
(【2024年11月22日 CRIonline】中国主導で整備された南米太平洋側では初となるペルーの大型船港「チャンカイ港」 南米とアジアを結ぶハブに)
【“いじめっ子”アメリカ・トランプ大統領に対抗、中国が自由貿易の守護者に】
トランプ関税の脅し、対外援助の凍結、「アメリカ第一主義」の押しつけなど強引なトランプ外交が近隣諸国を遠ざけようとする時、中国がその隙間に割って入る構え・・・・という図式はよく指摘されるところで、中国としてはグローバルサウスと連帯し、“いじめっ子”アメリカ・トランプ大統領に対抗、自由貿易の守護者を自任しようとしています。
特に、そうした傾向が顕著に見られる地域が、これまで「アメリカの裏庭」と呼ばれていた中南米です。中国は従来アジア・アフリカ・欧州に集中していた影響力を、「アメリカの裏庭」中南米にまで拡大しています。
****中南米が中国と貿易関係強化、薄まるトランプ氏の影響力****
リバタリアン(自由至上主義者)として知られるアルゼンチンのミレイ大統領は2023年の大統領就任時に中国を共産主義の「暗殺者」と呼び、対中関係の見直しを示唆していたが、実際にはミレイ政権の1年目にアルゼンチンは大豆やリチウムなどの対中輸出が15%も増加した。
本来は米国の同盟国であるアルゼンチンのこうした実利重視の政策転換は、トランプ米大統領の対南米政策の課題を浮き彫りにしている。豊富な天然資源を抱える南米諸国では近年、コモディティー(1次産品)ブームを追い風に中国の影響力が高まっている。
一方でトランプ政権は脅しや関税をテコに貿易相手国に対して米国の利益になるような条件を飲ませようとしている。既にコロンビア、パナマ、メキシコに譲歩を求めたほか、ブラジルも鉄鋼に対する新たな関税措置の標的となっている。
しかしロイターが取材した政府関係者や外交筋、貿易専門家など6人は、巨大でなお拡大している中国の貿易面での優位性によりトランプ氏の政策は効果がそがれていると指摘した。これは経済上のライバルが世界的に増える中で米国の懲罰的なアプローチが限界に達しつつあることを示している。
ブラジルのルラ大統領に近い高官は、同国経済は米国に依存しておらず、昨年の貿易収支が300億ドルの黒字となった中国の方がはるかに重要だと述べた。また、トランプ氏による関税の脅しは、米国が長年にわたりブラジルを軽視してきた末に打ち出した政策であり、各国はよりリスクの少ない選択肢として中国や欧州、BRICSなどとの関係を模索するとの見方を示した。米国と違い中国は「実利的なパートナー」であり、「ビジネスをしに来ている」とも語った。
ブラジル、チリ、ペルー、アルゼンチンといった資源大国がけん引する形で南米諸国は対中輸出が過去10年間で2倍以上に増加した半面、対米輸出の伸びは小さいことが、ロイターの貿易データ分析で明らかになっている。低成長と高債務に苦しむ南米の指導者にとって中国の巨大市場は極めて重要であり、たとえ政権のイデオロギーが異なろうとも、南米において中国のソフトパワーは強まっている。
<近所のいじめっ子>
ルビオ米国務長官は1月下旬、コロンビアなど南米諸国が中国に接近するリスクについて「馬鹿げている」と一蹴。トランプ政権は短期間で成果を上げたと主張した。トランプ政権は関税をちらつかせてメキシコを交渉の場に引き出して貿易協議に応じさせ、国境警備のための軍隊派遣を約束させた。また、重要な貿易ルートであるパナマ運河を取り戻すと宣言。パナマは中国の「一帯一路」インフラ計画からの離脱を決めた。
ワシントンのシンクタンク「戦略国際問題研究所(CSIS)」のディレクター、ライアン・バーグ氏は、トランプ氏はむしろ中南米を重視しており、スペイン語を話すルビオ氏が初の外遊で同地域を訪問先に選んだと述べた。
米下院中国特別委員会の民主党トップ、ラジャ・クリシュナムルティ議員は、米国は「近所のいじめっ子」にならないよう注意すべきだと語った。「なぜなら、いじめっ子に何が起こるかは明白だからだ。人々はいじめっ子に立ち向かうのだ。それはわれわれの長期的な国家安全保障上の利益にとって極めてマイナスな形を取る可能性がある」と危惧を示した。
<急成長するコモディティー輸出>
