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孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ルワンダをめぐる歴史認識  中央アフリカ、ルワンダの二の舞の危険

2014-04-07 22:40:14 | アフリカ

(中央アフリカの首都バンギのモンキー島 女性自警団「アマゾネス」のメンバーら(2014年2月21日撮影)【4月1日 AFP】)

「われわれ2国が真に歩み寄るためには、真実を直視しなければいけない」」】
“歴史認識”で揉めているのは別に日本と中国・韓国だけではなく、多くの国々で見られるところです。
何か紛争や衝突、惨事があった場合、その出来事をどのように認識するかは、利害の反する当事国の間では異なることの方が多いようにも思えます。

昨日、大虐殺から20年が経過したルワンダを取り上げましたが、このルワンダ大虐殺に関しても、ルワンダと当時も今もアフリカに深く関与しているフランスの間では、認識の相違があります。

****大虐殺関与の 「真実見よ」とルワンダ、仏大使の式典出席拒否*****
1994年にアフリカ・ルワンダで起きたジェノサイド(大量虐殺)をめぐり、ルワンダ政府は6日、フランスに対し、同国が虐殺に関与したという「難しい真実」と向き合うよう求めた。

多数派フツ人主導の政権下で80万人のツチ人が犠牲となった大虐殺から20年の節目を目前に控え、両国間では激しい火花が上がっている。

ルワンダでは7日に政府主催の追悼式典が開かれる。しかしフランス政府は、ルワンダのポール・カガメ大統領が大虐殺へのフランスの関与を改めて非難したことを受け、予定されていたクリスティアーヌ・トビラ法相の追悼式典出席を中止。式典には駐ルワンダ仏大使が出席すると発表し、自国の代表を事実上「格下げ」した。

仏外務省は「式典のボイコットは一度として検討していない」と説明したが、この決定はルワンダ側の猛反発を招いた。ミシェル・フレシュ駐ルワンダ仏大使は7日、AFPの取材に、ルワンダ外務省から6日夜に電話連絡があり、式典への出席を禁じられたと明かした。

これに先立ち、ルワンダのルイーズ・ムシキワボ外相は「われわれ2国が真に歩み寄るためには、真実を直視しなければいけない。真実は難しい。ジェノサイドに関与した者と親しい間柄にあるという真実は、非常に受け入れるのが難しい真実だ」とコメント。「フランスとの関係を保つための条件として、ルワンダが歴史を忘れなければいけないのであれば、われわれ2国が前に進むことは不可能だ」と述べていた。【4月7日 AFP】
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カガメ大統領のフランス批判というのは、仏語誌「ジュヌ・アフリカ」最新号で、カガメ大統領が「フランスは虐殺の計画に直接関与し、実施にも加わった」と述べたことです。

フランスは虐殺が起きる前、虐殺を主導したフツ族政権と非常に近い関係にあり、90年からのルワンダ内戦で、自国民保護による派兵やフツ族中心のルワンダ政府への武器供与などを行っていました。

そうした事情もあって、フツ族政権を倒した現在のカガメ政権は“仏軍兵士が殺人やレイプに直接かかわったほか、フツ族民兵側の路上検問を黙認するなど、大虐殺政治的・軍事的に支援した”とフランスを批判する報告書を作成し、フランス関与の責任者としてミッテラン元大統領らフランス有力政治家の名前を挙げています。

また、大虐殺直後にルワンダに派遣されたフランス軍は、虐殺を行ったフツ至上主義者ではなく、これを追って進撃するカガメ氏が率いる反政府軍と交戦してその進撃を止めたとして、カガメ大統領は「フランス人は犠牲者を保護するのではなく、殺人者を救助しようとした」と批判しています。

フランスはルワンダ側の批判を否定する一方で、大虐殺のきっかけとなったハビャリマナ・ルワンダ大統領(当時)の搭乗機撃墜事件をめぐり、ルワンダのカガメ現大統領が首謀者だったとする報告書をまとめています。

このあたりの両者の言い分等については、2008年8月7日ブログ“ルワンダ 14年前のジェノサイドへのフランス関与を批判”(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20080807)でも取り上げたところです。

その後、2010年2月、フランス・サルコジ大統領(当時)がルワンダを訪問し、「ここで起こった忌まわしい犯罪を防ぎ、止めることができなかったという過ちについて、フランスを含む国際社会は反省をまぬがれない」と虐殺におけるフランスの「過ち」を認めました。しかし、謝罪の言葉までは至っていません。

ルワンダ・カガメ大統領も「過去にとらわれず、新たな関係に踏み出す時代になった」と応じて、“手打ち”がなされたようにも見えました。
参考:2010年2月26日ブログ“フランス・サルコジ大統領 ルワンダ訪問「甚だしい判断の誤りを犯した」”(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20100226

しかし、冒頭記事に見るようなとげとげしい関係に逆戻りしています。
“自分たちが加害者だという真実に向き合い、これを認めよ”・・・・という歴史認識問題ではありますが、2010年のサルコジ大統領訪問当時と今現在の政治状況の違いが、認識の差を許容できるか否かに大きく影響しているようにも見えます。

【「このままでは20年前のルワンダの虐殺の二の舞になりかねない」】
前置きというか、前日補足が長くなりましたが、今日の主題は中央アフリカです。

中央アフリカではこれまでも何回か取り上げたように、キリスト教住民とイスラム教住民が互いに民兵組織・武装組織をつくって殺しあうような状況にあり、“ルワンダの再現”が懸念されています。

****国連事務総長 中央アフリカを訪問****
宗教対立が激しさを増し数千人が死亡している中央アフリカを、国連のパン・ギムン事務総長が訪問し、「このままでは20年前のルワンダの虐殺の二の舞になりかねない」と警告しました。【4月6日 NHK】
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ここでもアフリカに深く関与しているフランスが軍事介入し、アフリカ連合(AU)主導の「中央アフリカ支援国際ミッション(MISCA)」とともに治安安定に努めていますが、未だ危機を脱していないようです。

****中央アフリカ、平和維持軍が民兵組織に「宣戦布告****
情勢不安に陥っている中央アフリカで治安維持活動に当たっているアフリカ連合(AU)主導の「中央アフリカ支援国際ミッション(MISCA)」は26日、国内多数派のキリスト教徒の民兵組織「反バラカ」を「敵とみなす」と宣言した。

現地のラジオ放送によると、MISCAのジャンマリー・ミシェル・モココ司令官(コンゴ共和国)は、中央アフリカに展開する国際平和維持部隊に対し「反バラカ」が襲撃を繰り返していると非難。「今後、われわれは反バラカを敵とみなし、相応の対応をする」と述べた。

これに先立ち国連は、「反バラカ」が中央アフリカに派遣された国際部隊を襲撃したことについて、越えてはならない一線を越えたと警告していた。

中央アフリカの首都バンギでは先週末から武装グループと国際部隊との衝突が繰り返し発生し、これまでに約20人が死亡している。【3月27日 AFP】
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一方、イスラム教国チャドも「中央アフリカ支援国際ミッション(MISCA)」に参加していましたが、“中央アフリカの苦難をチャドとチャド人のせいにする悪意あるキャンペーン”が行われているとして支援団から離脱を表明し、一部チャド軍兵士が市場の住民に無差別発砲するという事件が起きています。

****チャド軍、中央アフリカの首都の市場で乱射 多数が死傷****
国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は4日、アフリカ中央部の中央アフリカ共和国の首都バンギで先月29日、隣国チャドの軍部隊が市場で民間人に発砲、約30人を殺害し、300人を負傷させたとの暫定調査結果を公表した。

襲撃したチャド軍はその後、拘束などされずに母国へ戻ったとみられる。

中央アフリカではイスラム、キリスト両教徒間の流血の抗争が続き、周辺国で組織する国際支援団が和平維持活動に当たっている。国連によると、市場を襲ったチャド軍は支援団の一員でないという。

OHCHRによると、チャド軍は複数の軍トラックに分乗してバンギに到着して、女性や子どもも含む買い物客で混雑する市場に進み、発砲した。パニック状態となったがチャド軍兵士は構わず乱射を続けたという。

複数の消息筋はOHCHRの調査団に、チャド軍の襲撃グループは残留するチャド人やイスラム教徒を連れ出すためバンギに入っていたと指摘。キリスト教系の民兵組織からの迫害を防ぐことが任務だったとしている。

約6000人規模の国際支援団にはチャド軍兵士約850人も参加。ただ、CNNのフランス語系列局BFMTVによると、チャド外務省は3日、支援団からチャド軍を撤収させるとの声明を発表していた。
この声明では、中央アフリカの苦難をチャドとチャド人のせいにする悪意あるキャンペーンへの批判を加えていた。

中央アフリカでは昨年春、イスラム系武装勢力の攻勢で大統領が国外へ脱出し、キリスト教系民兵組織が立ち向かう宗教対立に発展。武装衝突も拡大し、多数の死者が出ている。【4月5日 CNN】
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“チャド軍は「あらゆる方角に向けて発砲」し、周辺は逃げ惑う人々で大混乱に陥った”(地元住民の話)【3月31日 AFP】とのことですが、詳細はわかりません。わかりませんが、情勢が混乱していることは間違いないようです。

そうした混乱の中で女性自警団「アマゾネス」も出来たとか。

****アマゾネス」、紛争の中央アフリカで島を守る女性自警団*****
ヨランデ・ブラボさん(19)は3か月余り前、中央アフリカで続く血なまぐさい宗教紛争で兄弟が殺害されるとすぐに自警団に加入した。

彼女を含め8人の女性が頭をそり、武器を持ち、男性3人とともに首都バンギに近いウバンギ川に浮かぶモンキー島を守っている。

地元農民から「アマゾネス」と呼ばれる彼女たちは、土でつくった監視塔から交代で見張りを続けている。モンキー島の人口は1000人ほどだったが、紛争が始まって以来、避難民の流入でその数は膨れ上がっている。

兄弟が殺され、「私は加入せずにはいられなかった」と、カーキ色の戦闘ズボンにメッシュのトップからターコイズ色のブラが見えるブラボさんは言う。「私たちはみんなセレカの被害者だ」。12歳のおいは、セレカにライフルの台尻で打ちのめされたという。

イスラム教系の武装勢力連合セレカは2013年3月にクーデターを起こし、セレカの指導者ミシェル・ジョトディア氏が暫定政府の大統領に擁立された。中央アフリカの少数派であるイスラム教徒が同国の大統領になったのはこれが初めてだった。

その後ジョトディア氏はセレカの解散宣言を出したものの、セレカの戦闘員たちは今もなお民間人に対する暴虐行為を続けている。

これに対し、各地で自警団が結成され、イスラム教徒に報復攻撃を加えている。セレカも自警団も「バラカ」というなたを振りかざしているが、主にキリスト教系の自警団は「反バラカ」と呼ばれている。(後略)【4月1日 AFP】
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旧宗主国としての立場と、おそらく国益・権益の観点から、軍事介入して“孤軍奮闘”の感もあるフランスは、他の欧州諸国の腰の重さに苛立っていましたが、EUも1千人規模の派遣を決定しました。

****EU、内戦状態の中央アフリカに治安維持軍派遣へ****
欧州連合(EU)は1日、キリスト教徒とイスラム教徒の対立から内戦状態に陥っている中央アフリカ共和国に、治安維持軍を派遣すると決定した。

部隊は1千人規模で、主に首都バンギ及び近郊の空港で、住民の保護や人道援助などにあたるという。

ロイター通信によると、中央アフリカではこれまで数千人が死亡。アフリカ各国から6千人強、仏軍2千人の兵士が派遣されているという。

ブリュッセルでは2日からEUと40カ国以上のアフリカの国家元首らが集まる首脳会議が始まり、この日、中央アフリカに関する特別会合も開かれた。【4月3日 朝日】
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ウクライナへの対応で手いっぱいの感がある欧州各国ですので、遠い中央アフリカへの実際の派遣は、だいぶ時間を要するのではないでしょうか。

