孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ベネズエラ  野党勢力は明日23日に人道支援物資を搬入 政権側は実力阻止の構え 軍の動向は?

2019-02-22 22:57:59 | ラテンアメリカ

(ベネズエラの首都カラカスで演説する、暫定大統領を宣言した野党指導者フアン・グアイド氏(2019年2月16日撮影)【2月17日 AFP】 マドゥロ大統領よりはカリスマ性があるようにも)

【インフレ率1000万%、難民500万人】
南米・ベネズエラで反米・左派のマドゥロ政権とアメリカの後押しも受けて野党勢力を代表する形で暫定大統領就任を宣言した35歳の若手政治家グアイド氏が激しく対立する状況については、簡単にまとめると以下記事のようにも。

****原油価格の下落で経済混乱、周辺各国に難民続々 ベネズエラ****
ベネズエラの野党指導者、グアイド国会議長が、独裁色を強めるマドゥロ大統領の退陣を狙い暫定大統領就任を宣言して、23日で1カ月となる。

米国や近隣国、欧州の主要国などがグアイド氏を承認し、中露などがマドゥロ政権を支援する構図が続くが、グアイド氏を支持する国が増えつつあり国際社会ではグアイド氏に追い風が吹いている。
 
グアイド氏の暫定大統領就任を承認、支持する国は、すぐ承認した米国を皮切りに現在は約60カ国に増えている。一方、内政干渉を禁ずる国連憲章を守るとして14日に会合を開いたマドゥロ政権寄りのグループは、参加した外交官は中露など16カ国にとどまり、国の数ではグアイド氏側を大きく下回る。
 
しかもロシアのリャブコフ外務次官は12日、「状況打開に向け努力する準備がある」と双方の対話を促す認識を示し、当初、グアイド氏側と接触する予定はないとしていた姿勢を微妙に変えた。

13日付の米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは、中国外交官が米ワシントンでグアイド氏側とベネズエラの債務問題に関し協議したと伝えた。中国外務省は直後に報道内容を否定したが、水面下で接触している可能性がある。
 
背景にはベネズエラの経済混乱の深刻さがある。世界一の石油埋蔵量を誇るベネズエラの国民生活はかつて安定していた。しかし反米左派の社会主義政策を進めたチャベス前大統領の死去後、2013年にマドゥロ氏が就任すると、原油価格が大幅に下落して経済危機が深まり、物資不足やハイパーインフレなどのため大勢が国外へ逃げた。
 
ベネズエラと国境を接するコロンビア北部ククタでは、送金業者にベネズエラからの難民たちが行列を作る。並んでいたベネズエラの主産業である石油の供給会社に勤めていたヒルマイン・ピニャさん(40)は「食糧があっても、ベネズエラではとても高くて買えない」と険しい表情で嘆いた。(中略)
 
そばには、難民女性の髪を切り、カツラ用に買い取る業者もいる。
 
スーツケースいっぱいに荷物を詰めたマリア・ピニェイロスさん(28)は20日に国境の橋を渡ってきた。(中略)ベネズエラでの生活を「1日1食で切り詰める日もあった。2人を育てるのは限界だった」と振り返り、疲れた表情を見せた。
 
ベネズエラの3大学の共同調査では、食料や医薬品が慢性的に不足するようになったため、市民約6000人の平均体重が17年の1年間だけで11キロ減少した。感染症が広がり、栄養失調患者も増えている。
 
国際通貨基金(IMF)によると、18年のインフレ率は137万%で、19年は1000万%と見積もり、紙幣のボリバルはすぐに紙くずのように価値が下がる。13〜18年で経済規模は4割以上、縮んだとの試算もある。
 
こうした経済危機の結果、15年以降に300万人が国外に逃れたとされる。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の昨年11月の調査では、難民らはコロンビアに100万人超、ペルーに50万人超、エクアドルに22万人超が滞在。19年中には500万人に達すると予測され、周辺国は対応に苦慮している。
 
