孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

リビアで中国とトルコのドローンが空中戦 変容する戦闘形態 リビア内戦への外国勢力介入

2020-07-15 23:03:02 | 軍事・兵器

(イラン製ドローン【2019年9月6日 NHK】 高価そうに見える写真のドローンと同種かどうかは知りませんが、民生の部品を使って作られた簡易な片道切符の自爆用ドローンなら200ドルでつくれるとか。)

 

【世界に拡散する「貧者の兵器」格安ドローン 日本は25年かけて巨額費用のF35戦闘機を購入】

今日目にした記事の中で一番印象的だったのが下記のドローンに関するもの。

 

****中国とトルコの無人機がリビアで対決、中国の「大勝」―仏メディア****

2020年7月13日、仏国際放送局RFIの中国語版サイトは、中国製の無人機がリビア上空でトルコ製の無人機との「対決」に勝利したと報じた。

 

記事は、海外の軍事サイトが先日報じた内容として、今年上半期に内戦中のリビアにおいてトルコ製の「Bayraktar TB2」無人機が少なくとも17機、中国製の「翼龍」(WL-2)無人機8機が撃墜されたと紹介。ネットユーザーからは「リビアにおける中国製無人機とトルコ製無人機の勝負で、中国が大勝した」との声が出ているとした。

 

その上で、リビアでは現在二つの政府が内戦を展開しており、国連から承認されている国民合意政府(GNA)がトルコの支援を、リビア国民軍(LNA)がアラブ首長国連邦(UAE)、エジプト、ロシアの支援をそれぞれ得ているとし、中国製の無人機はUAEから提供されたものであると伝えた。

 

そして、これまでの両機の分析報告からは、「翼龍」が爆弾搭載量、衛星データ捕捉能力などの性能面で明らかにリードしていることがうかがえると紹介した。【7月15日 レコードチャイナ】

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この記事、二つの側面で注目されます。

ひとつは、ドローンの空中戦という戦闘形態が現実のものとなっているという点。その方面に詳しい人にとっては常識なのでしょうが、部外者からすると「そうなんだ・・・」という感じ。

 

もうひとつは、リビアを舞台にした外国勢力の介入という話。

 

前者の関連で言えば、日本はアメリカからのF35戦闘機購入で空軍力の強化を図っています。

ただ、これには莫大な費用がかかります。中国メディアも訝るほどの。

 

****F-35戦闘機を105機も!日本のどこにそんな金が?―中国メディア****

2020年7月14日、騰訊網は、「F-35戦闘機105機を購入する日本、いったいどこからそんな大金を出すのか」とする記事を掲載した。

記事は、米国が先日日本向けにF-35Aを63機、F-35Bを42機の計105機を売却することを認可したと紹介。総額は231億ドルに達するとし「日本は一体どこからそんな金を持ってくるのか」と疑問を呈した。

その上で、米メディアの報道としてF-35戦闘機の売却計画は「契約の署名から納品、技術支援・トレーニングなどに至るまで全部で25年の時間がかかる」と説明。「一括払いではなく25年間で231億ドルを分割払いすることになるとし、年間9億2400万ドルの支出は日本にとってもそこまで大きな負担にはならない」と解説した。

また、「日本は最終納品までの25年間に毎年4〜5機のF-35戦闘機を受け取ることになる」とし、「米国や中国、ロシアが次世代戦闘機の開発を鋭意進めている状況を考えれば、25年後にはF-35の脅威は大きく低下し、場合によっては『時代遅れ』になっている可能性もある」との見方を示している。

一方で、今回の購入分では空母に搭載可能なF-35Bが42機含まれていることに着目。護衛艦「いずも」の空母化について米国が黙認し、さらには支援を行う可能性さえある中、「F-35の納品ペースが予想よりも早くなることも考えられる」とし、そうなれば日本がアジア太平洋地域において「攻撃性の極めて高い軍事力を備えることになる」と伝えた。【7月15日 レコードチャイナ】

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もちろん、中国メディアが日本のF35購入に関心を示すのは、日本の納税者のためではなく、護衛艦「いずも」の空母化など、中国にとって脅威となりかねないという話があってのことですが。

 

それはともかく、上記のF35戦闘機などに比べれば、タイプによってはドローンはけた違いに安い「貧者の兵器」でもあります。

 