すでに数千人規模の犠牲者が出てしまっていますが、これ以上の拡大はなんとしても食い止める必要があります。ウクライナは幸いなことにまだ死者が大勢出るような状況にはなっていません。

内戦・衝突が頻発するアフリカにあって、アフリカ連合(AU)が効果的に対応できていないケースが多く、アメリカもアフリカまで介入する気はないようですので、歴史的関係も強い欧州にお鉢が回ってきます。
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ルワンダ大虐殺から20年 今、ルワンダの人々の心にあるものは・・・・

2014-04-06 20:51:10 | アフリカ

(民族融和を願うトーチ「記憶の炎」を運ぶ男女。虐殺から20年となる今年、1月から3カ月かけて、国内全土で人々がトーチをリレーする行事が開かれています。トーチは4月7日に首都キガリに到着し、カガメ大統領による記念セレモニーが行われます。 “flickr” Remember Unite Renew https://www.flickr.com/photos/kwibuka/12968436934/in/photolist-kKYCuf-kKZ4uf-kKYn4q-kKXqYk-kKWxYr-kKXApe-kKYKaE-kKXxvD-mxr5VE-kKWkmT-kKZ8qw-kKY8QF-kKZkVw-kKY7WB-kKXkdV-kKY2RX-kKZxoG-kKXeWn-kKXRk6-kKWoMR-kKXZgB-kKXege-kKZhVd-kKZ9V5-kKXbJ8-kKZweY-kKXgkp-kKWX6D-kKXhXv-kKYQiL-kKYN1u-kKX5vM-kKXxCn-kKXtrM-kKYM75-kKWRcK-kTP4tV-kTQ2iG-m2NaTJ-m2UWuz-mo8PE7-m2UpdC-m2VD39-m2VrrT-m2QihY-mo8XkC-m2XAej-m2PbdQ-m2Mjoa-m2LYtx)

20年前の1994年4月7日、アフリカ中部ルワンダで、多数派のフツ族と少数派のツチ族の対立から約100日の間に80万~100万人が虐殺されるというジェノサイドが起きました。

それまで隣人として暮らしていた者同士が殺しあうという点で、人間の心の奥に潜むものを感じさせる悲劇でもあります。
ただ、住民同士がやみくもに殺しあった訳ではなく、このジェノサイドを準備し、扇動した勢力が存在します。

“ルワンダ虐殺はしばしば無知蒙昧な一般の住民がラジオの煽動によってマチェーテ(なた)やクワなどの身近な武器を用いて隣人のツチを虐殺したというイメージで語られているが、これは適切な見解とは言い難い。ジェノサイドへ至るまでには、1990年以降の煽動的なメディアプロパガンダや民兵組織の結成、銃火器の供給、虐殺対象のリストアップなど、国家権力側による非常に周到な準備が行われていた。”【ウィキペディア】

また、現地の人の「20年前、誰も止めてくれなかったのになぜ今、話を聞きたいのか」【4月6日 朝日】という言葉に見られるように、大虐殺を傍観するだけであった国際社会、国連PKOの在り方も問われた出来事でした。

虐殺から20年ということで、いくつかの記事がみられますが、どれもルワンダで今を生きる人々の苦悩、トラウマ、不安、明日への期待・・・などを切実に感じさせます。

****隣人は家族のかたき、大虐殺から20年 ルワンダ 和解への道*****
ルワンダのフレデリック・カジグウェモさん宅の周辺には、同国農村部の典型的な風景が広がっている。粗末な日よけの下で牛が草をはみ、キャッサバが天日に干され、女性たちが籠を編むそばで子どもたちが遊んでいる。

しかし、20年前の大虐殺で80万人の命が奪われたこの国に暮らすカジグウェモさんには、典型とは外れる点が1つある。過去に近隣住民を殺害した経験があるということだ。

「融和の村」に住むカジグウェモさんの妻は、隣に住むセシル・ムカガサナさんと一緒に籠を編んでいる。
カジグウェモさんが殺したのは、他でもないこのムカガサナさんの家族だった。
この「和解の村」では、許すことさえできるなら無料で住宅提供を受けられる。

ムカガサナさんは軒先に腰掛け、草に色とりどりの糸を結び付けては、丸く編んで籠にしていく。珍しい物を好む観光客用の土産物だ。ムカガサナさんは語る。「ここに住むのは最初はつらかった、この女の人の夫が私の家族を殺す手助けをしたのだから」

■「罪の意識は感じなかった」
かつてルワンダでは、異なる民族同士も比較的平和に共存し、民族が異なる男女間の結婚も珍しくはなかった。

しかしカジグウェモさんによると、「政府がフツ人に対し、ツチ人が再びフツ人を支配しようともくろんでいるため、ツチ人を殺して財産を奪わなければならないと教えていた」という。
「政府はわれわれに銃を与え、殺し方を教えた」が、カジグウェモさんの一団は銃ではなく「なたとやりを使って」7人を殺害した。

「罪の意識は感じなかった。政府の期待に沿ったのだから誇りに思った。だからもう一度やった」。「殺しがうまい者」もいたというカジグウェモさんの一団は、2度目の襲撃でムカガサナさんの家族2人をおので斬り殺した。

ルワンダ大虐殺の後、従来の裁判所では対応しきれず、伝統的な地域共同体での「ガチャチャ」裁判が開かれ、10年以上かけて200万人が裁きを受けた。カジグウェモさんもその1人で、殺人行為を認めて謝罪したため減刑された。

「謝る前は心が落ち着かなかった。ふとした時に自分が殺した人たちの顔が目の前に浮かぶこともあった。でも今は見えなくなった」

■虐殺のトラウマ 次世代にも
レイプ被害者やその子どもたち、また殺人犯の子らへのカウンセリング活動を行う団体「ベスト・ホープ・ルワンダ」を設立したデュドネ・ガヒジガンザ氏は、ガチャチャ裁判の不十分さを指摘している。
「確かにガチャチャは正義をもたらすことに寄与し、犯罪者を裁きにかけてきた。しかしわれわれには和解が必要だ」

政府の平和和解委員会のジャンバティスト・ハビャリマナ事務総長も、「大虐殺の後には、30万人の孤児と夫を失った50万人の女性が残された」として、「これらの人々が普通の生活を取り戻すのは容易ではない」と認めている。

ベスティン・ムカンダヒロさんは、首都キガリ郊外のバナナの木が立ち並ぶ路地に多数見られるれんが造りの家の1軒に暮らしている。性的暴行を受けて妊娠し生まれた娘について心の折り合いをつけるのに、何年もかかったという。

13歳でレイプされ妊娠が発覚。自殺することもおなかの子を殺すこともできないと覚悟したムカンダヒロさんだったが、「娘が生まれてみると、この子とは暮らせないと思った。顔を見るとレイプのことを思い出してしまうから」
その上近所の人たちからは、「いまわしい子」を連れてきたとして「売春婦のような」扱いを受けたという。

市民を対象にしグループカウンセリングに力を入れた和解プログラムを通じて、世間に広まった汚名こそすすがれてきたものの、自らの過去を告白することで、大虐殺の何年も後に生まれた人々が大虐殺の追体験を強いられるという問題が生じている。

ガヒジガンザ氏は、「トラウマが現世代から次の世代に受け継がれかねない」と警告している。

■今も残る悲しみ
ルワンダは100日間に及ぶ大虐殺が始まったあの日から、今月7日で20年を迎える。しかし人々の頭上には今も恐怖と悲しみの暗雲が垂れ込め、いつもどこか心を解放しきれずにいる。
今日では出身民族を問われることはなくなり、身分証明書にもその記載はない。

1994年のおぞましい出来事は「ツチ大虐殺」と呼ばれている。その呼称の陰で、フツ人の穏健派も殺されたことは忘れられ、当時反体制派だったポール・カガメ現大統領が政権を掌握する際にどれほどおびただしい血が流されたかも曖昧になっている。

19歳のイベットさんは、「私たちは民族のことは話さない。話すのは昔の事実だけ」として、「私たちの世代は、過去に起こったことを絶対に二度と起こさないよう、多大な努力をしなければならない」と話している。【4月6日 AFP】
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****ルワンダ、苦しみ抱いて 虐殺から20年****
アフリカ中部・ルワンダ南部の小さな町ニャマタ。美しい丘が連なり、パピルスが茂る湿地が広がる。中心部の小さな教会に、血で染まった祭壇の布や衣服が保存されていた。20年前、ここに避難したツチ族の住民約2千人が殺害された。(中略)

教会の近くに住む女性シャンタルさん(46)は、自分の集落が民兵の襲撃を受けた4月7日の朝を鮮明に覚えている。前日、フツ族の大統領が乗った飛行機が撃墜されたのを機にツチ族への虐殺が始まった。ラジオが盛んに殺害を促していた。

シャンタルさんは「20年前、誰も止めてくれなかったのになぜ今、話を聞きたいのか」と記者に言った。「悪魔が降りてきたとしか思えない」。少しずつ語り始めた。

シャンタルさんは家族と離れ、2カ月前に生まれた双子を抱えて教会に逃げ、近くの湿地で民兵に捕まった。双子の一人は目の前で釘のついたこん棒で殴られて死んだ。もう一人は一緒に逃げた9歳の妹が抱え込んで守った。妹は頭上からナタで切られて死んだ。

シャンタルさんは、10人以上の民兵から次々と性的暴力を受けた後、全身を切られた。暴行の末に妊娠し、翌年に女の子が生まれた。夫は「どういうことがあっても自分の子だ」と言った。現地語で「父の子」を意味する「ウワセ」と名付けた。

19歳になった学生ウワセさんは6年前、出生の経緯を聞いた。「何度も死のうと思った。しかし、両親の愛情を考えると前に進もうと考えた」という。

「アフリカの奇跡」と言われる経済成長を遂げるルワンダ。時を経てもなお、人々の心に傷が深く残っている。【4月6日 朝日】
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****元民兵「政府腐ればまた起きる」 ルワンダ虐殺20年****
キガリ郊外に住むフツ族のエマニュエルさん(44)は20年前の4月、虐殺が始まると民兵組織インテラハムウェに入った。2日間の訓練後、自動小銃を手にツチ族住民の襲撃に加わった。

「やらなければ自分がやられていた」。ツチ族だけでなく、穏健派のフツ族住民も殺されていたからだ。
検問で、赤十字のトラックに乗せられた遺体の下に隠れている男女3人を見つけた。ツチ族を示す身分証を持っていた。「上官から『ゴキブリは片付けろ』と言われた。撃ち殺すしかなかった」。3人が命乞いをする姿や声が、忘れられない。

約3カ月後、少数派のツチ族が主体のルワンダ愛国戦線(RPF)が全土を制圧すると、ザイール(現コンゴ民主共和国)の難民キャンプに逃げ込んだ。2年後に帰国すると逮捕され、投獄。2005年に釈放された。

「殺害を後悔している。だが、政府や社会が仕向けたら一般人は逆らうことはできない。政府が腐れば(虐殺は)またいつでも起きる」

キガリに住む運転手エリックさん(42)は、父親がフツ族で母親はツチ族。父親は虐殺に協力しなかったため処刑された。「当時の苦い思いは、皆が持ち続けている。今は皆、国の発展に忙しい。だが、政治次第でまた起こらないとは言えない」と話す。

旅行業のサガフツさん(50)はツチ族で、両親を含む親類83人が殺された。医師だった父はけが人の手当てのため病院へ行く途中、知り合いに殺された。自身は建設中のトイレ用タンクに2カ月余り隠れて生き延びた。

