(【8月2日 テレ朝news】アンドルーズ空軍基地でバイデン大統領とともに身柄交換者を出迎えるハリス副大統領)
【米ロ 東西冷戦以降では最大規模の身柄交換】
ウクライナをめぐり対立が続くアメリカとロシアの間で、トルコの情報機関が仲介する形で「東西冷戦以降では、最大規模の身柄交換」が8月1日に行われました。
*****「冷戦後最大規模」 欧米側8人、ロシア側16人の収監者を身柄交換****
米政府は1日、米国やロシアなどの収監者計24人の身柄交換が行われたと発表した。ロシアで収監中だった米紙ウォール・ストリート・ジャーナルの米国人記者エバン・ゲルシコビッチ氏も含まれる。欧米メディアは「東西冷戦以降では、最大規模の身柄交換」と報じている。
北大西洋条約機構(NATO)の加盟国で、ロシアとも良好な関係を保つトルコの情報機関が仲介し、首都アンカラで1日に身柄の交換が行われた。
米政府などによると、ロシア側は米国人やドイツ人ら16人を釈放し、欧米側はロシア人8人を引き渡した。このほか、子ども2人もロシアに渡った。
釈放された米国人と米国の永住権保持者は計4人で、ゲルシコビッチ氏のほかは、2020年にスパイ罪で禁錮16年の判決を言い渡された元米海兵隊員ポール・ウィラン氏▽米政府系「ラジオ自由欧州・ラジオ自由(RFE・RL)」の記者、アルス・クルマシェワ氏▽ロシアの反政権活動家のウラジーミル・カラムルザ氏。また、ロシアの人権活動家のオレク・オルロフ氏や野党指導者のイリヤ・ヤシン氏らも釈放された。
米政府高官によると、米政府はロシアの反体制派指導者、アレクセイ・ナワリヌイ氏も身柄の交換に含めようと試みていたが、2月に収監されていた北極圏の刑務所で死亡し、実現しなかったという。
一方、欧米諸国が釈放した中には、ドイツでロシア南部チェチェン共和国の元戦闘員を殺害し、19年に終身刑を言い渡された露連邦保安庁(FSB)の工作員、ワジム・クラシコフ元大佐が含まれる。
米政府高官によると、ロシアはクラシコフ元大佐の釈放を執拗(しつよう)に求めていた。バイデン米大統領はショルツ独首相と電話などで意見交換を重ね、ショルツ氏は最終的に「あなた(バイデン氏)のためにこれをする」として、釈放を承諾したという。
また、バイデン氏は7月21日、大統領選からの撤退を発表する1時間前にも収監者がいるスロベニア側に電話し、最終調整に当たったという。
米国人記者のゲルシコビッチ氏は23年3月、露中部エカテリンブルクで取材中にFSBに拘束された。その後、防衛企業に関する機密情報を米中央情報局(CIA)の指示で収集したとして起訴され、7月に懲役16年の判決を受けていた。
ゲルシコビッチ氏らを乗せた飛行機は1日夜、ワシントン郊外のアンドルーズ空軍基地に到着し、バイデン氏とハリス副大統領が出迎えた。
バイデン氏はこれに先立ち、ホワイトハウスで演説。とりわけドイツの譲歩が重要だったとし、「同盟国なしでは実現できなかった。信頼できる友人と協力することの重要性を示す例だ」と強調した。多国間の協調に否定的なトランプ前大統領を念頭にした発言とみられる。【8月2日 毎日】
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アメリカ側が引き渡した8人のうち3人はアメリカで拘束されていた人物ですが、ドイツ、ポーランド、ノルウェーの各1人、スロベニアの2人も含まれています。
ロシア側が引き渡した16人のうち15人がロシア、1人がベラルーシで拘束されていました。
上記7か国が関係する大型の身柄交換となっています。
【プーチン大統領が固執した暗殺者引き渡し】
ロシア側が拘ったのが上記記事にもあるようにドイツでロシア南部チェチェン共和国の元戦闘員を殺害し、19年に終身刑を言い渡された露連邦保安庁(FSB)の工作員、ワジム・クラシコフ元大佐でした。
****プーチン氏が身柄交換で要求した「闇の人物」****
ドイツで有罪判決を受けた殺人犯の釈放でプーチン氏が発する二重のメッセージ
当地にある公園でロシア政府と敵対する人物を殺害した罪で有罪判決を受けた同国の殺し屋で元情報部員のワジム・クラシコフ氏は、終身刑に服していたドイツの刑務所で看守にこう言った。「私が刑務所で朽ち果てるようなことをロシア連邦は許さないだろう」
同氏が自慢げに語った予想は8月1日に現実のものとなった。冷戦後で最大規模となる身柄交換の一環で、クラシコフ氏はドイツ当局によって釈放され、ロシア側に引き渡された。(中略)
