孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

日本政府  特定秘密保護法の現状などに関する国連調査を来年秋以降に延期

2015-11-20 23:17:56 | 世相

(秩父神社の「お元気三猿」 【秩父ナビ http://秩父.1epi.info/post_2.html】)

【「予算編成などで担当者のスケジュールが合わない」?】
「どうして?」と首をかしげたくなるような話。

****表現の自由」調査、突如延期=日本政府が国連報告者に要請****
国連人権理事会のデービッド・ケイ特別報告者(表現の自由担当)が12月に予定していた日本での現地調査が、日本政府の要請で突如延期になったことが20日、明らかになった。ケイ氏は2013年に成立した特定秘密保護法の現状などを調査する予定だった。

岸田文雄外相は「予算編成作業などで十分な受け入れ態勢を整えることが困難なため」と説明した。ケイ氏の前任のフランク・ラ・ルー特別報告者は13年、特定秘密保護法について「秘密の範囲が非常に広範で根拠が不明確」と懸念を示していた。

ケイ氏は12月1日から8日まで日本政府やNGO関係者と会い、表現の自由に関する調査を予定していた。しかし、ケイ氏のブログによれば、ジュネーブ国際機関日本政府代表部から今月13日に、来年秋まで訪日を延期してほしいという要請があった。ケイ氏は日本側に再考を求めたが、受け入れられなかったという。【11月20日 時事】 
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“外務省人権人道課によると、ケイ氏側の希望に沿って12月1日から8日までの訪日で調整していたが、11月中旬に同省から「予算編成などで担当者のスケジュールが合わない」と延期を求めたという。その際、「国会などの時期は避けてほしい」とも要求し、事実上、来年秋以降の時期を提示した。”【11月20日 朝日】

「来年秋以降」ということは、1年近く先延ばしということです。「予算編成などで担当者のスケジュールが合わない」という理由でそんな先延ばしするというのは奇妙な話です。

要するに、特定秘密保護法に批判的な結果になることも予想される調査は受けたくないということでしょう。
「来年秋以降」というのは、来年の参院選が終わってからということでしょうか?

支持率で自民党が圧倒的に高く、野党が壊滅状態にあることに加え、改選議席の点でも民主党の大幅減が予想されることなどから、自民圧勝が予想される参院選ですが、これ以上一極集中してどうするのでしょうか?改憲を実現するためには更に上乗せしたいということでしょうか?

あるいは、先日、国連の「子どもの売買、児童売春、児童ポルノ」に関する特別報告者が来日した際の記者会見で「日本の女子生徒のおよそ13%が援助交際に関わっている」と発言して、「どこからそんな数字が出るのか?」と問題となった件もあって、政府には国連調査に対する拒否感があるのでしょうか。

(この「援交」報告に関して言えば、「13%」という数字は論外ですが、その点を問題にするのではなく、日本において「援助交際」のような現象が実際に多々見られること、それが国際的には奇妙な社会現象に見えることなどから、あらためて「どこか変では?」と、日本の現状を見直すきっかけにしていいものに思えます。
発言については、11日に特別報告者本人から「13%という数値を裏付ける公的な最近のデータはなく、誤解を招くものだった」との趣旨の書簡が日本政府に届いたそうです。)

政府・与党サイドは、特定秘密保護法のような法律はどこの国でも存在するものだと常々言っていましたが、そうであるなら、その旨を国連調査において縷々説明すればいいだけの話でしょう。
それとも、あれこれ詮索することも許されない、特定秘密保護法の現状は「特定秘密」に該当するということでしょうか?

東京地裁 特定秘密保護法違憲訴訟で合憲・違憲判断に踏み込まず
特定秘密保護法については、違憲訴訟が起こされていましたが、東京地方裁判所はこの訴えを退けています。

****特定秘密保護法 違憲訴訟 訴え退ける****
去年12月に施行された特定秘密保護法に反対するフリージャーナリストなどが、「国民の知る権利を侵害し、憲法に違反する」と主張して、法律の無効や賠償を求めた裁判で、東京地方裁判所は「立法によって取材が困難になったとは認められない」などとして訴えを退けました。

特定秘密保護法は、特に秘匿が必要な安全保障に関する情報を特定秘密に指定し、漏えいした公務員らに最高で10年の懲役を科すもので、去年12月に施行されました。

これについて、フリージャーナリストやフリーライターなど42人は、「取材活動を萎縮させ、国民の知る権利を侵害し、憲法に違反する」と主張して、法律の無効や賠償を求めていました。

18日の判決で、東京地方裁判所の谷口豊裁判長は「原告らの主張は、将来、罰則を適用される可能性があるという抽象的なものにすぎない」として、裁判の対象にならないという判断を示し、法律の無効を求める訴えを退けました。また、賠償を求める訴えについても、「立法によって取材が困難になったとは認められない」として退けました。