中国は南米全体で貿易面の優位性が一段と大きくなっているが、その原動力となっているのが穀物や銅、リチウムといった重要資源だ。米国はこの面で依然として中国をリードしているものの、その差は縮小している。
10年前に銅の主要生産国であるペルーの最大の貿易相手国は米国だったが、今では断トツで中国がトップだ。中国はペルー産の銅を大量に輸入し、両国間の貿易を加速させるためペルー沿岸に巨大な港を建設した。ペルーのアリスタ前経済相は「米国が関税を導入してもペルーにとっての影響は最小限にとどまるだろう」と予想した。
アルゼンチンは米国寄りのミレイ氏が政権を握っているが、やはり中国の影響力は強い。中国はアルゼンチン産の大豆と牛肉の最大の輸出先で、昨年はアルゼンチンのリチウム輸出の約3分の1が中国向けだった。ミレイ大統領の側近は昨年末、「中国と協力することがアルゼンチンの国益に最もかなうのであれば、何の問題もない」と発言している。
コロンビアは米国との貿易関係がはるかに緊密だが、それでも2023年末には中国との外交関係を「戦略的パートナーシップ」へと格上げした。またパナマは2021―23年にかけて中国への輸出額が米国向けを大幅に上回ったものの差は縮小しており、しかもパナマ運河を巡り米国との緊張がくすぶり続けている。
<中国に追い風か>
米国と南米諸国は歴史的に近い関係にあり、文化的にも共通点を持っている。しかしそれにもかかわらず中国は貿易面で本来的に優位性を持っている。
中国と南米の関係は移民の移動や犯罪、麻薬といった問題に左右されず、開発段階の中国では南米産コモディティー(商品先物市場で取引される原油や貴金属、穀物など)の需要が高まることから経済的な相性も良い。
ルビオ米国務長官の中南米歴訪後、中国外務省は珍しく米国の対中南米政策を非難する声明を発表。米国は中国と中南米諸国の間に「不和」を生じさせようとしていると批判し、中南米地域と中国との協力関係の深まりは「不可逆的な流れ」だと強調した。
広東国際戦略研究院のリ・シン教授は、トランプ氏の強硬な外交姿勢は中国にとって有利に働くと指摘。「米国とその同盟国の間に混乱が生じるほど、中国にとって好都合だ」と述べた。【3月7日 ロイター】
本来は米国の同盟国であるアルゼンチンのこうした実利重視の政策転換は、トランプ米大統領の対南米政策の課題を浮き彫りにしている。豊富な天然資源を抱える南米諸国では近年、コモディティー(1次産品)ブームを追い風に中国の影響力が高まっている。
一方でトランプ政権は脅しや関税をテコに貿易相手国に対して米国の利益になるような条件を飲ませようとしている。既にコロンビア、パナマ、メキシコに譲歩を求めたほか、ブラジルも鉄鋼に対する新たな関税措置の標的となっている。
しかしロイターが取材した政府関係者や外交筋、貿易専門家など6人は、巨大でなお拡大している中国の貿易面での優位性によりトランプ氏の政策は効果がそがれていると指摘した。これは経済上のライバルが世界的に増える中で米国の懲罰的なアプローチが限界に達しつつあることを示している。
ブラジルのルラ大統領に近い高官は、同国経済は米国に依存しておらず、昨年の貿易収支が300億ドルの黒字となった中国の方がはるかに重要だと述べた。また、トランプ氏による関税の脅しは、米国が長年にわたりブラジルを軽視してきた末に打ち出した政策であり、各国はよりリスクの少ない選択肢として中国や欧州、BRICSなどとの関係を模索するとの見方を示した。米国と違い中国は「実利的なパートナー」であり、「ビジネスをしに来ている」とも語った。
ブラジル、チリ、ペルー、アルゼンチンといった資源大国がけん引する形で南米諸国は対中輸出が過去10年間で2倍以上に増加した半面、対米輸出の伸びは小さいことが、ロイターの貿易データ分析で明らかになっている。低成長と高債務に苦しむ南米の指導者にとって中国の巨大市場は極めて重要であり、たとえ政権のイデオロギーが異なろうとも、南米において中国のソフトパワーは強まっている。
<近所のいじめっ子>
