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孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ナイジェリア  アフリカのイメージを払拭する経済成長 それでも“アフリカ的な”テロの横行

2014-04-21 23:41:14 | アフリカ

(ナイジェリアの経済活況を示す写真を探したのですが、適当なものが見当たらず、定番のテロ関係の写真で。【4月14日 AFP】)

2050年までにはドイツに迫る
3月3日ブログ“ナイジェリア イスラム過激派組織「ボコ・ハラム」による連日のテロ”(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20140303)でも取り上げたように、西アフリカの地域大国ナイジェリアの人口は、2050年にはアメリカを抜いて世界第3位になると予測されています。 

人口が拡大すれば、基本的には経済規模も拡大していきます。
将来的な市場拡大をにらんで、多くの欧米企業もナイジェリアに進出していますが、すでにその経済規模が計算しなおしたところ、実はアフリカ最大になっていた・・・とのことです。

****ナイジェリア経済、南ア超えアフリカ最大に****
ナイジェリア政府は6日、国内総生産(GDP)を再計算した結果、南アフリカを大幅に上回り、アフリカ最大の経済となったと発表した。

今回の計算結果には、1990年にGDP計算のための指標が定められてから生じた製造・消費における変化が考慮されており、新たに通信事業や映画産業にも焦点を当てている。

データによると、2012年のナイジェリア経済は4530億ドル(約46兆8100億円)に成長し、世界銀行(World Bank)が算出した2640億ドル(約27兆2700億円)を大幅に上回った。世界銀行は、2012年の南アフリカ経済を3840億ドル(約39兆6700億円)と算出している。

ナイジェリア当局は首都アブジャ(Abuja)で開いた記者会見で、2013年のGDPはさらに多い5100億ドル(約52兆7200億円)になる見込みだと述べている。【4月7日 AFP】
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GDPが一夜にして2倍近くに膨れたことになり、一体今までの数字はなんだったのか?ということになりますが、併せて、今回の数字は本当に信用できるのだろうか?という疑問もわいてきます。
南アフリカの数字も、同様に精査すれば全く違うものになるのかも・・・。

中国の経済統計が信用できないという話はありますが、アフリカの数字ははるかに怪しげです。

まあ、それはさておき、ナイジェリアを含むアフリカ諸国の経済が急速に拡大していることは間違いないところです。
アフリカというと、内戦、テロ、伝統的な因習・・・・など、ネガティブなイメージが先行しますが、現実はそうしたイメージと大きく異なる(側面がある)ことは十分に留意する必要があります。

****南アを超えたナイジェリア―資源だけでない成長の原動力****
ナイジェリアの首都アブジャで14日朝、爆弾テロが発生、71人が死亡した。国民の関心は一気に事件に向かったが、事件が起きるまでは経済の急成長が話題になっていた。

今月6日、同国は昨年の国内総生産(GDP)が前年の2倍近い5100億ドル(52兆2100億円)となったと発表した。世界で最も高い経済成長率を記録した上、規模でも南アフリカ(3840億ドル)を抜いてアフリカ最大の経済大国となった。世界ランキングでは、12カ国を追い抜いて主要20カ国・地域(G20)のすぐ下の24位につけた。

ナイジェリア経済に奇跡が起きたわけではない。いわば統計の魔法によって生じた事態である。
ほとんどの先進国は消費動向の変化を反映するため、ほぼ5年ごとにGDPの基準を改定しているが、ナイジェリアでは1990年以降、この改定が行われていなかった。

つまり、1億2800万人もの携帯電話利用者がいるにもかかわらず、GDPにはこれまで移動体通信の急増も反映されておらず、著しい発展を遂げ被用者数が2番目の娯楽部門も含まれていなかった。

破たん国家の集まりで、外部による救済が必要――。サハラ以南のアフリカについて、西側の支援団体や政治家、ジャーナリストは、あまりにも長い間、ご都合主義的に、こんなイメージをまき散らしてきた。