一方で、マドゥロ政権側は経済危機の主因は米国の経済制裁で、仕掛けられた「経済戦争」だと主張している。【2月21日 毎日】
*********************

“原油価格の下落で経済混乱”とありますが、確かに原油価格下落が大きく影響してるものの、基本的には石油収入のバラマキに終始し、経済原則を無視した無理な価格・市場統制などで生産活動を停滞させてきた、マドゥロ政権の経済失政が混乱の原因でしょう。

【国際情勢は反政権派支援の流れ 日本政府も】
マドゥロ政権を支持しているロシア・中国も、不利な形勢を受けて、微妙に立ち位置を変えつつあるようです。
いつもにように“慎重”な対応の日本外交ですが、ようやく旗色を明らかにしています。

****日本政府、反政権派の暫定大統領を支持 ベネズエラ****
河野太郎外相は19日の記者会見で、南米ベネズエラの暫定大統領就任を宣言したグアイド国会議長について「我が国としてグアイド暫定大統領を明確に支持する」と表明した。

日本政府はマドゥロ政権について「昨年5月の大統領選の正統性に対する国際社会の疑念に答えていない」としつつも、どちらを支持するか明らかにしていなかった。(後略)【2月19日 朝日】
********************

【人道支援物資で政権を揺さぶるアメリカ 反政権派は23日を支援物資搬入の日に】
アメリカ・トランプ政権は、アメリカの裏庭にあってキューバと並んで目障りな反米マドゥロ政権を潰す絶好のチャンスと見て、軍事介入も敢えて否定しないような積極的関与の姿勢を見せていますが、まずはグアイド氏の要請を受ける形で食糧・薬品・日用品に困窮しているベネズエラに対する人道支援物資の搬入という形でマドゥロ政権を揺さぶっています。

マドゥロ政権にすれば、アメリカからの支援を受け入れることは自らの失政を認めることにもなり、国境の橋を封鎖してでも搬入を阻止する構えです。

****ベネズエラへの援助物資、第2弾がコロンビア到着 米国際開発局****
米国際開発局(USAID)は16日、政情不安が続き人道危機の悪化が懸念されるベネズエラへ向けた援助物資の第2弾が同日、コロンビア、ベネズエラの国境地点に到着したと発表した。

声明によると、米マイアミ州の空港を離陸した米空軍輸送機C17がコロンビアのククタに運んだ。約2万5000人分の衛生製品の一式や子ども約3500人分の栄養食品などが含まれる。

医薬品や補助食など援助物資の第1陣は今月8日に輸送されたが、マドゥロ大統領はベネズエラとコロンビアを結ぶ橋を封鎖し搬入を阻止した。反米左派政権率いる同大統領は「我々は物乞いではない」と国際援助を拒絶している。

CNN記者によると、第1陣の物資はベネズエラ内への輸送を待ち、倉庫内に保管されている。第2陣の物資も同様の措置となる。(後略)【2月17日 CNN】
******************

グアイド氏は人道支援をも拒否するマドゥロ政権の国民の生命・生活を無視した対応を鮮明にすることで、反政府運動を加速・拡大し、今後のカギを握る軍部の支援をも取り付けようとしています。

グアイド氏側は明日はん定め、政権との対立が先鋭化しています。

****米からの支援物資搬入にボランティアを動員、ベネズエラ野党指導者****
政情不安が続くベネズエラで、暫定大統領就任を宣言した野党指導者フアン・グアイド国会議長は16日、米国による人道支援物資搬入を手伝うために数十万人規模のボランティアを来週動員すると発表した。
 
ベネズエラへの人道支援をめぐっては、米国から食料など大量の支援物資がコロンビア側の国境に到着しているが、ニコラス・マドゥロ大統領はこれを米国の侵略と呼び、国境警備強化を言明。ベネズエラへの支援物資搬入が積み上げられたままとなっており、国内における政治対立の新たな火種となっている。
 