ルビオ米国務長官は1月下旬、コロンビアなど南米諸国が中国に接近するリスクについて「馬鹿げている」と一蹴。トランプ政権は短期間で成果を上げたと主張した。トランプ政権は関税をちらつかせてメキシコを交渉の場に引き出して貿易協議に応じさせ、国境警備のための軍隊派遣を約束させた。また、重要な貿易ルートであるパナマ運河を取り戻すと宣言。パナマは中国の「一帯一路」インフラ計画からの離脱を決めた。
ワシントンのシンクタンク「戦略国際問題研究所(CSIS)」のディレクター、ライアン・バーグ氏は、トランプ氏はむしろ中南米を重視しており、スペイン語を話すルビオ氏が初の外遊で同地域を訪問先に選んだと述べた。
米下院中国特別委員会の民主党トップ、ラジャ・クリシュナムルティ議員は、米国は「近所のいじめっ子」にならないよう注意すべきだと語った。「なぜなら、いじめっ子に何が起こるかは明白だからだ。人々はいじめっ子に立ち向かうのだ。それはわれわれの長期的な国家安全保障上の利益にとって極めてマイナスな形を取る可能性がある」と危惧を示した。
<急成長するコモディティー輸出>
中国は南米全体で貿易面の優位性が一段と大きくなっているが、その原動力となっているのが穀物や銅、リチウムといった重要資源だ。米国はこの面で依然として中国をリードしているものの、その差は縮小している。
10年前に銅の主要生産国であるペルーの最大の貿易相手国は米国だったが、今では断トツで中国がトップだ。中国はペルー産の銅を大量に輸入し、両国間の貿易を加速させるためペルー沿岸に巨大な港を建設した。ペルーのアリスタ前経済相は「米国が関税を導入してもペルーにとっての影響は最小限にとどまるだろう」と予想した。
アルゼンチンは米国寄りのミレイ氏が政権を握っているが、やはり中国の影響力は強い。中国はアルゼンチン産の大豆と牛肉の最大の輸出先で、昨年はアルゼンチンのリチウム輸出の約3分の1が中国向けだった。ミレイ大統領の側近は昨年末、「中国と協力することがアルゼンチンの国益に最もかなうのであれば、何の問題もない」と発言している。
コロンビアは米国との貿易関係がはるかに緊密だが、それでも2023年末には中国との外交関係を「戦略的パートナーシップ」へと格上げした。またパナマは2021―23年にかけて中国への輸出額が米国向けを大幅に上回ったものの差は縮小しており、しかもパナマ運河を巡り米国との緊張がくすぶり続けている。
<中国に追い風か>
米国と南米諸国は歴史的に近い関係にあり、文化的にも共通点を持っている。しかしそれにもかかわらず中国は貿易面で本来的に優位性を持っている。
中国と南米の関係は移民の移動や犯罪、麻薬といった問題に左右されず、開発段階の中国では南米産コモディティー(商品先物市場で取引される原油や貴金属、穀物など)の需要が高まることから経済的な相性も良い。
ルビオ米国務長官の中南米歴訪後、中国外務省は珍しく米国の対中南米政策を非難する声明を発表。米国は中国と中南米諸国の間に「不和」を生じさせようとしていると批判し、中南米地域と中国との協力関係の深まりは「不可逆的な流れ」だと強調した。
広東国際戦略研究院のリ・シン教授は、トランプ氏の強硬な外交姿勢は中国にとって有利に働くと指摘。「米国とその同盟国の間に混乱が生じるほど、中国にとって好都合だ」と述べた。【3月7日 ロイター】
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****トランプのせいで中南米でのアメリカの存在感は消滅する!?このままでは中国による支配が強まるばかりだ****
バイデン政権の国務次官補代理エリック・ジェイコブスタインが、2025年2月20日付のニューヨーク・タイムズ紙で、トランプはこの1カ月間に、中南米の歴史的同盟国を怒らせただけでなく、中国に大きな好機を与えていると指摘している。
(中略)アルミニウムと鉄鋼への関税、北米近隣諸国に対する関税の脅し、対外援助の凍結、国外追放政策、不条理な領土主張等、トランプが脅しと最後通牒で近隣諸国を遠ざけようとする時、中国はその隙間に割って入る構えだ。
過去25年以上、中国と中南米の経済関係は目覚ましい速度で発展してきた。2000年当時、中国は南米にとって第7位の輸出市場に過ぎなかったが、現在、中国は南米の主要貿易相手国となり、中南米全体でも米国に次ぐ第2位の貿易相手国となっている。