ドローンはこれまでもアフガニスタンや中東などで目指すターゲットをピンポイントで(もちろん誤爆もありますが)殺害・破壊するという高い有効性を示していましたが、改めてその攻撃能力が注目されたのは、昨年8月に起きた、(日本のミサイル防衛の要でもある)パトリオットなどの高価な対空防衛装備を誇るサウジアラビア石油施設への(アラブ最貧国の武装勢力にすぎない)イエメン・フーシ派によるドローン攻撃でした。

 

****拡散する“現代のカラシニコフ” 中東ドローン戦争****

シリアやイエメンの内戦、イスラエルによる周辺国への攻撃・・・日本では決して大きな注目を集めているとは言えないこうした出来事を追っていると、ここ数年で中東の紛争に大きな変化が起きていることがわかります。

 

軍事用ドローンが中心的な役割を担うようになっているのです。かつてアメリカやイスラエルなどが独占していた軍事用ドローンの技術は、敵対する国や勢力に急速に拡散し、紛争の潮流を変えつつあります。

 

1000キロ離れた標的を攻撃

8月17日、「サウジアラビアの油田が軍事用ドローン10機によって攻撃された」というニュースが駆け巡り、原油市場に衝撃が走りました。

 

被害を受けたサウジアラビア東部の「シェイバ油田」は、攻撃の起点となったとみられるイエメンの反政府勢力の拠点から1000キロ以上も離れています。距離を単純に比較すると、反政府勢力のドローンは羽田空港から鹿児島空港までの直線距離を飛行したことになります。

 

反政府勢力がこれまでに行ったドローン攻撃は、これまで半径150キロ範囲だったことを考えると、航行距離は飛躍的に伸びたことになります。

 

アッラーが遣わした鳥の部隊

攻撃に使われたドローンは、イランが開発した軍事用ドローン「アバビール」の改良型と見られています。

 

(中略)イランは今、「アバビール」の機体や設計技術を中東各地で支援する勢力に提供しています。隣国イラクのシーア派民兵組織、レバノンのシーア派組織ヒズボラ、パレスチナのイスラム原理主義組織ハマス、そしてイエメンの反政府勢力フーシ派がこれにあたります。

 

イギリスのシンクタンク、ドローン・ウォーズ・UKが2018年に発表した報告書は、アメリカとイスラエルが10年以上にわたってドローン開発の分野をほぼ独占してきたことに触れた上で、今、“第2世代”が形成されていると指摘。9つの国と、「ノン・ステイト・アクター」、つまり国家ではない5つの勢力の名前を挙げています。その重要な一角を占めるのがイランなのです。

 

イランはこうして技術を手に入れた

(中略)

 

中東の紛争は新時代に突入した

イギリスに拠点を置く調査機関コンフリクト・アーマメント・リサーチのジョナ・レフ部長は、イエメンの反政府勢力と戦うUAE=アラブ首長国連邦などから依頼を受けてアバビールを実際に分解した専門家です。

 

そこからわかったのは、ドローンが民生の部品を使って作られた簡易なものだということ。それゆえに拡散を防ぐことは難しいと分析します。

 

「アマチュアが飛ばすドローンに爆弾が積まれているというイメージです。値段も弾道ミサイルなどに比べると圧倒的に格安に作ることができます。ドイツ、中国、それに日本からと、世界中からアマチュアでも使われる民生品を集めているので流通を規制するのは難しいです」(レフ氏)

 

偵察や攻撃を終えると基地へと戻るアメリカの高額なドローンとは異なり、低コストのアバビールは爆弾を搭載してそのまま目標に突っ込む。自爆攻撃用として使われています。

 

低コストで製造できる軍事用ドローンの技術が拡散していくことは、何を意味するのか。
専門家たちはアバビールの存在が、中東の空の戦闘の常識を覆そうとしていると語ります。

 

「これらのドローンはAK47のドローン版ということになるでしょう。敵に対して恐怖を植え付け、イランとその勢力はどこにでも攻撃ができると示すものなのです」(アメリカの軍事専門家ニコラス・ヘラス氏 NPR記事より)

 

「イラン陣営は200ドルでイスラエル上空にドローンを飛ばし、イスラエルは1発5万ドルの迎撃ミサイルで迎撃しなければならない。全く新しいアプローチです。中東はドローン戦争という新時代に突入したと言えます」(レバノンの軍事専門家エリアス・ハンナ氏)

 

イスラエルの危機感

イラン製ドローンの台頭に危機感を募らせているのがアメリカの同盟国、イスラエルです。(中略)

