孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

シエラレオネ 裁かれる戦争犯罪

2007-08-15 14:13:01 | 国際情勢


(7歳のAbuは父親の襟のボタンを留めてあげます。父親には腕がありません。内戦で切り落とされました。内戦が終わり、反政府勢力を含め双方の兵士たちには社会復帰プログラムが用意されています。しかし何千という手足を生きたまま切り落とされた犠牲者には何も用意されていません。
“flickr”より By slaugh7y )

今日8月15日は終戦記念日。
TVでは東京裁判を扱った番組も目にします。
今、世界では元大統領の戦争犯罪を裁く国際戦犯法廷が進行しています。
シエラレオネ国際戦犯法廷において、“人道に対する罪”などで裁かれているテーラー元リベリア大統領です。

シエラレオネはアフリカ西部の大西洋に面する国で、南東でリベリアと接しています。
19世紀には、イギリスの奴隷廃止による“解放奴隷”の移住地となり、1961年独立、首都は“フリータウン”。
この国を紹介するときによく使われるのは、「世界で一番平均寿命の短い国」ということです。
(男女計で34歳 2002年 WHO資料)
解放奴隷の子孫はクリオと呼ばれ国民の10%ほど占め、残り90%が先住民のテムネ人とメンデ人です。

91年に勃発したシエラレオネ内戦の主要人物は2名。
ひとりは反政府勢力RUFを率いるアハメド・フォディ・サンコー。
もうひとりが隣国リベリアで反政府運動を行っており、後にリベリア大統領になるチャールズ・テーラー。
この2名はともにカダフィ大佐のリビアで軍事訓練を受けており、その際知り合ったそうです。

両者はリベリアとシエラレオネの両国を連動した内戦状態にし、テーラーはサンコーのRUFに協調してシエラレオネに介入します。
RUFは産するダイヤモンドをリベリアに密輸し、リベリアのテーラーが見返りに武器・RUF兵士の訓練をシエラレオネのサンコーに供与するということで、「紛争ダイヤモンド」「血のダイヤモンド」「汚れたダイヤモンド」とも呼ばれています。
(ちなみに、日本はアメリカに次ぐ世界有数のダイヤモンド消費国です。)

シエラレオネ内戦は結局イギリスの介入などもあって02年終結、RUFのサンコーは03年フリータウンの病院で病死します。
テーラーは97年にリベリア大統領になりますが、国際社会の圧力、国内抵抗運動のため03年ナイジェリアに亡命。
06年に拘束され、シエラレオネ内戦に関与、虐殺や非道な行為を働いたとして国際戦犯法廷から起訴されました。

シエラレオネ内戦において最大20万人が殺害され、36万人の国際難民が発生したと言われますが、この内戦を悲惨にしたのはサンコー等RUFの残虐行為です。
彼らは何千人もの住民の手足を切断しました。
この内戦の様相は、佐藤陽介氏の書かれた“シエラレオネ 忘れられた内戦”に詳しく紹介されています。
http://www.jca.apc.org/unicefclub/unitopia/2002/Sierra.htm
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RUF兵士は村民を木の切り株などに押さえつけ、斧やなたで手足を切り落とし、そのまま殺さずに逃がします。
耳や口の周囲を切り取ることもあったそうです。
彼らは犠牲者を「大統領のところへ行け。大統領がおまえの手を取り返してくれるぞ。」と嘲り笑ったと言われます。

このような行為について、人権団体では「手足を切断された市民たちは米の収穫作業ができなくなり、食糧をRUFに頼るようになる。シエラレオネ政府軍も食糧の道を絶たれ、国全体が飢餓のために不安定化する。RUFはそれを狙っているのです。」と説明しています。

更にRUFは子供を誘拐・強制的徴募で集めて兵士にしたて、入隊の儀式として、時には両親を殺害し、隣人の手足を切断するように強要したとも言われます。
また、子供達が恐怖心を抱かないように麻薬を与え、元少年兵士の多くが麻薬中毒になっているそうです。
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(片足でサッカーに興じる人達 “flickr”より By dicciomixteco )

地雷も相手兵士を殺さずに足を吹き飛ばし、敵軍の負担を殺すより重くする狙いがあると言われていますが、RUFは地雷よりずっと経済的な方法を選んだということです。
意地悪い言い様ですが、この残虐行為を支えていたのがダイヤモンド、それらの一部は日本の幸せに浸る女性の指を美しく飾る・・・というのが世界の現実の一端です。
なお、少年兵は政府軍も使っていたとの指摘もあります。

何千人も生きたまま手足を切り落とす・・・日本人には想像できないような残虐さにも思えます。
民族の資質が違うのではとさえ思えます。
しかし、内戦も収まったシエラレオネの人々も同様に思うでしょう。
日本でも過去の戦争・植民地支配の過程では、非情な行為があったのでは。

日本人でもシエラレオネ人でも、一端戦争・戦乱の中で狂気が燃え盛ると非道な行為を押し留めるすべのないというのが人間なのかもそれません。
であれば、社会がそのような事態に向かわないように気をつける、危険な芽は早い段階で摘む、というのが賢明な方策でしょう。

シエラレオネでは今月11日大統領選挙が行われ、現在開票・集計中です。
メンデ人の与党シエラレオネ人民党と、テムネ人の全人民会議党の間で激しい選挙戦が戦われました。
EUからは選挙監視団が派遣され、「選挙の管理は非常にうまくいった。」と評価しています。
しかし、両陣営はすでに「相手陣営に不正投票や脅しがあった」と非難の応酬をおこなっており、接戦が予想される選挙結果を受け入れない恐れもあるそうです。

(写真は投票を待つ女性達 “flickr”より By missbax )




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