判決について、原告の代理人の弁護士は「憲法違反かどうかの判断に踏み込んでおらず、納得がいかない」と述べ、控訴する考えを示しました。【11月18日 NHK】
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この判決の意味するところは、特定秘密保護法を理由とした逮捕・起訴・言論抑圧などが明確に確認できない現在の段階では判断しようがないという趣旨のようです。

****特定秘密保護法違憲訴訟、原告の訴えを「肩すかし」で却下、違憲・合憲の判断を避ける****
・・・・谷口豊裁判長は、特定秘密保護法が実際に適用された具体例が存在しないことを理由に、現在の段階では「法律が憲法に適合するか否かを判断することはできない」として、原告の請求を退けた。(中略)

■解説/特定秘密保護法の性質を無視した判決
この訴訟は、2013年12月に成立し、1年後に施行された特定秘密保護法が憲法に違反するという認定を求めた憲法裁判である。

ところが日本の司法制度の下では、実際に発生した具体的事件で、取り締りの根拠となった法律が適用された場合に限って、違憲か合憲を判断するのを原則としている。

従って特定秘密保護法を理由とした逮捕・起訴・言論抑圧などが明確に確認できない現在の段階では、同法が違憲か合憲かを具体的事件にそくして判断しようがないから、原告の訴えを却下したというのが、この判決のポイントである。

谷口豊裁判長は、特定秘密保護法が違憲であるとも、合憲であるとも判断せずに、原告の訴えを「肩すかし」というかたちでかわしたことになる。

この種の司法判断をするのは、いわゆる憲法裁判所の役割という立場のようだ。その憲法裁判所は、日本の司法制度の中には組み込まれていない。存在しない。

ちなみに特定秘密保護法を根拠とした具体的な逮捕・起訴・取り締りが存在しないから憲法判断が出来ないという見解は、特定秘密保護法の危険な本質をよく理解していない証にほかならない。たとえば理解していても、故意に隠したとしかいいようがない。

と、いうのも特定秘密保護法の下では、公権力が言論を規制する事件を起こしたとしても、その行為が特定秘密保護法に基づいたものであることが公言されることはないからだ。警察は、「特定秘密保護法に基づいて逮捕する」とは宣告しない。起訴後の裁判でも、この点は秘密にされたまま審理が進む。

当然、逮捕された側は、その根拠が分からず、ロシアの作家・ソルジェニーツィンのように「えっ、どうして私が?」と自問することになる。シリアで消息を絶っているジャーナリストの安田純平氏に関する報道が皆無なのも、特定秘密保護法による規制を疑うより仕方がない。つまり、特定秘密保護法が原因で不可解な事態が生じたとしても、それを立証することは出来ないことになっているのだ。

このような事態が発生することが特定秘密保護法の大きな落とし穴であり、問題点であるとすれば、こうした法律の制定行為自体が、憲法の精神を無視した行為にほかならない。事件である。当然、その行為が行き着いた先にある特定秘密保護法が違憲か否かを判断しなければならい。

施行されたばかりの法律の違憲性を問うた今回の裁判を、「門前払い」にした谷口判例は、TPP違憲訴訟や今後に予想される安保関連法案の違憲訴訟にも影響を及ぼしそうだ。こうして日本はファシズムへ向かって進んでいく。【11月19日 MEDIA KOKUSYO】
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海外では、司法判断で重要施策が否定されたり、ときには政権が崩壊するなど「司法クーデター」とも思える事例が見ら、ときに「いかがなものか」という感もあります。

一方で、日本の司法は殆ど憲法判断に踏み込むことがなく、これまた「いかがなものか」という感もあります。
どっちに転んでも微妙な問題です。

ただ、上記記事が指摘するように、具体事例について特定秘密保護法が原因であることが明らかにされないにもかかわらず、「特定秘密保護法を根拠とした具体的な逮捕・起訴・取り締りが存在しないから憲法判断が出来ない」というのであれば、不可解な論理と言えます。

国際的には問題も指摘されている日本の「報道の自由」】
特定秘密保護法の成立を受けて、日本の「報道の自由」については芳しくない評価もあります。
国境なき記者団が発表する「世界報道自由度ランキング」では、2015年に日本は順位を前年の59位から61位に更に下げています。

****報道の自由度」ランキング、日本はなぜ61位に後退したのか****
日本大学大学院新聞 学研究科教授・福田充

国境なき記者団が発表する「世界報道自由度ランキング」で、2015年に日本が順位を61位まで下げたことが大きく報じられた。その理由は何なのか。言論・報道の自由が保障されている「はず」の日本に対して、なぜそのような評価がなされるのか。その背景を考察したい。

世界報道自由度ランキングとは?
「国境なき記者団」(Reporters Without Borders, http://en.rsf.org/ )は、世界の報道の自由や言論の自由を守るために、1985年にパリで設立された世界のジャーナリストによるNGOである。活動の中心は、世界各国の報道機関の活動と政府による規制の状況を監視することであり、その他にも、世界で拘束された記者の解放や保護を求める運動や、戦場や紛争地帯で危険に晒された記者を守る活動など、幅広い活動が展開されている。