 

ドローン対策を急ぐイスラエル

(中略)小型の軍事用ドローンに対応するための切り札「ドローン・ドーム」。半径3キロ以内であれば無数のドローンが接近してきても、迎撃用の妨害電波を発射するだけでなく、強力なレーザー光線を照射して焼き落とします。

 

AI=人工知能を使った自動操作も可能で、まるでコンピュータゲームを見るかのような世界です。元祖ドローン大国イスラエルはアメリカとも連携し、ドローン対策兵器の配備を各地で進めています。

 

「貧者の兵器」拡散に歯止めは

アメリカやイスラエルは今でも軍事用ドローンの装備や技術では圧倒的優位に立っています。アメリカはアフガニスタンで繰り返し、ミサイルを搭載したドローンで攻撃を行い、数々の誤爆によって市民が犠牲になってきたと指摘されています。

 

また、パレスチナ暫定自治区のガザ地区やレバノンでは、イスラエルのドローンが上空を飛行する不気味な音が毎日のように確認できます。

 

複数の軍事評論家が指摘するように、後発組のイランは圧倒的な軍事力に対抗する「非対称の戦い」を戦うなかで、新たな切り札として「貧者の兵器」のドローンを手に入れ、拡散させています。

 

世界各地の軍事用ドローンの拡散をどうやって防ぐのか。前述のイギリスの軍事用ドローンに関する報告書は、輸出や使用に関する国際的な規制が必要だと指摘しています。

 

しかし国際社会での議論は進んでいません。むしろ逆行するかのように「アメリカ製の武器をもっと輸出してアメリカ経済を良くしよう」と公言してはばからないトランプ大統領のアメリカは、輸出に向けた規制を緩和する方向で検討を進めているとしています。

 

国際社会が有効な手立てを打てない現状が続けば、中東で先行する「ドローン戦争」が、世界各地の紛争地に広がる事態も時間の問題かもしれません。【2019年9月6日 NHK】

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なお、アメリカにおいても、空軍力の主役は戦闘機からドローンに移りつつあるとも言われています。(もちろん、それぞれの役割があるのは当然の話ですが)

 

下記は、もう2年以上前の記事です。

 

****米空軍「ドローン操縦士の求人」が、他のパイロット求人を上回る****

米空軍では現在、人が操縦するどの飛行機よりも、ドローン操縦士の求人のほうが多いと報道された。ただし、地球の裏側から攻撃を行うこうした操縦者たちは、ストレスによる離職も多いとされている。

 

(中略)米軍の軍用機のうち無人機が占める割合は、2005年には5パーセントだったが、12年には31パーセントにまで上昇していた

 

また、「RQ-4グローバルホーク」は、「1991年の湾岸戦争中に米軍全体が使った帯域幅」の500%を1機が使っているという。

 

一方、地球の裏側から攻撃を行う操縦者たちは、ストレスによる離職が多く、空軍は、年間1万5,000ドルのボーナスを支給するなどして引き止めを図っているとも報道されている【2017年3月18日 WIRED】

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1000キロ離れた目標を200ドルのドローンが攻撃し、ドローン同士の空中戦も行われるようになった時代、F35戦闘機を25年かけて購入するというのは・・・単に中国メディアが指摘するような次世代戦闘機の開発という面だけでなく、戦闘形態・防衛形態そのものの観点で「時代遅れ」になってしまう危険はないのだろうか?・・・と素人は考えてしまいます。

 

もちろん、軍事専門家が決定したことですから、そうした素人考えは的外れにすぎないのでしょうが。

 

【国連事務総長が「前代未聞の水準」と危惧するリビア内戦への外国勢力介入】

リビアでの中国対トルコのドローン空中戦の二つ目の観点、外国勢力の問題についてはグテレス国連事務総長が警鐘を鳴らしたばかりです。

 

****リビア内戦への外国勢力の介入、「前代未聞の水準」に 国連総長****

国連のアントニオ・グテレス事務総長は8日、リビア内戦への外国勢力の軍事介入が、高性能な装備や傭兵(ようへい)の投入により「前代未聞の水準」に達したと述べた。

 

グテレス氏は、国連安全保障理事会の閣僚級ビデオ会合で、西部にある首都トリポリと東のベンガジのほぼ中間に位置するシルト周辺に集結している軍事勢力について、特に懸念を示した。

 