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は自ら、クラシコフ氏の帰国を求めていた。プーチン氏にとって、この暗殺者の釈放は二重のメッセージを伝えるものとなる。
一つは、ロシア政府はたとえ敵対者が西側に逃げ込んだとしても、その人物を見つけ出して捕まえるというメッセージ。もう一つは、プーチン政権に忠実であり続ける者は見捨てないというメッセージだ。
プーチン大統領は2月、FOXニュースの番組司会者(当時)タッカー・カールソン氏とのインタビューで、クラシコフ氏を含めた身柄交換への関心を明確に示した。クラシコフ氏の名前は出さなかったものの、西側のある国の首都における殺人の罪で収監されているロシアの愛国者だと説明した。
プーチン氏は「その人物は愛国心から悪党を排除した。彼がそれを自分の意思で行ったかどうかは別の問題だ」と述べていた。
クラシコフ氏は2019年8月のある日の白昼、ドイツの首都ベルリン中心部にある公園で、ロシアの反体制派指導者ゼリムカン・カンゴシュビリ氏を射殺した。現場は連邦首相府や国会議事堂のすぐ近くだった。ロシアは、カンゴシュビリ氏がロシア治安部隊を標的にするイスラム過激派だったとしている。【8月2日 WSJ】
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【バイデン政権は「外交の成果」アピール ハリス副大統領のポイントにも】
一方、アメリカ側・バイデン政権にとっては米紙ウォール・ストリート・ジャーナルの米国人記者エバン・ゲルシコビッチ氏の解放が「目玉」となります。
“ロシアはゲルシコビッチ記者を偽りのスパイ容疑で1年余りにわたり勾留していた。記者はロシアでのわずか3日間の非公開裁判で懲役16年の判決を受け、辺境の地にある厳重警備の刑務所への収監を言い渡されていた。”【8月2日 WSJ】
また、2020年にスパイ罪で禁錮16年の判決を言い渡された元米海兵隊員ポール・ウィラン氏も、トランプ政権期に逮捕され、トランプ政権では解放が実現できず、バイデン政権によって解放されたということで、政治的にはバイデン政権の大きなポイントとなりえます。
そうした大統領選挙に向けた政治的アピールを強調すべく、空港ではバイデン大統領とハリス副大統領二人が揃って解放者を出迎えました。
なお、ロシアではプーチン大統領が出迎えており、米ロそれぞれが政治的に最大限活用しようという思惑が窺えます。
****米露など身柄交換、米大統領選でハリス氏に追い風 多国間連携で成果、トランプ氏は焦り****
バイデン米政権が1日、ロシアとの身柄交換で米国人記者らの帰国を実現させたことは、11月の米大統領選を前に大きな外交的成果となった。
多国間連携を重視する姿勢が奏功し、民主党の候補者指名を受けるハリス副大統領(59)への援護射撃にもなる。当選すれば米国人拘束者の解放を実現するなどと対露交渉に自信をみせていた共和党のトランプ前大統領(78)には誤算となった。
1日深夜、バイデン大統領(81)とハリス氏は、帰国した米紙ウォールストリート・ジャーナルのゲルシコビッチ記者らをワシントン郊外のアンドルーズ空軍基地で出迎えた。
これに先立ちバイデン氏は、拘束者の家族とともに記者会見し「彼らの残酷な体験は終わった。もう自由だ」と祝福。7カ国が関与した今回の身柄交換は「外交の妙技」によるものだと誇った。サリバン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は会見で、家族の心労を思って言葉に詰まる場面も。米メディアはこうした動きを克明に追いかけた。
取材活動中に露当局に拘束されたゲルシコビッチ氏らの解放問題はバイデン政権にとり、自国民保護だけでなく、米国が重んじる「報道の自由」などの価値からも重大な懸案だった。ウクライナ軍事支援と並行しての対露交渉は難航し、米国内の不満は高まった。
その中で多国間の身柄交換を実現させたことは、しばしば「弱腰」と批判されるバイデン政権の再評価につながる可能性がある。
外交誌フォーリン・ポリシー(電子版)によると、ハリス氏も今年2月のショルツ独首相との会談で、互いの側近1人を除くスタッフを退席させ、機微に触れる身柄交換の協議に当たったという。外交経験の不足が指摘されるハリス氏には重要な成功体験といえる。