中南米の対中輸出は、13年の1120億ドルから23年には約2080億ドルに急増した。同時に、中南米全域のインフラや政治的に有用な建築物に資金提供する中国のやり方は、非常に魅力的である。ただし、中南米における中国の建設プロジェクトは、現地の労働者の権利や環境基準を無視することが多い。
トランプはこの1カ月間に、最も親密な歴史的同盟国を怒らせただけでなく、中国のために大きな好機を広げてしまった。メキシコとカナダに対する25%の関税案は、北米全域の消費者に打撃を与えるだけでなく、中国がこの地域でより信頼できる経済パートナーとして自国を宣伝する機会を作ることになる。
23年、中南米に米国際開発庁と国務省から20億ドル以上の援助が行われたが、第二次トランプ政権の全面凍結方式は、近隣諸国に米国は信頼できないと映るだけでなく、米国の安全保障をも危険にさらす。米国の援助金は、グアテマラ、ホンジュラス等からの非正規移民や国際犯罪組織を抑制してきた。
中南米諸国への移民送還は、トランプがコロンビアに対する関税とビザ発給禁止で脅したことで明らかになった。短期的には、コロンビアのように、報復を避けるためにトランプの要求を多くの国が受け入れ、トランプ政権は勝利を主張するだろう。しかし長期的には、政権の脅しが裏目に出て、長年の同盟国が米国以外の国との関係強化を模索することになるだろう。
(中略)トランプ政権は速やかに方針を転換する必要がある。さもなければ、貪欲な中国がその空白を埋めるために介入し、ラテンアメリカにおける米国の永続的な衰退を招く恐れがある。(後略)【3月20日 WEDGE】
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****アメリカの裏庭で中ロが影響力拡大...トランプの「敵たち」は中南米をどう攻めている?****
<アメリカの「裏庭」こと中南米で、中国、ロシア、イランが積極投資し影響力を拡大。トランプの恐喝外交で最後に笑うのは敵国なのかも>
ドナルド・トランプの言う「アメリカ・ファースト(アメリカ第一主義)」に、ラテンアメリカ(中南米諸国)は含まれない。パナマ運河は手に入れたいが、移民が勝手に入ってくるのは許さない。それがトランプ流だ。
4年ぶりでホワイトハウスに戻ってきたトランプは、早速不法移民を狩り集めて軍用機に押し込み、南米コロンビアへ強制送還した。しかし、この非人道的な措置に反発した同国政府は米軍機の着陸を拒否。するとトランプは、言うことを聞かなければ高率関税を課すと脅した。
仕方がない。コロンビアは折れて、(少なくともアメリカ側の発表によれば)トランプの要求の「全て」を「遅滞なく無制限に」受け入れた。
パナマ運河は中国が支配しており、そのせいでアメリカの船舶は不当に高い通行料を払わされている。トランプはそう断言してパナマ運河を取り返すと宣言した。これにはパナマ政府が猛反発し、トランプの主張は「虚偽」であり、「パナマ運河はパナマのものであり、今後もそうであり続ける」と切り捨てた。
ただし中国やロシア、さらにはイランが中南米で影響力を強めつつあるのは事実。アメリカとしては何とか押し返したいところだが、トランプ流の脅しが利く保証はない。
トランプは就任直後の大統領令で、メキシコの麻薬カルテルや周辺諸国で暗躍する犯罪組織を「テロ組織」に指定。中国産の合成麻薬フェンタニルがメキシコ経由でアメリカに流入しているとして、メキシコに追加関税を課す意向も示した。
中国は何年も前から、中南米諸国に巨額の投資を行って影響力の拡大に努めてきた。ロシアもそうだし、イランも触手を伸ばしている。
そもそも中南米の国々が(特に経済面で)中国になびくのはなぜか。その理由をアメリカは「理解しなければならない」と言ったのは、イギリス政府で中南米地域を担当する閣外相のジェニファー・チャップマンだ。
実際、一口に中南米といっても国情はさまざまだ。政情が不安定で開発が停滞し、犯罪組織に乗っ取られかねない国もある。ベネズエラのように民主主義に背を向け、アメリカの敵に擦り寄る国もある。メキシコやチリのように、アメリカの緊密な同盟国と見なされてきた国もある。