グテレス氏は、「高性能な装備の供与や、戦闘に関与する傭兵の数を含め、外国勢力の介入が前代未聞の水準に達し、リビア内戦は新たな局面に入った」と述べた。

 

さらに、国連が承認している暫定政権「国民統一政府」側の勢力について、「国外から多大な支援を受けて東に向けて進軍を続けており」、現在シルトの西25キロ付近にいると説明した。

 

トルコの支援を受けるGNAは、エジプトとロシア、アラブ首長国連邦の支援を受ける元国軍将校の実力者ハリファ・ハフタル司令官が率いる有力軍事組織「リビア国民軍」と戦っている。

 

グテレス氏は、シルト周辺における驚くほどの軍備増強と、外国勢力のリビア内戦への直接介入が高い水準に達していることに深い懸念を示した。

 

外国勢力の直接介入は、国連の武器禁輸措置と安保理決議、今年1月にベルリンで加盟各国が確認した取り決めに違反に当たるという。しかし、具体的な国名には言及しなかった。 【7月9日 AFP】

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フランスもハフタル司令官側を支援しているとして、トルコと険悪な関係になっています。

 

トルコの積極的介入によって形成を逆転し攻勢を強める暫定政権「国民統一政府」側に対し、今度はロシア・フランス・エジプトがさらにハフタル司令官側への支援を強めて巻き返しを図る・・・結果、リビアはシリアのような外国勢力入り乱れての混戦模様に・・・という事態も懸念されます。

 

もっとも、ロシアはハフタル司令官側一辺倒というわけでもなく、勝ち馬に乗りたいような動きもあるようです。

 

****ロシアがリビアに送る戦闘員と紙幣、その思惑は****

ハフタル氏への支援を強化する一方で、他の重要人物とも接触

 

ロシアがリビアの軍事指導者ハリファ・ハフタル氏を支援するため援軍を送り込んでいる。ハフタル氏は国連が承認するリビア暫定政府の転覆に失敗し、守勢に立たされている。

 

欧州とリビアの関係者によると、ハフタル氏率いる軍事組織が先週、リビア最大の油田を制圧しようとした際に、ロシアから送り込まれた民間軍事会社の戦闘要員が協力した。こ

 

こ数週間、ロシアの貨物輸送機がシリア国内にあるロシアの空軍基地とリビアの間を定期的に往復している。米軍関係者によると、東部の拠点の防衛のため戦闘を続けるハフタル氏へのテコ入れを図る目的で、武器か兵力、またはその両方を輸送している可能性がある。

 

米軍関係者によると、ロシアは複数のミグ29戦闘機を派遣、最新のレーダーシステム1基も持ち込んだ。米アフリカ軍作戦部長を務めるブラッドフォード・ガーリング海兵隊准将は、経験不足の民間戦闘要員が戦闘機を操縦し、国際法を順守しない恐れがあると指摘した。

 

ロシア外務省に軍事支援についてコメントを求めたが回答はなかった。ロシア政府関係者は過去に、民間軍事会社はロシア政府を代表していないと述べたことがある。

 

ロシア製紙幣100トン

またリビアには何度も現金が持ち込まれており、ハフタル氏の活動の資金源となっている。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)がロシアの税関の記録を確認したところ、4月にはリビア東部にあるハフタル氏側の中央銀行宛てにロシア製のリビアの銀行券100トンが送付された。

 

ハフタル氏は長年、リビア内戦の主要勢力の一つを指揮してきた。ただ76歳のハフタル氏は今年、首都トリポリの攻略に失敗してから影響力に陰りが見えており、ロシア政府はハフタル氏に代わる存在も見つけようとしている。

 

ロシア外務省関係者とリビアの関係者によると、ロシアの外交官はリビア東部に拠点を置く政治指導者のアギーラ・サレハ氏や、暫定政府の高官とも接触している。

 

ロシアはこれまで、ハフタル氏のトリポリ攻撃を支援していた時でさえ、内戦の政治的解決を支持し、暫定政府との関係を維持してきた。アナリストによると、リビアの今後の政治と石油開発に対して発言権を確保することがロシアの狙いだという。

 

米国のリビア駐在武官を務め、現在はアナリストとしてカーネギー国際平和財団に所属するフレデリック・ウェーリー氏は「ロシアはハフタルに全く執着していなかった」と話す。「ロシアは政治的な結果がどうであれ、影響力を行使するのに十分なルートを確保できるようにうまく立ち回ろうとしている」(後略)【6月30日 WSJ】

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