一方、バイデン政権が対露交渉で成果を挙げたことはトランプ氏に痛手となる。今回の帰国者のうち、元海兵隊のウィラン氏はトランプ政権期の18年に露国内で逮捕され、拘束期間は約6年にわたった。トランプ氏は自身では実現できなかった業績を、批判してきたバイデン政権に実現された格好だ。
トランプ氏は1日、身柄交換を受けて交流サイト(SNS)に投稿した最初のコメントで、バイデン政権の交渉チームは「恥さらしだ!」と罵倒。解放された人々やその家族への祝意や共感を示す文言はなく、焦燥を色濃くにじませた。【8月2日 産経】
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****冷戦終結後“最大”の身柄交換 バイデン大統領らロシアから釈放の3人を出迎え****
ロシアとアメリカの間で冷戦終結後、最大とされる身柄交換で釈放されたアメリカ人3人が帰国し、バイデン大統領とハリス副大統領が出迎えました。(中略)
バイデン大統領とハリス副大統領が出迎え、抱擁をかわして帰国を喜びました。ハリス氏は、「バイデン大統領が外交にたけているという重要な証拠だ」とした上で「同盟国の重要性を理解しているからこそ実現できた」と述べました。
アメリカメディアは、ハリス氏がトランプ氏と対決する大統領選が迫るなか、バイデン政権としての外交的な成果をアピールする機会となったと伝えています。
一方、ロシア人の受刑者8人も釈放され、プーチン大統領自ら空港で帰国を出迎えました。プーチン氏は、一人一人と抱擁をかわし、「祖国は一瞬たりとも、皆さんのことを忘れてはいない」などと声をかけ、国として表彰すると述べたということです。【8月2日 日テレNEWS】
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アメリカ バイデン大統領
「力を合わせれば不可能なことは何もない、我々はアメリカ合衆国なのだから」
また、ハリス副大統領は今回の身柄交換について「外交の力を理解する大統領を持つことが、いかに重要かを示すものだ」と強調しました。【8月2日 TBS NEWS DIG】
「力を合わせれば不可能なことは何もない、我々はアメリカ合衆国なのだから」
また、ハリス副大統領は今回の身柄交換について「外交の力を理解する大統領を持つことが、いかに重要かを示すものだ」と強調しました。【8月2日 TBS NEWS DIG】
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【殺人犯が解放され、ロシアの不当拘束を助長しかねない懸念も】
不当な拘束から解放されたことは喜ばしいことですが、殺人犯が政治犯との交換で解放されたこと、ロシア政府の不当拘束を助長しかねないことなど、やや「後味が悪い」面もあります。
*****不当拘束助長を懸念 身柄交換「後味悪い」―人権団体****
国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは1日、米ロなどによる拘束者の大規模な身柄交換について声明を発表し、ロシア政府の不当拘束を助長しかねないと懸念を示した。殺人の加害者と政治犯を交換したことは「後味が悪い」と訴えた。
声明は、人権活動家らの解放を歓迎する一方、「プーチン(ロシア)大統領は、政治犯を明らかに交渉に利用している。さらなる政治的な逮捕や人権侵害につながる恐れがある」と警告した。
今回の身柄交換では、ベルリンで起きた殺人事件で有罪判決を受け終身刑に服していたロシア人工作員が釈放された。これに関し、ドイツ政府のヘーベシュトライト報道官は1日、「決定は容易ではなかった」と説明した。独紙によると、検察関係者の間で「失望感」が広がっているという。【8月2日 時事】
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サリバン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は、今回の身柄交換で金銭のやり取りはなかったと述べた。また、合意にこぎ着けるために制裁措置を緩和することもなかったとした。
トランプ氏は詳細を把握していないとした上で「殺人者や凶悪犯」が解放されたのかと問い、「米国は特に拘束者交換で決して良い取引をしない」などと投稿した。【8月2日 ロイター】
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