紛争や貧困、病気というイメージばかりが強調されたため、観光客は恐れをなして近づかず、企業も本腰を入れて進出しようとしなかった。

しかし、実像は異なっている。民主主義が広がり、経済は急成長している。毎晩、空腹を抱えながら眠りにつく人より太りすぎの人のほうが多いのがサハラ以南のアフリカの現状なのである。

アフリカ経済の4分の1を占めるナイジェリアはまさに象徴的な存在である。政治の失敗が続き、国家が十分に機能してこなかったためだろう、ナイジェリアには起業家精神があふれている。

GDP急増の原動力はサービス部門と存在感を増しつつある製造業だった。アフリカ一の富豪アリコ・ダンゴテ氏はナイジェリアでセメント企業と食品企業を経営している。
これまで経済を支えてきた石油・ガス産業は今や、GDPの14%を占めるにすぎない。

ナイジェリアには今でも、宗派間の対立の傷跡が残っている。腐敗もあれば貧困もある。
同国は世界24位の経済規模を誇るが、国民1人当たりのGDPでは100位にも入っていない。
基準改定後のGDPによると、同国の税収は悩ましいほど低い。
しかし、大富豪の出現でナイジェリアはアフリカ最大のプライベートジェット市場に成長した。

新興中産階級の購買力に支えられて、シャンパンとコニャックの消費が急増している。「ノリウッド」として知られるナイジェリアの映画産業は年間1000本もの映画を製作、米国、インドに次ぐ世界3位の興行収入を挙げている。

ゴールドマン・サックスはナイジェリアの経済規模が2050年までにカナダやイタリアを抜き、ドイツに迫ると予想している。

世界の経済成長率ランキングのトップ10のうち6カ国はアフリカが占めている。世界で人口が最も若いのもアフリカだ。
ナイジェリアはそのアフリカ大陸にある54カ国のうちのたった1カ国にすぎない。エチオピア、ガーナ、ケニア、モザンビーク、タンザニアもナイジェリアと同じように急速に発展している。

アフリカの中産階級人口は既にインドを超えていて、消費支出の原動力になっている。世間の認識とは異なり、アフリカで急成長している国のほとんどは天然資源に依存していない。

抜け目のない多国籍企業はアフリカへの参入を急速に進めている。
米ゼネラル・エレクトリックは今年、今後数年間でサハラ以南のアフリカでの売り上げを倍増させると発表した。同社はこの地域のガスタービンの販売台数が米国の販売台数を超えるのも時間の問題とみる。飲料メーカーやファストフード企業、ホテルチェーンとの提携も予定している。

グラクソ・スミスクラインは今後5年間で2億1600万ドルを投じ、数カ所に新たな工場を建設する計画を発表したばかりだ。経済発展に伴って慢性疾患が増え、治療の需要が増加するアフリカに製薬会社が関心を強めているのだ。

世界銀行によると、アフリカでは乳幼児死亡率が低下し、伝染性疾患は抑制されているが、今後15年間でがんや心臓病など非伝染性疾患が死因の約半数を占めるようになるという。

アフリカの人々は自由に物を買う力を手に入れたが、公共サービスの質は悪く、年金制度も整備されていない。ここでも、資本主義と消費主義が変化を促している。

英保険大手プルーデンシャル(最高経営責任者(CEO)はアフリカ生まれだ)は1日2ドル50セント未満で暮らす人々に保険を販売するガーナの企業グループを買収した。

ケニアやナイジェリアでは、貧しい家庭でも子どもを二流の公立学校に行かせるより、個人教授を選ぶことが多い。アフリカでもコンピューターマニアがインフラ未整備や不正医薬品、銀行サービスの不足といった問題を技術的に回避する方法を考え出している。ケニアの携帯電話を使った金融サービスシステムM-Pesa(エムペサ)のような最先端の技術もある。

アーンスト&ヤングなどの調査によると、アフリカに進出した投資家は非常に前向きだが、未進出の企業は悲観的な見方にとらわれている。

筆者は最近、プレミアリーグに所属する英国のサッカーチームの最高経営責任者に西アフリカでツアーを行って、現地のサッカー人気を生かしたらどうかと勧めると、CEOは軍隊に守ってもらわなければならないと言って笑った。残念ながら、このCEOのように近視眼的な人は非常に多い。