「民族は憎まない。だが、家族を殺した者を許す気持ちにはまだなれない」。家族の遺影は携帯に保存している。
「虐殺を目の当たりにした我々の世代は病んでしまっている。しかし前に進もうとしなければ、トラウマに押しつぶされて気が狂ってしまう」。長女(21)が祖父の遺志を継いでフランスの大学で医学を学ぶ。「次の世代が希望の未来をつくってくれる」と語った。

 ■進む経済発展、続く強権政治
1994年7月、RPFが全土を掌握することで虐殺は終わった。以来、RPFは政権の座にあり、司令官だったカガメ氏が現大統領を務める。

民族融和を進める一方、外国からの投資環境を整備し、年率8%前後の高い経済成長で急速に復興している。カガメ氏は「CEO大統領」とも言われ、小中学生にパソコンを配る「1人1台」政策も導入した。欧米諸国は「アフリカの奇跡」と称賛する。

99年に発足した「国民和解委員会」の報道担当者は「強いリーダーシップ、政治的意志が民族間の融和の成功の鍵となった。同じ『ルワンダ人』の意識が根付いてきている。国内の至る所に警察官や協力者がいて、紛争の芽を見逃さない」と話した。

一方で、紛争再燃への危惧を背景に、野党勢力への弾圧が指摘され、言論統制によってカガメ氏は「強権的だ」との声も出ている。

地元新聞社の40代の幹部は「例えば政府の批判記事を書いたら『民族分離主義者』として逮捕される。批判記事を書ける記者は逮捕されたか、国外に逃げた」と話す。「融和にはもちろん賛成だが、もはや民族の問題ではなくなっている。政府に都合の悪い調査報道は命に関わる」と語った。

野党「ルワンダ民主緑の党」のフランク・ハビネザ代表はRPFの党員だったが、強権的な方針に疑問を感じて離れた。「虐殺後の1年間は強権的な体制はやむを得なかったと思う。だが今なお、ルワンダには民主主義、表現の自由はない」と訴える。

09年に政党を立ち上げ、翌年に副代表が何者かに暗殺された。自身も危険を感じ2年間、国外に逃れた。
「民主主義なしに欧米が奇跡と呼ぶ発展の持続性はない」

 ■アフリカ、相次ぐ住民対立
ルワンダと同様の悲劇は、今なおアフリカ各地で続いている。
中央アフリカ共和国では昨年3月に反政府勢力が首都を制圧し、無法状態に陥った。イスラム教徒とキリスト教徒の間で殺害、略奪、性的暴行が横行した。

だが、資源開発も進まないこの国は耳目を集めてこなかった。テロ組織の温床になることを恐れた米仏を中心に議論が深まり、昨年12月にようやく、国連安保理が軍事介入を認める決議を採択した。

また、南スーダンでは政治的な対立から民族感情があおられ、昨年12月から2大民族間の紛争に発展した。100万人以上が国内外に逃れ、和平の道筋は見えない。駐留する国連部隊の兵士や住民が基地内で殺害される事件も起きている。【4月6日 朝日】
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上記記事にもあるように、ルワンダはカガメ大統領のもとで民族融和と「アフリカの奇跡」とも称賛される経済成長を実現し、国内外から高い評価を得ています。

ただ、反対を許さない強権的との批判もあります。
また、隣国コンゴにおけるツチ系反政府勢力への関与も疑われています。

****南アフリカ:亡命のルワンダ元高官襲撃が続発****
アフリカ中部ルワンダから南アフリカに亡命したルワンダ当局元高官を狙った襲撃とみられる事件がヨハネスブルクで相次ぎ、ルワンダ政府の関与が取りざたされる事態となっている。

南ア政府は先週、在南アのルワンダ外交官らを国外退去処分とした。ラデベ法相は12日、ルワンダの外交官がこれらの事件に関与したとの見方を示唆し、「断固たる警告を送る」と強い口調でルワンダを非難した。

今年1月、ヨハネスブルクの高級ホテルの客室で、ルワンダ情報機関の元トップで南アに亡命したパトリック・カレゲヤ氏が窒息死した状態で発見された。殺害されたとの見方が強い。

さらに今月になって、ルワンダ軍の元参謀長で亡命中のカユンバ・ニャムワサ氏のヨハネスブルク市内の自宅が武装集団に襲撃された。ニャムワサ氏と家族は当時留守で無事だった。同氏の殺害を狙ったとみられる襲撃は3回目で、2010年には腹部を銃で撃たれている。

両氏とも以前はカガメ・ルワンダ大統領の側近として知られたが、後に政治手法などを批判し、南アに亡命した。

ルワンダは1994年、多数派のフツ人が少数派のツチ人ら約80万人を虐殺。その後、カガメ氏らが率いるツチ人主体の軍事組織が情勢を沈静化させた。民族和解の進展と経済成長の実現という業績で国際的に高く評価されるカガメ氏だが、一方で野党やメディアへの弾圧も指摘され、強権支配と批判されている。

南ア政府は先週、ルワンダ外交官3人などを国外退去させ、ルワンダは報復として在ルワンダの南ア外交官6人を追放した。ルワンダ政府はいずれの事件についても関与を強く否定している。【3月15日 毎日】
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欧州極右  フランス:統一地方選挙で国民戦線(FN)躍進  オランダ:過激発言で極右党首へ批判

2014-04-05 22:10:01 | 欧州情勢

(3月23日 マリーヌ・ルペン党首(中央女性) 統一地方選挙の投票に向かうところではないでしょうか。 “flickr”より By Rédaction Nice-Matin https://www.flickr.com/photos/nice-matin/13352774195/in/photolist-mp8yJF-mn9anE-mnaN5f-mKCf34-moBHBZ-mqeX9n-mkWsyK)

極右政党に世論が「慣れてきた」側面も
先月に行われたフランス統一地方選挙では、支持率が25%という近年の歴代大統領としては最低水準にあるオランド大統領の不人気を反映して、与党・社会党は長年にわたり地盤だった155の自治体で党所属の首長が敗れるという大敗を喫しました。

この結果を受け、オランド大統領は31日にテレビ出演し「国民の不満と失望を理解した」と述べたうえで、「立て直しが不可欠」として新首相に党内右派のバルス氏(51)を任命しました。

“(バルス新首相は)企業の負担軽減など右派的経済政策を加速させる意向だが、党内左派や連立を組む「欧州エコロジー・緑の党」からは反発が出ている”【4月1日 毎日】

左派・社会党の退潮を埋める形で右派・国民運動連合は今回統一地方選挙では善戦しましたが、“2012年の大統領選でサルコジ前大統領が敗れてから、政策の方向性などを巡り党内はばらばらになっている”【3月25日付 英フィナンシャル・タイムズ紙】状態で、とても社会党を追い落とすような勢いはありません。

社会党の敗退は選挙前から予想されていたところですが、もうひとつ予想されていたのがマリーヌ・ルペン党首率いる極右政党・国民戦線の台頭です。

最近の欧州における保守化・極右勢力の台頭という現象の中核にも位置する同党ですが、不人気な社会党、ばらばら状態の国民運動連合という二大政党の低迷の間隙を縫って、予想どおりの躍進を遂げています。

****極右政党をやむなく受け入れるフランス*****
先月30日に決選投票が行われたフランスの統一地方選挙で、極右政党・国民戦線(FN)が歴史的躍進を遂げたことについて専門家らは、仏国民の多くが依然、FNに敵対的でありながらも、やむなくこの反移民政党を主流に受け入れつつあることの表れだと分析している。

約3万6000の自治体の首長と議員を選ぶこの選挙で、FNは計1400議席超を獲得し、少なくとも11の自治体で首長に選出された。南仏のフレジュスには26歳の同党員の首長も誕生した。

かつてない成果で、一時は内部分裂もあり、08年の統一地方選では約60議席しか獲得できなかった同党の今後にとって大きな転換点となるだろう。

■浸透した政党としての存在感
この結果を受けて、FN党員が市長に選出されたボーケール市に対し、ベルギーの都市が即刻、姉妹都市関係を解消するなど、国外では激しい怒りが巻き起こっているが、当のフランス国民はまったくといっていいほどショックを示していない。

日刊紙パリジャンが先月31日に掲載した世論調査では、回答者の60%近くがFNを主流派政党とみなすべきだと考えている一方で、FNから首長や地方議員が選出されることは行き過ぎで「悪いこと」だと62%が考える、矛盾した結果が出た。

極右に詳しい専門家のジャンイブ・カミュ氏は、創始者のジャンマリ・ルペン氏が党首だったころには、ナチス・ドイツによるユダヤ人などの大量虐殺、ホロコーストの存在を繰り返し否定し、人種的憎悪をあらわにするその言動からタブー視されていた同党の「脱邪悪」を、娘のマリーヌ・ルペン現党首が2011年の就任以来うまく進めてきたと指摘する。

さらにカミュ氏は、「仏国民の大半は、FNも政党とみなすべきだと考える一方で、不信感も根強く持っている。仏国民の大多数が当分、FN政権を望んではいないことは明白だ」と語った。

大方の見方では、FNの躍進を招いたのは、フランソワ・オランド大統領の社会党政権に対する世論の不満に加え、高い失業率や低成長、国内治安といった問題を解決する力がないとみなされている既存の主流派政党に対する漠然とした怒りだ。

しかし95年や97年の地方選の際にFNが1200議席を獲得し、4自治体の首長に当選したときの衝撃と比べられるが、今回は過去ほどの驚きは感じられない。

仏国内の衝撃が少ないのは、父親のルペン氏のころとは党のイメージが変わったからだと、仏世論研究所(IFOP)のジェローム・フルケ氏もいう。

その上、当時からは20年が経ち、世論が「慣れてきた」側面もあると指摘する。「日々の積み重ねで受容されてきた感がある。党の横顔も以前よりずっと柔らかく、候補たちも短気ではない」

■「脱邪悪」は本当か?
マリーヌ・ルペン党首になり、FNでは、反ユダヤ的発言や人種差別的発言を捉えられた人物は誰でも徹底的に党から追放してきた。例えば10月には地方議会選候補が、黒人である仏法相をサルにたとえたため、この候補を除外した。

しかし、創始者ジャンマリ・ルペン氏が練り上げた党の方針のうち、最も物議を醸す部分は今も厳然としてある。

南仏ビトロールでは97年に就任したFNの市長が「国籍特恵」を導入しようとした。
これは両親のうち少なくとも1人がフランス国籍を有する場合、その家族に子どもが誕生するたびに770ユーロ(約11万円)を支給する案だった。マリーヌ・ルペン党首はこれは「誤りだった」と認めているが、「国籍特恵」の呼び方を変えた「国籍優先度」は、現在もFNの主要政策の一つだ。

また、フランス国内にいる移民の下に直近の家族が身を寄せることを認める現行法の改定も依然掲げているが、これは国際家族法に反する立場だ。

さらに新たな移民への福祉給付や医療保険の制限も提案しており、主流右派の有力者たちからも賛同を得ている。【4月1日 AFP】
********************

与党・社会党は勢いづく極右・国民戦線(FN)を封じる目的で、決選投票における最大野党・国民運動連合(UMP)との共倒れを避けるため決選投票から撤退する「共和国戦線」と呼ばれる手法も一部自治体でとりましたが、UMPの協力を得られず、大きな効果は出ませんでした。

こうした国民戦線(FN)の躍進については、“過度に警戒する必要はない。今回の地方選の対象となった3万7000の自治体のうち、国民戦線が候補者を擁立したのは600の選挙区にとどまった。国を代表する勢力にはほど遠い。だが、同党は支持基盤である地中海沿岸だけでなく、ほかの自治体でも支持を集めつつあり、5月の欧州議会選での躍進も現実味を帯びてきた。そうなれば、左派と右派からなる既存の二大政党制を打破するというルペン氏の主張が実現することになる。”【3月25日付 英フィナンシャル・タイムズ紙】との評価があります。

