孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ウズベキスタン  強権的カリモフ大統領による“偽民主主義”

2008-01-16 14:46:06 | 世相
今日は中央アジアのウズベキスタンの話。
ウズベキスタンは、14世紀チムール帝国の都として栄えたサマルカンドをはじめ、古都ブハラ、ヒワなどが観光スポットとしては知られており、私も一度行きたい国のひとつです。
最近では、ウランの埋蔵量が世界第10位ということで、隣国カザフスタンと並んで、ウランの価格が高騰するなかで注目を集めている国でもあります。

そんなウズベキスタン政府による児童の権利侵害を批判するニュースが。

*******不買運動の呼びかけ、子どもの強制労働による綿花栽培*******
市民活動家のグループが子どもの強制労働によって栽培されているウズベキスタンの綿花の不買運動を呼びかけている。
他の開発途上国とは異なり、ウズベキスタンの綿花セクターの児童労働は貧困が原因ではなく、中央政府の強制政策によるものである。
毎年9月になると全国の学校は2カ月以上も休校となり、生徒たちは中央および地方当局の命令で綿摘みを強要されるのだ。子どもたちは時に何日も休みなく1日8時間以上の労働を強いられ、収穫前に使用された化学薬品、殺虫剤、枯れ葉剤の残留物で一杯の粉塵を吸い込む。
(中略)カリモフ大統領の一家が支配する商社3社だけに綿花輸出のライセンスが与えられている。
人権活動家によれば、綿摘みを拒否すれば、退学処分となってしまう。学校職員に殴打された事例もある。
ウズベキスタンの綿花栽培のうち半分以上が児童労働に頼ったものであり、子どもたちへの報酬はごくわずかである。【1月12日 IPS】
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この記事で思い出したのが、昨年6月放映されたNHKの“新シルクロード・・・激動の大地を行く 第3集オアシスの道は険し”。
この番組のなかで、国営綿花農場に綿花摘みのため労働者を他地域から動員する様子が出てきます。
摘んだ綿花の重量に応じて1日500円程度の賃金が支払われ、民族舞踏の慰問団が農場を訪れたり・・・といったソ連時代を彷彿とさせる統制経済が色濃く残る状態が紹介されていました。

番組では児童労働は出てきませんし、動員される労働者の表情は明るく、女性たちはわずかでも現金収入を喜んでいる・・・・そのようにも見えた記憶があります。
児童労働の実態についてはわかりませんが、ひとり児童だけでなく、国民全体を対象とした動員態勢があって、児童の動員はその一環なのでしょう。

また、ウズベキスタン経済についてはこんな報道もありました。

*****国民が過酷な生活 出稼ぎ先で奴隷扱いも******
ウズベキスタンでは、ロシアやカザフスタンなど周辺国に出稼ぎに出た人の割合は、人口(約2700万人)の1割以上とも言われる。
国内では失業が深刻なためだが、出稼ぎ先で奴隷同様の扱いを受ける人も少なくない。
強権体制の裏側で、多くの国民が過酷な暮らしを強いられている。
首都では高級ブティックが次々と建つ一方、一般市民の月収は日本円で5000円程度。
月2万円以上の「高給取り」は官僚や政府系企業関係者に限られる。
世界的穀物価格の上昇で今年、パンが3割値上がりするなどインフレも深刻化、市民生活を直撃している。
【07年12月25日 毎日】
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「ここ数年、南部などを中心に女性らが政府に生活改善を求めるデモが頻発している。失業が深刻で、働き手の男性がロシアなどに出稼ぎに出ているからだ。こうした国外移民は300万~500万人とされ、人口(2700万人)のかなりを占めている。」という報道もあります。
経済的に相当に逼迫しているようです。

このような統制経済色の強い逼迫した経済を生み出しているのが、強権的な独裁体制を続けるカリモフ大統領です。
カリモフ大統領は昨年末12月23日の選挙で3選を果たしましたが、この大統領選にはカリモフ大統領のほか、下院副議長2人と政府系人権センター長が立候補。
いずれもカリモフ氏支持を公言しており、民主的な選挙を演出するための対立候補と見られています。
徹底的な野党弾圧の強権政治のなかで、野党候補は事実上同選挙に立候補すらできませんでした。
まさに“儀式”としての大統領選挙でした。
国家転覆をもくろんだなどの罪で拘束されている市民は7000人とも4万人とも言われるそうです。

更に、憲法は大統領の連続3選を禁じていますが、カリモフ大統領は「憲法制定前の1期目の任期は数えない」との理屈で押しきっています。

国際的には05年5月に南部アンディジャンで起きた反政府暴動・集会鎮圧事件(死者数は公式発表187人、西側人権団体は500人以上と推計)をきっかけに孤立化を深めましたが、昨年EUがウズベキスタンの要人の入国禁止措置を一時見合わせ、米自動車企業が進出するなど制裁緩和の兆しが出ています。
ウズベキスタンで未開発の地下資源を巡り、ロシアが積極的に進出していることなどが背景にあるとみられています。【07年12月21日 毎日】

こうした政治体制はウズベキスタンだけでなく、中央アジア全般に共通して見られます。
新興石油大国のカザフスタンではナザルバエフ大統領がすでに17年間にわたり権力を維持しています。
06年2月、野党の共同議長が運転手とともに射殺体で発見されました。
反対派のアルマトイ前市長も射殺されています。
07年8月18日の議会選挙では、与党ヌル・オタンが、比例代表制による全98議席を獲得、その他9議席を大統領直属の国民評議会が指名するため、与党が107議席をすべて独占しています。
また、5月には憲法改正が行われ、ナザルバエフ初代大統領に限り、3選禁止の規定が除外されました。

タジキスタンのラフモノフ大統領も、03年憲法改正で大統領任期延長を可能とし、06年には3選、13年間にわたり権力を保持しています。
近年、権威主義的傾向を強めているとの批判があるそうです。

昨年12月16日に行われたキルギス国会総選挙については12月22日に取り上げました。
やはり強権的政治を行っていたアカエフ前大統領を05年に倒したバキエフ大統領が支持基盤を固め、翼賛体制に向かっています。

こうした旧ソ連・中央アジア諸国の政治情勢について、ロシアの日刊紙、独立新聞は「民主主義を恐れると同時に、民主主義のふりをしているのが特徴だ」と断じているそうです。
そういう国は中央アジアだけでもないように思えますが。

コメント
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