その中心的な活動である世界各国の報道機関と政府の関係についての監視と調査の結果をまとめた年次報告書が「世界報道自由度ランキング」(World Press Freedom Index)である。

これは2002年から開始された調査報告書であり、世界180か国と地域のメディア報道の状況について、メディアの独立性、多様性、透明性、自主規制、インフラ、法規制などの側面から客観的な計算式により数値化された指標に基づいたランキングである。

つまり、その国のメディアの独立性が高く、多様性、透明性が確保されていて、インフラが整備され、法規制や自主規制などの規制が少ないほど、メディア報道の自由度が高いとされる指標である。

2002年から2015年までの間で13回発表されているが、国際的には、フィンランド、ノルウェー、デンマークなどの北欧諸国の報道がランキングの上位を占めてきた。一方で、毎年の変動はあるものの、アメリカやイギリス、フランスといった先進国は、その時代情勢によって10位代から40位代の中間よりやや上位を推移している。

また、中国や北朝鮮、ベトナム、キューバといった社会主義諸国のランキングは170位代前後を推移し、常に最下位レベルである。中東のシリアやイラン、アフリカで紛争の続いたソマリアやスーダンなどのランキングも常に最下位レベルである。

このように、国家の体制により、または国内の政治情勢により、政府とメディアの関係は大きな影響を受け、メディア報道の自由度が決まってくるという考え方である。同報告書では、2014年に報道の自由が世界的に低下したとされており、その一因をイスラム国やボコ・ハラムなど過激派組織の活動によるものと指摘している。

日本の評価は?
日本のランキングは2002年から2008年までの間、20位代から50位代まで時代により推移してきたが、民主党政権が誕生した2009年から17位、11位とランキングを上げた。2008年までの間は欧米の先進諸国、アメリカやイギリス、フランス、ドイツと変わらない中堅層やや上位を保っていたが、民主党政権誕生以降、政権交代の実現という社会的状況の変化や、政府による記者会見の一部オープン化もあり、2010年には最高の11位を獲得している。

しかしながら、2011年の東日本大震災と福島第一原発事故の発生の後、2012年のランキングでは22位に下落、2013年には53位、2014年には59位を記録した。そして今年2015年にはついに過去最低の61位までランキングを下げる結果となった。自由度を5段階に分けた3段階目の「顕著な問題」レベルに転落した状況である。

なぜ日本の順位は後退したのか?
世界報道自由度ランキングのレポートでは、日本の順位が下がった理由を解説している。ひとつは東日本大震災によって発生した福島第一原発事故に対する報道の問題である。

例えば、福島第一原発事故に関する電力会社や「原子力ムラ」によって形成されたメディア体制の閉鎖性と、記者クラブによるフリーランス記者や外国メディアの排除の構造などが指摘されている。

戦争やテロリズムの問題と同様に、大震災や原発事故などの危機が発生したときにも、その情報源が政府に集中することにより、「発表ジャーナリズム」という問題が発生する。政府が記者会見で発表した情報をそのまま鵜呑みにして報道する姿勢である。

また、同様に戦場や被災地など危険な地域に自社の記者を派遣しないで、フリー・ジャーナリストに依存する「コンプライアンス・ジャーナリズム」の問題も重要である。メディアとしての企業コンプライアンスによって、危険な地域に自社の社員を派遣できないという状況から、危険な地域に入るのはフリー・ジャーナリストばかりになるという構造的問題である。

このような日本のメディアの状況下で一昨年に成立した特定秘密保護法の成立が日本の順位下落に拍車をかけた形である。特定秘密保護法の成立により、戦争やテロリズムに関する特定秘密の存在が自由な報道の妨げになるという評価である。日本が置かれる国際状況や、日本国内の政治状況が大きく変化している現在こそ、日本のメディア、ジャーナリズムに自浄作用と改革が求められている。【3月4日 THE PAGE】
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この種の「ランキング」には、「幸福度」のように、数値化された順位にどれほどの意味があるのかよくわからないものあります。

先日、スイスの民間研究機関「世界経済フォーラム」が発表した男女平等の度合いを比較した2015年版のランキングでは、日本は101位ということで、「そんなにひどい状態だろうか?」という素朴な疑問もわきます。

ただ、内部の人間には当たり前に思えていることも、外部の視点で見ると当たり前ではないことも多々あります。
それらを鵜呑みにする必要もありませんが、貴重な参考にはなるでしょう。

外部の視点からは、あまり芳しくないとの評価がある状況で、国際的な調査は先延ばしにする、司法は判断を避けるということでは・・・・。

日常生活との直接的つながりが明確でないこの種の問題に関しては、私を含め、普通の人々には判断が難しいところがあります。
それだけに、国際的な評価とか司法の判断が参考として求められるのですが、それも提供されないのが日本の現状ということでしょうか。

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