“過度に警戒する必要はない”とのことですが、逆に言えば、わずか600の選挙区での候補者擁立だけでこれだけの成果ですから、“反EU”が議論の中心となる5月の欧州議会選では、衝撃的な勝利をおさめることが予想されます。
事前の世論調査では二大政党を抑える勢いを示しています。

更にその先には、2017年の大統領選があります。マリーヌ・ルペン党首は大統領を狙える位置を固めつつあります。

より過激な発言を行うことで、これまでの過激発言がいつのまにか“許容範囲”に
極右勢力が台頭している欧州にあって、フランス・国民戦線(FN)と並んでその中核を形成しているのがオランダの極右政党・自由党です。
両党は13年11月、欧州議会選での共闘を発表しています。

そのオランダの極右政党・自由党のヘールト・ウィルダース党首の方は行き過ぎた“移民憎悪発言”で批判の渦中にあります。

****オランダ極右党首が移民憎悪発言で窮地に****
オランダで支持を拡大している反イスラム主義の極右政治家ヘールト・ウィルダース。
彼が率いる自由党は5月に行われる欧州議会選挙でも議席数の増加が予想されていたが、ちょっと調子に乗り過ぎたようだ。

ウィルダースは先月半ばにパークで反移民集会を開催。集まった支持者たちに向かって、「オランダに住むモロッコ人は多いほうがいいか、少ないほうがいいか」と叫んだ。その問い掛けに「少ないほうだ、少ないほうだ」と繰り返す群衆。すると、ウィルダー・スはにんまりしながら応えた。「心配はいらない。私たちが対処するから」

この様子がYouTubeで流れると、すぐにドイツのメディアはナチスのプロパガンダ集会と同じだと批判。ウィルダースの支持率は急落し、自由党の幹部たちは離党届を提出した。
その中には、欧州議会で自由党の代表を務める議員もいる。

オランダの移民は、モロッコをはじめトルコやインドネシアの出身者がその大多数を占める。移民の反発を買ったウィルダースは、すべてのモロッコ人のことを言ったのではない、犯罪歴がある人たちだけだと、苦しい言い訳を並べた。【4月8日号 Newsweek日本版】
*******************

問題発言があった集会は、デン・ハーグ市とアルメール市の市議会選後に行われたもので、両選挙で上々の結果を出したウィルダース党首は上機嫌でした。

移民排斥的な主張が強いイメージがあるウィルダース党首ですから、“モロッコ人は出ていけ”ぐらいの発言は普通に行っているのでは・・・とも思ったのですが、これまではさすがにそこまでは公言していなかったようです。

****ウィルダース議員に対する被害届で警察署に行列*****
オランダ東部にあるナイメーヘン市では今朝数百人のモロッコ系オランダ人、そして市長や市議会議員が警察へ被害届を出すために行列した。

被害届は先の市議会選挙で「オランダからモロッコ人を減らそう」という趣旨のスピーチを行った極右政治家PVV党のウィルダース氏に対するもの。

被害届運動の先頭に立ったのは、市長を始めナイメーヘン大学の教職員たちである。呼びかけはフェイスブックを通して行われた。「世の中には見てみないふりをできないことがある。ウィルダースのヘイトスピーチはまさにそれである。」と、ブルルス市長は群衆の前で演説し喝采を浴びた。

さらにナイメーヘン大学のグループは検察に対し、今後全国的に被害届が出されるはずなので、何らかの措置をとるべき」と要求している。(後略)http://www.portfolio.nl/bazaar/home/show/372*********************

自由党離脱者も出るなかで、ウィルダース党首は「全く後悔はしていない。発言を撤回するつもりはないし、詫びるつもりもない」と声明を出しています。

苦境にある・・・と報じられているウィルダース党首ですが、まったく異なる見方もあります。

“ヘルト・ウィルダース論争 3  2014/03/23 by studiofrog”(http://polderpress.com/2014/03/23/%e3%83%98%e3%83%ab%e3%83%88%e3%83%bb%e3%82%a6%e3%82%a3%e3%83%ab%e3%83%80%e3%83%bc%e3%82%b9%e8%ab%96%e4%ba%89%e3%80%80%ef%bc%93/)に、そのあたりが論じられています。

以下のような内容です。

***********
ウィルダース党首の過激発言は毎度のことで、世間の注目を集め、存在を主張するためのものである。その意味で、今回騒動は彼の狙いどおりになっている。

また、より過激な発言を行うことで、これまでの過激発言がいつのまにか“許容範囲”と見なされる現象も見られる。

今回、「犯罪を犯すモロッコ系は出て行けというならまだしも、ウィルダースは今、モロッコ人全般を攻撃している」と反論する人が大勢出てきているが、そもそも「犯罪を犯すモロッコ系は出て行けという」という発言も、これまでは社会的には認められていなかったものである。
************

より過激な発言を行うことで、これまでの過激発言がいつのまにか“許容範囲”と見なされるというのは、興味深いところです。
一連の過激発言が世論の本音に近いところがあるため、繰り返されているうちに本音をむき出しにすることへの抵抗感が薄れていくのでしょう。

しかし、むき出しの本音とはエゴであり、エゴだけでいいのか?という問題もあります。苦しくても堅持すべき建前や理想もあるのではないでしょうか?

フランスでは、マリーヌ・ルペン党首は過激な極右的言動を抑制することで、よりソフトに“世論が(極右政党・国民戦線(FN)に対して)「慣れてきた」側面”を引き出しています。
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ウクライナ  「国家存亡の危機」にあるウクライナ新政権に山積する課題

2014-04-04 23:43:43 | 欧州情勢

(3月31日 クリミアのSimferopol近郊のGvardeyskoe駅 ロシア戦車T-72 ロシアのプーチン大統領はメルケル独首相と電話会談し、軍の一部撤収を命じたことを伝えたそうですが・・・・ 【3月31日 ブルームバーグ】)

財政再建法案に出席議員の3分の1近くが棄権
ウクライナのクリミアをロシアが編入したことについては、“力があれば何をしても・・・”といったロシアの対応の不当性、こうした状況を許した欧米側の対抗のまずさ等々はあるものの、現実問題としては現状変更は当面望めない状況にあります。

現在の焦点は、ロシアがウクライナ東部やモルドバ、バルト三国など、ロシア系住民が多い地域へ更に介入を拡大することがあるのか、ロシアと欧米の関係が“新冷戦”とも言われるような関係にまで悪化するのかといった問題にあり、ロシアとアメリカ・欧州が互いに圧力をかけあうなかで緊張が続いています。

ただ、ウクライナについて言えば、ウクライナ自身がこの危機にどのように対処するかが問題の中心であることは言うまでもありません。

山積するウクライナの課題のひとつが、破綻寸前にある財政をどのように立て直すかという問題です。
財政再建のためには、他の国々でも見られたように国民の痛みを伴う改革が必要となります。
欧米やIMFからの支援も、そうした改革を前提としたものになります。

****ウクライナ、内憂外患 与党分裂の恐れ/ロシアの圧力苦慮****
2月末に発足したウクライナ新政権が正念場を迎えている。

政権の座についてからの最大の決断は、国内で負担増を求めるという不人気策。
ロシアによるクリミア半島併合で「国家存亡の危機」にもある。
ロシアにさらなる介入の口実とされかねない過激派への対策を、対外的にアピールする必要にも迫られている。
 
3月末、ウクライナ議会は揺れた。重要法案の採決で、与党を含め、出席議員の3分の1近くの120人もが棄権したのだ。法案が「一般家庭へのガス価格大幅値上げ」「公務員の1割削減」など、国民に負担増を求め、歳出カットを大きく進める内容だったからだ。

新政権にまずのしかかったのは、ヤヌコビッチ前政権が残した「700億ドル(約7・3兆円)超の政府債務」だった。

お金を返せなくなる債務不履行(デフォルト)を避けるため、国際通貨基金(IMF)、欧州連合(EU)、米国などから、計270億ドル(約2・8兆円)の緊急支援を受ける必要があった。

支援の条件として、緊縮策の導入を求められた新政権は、要求をのむしかなかった。法案は異例の2度目の採決に持ち込まれ、ようやく可決された。(後略)【4月4日 朝日】
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ロシアは天然ガス価格値上げで圧力を強めており、ウクライナ財政は更に厳しい状況に追い込まれています。
第三者的に見れば、ウクライナ財政が破綻した場合、ウクライナ向けの融資やウクライナ債券を多く抱えるロシアにとっても大きな打撃となるはずですが、現在のような“力比べ”の状態ではなかなかそうした立場からのブレーキがかかりにくいようでもあります。

****露、ウクライナ向け天然ガス価格を再値上げへ****
ロシアの国営天然ガス企業体ガスプロムは3日、ウクライナ向け天然ガスの価格を4月から1000立方メートルあたり485ドル(約5万300円)に引き上げると明らかにした。

1日の値上げに次ぐ再値上げで、価格は従来の268・5ドルから約80%も上がった。

ロイター通信によると、欧州連合(EU)向け価格の約370ドルも上回り、ロシアは親欧米路線を押し出すウクライナ暫定政府に対する経済的な圧力をさらに強めた形だ。

再値上げは、露政府がウクライナ向け天然ガスに対する免税を停止したことを受けた措置。
露首相府によると、メドベージェフ首相は3日、ガスプロムのミレル社長との会談で、クリミア半島での黒海艦隊駐留と引き換えに免税を約束した2010年の両国合意について「(クリミア編入で)合意の法的根拠がなくなった」と述べた。【4月4日 読売】
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痛みを伴う改革、緊縮策が国民の支持を得にくいことは、ギリシャなどの事例でも明らかです。
特に、前政権を倒した直後だけに、“政変でかえって生活が苦しくなった。何のための政変だったのか?”といった批判にもさらされる国民に不人気な政策はとりにくいところです。

しかし、避けて通れない問題でもあり、支援国側の慎重な対応も必要とされます。

****米EU:ウクライナへのガス備蓄支援で合意****
ケリー米国務長官とアシュトン外務・安全保障政策上級代表(外相)ら欧州連合(EU)代表は2日、ブリュッセルで米EUエネルギー閣僚会合を開き、両者がウクライナのエネルギー安全保障を「強く支援する」ことで合意した。

ガス供給をロシアに頼るウクライナにEU側から天然ガスを送るルートを開き、備蓄を進める対策を支える。ロシアは1日、ウクライナ向けガスを約40%値上げするなど圧力を強めており、米EUはこれに対抗する意思を明確にした。(中略)

欧州向け天然ガスの一部はロシアからウクライナを通り、EU諸国に流れているが、これと逆方向のルートを設置。ロシアによる突然のガス送付停止に備え、ウクライナ国内の備蓄を増やす。

さらにエネルギー価格の補助を停止するなど、ウクライナの経済改革を支援する。米EUは「ウクライナを欧州のエネルギー市場に戦略的に統合させる」ことを確認した。(後略)【4月2日 毎日】
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過激派「右派セクター」へ武装解除命令
ウクライナが抱える2番目の問題は、冒頭朝日記事にもあるように“ロシアにさらなる介入の口実とされかねない過激派への対策”です。

現状では、ロシアも更なる国際関係緊張を招くウクライナ東部への直接的な介入は考えていないとは思いますが、ウクライナ国内の混乱でロシア系住民が危険にさらされるような事態になれば、ロシア・プーチン政権も引くに引けない状況にもなります。

****新政権、極右グループ摘発*****
いま、新政権が特に苦慮しているのは「過激派」との距離感だ。

もともと、現在の3与党は、市民によるヤヌコビッチ前政権への反対運動を支援。市民運動との連携が政権の基盤となった。

だが反対運動は、最終場面で一部が過激化。ロシアは「過激派からロシア系住民を守る」として介入を正当化する。欧米も懸念を深めているだけに、武装闘争を唱える「過激派」は新政権には悩ましい存在だ。