現に米政府はチリを「中南米におけるアメリカの最も強力なパートナーの一つ」と位置付けているが、先に訪中した同国のマヤ・フェルナンデス国防相(当時)は、中国との防衛協力を深めたいとの意向を示している。
コロンビアの元国防相で、かつて駐米大使も務めたフアン・カルロス・ピンソンに言わせれば、今の中南米は世界の大国が熾烈な攻防を繰り広げる「チェス盤」の様相を呈している。
加速するアメリカ離れ
(中略)もちろん米政府もそういう事情は承知している。そして中国が積極的な投資で経済的な存在感を強め、結果として現地政府の政治的な意思決定を左右するような展開は座視できないと考えている。
しかし、今や中国がアメリカを抜いて中南米諸国の最大の貿易相手国となっている事実は否定できない。
昨年11月、ペルーの首都リマ近郊のチャンカイに巨大な港湾施設が完成した。中国の国有企業コスコ・シッピング(中国遠洋海運集団)が建設を主導し、当然のことながら今後の運用も担うことになる。
こうした流れを、もちろんトランプ政権は好ましく思わない。トランプがパナマ運河の「奪還」を言い出した背景には、パナマが17年に台湾との外交関係を断絶し、中国との国交樹立に転じたという事情もあるはずだ。
バイデン前米政権で米南方軍の司令官を務めたローラ・リチャードソンは昨年、議会でこう証言している。「中国は熟知している。この世界で軍事大国となれるのは経済大国だけだという事実を」【5月7日 Newsweek】
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今月13日には北京中国と中南米カリブ海諸国共同体(CELAC)の閣僚級会議が開催されましたが、習近平国家主席はトランプ米政権を念頭に「いじめや覇権主義は孤立を招くだけだ」として中国の存在をアピールしています。
****中国「米国の裏庭」取り込み 習主席が中南米諸国に「いじめは孤立招く」****
中国の習近平国家主席は13日、北京市で開かれた中国と中南米カリブ海諸国共同体(CELAC)の閣僚級会議で演説した。トランプ米政権を念頭に「関税合戦に勝者はなく、いじめや覇権主義は孤立を招くだけだ」と強調し、新興・途上国の団結を呼びかけた。
米国から大幅な関税削減を引き出した「成果」を追い風に、習指導部は国際社会での影響力を高めようとしているようだ。「米国の裏庭」と呼ばれる中南米諸国を取り込み、米国との持久戦に対応する狙いがあるとみられる。
習氏は演説で「一国主義と保護主義の逆流に直面する中、ラテンアメリカ(中南米)と手を携えて共に運命共同体を構築したい」と主張。貿易の促進に加え、デジタル経済や人工知能(AI)、治安対策など幅広い分野で協力を深め、気候変動のような地球規模の課題で共同歩調を取ることを表明した。
習氏は660億元(約1兆3200億円)の人民元貸出枠による資金供与を発表し、巨大経済圏構想「一帯一路」によるインフラ整備への支援を約束した。
一帯一路を巡っては、米国の圧力にさらされたパナマが離脱を発表したが、今回の会議に花を添える形でコロンビアが新たに参加を表明し、中国が巻き返しを図っている。
CELACは中南米、カリブ海の全33カ国が加盟。2015年の第1回開催から10年となる今回の閣僚級会議には、ブラジルのルラ大統領やコロンビアのペトロ大統領など一部首脳も出席。トランプ米政権の存在が両者の距離を縮める「磁力」となっている現状が浮かび上がった。
中国と中南米諸国の24年の貿易総額は5184億ドル(約76兆円)で、過去10年間でほぼ倍増した。対米依存の脱却を急ぐ中国は、ブラジルの大豆など農産物の輸入を増やしているほか、電気自動車(EV)など自国製品の販路拡大も目指している。
一方、ブラジルやペルーにとって中国は今や米国を上回る最大の貿易相手国。インフラ整備への期待も高く、昨年には太平洋に面するペルーのチャンカイ港が中国主導で整備された。
さらなる大型プロジェクトの計画も持ち上がっている。香港紙によると、ブラジル政府は自国とチャンカイ港を結ぶ鉄道建設について中国側と協議している。巨額の資金負担に中国が応じるかなど不確定要素はあるが、実現すれば南米大陸を横断し、太平洋と大西洋を結ぶ新たな物流ルートとなる。中国としては、米国の影響力が強いパナマ運河の代替ルートを確保する戦略的意義もありそうだ。【5月13日 毎日】
