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孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

「ベネズエラ孤立化作戦」 米、ベネズエラ産石油・ガス購入国に25%関税 

2025-03-30 23:33:50 | ラテンアメリカ

(ベネズエラ通貨急落、米関税で石油産業に打撃−国民がドル買いに殺到【3月28日 TBS CROSS DIG with Bloomberg】)

【一時はマドゥロ政権には「米国との新たな関係」に期待も】
アメリカ・トランプ政権がベネズエラ・マドゥロ大統領に圧力をかけつつ、ベネズエラに拘束されていたアメリカ人6人を解放させる「取引」で成果をあげたことは、2月2日ブログ“ベネズエラ  アメリカ人6人解放、米からの不法移民の強制送還にも同意 トランプ流「取引」?”でも合取り上げました。

ベネズエラでは大統領選挙での不正を糾弾する野党勢力の反対を押し切って、1月10日、現職のマドゥロ大統領の3期目となる就任式が行われました。

大統領就任前だったトランプ氏は、1月9日に一時的に拘束されたベネズエラの野党指導者マリア・コリナ・マチャド氏に危害を加えないようマドゥロ政権に要請。

トランプ米大統領は1月20日、ベネズエラからの石油購入を停止する可能性が高いと述べ、マドゥロ政権への圧力を強化。

もとよりアメリカとベネズエラはチャベス前政権以来犬猿の仲ですが、トランプ第1次政権は当時の野党指導者だったフアン・グアイド氏をベネズエラの指導者と認めてマドゥロ政権転覆を狙いましたが、失敗した経緯も。

一方、不法移民強制送還を進めるトランプ政権はベネズエラ出身の人たちのアメリカ滞在資格延長を認めないとする方針を発表しました。

不法移民強制送還についてはマドゥロ政権の協力も必要・・・という状況での「取引」の一環でしょうか、両者が話し合い、マドゥロ政権が拘束していたアメリカ人6人を解放、不法移民強制送還についてもマドゥロ政権は受け入れる・・・という話に。

“マドゥロ政権は「米国との新たな関係」に期待を表明”ということで、従来の“犬猿の仲”も変化するのか・・・という動きも一時見られました。

****米強制送還の190人到着=マドゥロ政権「新たな関係」期待―ベネズエラ****
トランプ米政権が不法移民として強制送還したベネズエラ人約190人が10日、母国に到着した。同国に制裁を科す米国との合意に基づくもので、マドゥロ政権は「米国との新たな関係」に期待を表明した。

送還されたベネズエラ人は、米南部テキサス州エルパソから国営航空会社の旅客機2機で帰還。ベネズエラ外務省は、国営航空機が2019年の米制裁発動以来初めて米国に着陸できたとして、「経済封鎖への勝利」と位置付けた。

マドゥロ大統領は「尊重と意思疎通に基づく米国との新たな関係構築」に意欲を示した。【2月12日 時事】
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【マドゥロ政権への圧力を強めるトランプ政権 ベネズエラ産石油・ガス購入国に25%関税】
ベネズエラ・マドゥロ政権側には「米国との新たな関係」への期待もあったのでしょうが、トランプ政権側のマドゥロ政権への厳しい対応には変化はなかったようです。

トランプ大統領だけでなく、キューバ系アメリカ人のルビオ米国務長官も対ベネズエラ強硬派です。

トランプ政権は3月15日、第2次大戦中に日系アメリカ人を強制収容するために使われた敵性外国人法を活用し、ベネズエラのギャング組織のメンバーら数百人を国外に追放するなど、両国の緊張関係が続いています。

****米国務長官、ベネズエラに送還者受け入れ要求 追加制裁警告****
ルビオ米国務長官は18日、ベネズエラに対し、米国から送還された自国民を受け入れなければ追加制裁を科すと警告した。

ルビオ氏は「マドゥロ政権がこれ以上の言い訳や遅延なく、強制送還便を受け入れない限り、米国は新たに厳しい制裁を科すだろう」とXに投稿した。

ベネズエラ通信省はコメント要請に現時点で応じていない。

マドゥロ政権は米国などの制裁に反発しており、ベネズエラを弱体化させることを目的とした「経済戦争」に等しい違法な措置だと主張している。【3月19日 ロイター】
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そして、いよいよベネズエラ経済の根幹でる石油収入への圧力強化も。