新政権は懸念の声に押される形で、極右グループ「右派セクター」の摘発に乗り出した。過激派の中心組織とみているためだ。

警察は司法職員への暴行容疑で指名手配中の同グループ幹部を拘束しようとして抵抗され、射殺。これに反発した右派セクターの約1500人が3月27日夜、緊縮策を可決した直後の議会を包囲する事態に発展し、新たな火種になりつつある。(後略)【4月4日 朝日】
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過激派への強い姿勢は、ロシア介入の口実を与えないための他、欧米からの経済的・政治的支援を固めるためにも必要とされています。

「右派セクター」の指導者ヤロシ氏は、5月の大統領選に名乗りを上げています。

ロシア“連邦化”要求 「国家の一体性」に必要とされる東部ロシア系住民の信頼回復
5月25日に予定される大統領選については、西部や中部を基盤とする親欧米派のポロシェンコ議員(48)とティモシェンコ元首相(53)が決選投票に進む展開が有力視されています。

ウクライナが抱える最重要かつ困難な問題は、東部のロシア系住民との和解です。
ロシアは“連邦化”を提案して圧力をかけていますが、欧米側は連邦制は国家分裂につながるとして反発しています。

****ウクライナ情勢「本土侵攻の意図なし、連邦化を」 露外相****
ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は29日、国営テレビのインタビューで、ロシア軍をウクライナ本土に進めてもロシアの利益にはならず、ロシア政府としてそのようなことを命じる意図は全くないと述べた。クリミア半島を編入したロシアだが、ウクライナ本土には侵攻しない方針を強く打ち出した形だ。

ラブロフ氏はまた、ウクライナ情勢をめぐりロシアと欧米諸国の立場の違いは小さくなってきており、ロシアと欧米が接触した結果、最近は「ウクライナ側にも提示できるような共同計画」の概要がまとまりつつあると述べた。

ラブロフ氏は「率直に言って、われわれには連邦化以外にウクライナ国家が進むべき道は見えない」と述べ、ロシア政府はウクライナが国内の各地域に一定の自治権を持たせて連邦化することを最優先にしていることを明らかにし、欧米諸国もこの構想に耳を傾けていると述べた。

その一方でラブロフ氏は、ウクライナの新憲法はウクライナがロシアと欧米の間で中立な国となることを明確に定める必要があると指摘し、今後もウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟はあってはならないという考えを示した。(後略)【3月29日 AFP】
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****ウクライナ情勢:米、「連邦化」提案に警戒…米露外相会談****
米政府は30日の米露外相会談でロシアがウクライナの「連邦化」を提案したことに警戒を強めている。ウクライナが事実上の「分裂国家」となれば、長期的な紛争の火だねとなりかねないためだ。(中略)

オバマ政権は、ウクライナのロシア系住民に対する言語や教育など行政上の一定の配慮を容認しているが、連邦制については「分裂につながる」と反対しているウクライナ新政権と認識を共有しているとみられる。(後略)【3月31日 毎日】
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この問題については、本格的な議論は大統領選挙後になります。

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対露姿勢では、ティモシェンコ氏がプーチン露大統領を「第1の敵」と名指しするなど最強硬だ。
ポロシェンコ氏も東部の権限強化につながる連邦制の導入には否定的とみられており、現時点では親露派のドプキン氏も「国家の一体性」を重視すると述べている。

31日付の露有力経済紙、ベドモスチは「連邦制に関するウクライナ政治家の真剣な議論は選挙後にのみ可能だろう」とする露専門家の見解を伝えた。【4月2日 産経】
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財政問題、国内「過激派」対策、東部ロシア系住民への対応・・・・どのひとつの対応を誤っても国内混乱を招き、ひいてはロシアの更なる介入を呼び込むことにもなります。

新大統領とウクライナ国民に課された課題は、困難なものばかりです。

「(5月の)大統領選後に誕生する政権が、東部のロシア系住民の信頼を回復できるよう、汚職撲滅や経済格差是正に取り組む必要がある」(「欧州評議会」元事務総長シュビマー氏)
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パレスチナ  イスラエルとの和平交渉期限が迫るなかで、状況はむしろ悪化

2014-04-03 21:46:08 | パレスチナ

(オバマ米大統領とアッバス議長(3月17日、ホワイトハウス)【3月18日 WSJ】)

オバマ大統領、双方首脳を説得するも・・・
昨年7月にアメリカの仲介で約3年ぶりに再開されたパレスチナ和平交渉は、今年4月末が合意期限とされています。

2月18日ブログ「パレスチナ ガザ地区の統制を失いつつあるハマス 和平交渉の先行き」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20140218)でも取り上げたように、若干の提案・交渉は行われてはいるものの、イスラエル・パレスチナ自治政府の主張の隔たりは大きく、具体的成果は出ていません。

オバマ大統領は3月3日にはイスラエル・ネタニヤフ首相、3月17日にはパレスチナ・アッバス議長と会談して説得を続けていますが、交渉は進展していません。

*****パレスチナ和平:米大統領、イスラエル首相に「決断」要求****
オバマ米大統領は(3月)3日、イスラエルのネタニヤフ首相とホワイトハウスで会談し、パレスチナとの和平交渉などを巡って意見交換した。

オバマ大統領は会談冒頭、記者団を前に「なんらかの困難な決断が必要だ」と述べ、イスラエル側に妥協を要求。一方、ネタニヤフ首相は「イスラエルは譲歩してきたが、パレスチナ側はそうではない」と述べ、パレスチナへの不信感と仲介役の米国への不満をあらわにした。

昨年7月に約3年ぶりに再開された和平交渉は、今年4月末が合意期限だ。オバマ大統領は17日にはパレスチナ自治政府のアッバス議長ともホワイトハウスで会談するが、双方の溝は大きく、仲介役のオバマ政権は困難な対応を迫られている。

オバマ大統領は「ユダヤ人国家イスラエルとパレスチナの2国家誕生の可能性は残されている。困難だが、双方の妥協が必要だ」と述べ、イスラエルにも妥協を促した。

ネタニヤフ首相は「イスラエルが交渉に入って20年経過したが、我々は前例のない譲歩を続けてきた」と反発。「アッバス議長はイスラエルの安全の必要性を真剣に考慮すべきだ」と、パレスチナに対する不信を語った。

交渉では(1)パレスチナ国家樹立後の安全保障問題(2)聖地エルサレムの帰属(3)パレスチナ難民の帰還(4)国境画定−−などが課題だが、ほぼすべての点で双方は対立し、両者の直接協議は昨年11月以降開かれていない。

オバマ政権は、合意期限後の交渉継続を視野に、最終合意に向けた指針を示す「枠組み」に合意するよう働きかけている。【3月4日 毎日】
*******************

****米大統領:パレスチナ支持 国境問題でアッバス議長と会談****
オバマ米大統領は17日、ホワイトハウスでパレスチナ自治政府のアッバス議長と中東和平交渉を巡って会談した。

冒頭、オバマ大統領は記者団に、争点の国境画定について、パレスチナ側の主張をほぼ支持する従来の姿勢を表明。一方、アッバス議長は聖地エルサレム帰属で独自の首都設置の意向を重ねて強調し、「エルサレムの不可分」を主張するイスラエルのネタニヤフ首相をけん制した。

オバマ大統領は3日にネタニヤフ首相とも会談。今年4月末の合意期限に向けて妥協点を探っているが、イスラエル、パレスチナ双方に大きな歩み寄りはなく、交渉継続に向けた枠組み構築に焦点が移っている。

オバマ大統領は国境問題について「(第3次中東戦争前の)1967年の境界に基づき一部の土地を交換する」ことで、「イスラエルの安全とパレスチナの主権を確実にすべきだ」と述べ、双方の妥協が必要と指摘した。

地元メディアによると、イスラエル側が大規模入植地など現在のパレスチナの10%程度をイスラエルに組み入れるよう求めているのに対し、パレスチナは67年以前の境界を基本に3%程度の土地交換に応じるとの方針で、隔たりは埋まっていない。仲介役の米国はパレスチナ側の主張を基本的に支持しているとされる。

一方、アッバス議長は記者団に、国境画定に関連し、「パレスチナは東エルサレムを首都とする独立国家を持てるようになる」と言及。エルサレムの全体的な統治権を主張するネタニヤフ首相を改めて批判した。【3月18日 毎日】
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互いに圧力をかけあう形で状況は悪化
交渉が進展しないなかで、パレスチナをめぐる情勢はむしろ悪化しています。

****パレスチナ:ガザ発ロケット弾65発 イスラエル軍も報復****
パレスチナ自治区ガザ地区から12日夕(日本時間13日未明)、イスラエル南部へ少なくとも65発のロケット弾が撃ち込まれた。

これに対しイスラエル軍は、ガザ地区南部を中心に36カ所を空爆し、砲撃も加えた。イスラエルとガザ地区の戦闘としては、2012年11月の衝突以降、最大規模となった。

イスラエル軍や地元メディアによると、ガザ地区に拠点を置くイスラム過激派組織イスラミック・ジハードが12日夜、ロケット弾攻撃を認めた。この組織は、ガザ地区を実効支配するハマスの軍事組織に次ぐ規模で、イランの支援を受ける。【3月13日 毎日】
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オバマ大統領の仲介にもかかわらず、交渉の期限が迫るなかで、歩み寄りどころか、互いに脅しをかけ合うような雰囲気にもなっています。

パレスチナ側が国連機関に加盟してイスラエルに国際的圧力をかける動きを見せれば、イスラエル側からも、交渉が失敗した場合には、イスラエルが一方的に国境線を画定するとの強硬姿勢も出ています。

****交渉失敗なら一方的撤退を」=前駐米イスラエル大使****
マイケル・オレン前駐米イスラエル大使は18日、時事通信のインタビューに応じ、4月末を期限とする中東和平交渉が失敗に終われば、「プランB(代替策)」を用意しなければならないと述べ、占領地ヨルダン川西岸から一方的に撤退し、パレスチナとの国境を画定することを検討すべきだと主張した。

一方的撤退による国境画定は、和平交渉を通じたパレスチナ問題の解決に背を向け、一部のユダヤ人入植地撤去など譲歩を最小限にすることで、イスラエルに有利な「解決策」を目指す戦略。パレスチナ側の反発は必至だ。

パレスチナ側は、交渉期限までに和平交渉が進展しなければ、国連機関に加盟し、国際社会による「国家承認」を目指してイスラエルの孤立化を図る方針を打ち出している。

これに対しオレン氏は、「パレスチナが国連外交というプランBを持つなら、われわれもプランBを持つべきだ」と強調。「できるだけ多くのイスラエル人を国境内に取り込む」と述べ、現在は国際法上違法とされる西岸のユダヤ人入植地の多くをイスラエル領に含む形で国境線を引き、正当な領土とすべきだとの考えを示した。【3月19日 時事】 
*****************

更に、イスラエル・パレスチナの間の信頼醸成措置の一環とされるパレスチナ囚人釈放をイスラエル側が見送ったことで、両者の関係は険悪になっています。

****イスラエル、パレスチナ26囚人の釈放見送り****
イスラエルは29日に予定されていたパレスチナ囚人26人の釈放を見送った。

囚人釈放は、2013年7月に再開された中東和平交渉の信頼醸成措置の一環で、今回の釈放は、4回に分けて行われるうちの最終分だった。

これまでに78人が釈放されているが、イスラエル国内では、釈放に反対する抗議活動が行われ、ダニー・ダノン副国防相は「実施されれば、辞任する」と表明していた。

見送りにより、パレスチナ側の反発は必至で、交渉の更なる停滞が懸念される。【3月29日 読売】
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イスラエル側の囚人釈放見送りへの対抗措置として、パレスチナ側は国際条約・規約への加盟申請を実行しています。