深刻な問題もあるが、それは世界のどの地域でも同じである。アフリカの多くの地域は中国に匹敵する急上昇期を迎えようとしている。

ナイジェリアのGDPが急増した理由が統計上のねじれであったとしても、アフリカ大陸の急激な経済成長とすさまじい変化は本物である。これを見逃せば、のちのち、時代を見る目がなかったと後悔することになるだろう。
(イアン・バーレル氏は英国の新聞「デイリー・メール」と「メール・オン・サンデー」の寄稿編集者。英国のデービッド・キャメロン首相の元スピーチライター)【4月21日 ウォール・ストリート・ジャーナル】
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それでも止まない「ボコ・ハラム」のテロ
未だに多くの国民が貧困から抜け出せずにいるなかで、“アフリカ最大のプライベートジェット市場に成長した”ことや、“シャンパンとコニャックの消費が急増している”ことが、どれだけの評価に値することなのか? 
“政治の失敗が続き、国家が十分に機能してこなかった”ことに、改善の兆しがあるのか?

上記記事のように手放しでナイジェリア経済の成長を評価できない側面は残りますが、“民主主義が広がり、経済は急成長している。毎晩、空腹を抱えながら眠りにつく人より太りすぎの人のほうが多いのがサハラ以南のアフリカの現状なのである”ということであえば、それは大いに喜ぶべきことです。

ただ、ナイジェリアの場合、貧困層の残存、政治の腐敗・汚職といった問題のほかに、どうしても看過できない問題が存在します。
南部キリスト教徒と北部イスラム教徒の宗教対立、イスラム原理主義「ボコ・ハラム」のとどまるところを知らないテロの問題です。

パキスタンに旅行していた1週間ほどの間にも、2件の大きな事件が報じられています。

****ナイジェリア首都で爆発、71人死亡…過激派か****
AP通信によると、ナイジェリアの首都アブジャ郊外のバス待合所で14日朝、大きな爆発があり、通勤客ら少なくとも71人が死亡、約120人が負傷した。

同通信によると、治安当局は、爆発物が持ち込まれたとの見方を示した。犯行声明は出ていないが、同日、現場を訪れたジョナサン大統領は、イスラム過激派組織「ボコ・ハラム」の犯行との見方を示した。

ボコ・ハラムは石油産地である北東部を拠点にテロを繰り返しており、多くの市民が犠牲になっているが、首都周辺で犯行に及んだのは異例といえる。【4月15日 読売】
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****ナイジェリア:女子高生100人拉致 イスラム過激派か****
西アフリカ・ナイジェリアからの報道によると、同国北東部ボルノ州チボクで14日深夜から15日未明にかけ、女子高校に武装集団が侵入し、宿泊施設で休息中の女子生徒ら100人以上を拉致した。

テロ攻撃を活発化させているイスラム過激派ボコ・ハラムの犯行である可能性が強い。

AFP通信は目撃者の話として、生徒たちがトラックに乗せられて連れ去られたと報じている。

(中略)ボコ・ハラムは2002年にボルノ州の州都マイドゥグリで結成されたイスラム過激派で、政府やキリスト教会などへのテロ攻撃を繰り返している。

名前は現地語で「西洋の教育は罪」の意味で、教育機関も敵視。今年2月に北東部ヨベ州ブニヤディで男子生徒ら59人が死亡した寄宿学校襲撃も、ボコ・ハラムの犯行とみられている。【4月16日 毎日】
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アムネスティ・インターナショナルによると、今年に入ってからでも、キリスト教会や政府施設へのテロなどを通じて1500人以上が犠牲となっています。

こうした「ボコ・ハラム」の活動を抑えきれないということは、国民の生活を改善するはずの経済成長がナイジェリアにおいては大きな欠陥を有しているのではないか・・・というふうにも思えてきます。
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