ベネズエラ暫定大統領として50か国超から承認されているグアイド氏が首都カラカスで行った集会には、白いTシャツに国旗のカラーをあしらった帽子をかぶる支持者らが多数集結。グアイド氏は演説で、国内の各国境ポイントにおける搬入物資を手伝うボランティアにこれまでに約60万人が申し込んだと明かした。
 
さらに、支援物資搬入のボランティア活動は国境だけでなく、国内全域の各都市で23日に行われると述べた。
 
グアイド氏によると、支援物資はコロンビアに届いているだけでなく、さらに多くの物資がブラジルやベネズエラ北方沖のオランダ領キュラソーから搬入されるという。
 
すでに米国からの物資数トンがコロンビア側の国境沿いの都市、ククタに到着している。(後略) 【2月17日 AFP】
*********************

【政権側は軍を配置して実力阻止の構え】
マドゥロ政権側は、物資が集積しているククタに通じる橋を封鎖しただけでなく、ブラジルやコロンビアとの国境を閉鎖し、海上輸送も阻止する構えです。

****ベネズエラ海上も封鎖 支援物資搬入を阻止****
独裁色を強める南米ベネズエラのマドゥロ政権は19日、カリブ海のオランダ自治領キュラソーなどとの海域を封鎖したと明らかにした。暫定大統領就任を宣言した野党指導者、グアイド国会議長が準備を進める人道援助物資搬入を防ぐのが狙い。(後略)【2月20日 毎日】
*****************

****ベネズエラ政権、ブラジル国境閉鎖を発表 人道支援物資搬入阻止狙う****
独裁色を強める南米ベネズエラのマドゥロ大統領は21日、ブラジルとの国境を閉鎖すると発表した。またコロンビアとの国境の全面的な閉鎖を検討していると明かした。

暫定大統領就任を宣言した野党指導者のグアイド国会議長が人道支援物資の搬入を予告している23日を前に、搬入阻止の動きを強めている。
 
グアイド氏は援助物資を、コロンビア北部ククタ▽ブラジル北部パカライマ▽カリブ海のオランダ自治領キュラソー――の3カ所から陸路や海路で一斉搬入する準備を進めている。

マドゥロ政権側は既にククタ・ルートとキュラソー・ルートを封鎖しており、今回残り一つも閉鎖することで、3方面からの搬入を阻止する形になる。地元メディアによると、パカライマと接するベネズエラの町に軍が派遣された。
 
ブラジルは19日に、グアイド氏の呼びかけに応じ、米国と協力して国境に支援物資を移送すると発表したばかり。マドゥロ氏は21日の国営放送で「米帝国がその操り人形と共にやっていることは挑発だ」と非難し、ブラジルとの国境を「完全に閉鎖する」と述べた。

また「このような決定をしたくないが、コロンビアとの国境の全面閉鎖を検討している」と述べた。軍司令官に囲まれて放送に現れ、軍を掌握していると強調した。(後略)【2月22日 毎日】
*******************

【23日に向けて高まる緊張】
一方のグアイド氏は23日の搬入日に備え、物資が滞留するククタに通じる国境の町に野党議員らと到着しています。
また、両勢力の間の緊張が高まる中で、グアイド氏の呼びかけに応じ、在外高官らが政権から離反する動きが続いています。

****ベネズエラ政権、コロンビア国境の封鎖も検討 野党側、23日に支援物資搬入予告****
(中略)一方、21日にククタで記者会見した野党国会議員のガビ・アレヤーノ氏はククタや周辺の四つの橋から23日に同時に支援物資の搬入を始めると明かし、「援助は国境近くの州だけでなく、ベネズエラ全土に届く」と自信をみせた。

地元メディアによると、グアイド氏や野党議員約80人は21日、支援物資受け取りのため、ククタとの国境の町に到着した。
 
また、ベネズエラ軍情報機関トップを長く務めた退役将軍の与党国会議員カルバハル氏が21日、グアイド氏支持を表明した。野党側は21日、米国駐在の外交官11人がグアイド氏を承認したと発表。国連駐在武官の大佐も20日、ネットに投稿したビデオでグアイド氏支持を打ち出した。グアイド氏側による切り崩しが進んでいる。
 