****国連に条約加盟文書提出=申請拡大を警告―パレスチナ****
国連報道官は2日、パレスチナ自治政府から13の国際条約や規約に加盟するための文書を受け取ったことを明らかにした。

アッバス自治政府議長は昨年7月の中東和平交渉再開の際、こうした加盟申請を控えると約束しており、イスラエルの反発が予想される。

アッバス議長は1日、3月末に予定されていたイスラエルによるパレスチナ人囚人の釈放が行われなかったことへの対抗措置として、加盟申請に踏み切る考えを示していた。

加盟申請の対象は、外交関係に関するウィーン条約や自由権規約など。このほか、ハーグ陸戦条約、武力紛争時の捕虜や文民保護などを規定した四つのジュネーブ条約についても、スイスとオランダの在パレスチナ代表にそれぞれ加盟文書を提出した。

イスラエルが警戒する国際刑事裁判所(ICC)への加盟申請は行われなかった。ヨルダン川西岸を占領するイスラエルは、戦争犯罪などを裁くICCへのパレスチナの加盟を最も警戒している。

自治政府のマンスール国連代表は記者会見で、イスラエルの対応などをにらみながら申請を拡大する可能性を警告した。【4月3日 時事】
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こうしたパレスチナ側の動きに、イスラエルのランダウ観光相は2日のイスラエル放送のインタビューで、「パレスチナは高い代償を払うだろう」と非難しています。

交渉期限が近づくなかで、具体的な合意が得られる状況にはなく、5月以降の交渉継続に向けた「枠組み」づくりができるかが焦点ですが、現段階の険悪な雰囲気ではそれすら困難なようにも見えます。

仮に今後、双方がアメリカの強い要請を受ける形で交渉継続に合意したとしても、実質的なところでの進展は期待できないのが実情です。

今回の交渉が始まった時点でも、成果が得られるとは誰も期待していませんでしたので、予想通りの展開と言えばそれまでですが、アメリカも交渉を呼びかけるだけで“芸がない”ように見えます。

アメリカ・オバマ政権としては、成果は得られなくても、交渉決裂でオバマ外交の“失敗”が明らかにならなければそれでいい・・・というところでしょうか。
“交渉失敗”の責任をとらされたくない・・・という点ではネタニヤフ・アッバス両氏も同じでしょう。
そういうところで、期待できない交渉が継続するということはありえます。
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ソマリア  アルシャバブ、再統合、そして「カート」

2014-04-02 22:41:39 | ソマリア

(カート宴会(イエメンでしょうか) 床に散らばっている植物がカート 膨らんだ頬にカートの葉っぱをため込んでいます。 “flickr”より By Phil Marion  https://www.flickr.com/photos/phil_marion/2557822440/in/photolist-4U2vuU-9JqkRu-9JHs4S-dAqan-aGdFip-8oAL5z-asgmjs-bvbwiX-8LkLz5-9fbiZA-2QEbmu-8Wv7n9-8Ws4fX-2QzHb8-dqcKHR-dqeDpm-dqefyj-dpLUtt-dqdd42-dqc9AY-dqcmea-dqck5B-dpLF62-dqdoVR-dqd2xD-dqeyMC-dpLDCv-dqdy2H-dqeCin-dqcMK7-dqevRL-dqdfG7-dqed15-dqddbf-dqd9uz-dpLXUE-dqdodh-dqdvv7-dpMjez-dqd4VY-dqcQ57-dpM2Fh-dqdCkR-dqdnoh-dqdt7t-dpM6e3-dqdKyD-dqe3yZ-dqdzmE-dqdFKB

ケニアで進むソマリア難民への締め付け
東アフリカ・ソマリアでは内戦が続き、隣国ケニアには約50万人の難民が流入していると言われています。
当然ながら、難民と同時に、ソマリアで内戦を戦っているイスラム原理主義勢力アルシャバブの影響もケニア国内に及んできます。
特に、ケニアはアルシャバブ掃討のためにソマリアに軍事介入していますので、アルシャバブによるテロ攻撃の標的ともなります。

アルシャバブによるケニア国内でのテロは、昨年9月に首都ナイロビの高級ショッピングモールで起きたものが世界の注目を集めましたが、それ以降もテロが続いています。

3月23日、ケニア南東部モンバサ近郊で武装集団が教会を襲撃して無差別に発砲、同国警察幹部によると4人が死亡、17人が負傷しています。

3月31日、首都ナイロビで3件の連続爆発があり、少なくとも6人が死亡、20人以上が負傷。現場は隣国のソマリア人が多い地区とされています。

こうした治安悪化に対し、ケニア政府はケニア国内のソマリア難民に対する締め付けを強化しています。

****ケニア:ソマリア難民に「キャンプ」帰還令****
ケニア政府が国内の都市部に居住するソマリア難民に対し、指定された難民キャンプに戻るよう命じる緊急令を発した。「緊急的な治安課題」のためとしている。

ケニアでは、隣国ソマリアのイスラム過激派アルシャバブによるテロ攻撃が増加。難民の集まる場所がテロの温床となるのを政府が懸念したとみられるが、人権団体からは批判の声も上がっている。

 ◇都市部テロを懸念
ソマリアは1991年から内戦が続き、ケニアへこれまで約50万人の難民が流入。ソマリア国境近くのダダーブは世界最大の難民キャンプとされる。さらに、首都ナイロビなどにも難民らが集まる大規模なソマリ人地区が形成されている。

一方、ソマリアの過激派アルシャバブが近年、国境を越えてケニアの地域社会に徐々に浸透。アルシャバブ掃討のためケニア軍がソマリアに軍事介入した2011年10月以降、ケニア各地でアルシャバブによる報復テロが頻発している。アルシャバブは昨年9月、ナイロビ随一の高級商業施設「ウエストゲート・モール」を襲撃し、計67人が死亡した。

緊急令は3月25日に発令されたが、ナイロビで3月31日、爆発で6人が死亡した。現場はソマリ系ケニア人やソマリア難民が多く住むイスリー地区で、同地区ではアルシャバブの犯行と疑われる爆弾テロなどがたびたび起きている。

アルシャバブ戦闘員がソマリ人地区に潜伏している疑いもあり、都市部の貧困層地域で若者を勧誘するケースもある。こうしたことを受けた緊急令だが、国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」(本部・ニューヨーク)は「過密で整備が不十分なキャンプへの強制的な移住計画は再考すべきだ」と反対している。【4月1日 毎日】
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31日のナイロビでの連続爆発テロを受けてケニア警察は、隣国ソマリアを拠点とするイスラム過激派組織アルシャバブが事件に関わった疑いがあるとして、ソマリア人が多く住む地区で600人以上を拘束したとも報じられています。【4月2日 NHK】

ソマリア大統領 再統合へ期待
ソマリアにおけるアルシャバブ及び内戦の状況はよくわかりません。
アルシャバブは首都モガディシオを追われて、勢力を弱体化させてはいますが、なお、地方での抵抗は続いているようです。

2月21日にはソマリアの首都モガディシオにある大統領府で、自爆テロとみられる大きな爆発があったのに続きアルシャバブと見られる武装集団が敷地内に侵入、警備の治安部隊などと激しい戦闘となりました。
この大統領府襲撃で少なくとも14人が死亡しましたが、モハムド大統領は無事でした。

ソマリア政府側は、こうしたアルシャバブの攻撃は、組織弱体化による焦りだとしています。

****存在感示そうと躍起」=イスラム過激派―ソマリア大統領****
来日したソマリアのモハムド大統領は12日、東京都内の日本記者クラブで記者会見し、イスラム過激派アルシャバーブについて「支援者から資金を得るため存在感を示そうと躍起になっている」と強調した。アルシャバーブは2月、首都モガディシオの空港や大統領府を狙いテロ攻撃を相次いで実行している。

世界各地からのアルシャバーブへの資金提供は「これまでも水面下で行われてきた」と大統領は説明。全貌は今も明らかではない。しかし「資金面で支援が細り弱っている」と述べ、アルシャバーブの最近の弱体化は著しいとみている。

過激派や海賊を構成してきたソマリア人の若者について、バーレ政権崩壊でソマリアが無政府状態になる直前の1990年に5歳だった子供は現在29歳になっていると指摘。「こうした子供たちは全く教育を受ける機会がないまま大人になった」と大統領は訴え、職業訓練をはじめ社会復帰のための支援が必要だと訴えた。【3月12日 時事】 
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かつて、ソマリアについては“実質的無政府状態の”という形容が必ずついていました。
2012年9月に大統領選挙を行いモハムド大統領が選出され、同年11月には新内閣も発足しています。

国際的な認知も進んでおり、2013年1月には、アメリカ政府がアフリカ東部のソマリア政府を正式に承認。アメリカがソマリア政府を正式に承認するのは、1991年に同国が内戦に陥って以来初めてです。【2013年1月18日 CNN】
2013年4月には、IMFもソマリア政府を承認しています。

ただ、ソマリアはイスラム過激派アルシャバブの問題だけでなく、内部的には独立を主張する北部のソマリランド、自治政府を主張するプントランド、そして首都モガディシオのある南部のソマリアに3分割されています。

このうち最も治安が良いのは、その独立は国際的には全く承認されていませんが、北部のソマリランドです。
ソマリア政府は、そのソマリランドと再統合の話を進めているとのことです。

****ソマリア:北西部ソマリランドと再統合を モハムド大統領****
内戦状態が続くアフリカ東部ソマリアのハッサン・シェイク・モハムド大統領(58)が12日、東京都内で毎日新聞のインタビューに応じ、1991年の内戦初期に「独立」を宣言した北西部ソマリランドと再統合に向けて交渉していることを明らかにした。大統領は「時間はかかるが多くの進展がある」と述べ、再統合に期待を示した。

ソマリアは91年に社会主義政権が崩壊してから内戦に突入。2012年に正式政府が発足したが、ソマリランドは一方的に独立を宣言してから分断が続いている。

大統領は「ソマリアの国土は分割できない」と独立を承認する考えがないことを強調。「連邦政府に参加するか、自治区になるのかなどは見えていないが、あらゆる可能性を検討している」と述べた。現在は領空の共同管理など「簡単な問題」から話し合いを始めているという。(後略)【3月12日 毎日】
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混乱状態のソマリア・プントランドと一線を画して良好な統治状態を続けてきたソマリランドからすれば、いまさら内戦状態のソマリアと一緒になっても・・・というところでしょうが、ソマリランド等を含めた形でのソマリア政府の国際認知が進むという時代の流れもあります。

プントランドは海岸が海賊、山岳部がイスラム過激派アルシャバブの基地になっていると言われていますが、1月の“大統領”選挙で、ソマリア暫定政府で2011年から約1年首相を務めたアリ氏が当選しています。
プントランドは自治を認めた連邦制での再統合には賛成しています。

あまり情報がないソマリア、ソマリランドなどについては、「謎の独立国家 ソマリランド」(高野秀行著)が面白く読めますが、ソマリア理解のキーワードは“氏族”のようです。

カート 貧困や食料不足、水危機に汚職などの根っこにある問題
イスラム過激派アルシャバブとの内戦、海賊の跋扈、ソマリランド・プントランドなどの再統合・・・いろんな問題を抱える氏族社会ソマリアですが、もうひとつ問題がありそうです。

高野氏の著書にも頻繁に登場する覚醒作用のある植物“カート”の問題です。
高野氏は、“カート宴会”によって本音でのコミュニケーションがとれると好意的にも評価していますが(http://www.webdoku.jp/column/takano/2012/0924_114318.html)、その副作用も大きそうです。

カートは“新鮮な若葉を噛み潰し、頬の片側に噛みくずを貯めながら、汁を飲み下していく”ことで弱い覚醒作用が得られ、“飲酒の禁じられているイスラム世界のうち、特にケニア、ソマリア、エチオピア、イエメンなどアラビア半島から東アフリカにかけての地域においては、酒などの代用として嗜好品として需要が高いが、イスラム世界のほとんどの国ではその特性のため麻薬として非合法となっている”【ウィキペディア】とのことです。

