孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

イスラエルによるハマス最高指導者・ヒズボラ幹部殺害 イランの報復は必至

2024-08-03 23:27:17 | 中東情勢

(7月31日、イランの首都テヘランのパレスチナ広場で、イスラム組織ハマスのハニヤ氏の写真を手に、その殺害を非難する参加者=AP 【8月2日 日経】)

【ハニヤ氏など、相次ぐイスラエルによるハマス・ヒズボラ幹部殺害】
中東ではイスラエルによる相次ぐハマス、ヒズボラ幹部殺害によって、緊張が高まっています。

****ハマス最高指導者ハニヤ氏、イスラエルの攻撃で殺害 テヘランで****
パレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスは31日、同組織の最高指導者イスマイル・ハニヤ氏がイランの首都テヘランでイスラエルの攻撃により殺害されたと発表した。

ハマスは「兄弟であり指導者であり戦士であるイスマイル・ハニヤは、(イランの)新大統領の就任式に出席後、シオニスト(イスラエル)によるテヘランの拠点への攻撃で死亡した」と発表した。

イランの革命防衛隊も同日、テヘランにあるハニヤ氏の住居が「攻撃」を受け、警護員1人と共に死亡したと発表した。 一方、「事件」の詳細は不明とし、現在「調査中」だとしている。

ハニヤ氏は30日に行われたイランのマスード・ペゼシュキアン新大統領の就任式に出席するため、テヘランを訪れていた。
ハニヤ氏死亡の報道についてイスラエル軍にコメントを求めたが、現時点で回答を得られていない。 【7月31日 AFP】
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発生時間的にはハニヤ氏に先立つ形になりますが・・・

****イスラエル、ハマス軍事トップ・デイフ氏殺害を確認 ハニヤ氏に続き****
イスラエル軍は1日、イスラム組織ハマスの軍事部門トップ、ムハンマド・デイフ氏の殺害を確認したと発表した。軍は7月13日、パレスチナ自治区ガザ地区南部ハンユニスでデイフ氏を狙った空爆を行い、同氏が死亡したかどうか分析を進めていた。

デイフ氏は昨年10月の越境攻撃の首謀者の一人とされ、イスラエルが最重要の標的としていた。実際に殺害されたとすれば、ハマス壊滅を掲げるネタニヤフ政権にとっては大きな「戦果」となるものの、停戦交渉が停滞するのは必至だ。ハマスはコメントを出していないが、空爆が行われた際、イスラエルの主張を「虚偽」と主張していた。

デイフ氏は1987年にハマスに加入し、第1次インティファーダ(対イスラエル民衆蜂起)に参加。95年以降、イスラエルに対する自爆テロを主導し、2002年に軍事部門トップに就任すると、地下トンネル網の整備などを進めた。

ハマス幹部を巡っては、最高指導者のハニヤ氏も7月31日、イランの首都テヘランで、ミサイル攻撃を受けて殺害されている。【8月1日 毎日】
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また、本格的戦争への危険が懸念されているレバノン・ヒズボラについても。

****ヒズボラ、司令官の死亡確認 イスラエルのベイルート空爆で****
レバノンに拠点を置く親イラン武装組織ヒズボラは31日、イスラエル軍の攻撃により、首都ベイルート南部郊外の建物にいたフアド・シュクル司令官が死亡したと確認した。

ヒズボラの指導者ナスララ師が、31日に行われる司令官の葬儀で演説する予定という。

これに先立ち、レバノン治安当局筋2人は、空爆後にシュクル司令官の遺体ががれきの中から発見されたと明らかにしていた。

イスラエル軍は30日、ベイルートの南部郊外を空爆し、ヒズボラの司令官を殺害したと発表。27日に起きたゴラン高原へのロケット弾攻撃の報復と説明していた。【8月1日 ロイター】
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【停戦交渉停滞は必至】
これらの殺害のなかで政治的影響が大きいのがハマス最高指導者ハニヤ氏の殺害。
イスラエル・ネタニヤフ首相はその成果を誇示しています。

****親イラン組織に「打撃」 イスラエル首相、成果誇示****
イスラエルのネタニヤフ首相は7月31日、テレビ演説し、パレスチナのイスラム組織ハマスやレバノンの民兵組織ヒズボラなどの親イラン勢力に「壊滅的な打撃を与えた」と強調した。ハマスのハニヤ最高指導者の暗殺を念頭に、直接の言及を避けながら「われわれへの攻撃は重い代償を支払うことになる」と述べ、成果を誇示した。

ハニヤ氏の暗殺後、ネタニヤフ氏が公に発言するのは初めて。イスラエルは暗殺を認めていないが、イランやハマスはイスラエルの仕業と断定し報復を宣言。中東情勢は緊迫の度を増している。

ネタニヤフ氏は国民に対し「困難な日々が待ち受けているが、あらゆるシナリオに備えている」と主張。いかなる脅威にも断固として対応すると呼びかけた。

ハマス政治部門幹部のハイヤ氏は31日、イランの首都テヘランで記者会見し、ハニヤ氏の暗殺を受け、パレスチナ自治区ガザでの戦闘を巡るイスラエルとの停戦交渉に意味がなくなったと訴えた。(後略)【8月1日 共同】
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ハマスが対決姿勢を強めるのは当然として、停戦交渉仲介国からも反発が。交渉停滞は必至と見られています。