ククタでは22日、グアイド氏を支援する英大富豪リチャード・ブランソン氏が企画し、人道支援資金を募るコンサートが開かれる。一方、ククタと国境を挟んだベネズエラ側では22、23両日、政権側による外国の介入排除を訴えるコンサートが予定されている。【2月22日 毎日】
*****************

人道支援物資搬入については、“バスを連ねてボランティアを国境に送り込み、到着する支援物資を受け取る計画だが、マドゥロ大統領の命令で軍が国境沿いに設置したフェンスをどのように突破するのかについてグアイド氏は明かしていない。”【2月18日 AFP】とも。

国境・海上を封鎖する政権側、明日23日搬入を決行しようとする反政権側・・・まさに決戦前夜の様相を呈していますが、軍部の動向が今後のカギを握っています。

これまでのところマドゥロ政権側は、野党側の動きを実力行使で潰す姿勢を見せており、一歩も引かない構えです。

****治安部隊、5日間で41人殺害=ベネズエラ政権を非難―国際人権団体****
国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは20日、政情不安が続く南米ベネズエラで反政府デモが活発化した1月21日から25日までの5日間で、治安部隊が市民少なくとも41人を殺害したとの報告書を公表した。この間、900人以上が不当に身柄を拘束され、拷問などを受けたという。
 
アムネスティのゲバラロサス米州担当責任者は「マドゥロ(大統領)の配下にある治安当局は、変革を求める人々をコントロールする手段として恐怖と罰を用いている」と独裁的なマドゥロ大統領を強く非難した。
 
報告書は特に警察特殊部隊FAESの行動を問題視。同部隊による「処刑」が主に貧困地域で6件あり、いずれも若者が犠牲になったと指摘した。

同国西部のカロラでは1月24日、前日にデモを主導した29歳の青年の家にFAES隊員20人以上が押し入り、青年を拷問。居合わせた家族を連れ出した後に射殺し、銃撃戦があったかのように偽装工作した。【2月21日 時事】 
******************

【注目される軍の動向 今後の流れを大きく左右】
こうした状況で、物資搬入を決行しようとする野党勢力を、国境に配置された軍が実力で阻止するという展開になると、大量の流血も危惧されます。

また、そのような混乱状態になった場合、アメリカ・ブラジル・コロンビアなど関係国・周辺国の動向も注目されます。

*****トランプ氏、マドゥロ支持に警告 ベネズエラ軍に、「全てを失う」****
トランプ米大統領は18日、ベネズエラ軍に対し、反米左翼マドゥロ大統領を支持するなら「あなたたちは全てを失うだろう」と警告、暫定大統領就任を宣言した野党出身のグアイド国会議長を支持するよう求めた。

「米国は平和的な権力移行を模索しているが、全ての選択肢がテーブルにある」と述べ、軍事介入を辞さない構えを改めて示した。(後略)【2月19日 共同】
*****************

一方で、もし軍が実力で阻止することを控えるという展開になれば、強権支配を続けてきたマドゥロ大統領の命運も尽きたということにもなり、海外亡命なども現実の問題になってきます。

軍部高官は政権と利害を共通する関係にありますが、一般兵士の動向は?

“反政権派の集会に参加を訴えるビラの文句は「軍に呼びかける。人道支援物資の搬入を勝ち取ろう」だった。物資搬入をてこに、政権を支え続ける軍を切り崩す狙いがうかがわれる。兵士やその家族も食料不足に直面しているとされる。”【2月13日 朝日】

明日が支援物資搬入の日とされる23日です。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 国内外で進む、旧来の概念・... | トップ | 地球温暖化対策を呼び掛ける1... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ラテンアメリカ」カテゴリの最新記事