあって、わかれば好位置にあるとはいえ、地下に設けられていますから、知らなければスッと通り過ぎてしまいます。とはいえ、毎週水曜日は誰でも1,000円ということで、まずまずの入りでした。

さて、映画の方ですが、まさにミステリー映画そのものですから、少しでも立ち入ったことを話せば真相解明の手掛かりを与えてしまうでしょう。と言って、何も書かなければ議論になりません。

まあこのブログはネタバレOKを標榜しているということでお許しをいただいて、若干踏み込んでみましょう。

まず、この作品はベルギーで制作されていることから、出演している俳優に全くなじみがありません。結果として、誰が犯人として相応しいのか俳優を見ただけでは全然分かりません(邦画ならば、出演する俳優のうち誰が主演級であるかはすぐにわかり、その人が犯人になることはまずあり得ないでしょう、というところから始めて登場人物を一人一人消去していくと、大体真犯人の目星は付くものです)。
その点は、ある意味でメリットかもしれません。

ただ、映画の中で話されている言語がはっきりとつかめず(オランダ語〔フラマン語〕でしょうか)、それも屋内シーンがほとんどにもかかわらず全編アフレコで入っているためにくぐもった感じがして、臨場感が乏しい憾みがありました。

そんな些細な点を除けば、映画の仕上がりは素晴らしいものがあります。

ストーリーの初めの方だけ申し上げると、ある建築家が、自分が設計したマンションの最上階に設けられたロフトルームを、4人の友人に提供すると言い出します、妻などに内緒でこのロフトで情事を楽しめるように。としたところ、ある日、ベッドに手錠で繋がれたまま血まみれで死んでいる裸の女が見つかり、集まった5人の男たちは、自分たちの中に犯人がいるに違いないとして犯人探しを始めますが、…。

次々と映し出される映像は、事件が警察沙汰となってこの5人が取り調べを受けて供述している内容に従っています。ですから、取り調べが進んでくると、同じ事件にもかかわらず、各人が自分を守ろうとして様々な供述をしますので、その経過を示す映像が変化してきます。
なるほどなるほどと映画の中に入り込んでいくと、途中でクルッとそれまで明かされたことが別の角度から見られるようになり、そういうことが何回かあった後、最後に真相が明かされるという具合です。

ミステリー映画としては本当によく考え抜かれて制作された作品だと思いました〔例えば、後半の方で、5人の内の一人の男性が、刑事から、自殺した女性の遺書がないことやナイフの指紋が拭き消されている点を指摘されますが、そしてそこからこの男性は真相に近づいていくのですが、観客サイドからすると、手錠でベッドに繋がれたままで死んでいた女性が自殺するなどありえないことではないか、と疑問に思ってしまいます。ですが、……〕。

それにしても、ここに登場する中年男の女性関係はものすごいことになっているな、これが一般的な姿ならば世も末だなと思わされます。どの男性も、妻とか愛人以外の女性にドンドン手を出すのです。挙句は、ロフトを提供している建築家が、友人たちがそれぞれ大事に思っている女性にまで手を出していることがわかってしまいます。
ただ、逆にいえば、女性たち(特に友人の奥方たち!)の方もまた男性たちの要求に積極的に応じているわけで、そうなってくるとお互い様で、結局何を信じていいかわからなくなってしまいます。

要すれば、5人の男性たちは、自分らの秘密を守るために信頼関係に基づいてロフトを共有したはずなのに、そのロフトのせいで信頼関係が木っ端微塵になってしまうという皮肉なことになってしまいます。
あるいは、建築家とか精神科医といった社会の上層部を構成している人たちの荒廃した裏側を暴き出そうとしているといっていいのかも知れません。

としても、そんなお題目めいた話はこの際遠慮して、この上質なミステリー映画が見せてくれる謎解きの面白さそのものを楽しむべきでしょう。

前田氏以外の評論家の評判もよさそうです。
小梶勝男氏は、「この手の映画は観客を驚かせるために無理な展開になっていくという、「どんでん返しのためのどんでん返し」に陥りがちだが、そのような欠点もない。深い感動や映像美はないものの、サスペンスとしては非常によく出来ていると思う」として72点を付け、
町田敦夫氏も、「観ている私たちの興味も最後まで途切れることがない。二転三転する意外な結末に、「だまされた快感」を味わうとしよう」として70点を与えています。

やはり、前田氏と一緒に、こうした優れた映画が、東京でも一つの小さな映画館でしか上映されないという理解しがたい状況を嘆かなければ、と思いました。


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