****カート」、イエメンに影 覚醒効果・多幸感生む葉****
中東の最貧国イエメンで、カートと呼ばれる覚醒効果のある葉の過剰消費が、人々と社会をむしばんでいる。

社交の友として親しまれてきたが、長い独裁と「アラブの春」後の社会不安で一段と広まった。他の作物からの転作も相次ぎ、その影響で水や食料も不足。貧困がさらに深まる悪循環が起きている。

 ■社会不安で消費量増加
首都サヌア中心部の葬儀場。大広間でくつろぐ男たち約150人はみなぷっくりと片ほおを膨らませ、もぐもぐと口を動かしていた。かんでいるのは小枝から摘んだカートの新芽だ。

「人付き合いには欠かせないし、元気が湧く。若い頃は毎日9時間はかんでいた」と元電気技師スリマン・バハリシュさん(61)。

イエメンでは葬儀や結婚式はカート抜きでは始まらない。毎夕、あちこちの民家の客間でカートパーティーが開かれ、旧交を温めたり、人脈を広げたり。社交の潤滑油になってきた。仕事中や運転中に眠気覚ましにかみ続ける人も多い。

かむと青汁や抹茶のような青臭い苦みがある。覚醒剤のアンフェタミンに似た成分が含まれ、覚醒効果や多幸感をもたらすという。

産地や品質によって1回分500リアル(約240円)から1万5千リアル(約7200円)ほどと、イエメンの物価からすれば安くはない。運転手アブド・サレハさん(38)は月給の半分以上をカートに費やすが、「くつろげるし、やめられない」と話す。

カートは、イエメンやエチオピア、ケニアなどで数百年前から愛好されてきた。イエメンでは、サレハ前大統領が政権を握った1970年代以降に急速に浸透し、政府の庁舎内にもカートのための部屋がつくられた。

地元環境団体「持続可能な開発と環境保護組織」によると、12年の市場規模は3570億リアル(約1713億円)で、13年前の8倍に膨らんだ。

カート売りのフォージア・マシュダクさん(30)によれば、「社会問題が起きるほど、売り上げも伸びる」。
サレハ氏が退陣に追い込まれた11年の民主化デモや武力衝突で、治安が悪化し経済は低迷するなかで、カートの売り上げは4割増えた。

飲食店員マンスール・フセインさん(24)は、仕事があまりなく「カート以外やることがない」と話す。世界保健機関(WHO)は、成人男性の9割、女性の5割、12歳以下の児童の2割がカートを毎日かむと推測している。

 ■転作相次ぎ水不足拍車
巨岩に立つ別荘「ロックパレス」がそびえるサヌア郊外ワディ・ダハール。かつてはブドウや桃、ザクロだった緑は、今はほとんどがカートの木だ。カート農家ファワズ・ムニフィさん(36)は「年に5回も収穫できるし、手間もかからない。実入りは3倍以上になった」と話す。

政府情報センターによると、高級品「モカマタリ」で有名な輸出作物コーヒーの栽培面積は08~12年にほぼ横ばいだったが、カートは14%増えた。農業部門の国内総生産(GDP)の3分の1を担う大黒柱だ。

だが副作用も出ている。
「昔は川だったんだ。子どもの頃はよく釣りをした」。カート農家アブドラ・マソディさん(55)は車道に視線を落とした。大量の水を使うカート栽培が広がるにつれて、川は干上がり、40年ほど前は30メートル下からくんでいた地下水も、300メートル掘らないと出なくなった。

イエメンは元々、水資源が乏しい。1人が年間に使ってよい水は120立方メートルで、世界平均の2%。年7%もの人口増が続くサヌアでは水不足の危機が叫ばれてきた。カートは地下水の7割を消費しており、世界食糧計画(WFP)は水資源が枯渇する「主犯」と指摘する。

WFPによると、人口の4割に当たる1千万人以上が食料不足に陥り、慢性的な栄養不良の児童の割合は58%とアフガニスタンに次ぐ高さだ。穀物自給率は2割に満たず、輸入に頼る小麦の価格も高値が続く。

外貨を稼ぐコーヒーや空腹を満たす穀物をよそに、カート生産が増え続け、水がますます不足する――そんな構図だ。食欲減退効果のあるカートで空腹を紛らわす家庭も珍しくないという。

 ■国内は合法、国外も鈍い対応
カートへの過度な依存を減らそうと、政府は輸出入を禁止し、栽培や消費も制限しようとしてきた。この3月にも内務省が勤務中の警察官にカート禁止を厳命した。

ただ、カート関連産業は全雇用の15%を占め、抜本的な対策には踏み込めないのが実情だ。農家に他の作物への転換を促すのは容易ではなく、そもそも武装闘争で政府の統治が及ばない地域も多い。

コカインや覚醒剤など国際的な禁止薬物とは異なり、カートはイエメンでは合法の「嗜好(しこう)品」。英国でも合法、米国では違法と対応もまちまちで、国際社会の対応も鈍い。

地元NGO「反カート基金」代表を務めるサヌア大のアデル・シュガ教授(45)は「貧困や食料不足、水危機に汚職などの根っこにある問題と認識して対応すべきだ」と話している。【4月1日 朝日】
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事情はソマリアも同じでしょう(ソマリアではカートはエチオピアなどからの輸入が多く、常用者はイエメンよりやや少ないようですが)。

酒と同様にコミュニケーションツールとしては有用ですが、外貨を稼ぐコーヒーや空腹を満たす穀物をよそに、カート生産が増え続け、水がますます不足する。国民は収入の多くをカート購入につぎ込んで、いっときのくつろぎを得る・・・ということでは、やはり社会をむしばむ「麻薬」の弊害と見るべきでしょう。

アルシャバブを駆逐しても、社会全体がカートに依存していては、自立も難しいのではないでしょうか。

もっとも、酒もカートもダメ、更に一部のイスラム原理主義のように音楽やDVDなど娯楽もダメ・・・ということでは、人間は生きていけないとも言えますが。
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タイ  憲法裁判所の総選挙無効判断で深まる混迷 漂流するタイ政治

2014-04-01 22:49:49 | 東南アジア

(ナコンパトムでの会議を終えた後に足の怪我を気遣う住民から激励されるインラック首相  【3月19日 「インラック首相ファンページ」】http://yingluckfan.blogspot.jp/2014/03/blog-post_19.html
怪我は改善し、今は車椅子は使っていませんが、政治的窮地は相変わらずです。)

【「憲法裁はデモ隊と協力し、選挙によらない政権を樹立させようとしている」】
タイのタクシン元首相の妹インラック首相の政権に対する反タクシン派の反政府行動、出口の見えない対立と混乱について前回取り上げたのが2月14日ブログ「タイ 4月27日再投票 政権側・反政府派ともに苦しい状況」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20140214)でした。

前回ブログから1月半が経過しましたが、状況は“相変わらず”です。
大きく燃え上がることもないかわりに、いつ消えるでもなくブスブスと燃え続けている・・・そんな感じです。

野党・民主党は、2月2日の総選挙が、勝ち目のない総選挙を否定する反政府派の選挙妨害により28選挙区で候補者不在のまま行われたことについて、同じ日に選挙を実施するよう定めた憲法の規定(108条)に違反すると指摘し、憲法68条の「憲法の規定にない方法での権力の奪取」にあたると主張し、憲法裁判所に選挙の無効を申し立てていました。

反政府派の選挙否定・妨害については、単に“勝ち目がない”というだけでなく、“そもそもタクシン派を支持している地方農民や貧困層はカネで誘導されているだけで、政策を判断する能力がない連中だ”といった考えが背景に見え隠れします。

民主主義否定とも言えますが、彼らにすれば、単純に選挙によらないタイ独自の民主主義を目指している・・・という話にもなります。

前回ブログでも触れたように、タイの憲法裁判所は2月12日、野党民主党によるこの総選挙無効の訴えを「68条に違反した根拠がない」として却下し、危機に直面しているインラック政権は一息ついた感がありました。【2月13日 読売より】

これを受けて、反政府デモによって投票が妨害された選挙区で投票をやり直す・・・という話で進むのかと思ったのですが、そうはいかないようです。

反政府デモ隊の妨害で立候補者ゼロとなり選挙が実施できなかった南部8県28選挙区の扱いに関し、選挙管理委員会と政府の意見が対立し、3月5日、選挙管理員会は(1)28選挙区で再選挙を実施する権限が選管にあるか(2)選管に権限がない場合、新たな勅令が必要か(3)新たな勅令が必要な場合、適用されるのは28選挙区のみか、それとも憲法108条に従って全ての選挙区か―の判断を憲法裁判所に求める申し立てを行いました。【3月5日 時事より】

政府の意向は、新たな勅命は必要なく、選管の権限で28選挙区だけの再選挙を実施するというものですが、選管は新たな勅命が必要との立場です。

この選挙管理員会の抵抗とは別なのか、連携してなのかはよくわかりませんが、公的機関関係者の違法・越権行為の有無を審議し、憲法裁判所に提訴できる権限を有する国王勅命の「国家オンブズマン」が、同日に全国の選挙が実施できなかったことに関する訴えを起こしており、憲法裁判所は3月21日、2月の総選挙(下院、定数500)は違憲・無効とする判決を下しました。

****タイ:総選挙やり直しへ 憲法裁判所「2月選挙無効」判決****
反タクシン元首相派による反政府デモが続くタイで、憲法裁判所は21日、2月2日に行われた総選挙(下院、定数500)は違憲だとして無効とする判決を下した。

改めて選挙がやり直される見通しだが、デモ隊側は再びボイコットし、インラック政権への退陣圧力を強める構え。政権与党は憲法裁を「政権崩壊を狙うデモ隊寄り」と批判し、タイ政治を巡る混乱と分断はより深刻化した。

総選挙はデモ隊の妨害により全国約2割の選挙区で投票を完了できず、いまだ選挙結果を確定できていない。憲法裁は、これを「投票は全国で同じ日に実施されなければならない」と定めた憲法に違反すると判断した。

判決を受け、政権は60日以内に新たな総選挙実施のための勅令案を国王に提出する見込み。
しかし、デモ隊を率いるステープ元副首相は「政権が権力をあきらめない限り、選挙は拒否する」と主張。デモ隊に同調し総選挙をボイコットした最大野党、民主党も再び選挙を拒む可能性を示唆している。

憲法裁を筆頭とする「独立機関」は、エリート層が支える反タクシン派の牙城とされる。
今回の訴えを起こした「国家オンブズマン」や、首相の弾劾に向け不正疑惑捜査を進める「国家汚職追放委員会」もその一つだ。

勝ち目の薄い選挙は拒み続け、昨年12月の下院解散以降続く「政治空白」を長期化させる。その間に独立機関が「法的」に政権を退陣に追い込み、タクシン派を排除した暫定政権を樹立する−−。反タクシン派が描くシナリオが、現実味を帯びてきた。

だが、総選挙に問題が生じたのはそもそも反タクシン派による妨害が原因で、政権側が納得するはずはない。
政権与党、タイ貢献党は21日、「憲法裁はデモ隊と協力し、選挙によらない政権を樹立させようとしている」と批判。

農村住民や貧困層らによるタクシン派グループ「反独裁民主戦線」幹部は「判決は(我々の怒りに)燃料を投下した」と抗議行動の激化を示唆した。【3月21日 毎日】
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“総選挙は無効 やり直し”とは言っても、反政府派が妨害を公言しており目途はたちません。

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・・・・法律専門家の中には、クーデター(2006年)後の反タクシン元首相体制で選ばれた憲法裁判所の中立性を疑問視する声も根強い。今回の判断にも、一部の選挙区を妨害すれば選挙全体を無効にできる危険な前例ができたとの批判がすでに出ている。