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中国主導で整備されたペルーのチャンカイ港などについては、2024年11月15日ブログ“南米ペルーで開催のAPEC 中国主導の大型深海港「チャンカイ港」 中南米は今後「中国の裏庭」へ”でも取り上げました。
【ビザ要件の緩和、商品展示センターオープンなどで人的、経済的関係強化を目指す】
中国は、中南米諸国のビザ条件を緩和し、人的交流の促進も。
****中国、ビザ免除対象を中南米主要国に拡大 関係強化目指す****
中国は、ビザ(査証)免除政策をブラジル、アルゼンチン、チリ、ペルー、ウルグアイにも拡大する。中南米諸国との関係強化を目指し、多くの欧州・アジア諸国と同等の待遇とする。(中略)
ブラジル、アルゼンチン、チリは中南米で上位5位に含まれる経済大国。
中国のビザ免除措置は昨年から、欧州諸国の大半と日本、韓国に適用されている。
中国は13日、「中国・中南米カリブ海諸国共同体(CELAC)フォーラム」の閣僚級会合を北京で開催。習近平国家主席が演説で、中南米諸国の開発支援に向けた約100億ドル相当の人民元建て融資枠設定や新規インフラ投資、ビザの免除を打ち出した。【5月16日 ロイター】
ブラジル、アルゼンチン、チリは中南米で上位5位に含まれる経済大国。
中国のビザ免除措置は昨年から、欧州諸国の大半と日本、韓国に適用されている。
中国は13日、「中国・中南米カリブ海諸国共同体(CELAC)フォーラム」の閣僚級会合を北京で開催。習近平国家主席が演説で、中南米諸国の開発支援に向けた約100億ドル相当の人民元建て融資枠設定や新規インフラ投資、ビザの免除を打ち出した。【5月16日 ロイター】
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「一帯一路」構想への参加協定に正式に署名したコロンビアに関しては、その商品展示センターが内陸重慶にオープン。更なる交易加速を狙っています。
****中南米産品、中国西部にも浸透 重慶にコロンビア商品展示センター****
中国西部の市場開放が拡大する中、ますます多くの中南米産品が進出し、地元の消費者の好評を博している。中国重慶市の商業街、解放碑地区には4月、コロンビアが中国西部に設立した初の国家級商品展示拠点となる「コロンビア商品(中国)展示センター」がオープン。コーヒー豆やココア、クラフトビールなどが所狭しと並び、多くの消費者が足を止めて品定めをしている。
同センターの姚蔚(よう・い)経理によると、一番人気はコロンビア特産のコーヒーとココアで、数十種類の商品がそろう。展示販売だけでなく、双方向の貿易促進を図るプラットフォームの役割も担い、企業担当者や業者が商談に訪れている。すでに重慶企業10社以上が同センターを通じてコロンビアの展示会に出展し、海外市場の開拓を進めているという。
重慶市民の食卓にはすでに中南米産のさまざまな食材が浸透している。市内の観音橋商業圏にあるスーパーの担当者は「コロンビアのコーヒー、チリのチェリー、ペルーのブドウ、アルゼンチンのアカエビは売れ行きがいい」と話し、中南米の生鮮食品や果物は質が高く価格も手頃で多くの消費者に人気があると語った。
中南米産農産物の中国市場での好調を支えているのが、継続的な通関の円滑化措置と国際物流システムの整備だ。資料によると、中国はすでにチリ、ペルー、コスタリカ、エクアドル、ニカラグアなど多くの中南米諸国と自由貿易協定を締結。14日にはコロンビアが「一帯一路」構想への参加協定に正式に署名した。
姚氏は「今後もますます多くの中南米地域の高品質の商品が中国市場に参入するだろう」と語り、引き続き橋渡しの役割を果たし、民間の交流や往来を促していくことに意欲を示した。【5月16日 新華社】
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