****米、ベネズエラ産石油・ガス購入国に25%関税 4月2日発効****
トランプ米大統領は24日、ベネズエラから石油やガスを輸入する国に対し、25%の関税を課すと表明した。4月2日に発効するとした。

トランプ大統領は、ベネズエラが「非常に暴力的な性質」を持つ「数万人」を米国に送り込んできていることが理由と、ソーシャルメディアに投稿した。

米政権は、独裁色を強めるベネズエラに対する制裁を再開しており、今月4日には、米石油大手シェブロンに与えていたベネズエラでの事業許可を取り消すと発表。30日間の猶予を与えていたが、米財務省は24日、猶予期間を5月27日まで延長した。

ベネズエラ産石油を購入する国を関税で罰することでベネズエラの輸出に打撃を与え、値引きを余儀なくさせる可能性があり、トランプ大統領が1期目の2020年に課した同国への二次的制裁と同様の効果をもたらしそうだ。

アナリストらによれば、シェブロンに対する猶予期間延長で米国の顧客に引き渡された石油の代金は同社に支払われると同時に、今後数週間のうちにベネズエラから輸出される原油量、特に米国向けの原油量が急減することは避けられる。

シェブロンはノーコメントとした。

ベネズエラ政府はプレスリリースで「ベネズエラと石油・ガスを取引する国に25%の二次関税を課すという新たな攻撃を断固として拒否する。この恣意的で違法かつ望みのない措置は、われわれの決意を弱めるどころか、わが国に対して課された全ての制裁の失敗を裏付けるものだ」とした。

<対シェブロン猶予期間延長>
トランプ大統領は記者団に対し、今回の関税は既存の関税に上乗せされると述べた。

原油価格は関税発表で1%上昇したが、シェブロンに対する猶予期間延長を受けて、上値は抑えられた。

中国は、石油輸出国機構(OPEC)加盟国であるベネズエラの石油の最大の買い手。直接および間接的にベネズエラ産の原油と燃料を1日当たり約50万3000バレル輸入し、これは総輸出量の55%を占める。

スペイン、イタリア、キューバ、インドも、ベネズエラ産原油を購入している。

コンサルティング会社ゴールドウィン・グローバル・ストラテジーズのデービッド・ゴールドウィン社長は新たな関税について、ロシア産石油に対する世界的な需要を増加させるという皮肉な効果をもたらす可能性があると指摘。「中国やインドはロシア産原油を買えるのに、ベネズエラ産を入手するという追加関税リスクを冒すことはないだろう」と述べた。【3月25日 ロイター】
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【シェブロンに続き「ベネズエラ孤立化作戦」】
米石油大手シェブロンに続き、トランプ政権は共和党献金者の「石油王」企業にもベネズエラからの撤退命令を。

****トランプ氏、石油会社にベネズエラ撤退命じる 共和党献金者の企業も****
富豪ハリー・サージェント氏の企業、シェブロンに続き「ベネズエラ孤立化作戦」の標的に

米共和党の献金者である石油王ハリー・サージェント3世氏は、米国と南米ベネズエラの対立関係を緩和させようと水面下で取り組んできたことで知られる。だがトランプ政権は28日、同氏の石油取引会社にベネズエラからの撤退を命じた。

サージェント氏が所有するフロリダ州の複合企業の一部であるグローバル・オイル・ターミナルズは、米財務省からベネズエラでの事業許可を取り消された。

同国で事業を展開するスペインの石油・ガス会社レプソルや他の外国石油会社も同様の措置を受けた。米石油大手シェブロンは先月、同様の通知を受け取っていた。事業縮小の期限は5月下旬とされている。

これはベネズエラ孤立化に向けたトランプ政権の作戦をエスカレートさせたもので、ベネズエラ人の強制送還対象者の受け入れに消極的な態度への不満などが背景にある。

サージェント氏はトランプ氏のフロリダ州の私邸「マールアラーゴ」でゴルフをプレーし、その翌日にはベネズエラの首都カラカスに向かうといった行動が知られており、米国のベネズエラにおける商業的関与を深化させようと働きかけてきた。

ベネズエラには世界最大級の石油・ガス埋蔵量があるとされている。同国のニコラス・マドゥロ大統領はサージェント氏を「アブエロ」(スペイン語で祖父の意)と呼んでいる。(中略)

財務省は3月4日、シェブロンがベネズエラで石油を生産することを認めるバイデン政権時代の許可を正式に取り消していた。事業撤退期間として30日間を与えたが、物流面で実行は困難だった。トランプ政権は24日、シェブロンの事業許可を5月下旬まで延長した。【3月30日 WSJ】
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国営ベネズエラ石油(PDVSA)と契約しているベネズエラのガス会社にアメリカが与えていたライセンスも取り消されたとのこと。