再選挙で、事態はどう動くのか。
期日は政府が選管と協議して決めるが、反政府派の妨害で、混乱が繰り返される可能性が高い。デモ指導者のステープ元副首相は20日夜、「次の選挙も阻む」と語った。【3月22日 朝日】
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国家汚職追放委員会、首相告発へ
憲法裁判所、「国家オンブズマン」と並ぶ、もうひとつの「独立機関」である「国家汚職追放委員会」も、政権の最重要施策であるコメ農家への融資制度に絡んで、インラック政権を追い込んでいます。

****インラック首相を告発へ=国家汚職追放委****
タイ国家汚職追放委員会(NACC)は18日、コメ農家への融資制度に絡み、インラック首相を職務怠慢と職権乱用の罪で告発する方針を決めた。

首相の弾劾につながる可能性があり、インラック政権と反政府デモ隊の対立が続くタイ政局に大きな影響を与えるのは必至だ。

NACCによると、国家コメ政策委員会の委員長を兼務するインラック首相は、同制度で約2000億バーツ(約6330億円)相当の損失が出たとの報告や、深刻な不正につながる恐れがあるとの警告を受けていたのに、制度の推進を主張。これが職務怠慢と職権乱用の罪に当たると判断された。

NACCは首相に対し27日に説明するよう求めている。NACCが最終的に上院に首相弾劾を求めることを決めた場合、その時点で首相は職務停止となり、上院が弾劾を決議すると首相の座を追われる。(後略)【2月18日 時事】 
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こちらの動きについては、以下ように報じられています。

****タイ首相、汚職追放委に出頭=弁明期限の延長要請****
タイの国家汚職追放委員会(NACC)がコメ担保融資制度をめぐる不正行為に絡み、職務怠慢などの疑いでインラック首相を調査している問題で、首相は31日、首都バンコク郊外のNACC本部に出頭した。

NACCによると、インラック首相は文書を提出するなどして弁明するとともに、公正な扱いを求めた。また、追加の証人がおり文書もあるとして、弁明期限を延長するよう要請した。【3月31日 時事】 
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既得権益層を守護する「独立機関」】
約50日間続いた反政府派の街頭実力行使「バンコク閉鎖」は、動員力の低下もあって3月3日に終わりましたが、憲法裁判所、「国家オンブズマン」、「国家汚職追放委員会」という「独立機関」によるインラック政権包囲網が狭まっています。

****タイの「憲法裁判所」は誰を守っているのか****
国王が任命する3機関
最も民主的な憲法と内外から評価された「仏歴2540(1997)年タイ王国憲法」が(民主党を軸とする野党勢力や民主派から「反王制、国家権力の独占と乱用、透明性や倫理を欠いた政権運営」などと批判された)タクシン政権を生んでしまったとの判断から、(1)国民の権利と自由の保護、(2)権力集中の是正と権力乱用の防止、(3)政治の透明性・道徳・倫理の確保、(4)権力チェック機関への高い権能を付与――を盛り込んだ現行「仏暦2550(2007)年タイ王国憲法」が07年8月に制定されたわけだ。

では、現行憲法のどこに上記(1)(2)(3)(4)の機能が規定されているのか。その柱が憲法裁判所、国家オンブズマン、そして国家汚職防止取締委員会といえるだろう。

まず憲法裁判所は、「本憲法が保障する権利および自由が侵害された者」の「請願」を受け、政党解散を含む政治事案に対して判断を下し、「その裁決は絶対的であり、国会、内閣、裁判所および国のその他の機関を拘束する効力を有」(第212条)する。

そして国家オンブズマンは、国民と公共の利益を守るため、中央・地方政府や国営企業など公的機関関係者の違法・越権行為の有無を審議し、憲法裁判所に提訴できる(第242-245条)。

さらに国家汚職防止取締委員会は、一定以上のポストの公務員が「異常に裕福になったか、職務に不誠実な行為を犯しているかについて審問・裁決を行う」ことに加え、「政治職にある者の道徳および倫理を監督し監視する」(第250条)。

憲法の規定によるなら、この3機関は要するに、「国王を元首とする民主主義政体」を守護するために存在していると言えるのだが、ここで注目すべきは、いずれの機関も、構成員の定数は9人(憲法裁判所、国家汚職防止取締委員会)、3人(国家オンブズマン)と異なるが、共に任期は9年で、上院の助言に基づいて国王が任命する点だろう。

しかも上院議員は下院議員関係者、政党党員であってはならない、つまり下院を構成する政党、いいかえるなら現実政治と緊密な関係にあってはならないと厳しく規定されている。

いわば、この3機関こそ「国王を元首とする民主主義政体」の番人といっていいだろう。

「ABCM複合体」の守護神
たとえば、2005年末からの反タクシン運動の高まりのなかで問題となった、タクシン一族の脱税疑惑をキッカケに行われた05年2月 の総選挙である。タクシン派が勝利したにもかかわらず、憲法裁判所は無効と判断し、結果として下院の半数を押さえたタクシン政権の正当性にノーをつきつけた。

08年1月、総選挙でタクシン派が過半数を制し、タクシンの代役としてベテラン政治家のサマックが首相に就任した。これに対し、5月には国王を象徴する色である黄色のシャツを着た反政府民主化同盟(=PAD)がサマック政権を事実上のタクシン政権だと批判し、首相府やバンコク国際空港を長期占拠するなど、街頭行動を過激化させる。

こういった反タクシンの動きと呼応するかのように、9月 になると、憲法裁判所 はサマック首相のTV料理番組出演料を不正収入と看做し、首相資格なしと判断している。

じつは、料理好きで知られたサマックは、首相就任後もTV出演を続けていたのだが、その出演料が政治職公務員にあるまじき不正行為と看做されたわけだ。ちなみに、その出演料は当時の邦貨で換算しても、1回僅かに6000円ほどの少額だった。

金額と首相ポストの重みを考えれば、「法匪」と非難されても致し方のないほどの、タメにする判断だったといえよう。
そして今回、国家オンブズマンの提訴を受け、憲法裁判所は6対3の評決で、総選挙無効の判断を下したわけだ。

つまり憲法に従って総選挙を実施し、政権を運営するタクシン派の行動は、同じ憲法によって否定されたことになる。

憲法に従った厳格な判断といえないこともないが、見方を変えれば、憲法は、憲法が定めた憲法裁判所などの機関に、一種の“超法規的措置権能”を付与しているともいえる。

ならば、やや極論だろうが、憲法裁判所、国家オンブズマン、それに国家汚職防止取締委員会は、ABCM複合体(Aristocrat=王室、Bureaucrat=官僚、Capitalist=財閥、Military=国軍)の守護神といってもよさそうだ。
(後略)【樋泉克夫氏 3月31日 フォーサイト】
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タクシン元首相は“バラマキ”とも批判される政策で、地方農民らに利益をもたらし、彼らの支持を基盤として既得権益層と対峙しましたが、その既得権益層の牙城とも言える憲法裁判所など「独立機関」によって、タクシン派政権は追い詰められています。

【タクシン流ポピュリズムのつけ
政権側の姿勢・施策にも問題があります。
インラック政権はタクシン元首相の“バラマキ”路線を追随していますが、財政難から行き詰っており、結果的に農民の首を絞めることにもなっています。

****風 タイ東北部の農村から)タクシン・ポピュリズム 農民を自殺に追いやったもの**** 
2月のある朝、タイ東北部の村でコメ農家のパンさん(当時61)は庭先のマンゴーの木で首をつった。いつものように隣人と立ち話をし、普段と変わらず陽気だった。しかし、隣人と別れた20分後、遺体で見つかった。
1月下旬からタイの米作農民の自殺が相次いだ。保健省の調べでは8人にのぼる。

インラック政権のコメを担保にした貸付制度の支払い時期だった。政府系の農業銀行が、持ち込まれたコメに市場価格よりも高い金を出す。買値より高く引き取る質屋のような制度で、コメは最終的に政府が売る。3年前の総選挙で与党が目玉公約に掲げた。

農民にとっては「打ち出の小槌(こづち)」だが、高いコメは売れない。政府は大量のコメを抱え込んだ。そして昨年末、反政府デモに追い詰められたインラック首相が下院を解散すると、予算権限がほとんどない選挙管理内閣では資金が手当てできなくなった。選挙は妨害され、新政府は発足しないまま。

農家の多くはすべてをこの制度につぎ込んでいる。支払いが止まって暮らしはたちまち行き詰まった。

パンさんの場合、制度利用後、約5万バーツ(約16万円)だった年収は倍増した。だが、負債は10倍になった。「借金が怖くなくなったのです。家を建て、孫を大学に行かせるお金を借りました。父は、特に孫のことを心配していました」と娘のラムパイさん(39)は唇をかむ。

どの国にも人気とりのポピュリズム政策はある。タイでも花盛りだ。だが、農民の自殺はその行き着く先の一つを示しているようにみえる。

タイのポピュリズム政策の嚆矢(こうし)は、インラック氏の兄、タクシン元首相の30バーツで診療が受けられる国民皆医療制度や地方貧困層に小口融資の道を開いた全村100万バーツ基金などだ。

それまで顧みられなかった農民や低所得層に恩恵を実感させ、初めて農村部に強固な支持基盤を持つ首相になった。特に農業世帯は全体の3割を占める大票田だ。

衝撃を受けた最大野党の民主党も、そっくりの政策で選挙を争うようになった。
 
タイ開発研究所(TDRI)のソムキアット所長は「タクシン政策もばらまきだが、一定の普遍性があった。インラック政策は第2世代のポピュリズムといえる。アイデアは底をつき、特定層を優遇し、財政規律も踏み外すようになった」と指摘する。

同じTDRIのウィロート農業経済研究部長は「農民の自立を奪って制度に依存させ、コメ市場もゆがめる」と警鐘を鳴らしてきた。

有力閣僚にそれを伝えると「選挙運動であれだけ売り込んでおいて、やらないわけにはいかない。何年かやって行き詰まれば『政府としては頑張ったがだめだった』と言ってやめられる」と答えたという。

背景に、今の政治危機につながるタクシン派、反タクシン派の対立がある。一度つかんだ支持者は手放せないとタクシン派は懸命になり、それを何とか引きはがそうと反タクシン派も必死になって、政策インパクトの無謀なエスカレートが始まった。

タクシン・ポピュリズムは「金銭的な恩恵と同時に、1票によって自分たちの利益が実現するという政治的な覚醒を農民に与えた」(農民評議会のプラパット議長)とも言われる。だが、農民の自殺を通して垣間見えたのは、むちゃな政策の脆(もろ)さと罪深さだ。【大野良祐 3月31日 朝日】
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新たな混乱の懸念
反政府派に垣間見える民主主義否定とも言える独善性、民意を受けた政権を追い込む「独立機関」、タクシン派政権の無責任なバラマキ・ポピュリズム・・・・簡単な解決策は見つかりませんが、たとえ遠回りでも、時間がかかっても、不十分でも、民意を反映した選挙で決着させるしかないように思います。
それ以外の国王の権威とか軍部の力などに頼っても、長期的にはタイの進路を大きく誤らせる危険があります。

身近な危険としては、インラック政権が「独立機関」によって瓦解し、与党の政権運営が行き詰まった場合、これまで抑制してきたタクシン支持派「赤シャツ」による抗議行動が燃え上がり、収拾のつかない混乱がうまれることも懸念されます。

****タイ総選挙、違憲判決 対立・混乱さらに長期化****
・・・・憲法によれば、下院が構成されなければ首相の選出ができないため、超法規的に首相を任命する可能性が膨らむ。赤シャツはこうした、選挙を経ない首相やその統治は絶対に認めない立場で、バンコクで抗議行動を始めるとしている。その場合、街頭の混乱や暴力が懸念される。(後略)【3月22日 朝日】
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