トランプ政権の「ベネズエラ産石油・ガス購入国に25%関税」で、ベネズエラ通貨は急落しています。

****ベネズエラ通貨急落、米関税で石油産業に打撃−国民がドル買いに殺到****
ベネズエラ人がドル買いに走り、同国通貨が過去最安値を付けている。トランプ米政権が同国の石油産業を締め付け経済危機が再燃するとの懸念が高まっているためだ。

トランプ大統領は今週、ベネズエラ産石油購入国に25%の関税を賦課することを認める大統領令に署名し、同国のマドゥロ政権への圧力を強めた。これを受け同国産石油の主要な買い手に動揺が広がり、出荷停止やタンカーの航路変更の動きなどが見られた。

ベネズエラは為替レートの安定を維持するため、石油収入を為替市場に投じており、この状況は通貨ボリバルへの圧力となる。大幅なドル不足が見込まれる中、企業・個人ともにドルを買うため闇市場に殺到している状況だ。

ボリバルの並行レートは、27日に1ドル=106ボリバルに下落。年初は1ドル=66ボリバル程度で推移していた。公式レートとの差は過去5年余りで最大となっている。

コンサルティング会社エコアナリティカのAGCディレクター、アレハンドロ・グリサンティ氏は米国の措置について「キャッシュフローと石油生産の観点で米政権がベネズエラ政府に取った最も強力な措置だ」と指摘している。

マドゥロ政権はドルの使用を広く認めるなどして経済の安定化を図ってきたが、ボリバル急落でインフレが加速し、経済の安定が崩れる恐れもある。(後略)【3月28日 Bloomberg】
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【ルビオ国務長官 ベネズエラが隣国ガイアナを攻撃すれば、米軍の力を行使してガイアナを守ると厳しく警告】
なお、約1年前の昨年4月4日ブログ“ベネズエラ  「公正さ」は期待できない7月大統領選挙 隣国ガイアナとの石油資源をめぐる争い”でも取り上げたように、ベネズエラは隣国ガイアナと石油資源の領有権をめぐって緊張がありましたが、依然としてベネズエラは軍事行動もチラつかせながら領有権を主張しているようです。

この件に関して、ルビオ国務長官は米軍の力を行使してガイアナを守るとマドゥロ政権に対し厳しく警告しています。

****ベネズエラが石油資源豊富なガイアナ攻撃すれば武力行使、米国務長官が警告****
米国のマルコ・ルビオ国務長官は27日、ベネズエラが新たに石油資源を発見した隣国ガイアナを攻撃すれば、米軍の力を行使してガイアナを守ると厳しく警告した。

キューバ系米国人のルビオ氏が嫌うニコラス・マドゥロ大統領率いるベネズエラは、ガイアナが実効支配するエセキボ地域の領有権の主張を強めており、今月初めには侵入したと非難された。

ガイアナを訪問したルビオ氏は共同記者会見で、「今、国務長官として断言できる。冒険主義には結果が伴う。攻撃的な行動には結果が伴う」と述べた。

米石油大手エクソンモービルによるガイアナでの石油事業をベネズエラが攻撃した場合、米国はどう対応するかと問われたルビオ氏は、「彼らにとって非常に悪い日、非常に悪い週になるだろう」と答えた。

軍事的な対応を明言することは避けたが、ルビオ氏は「われわれは強力な海軍を有しており、ほぼどこにでも行ける」と述べた。

ルビオは、情報共有の強化などを通じてガイアナとの安全保障協力を強化する協定に署名した。両国は数年前、共同海上パトロールに合意していた。

ガイアナのイルファーン・アリ大統領は、ベネズエラの主張を「不当」と呼んだルビオ氏の立場を歓迎し、「米国の保証により、わが国の領土保全と主権が確保されることを非常に嬉しく思う」と述べた。

ベネズエラのイバン・ヒル外相はテレグラムでの声明で、ルビオ氏の発言を米政府の「脅しと虚勢の古いシナリオ」として拒否し、「われわれは紛争を必要とせず、求めてもいないが、外国の利益がわが国のエセキボに関する現実を書き換えようとすることも許さない」「この紛争から手を引け!」と付け加えた。

米国のマウリシオ・クラベルカロネ中南米特使は以前、米国が湾岸地域と同様の「拘束力のある」安全保障関係をガイアナと築くことを構想していると述べた。湾岸地域では、米軍が石油資源の豊富なアラブ君主国を特にイランから守っている。 【3月28日 AFP】
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