****ハマス最高指導者暗殺に中東の仲介国反発 ガザ停戦交渉は停滞必至****
パレスチナ自治区ガザ地区のイスラム組織ハマスの最高指導者ハニヤ氏がイスラエルによるとみられる攻撃で殺害されたことを受け、ガザの停戦交渉を仲介していたカタールやエジプトが反発を強めている。

今回の事態で、イスラエルとハマスの停戦交渉が停滞するのは必至で、これまでの仲介がないがしろにされたも同然だからだ。ガザでの人道危機が深まる中、打開策は見えていない。

「一方の当事者が相手の交渉者を暗殺しておきながら、どうやって仲介を成功させようというのか」。カタールのムハンマド首相兼外相は7月31日、X(ツイッター)にこう投稿し、「平和(の実現)には真剣なパートナーが必要だ」と訴えた。

ハマスとイスラエルの停戦に向けた交渉では、3段階で休戦し、人質解放などを進める案が協議されている。7月には、ハマスが従来求めてきた「恒久的な停戦」の実現を一時棚上げし、休戦開始後に改めて交渉することで譲歩したと報じられ、合意への期待が高まった。だが、その後の交渉でも大きな進展はみられなかった。

こうした中、ハマス側で交渉の中心的な役割を担っていたハニヤ氏が暗殺されたことに仲介国は強く反発する。エジプトは31日の声明で「イスラエルに紛争拡大を抑える意思がないことを示しており、ガザでの停戦に向けた努力を台無しにしている」と批判した。

ただ、カタール外務省によると、ムハンマド氏は31日、ブリンケン米国務長官と電話協議し、ガザ停戦を実現する必要性を強調して、仲介を続ける意向を示した。カタールやエジプトが交渉の仲介をやめれば、紛争が中東全域に拡大する懸念が強まるため、仲介国も交渉努力を続ける以外に道はないのが実情だ。【8月1日 毎日】
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【イランの報復は必至、問題はいつ、どのような報復がなされるか? イスラエルの反応は?】
ハニヤ氏殺害の具体的方法についてはミサイル攻撃と部屋に設置された爆弾の二つの説があってはっきりしませんが、イスラエル情報機関モサドが実行部隊としてイラン部隊を雇ったとの報道も。

****ハニヤ氏殺害に関与か 20数人が逮捕 イスラエルが爆弾設置にイラン治安部隊雇ったか****
イスラム組織「ハマス」の最高指導者・ハニヤ氏の殺害に関与したとして、訪問先だったイランで少なくとも二十数人が逮捕されたことが分かりました。

ニューヨークタイムズは捜査に詳しい2人の情報として、テヘランでのハニヤ氏の殺害に関わった疑いで少なくとも二十数人が逮捕されたと報じました。

逮捕されたのはイランの情報機関の幹部や軍の関係者に加え、ハニヤ氏のいた建物のスタッフなどが含まれるといいます。

また、イギリスのテレグラフ紙はイスラエルの諜報機関「モサド」が建物に爆弾を仕掛けるためにイランの治安部隊を雇ったと伝えています。

当初はヘリコプターの墜落で死亡したイランのライシ前大統領の葬儀にハニヤ氏が参列した際に殺害する計画だったとしています。

しかし、この時は建物内に人が多くいたことから実行されず、雇われた治安部隊は国外に逃亡したということです。【8月3日 テレ朝news】
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イラン革命防衛隊は上記を否定する「建物の外から飛翔体で殺害された」とする捜査結果を発表しています。

イスラエル・モサドが敵対国イランで二度にわたり多くの協力者を得られたとしたら、イランの内情を考えるうえで興味深いところ。イラン革命防衛隊としては認めたくないかも。

それはともかく、新大統領就任式の賓客であるハニヤ氏をイラン首都で殺害され、その実行にイラン治安部隊が使われたということになると、イランの面子は丸潰れです。面子だけの話ではなく、今後のハマスやヒズボラとの信頼関係を考えても相当のアクションが必要とされます。

イランによる報復は必至で、問題はいつ、どのような規模で行われるのか、どこを狙うのか? それにイスラエルがどのように反応するかです。

4月にシリアにあるイラン大使館が攻撃されたことへの報復では、イランはイスラエルへの直接攻撃を行ったものの、ミサイル到達前に攻撃実施を発表し、敢えてイスラエル到達までに時間を要するドローンを多用するなど、イスラエル側の防御を可能にし、その実害を極力抑える配慮がなされました。今回は?

すでに、4月の時よりも大規模攻撃の準備が行われているとも。

****“イランの報復 数日から1週間の間に”の見方 中東の緊張続く****
ガザ地区でイスラエルとの戦闘を続けるイスラム組織ハマスの最高幹部が訪問先のイランで殺害され、イランなどが報復を行うとする中、アメリカのメディアはイランがどのような報復を行うか決めた兆候はないものの、数日から1週間の間に行われるとする見方があるとの当局者の話を伝えていて、中東での緊張が続いています。

パレスチナのガザ地区でイスラエルと戦闘を続けるハマスのハニーヤ最高幹部が7月31日、訪問先のイランで殺害されたことを受け、イランの最高指導者ハメネイ師はイスラエルが攻撃したとして報復を行う考えを示しています。

また、ハマスに連帯を示すレバノンのシーア派組織ヒズボラもイスラエルの空爆で幹部が殺害されたことを受けて報復する構えです。

これについて、アメリカの有力紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」は、イランがどのような報復を行うか決定した兆候はないものの、数日から1週間の間に行われるとする見方があるとの当局者の話を伝えています。

また、アメリカのCNNテレビは複数のアメリカ当局者の話として、報復は数日のうちに行われる可能性があると伝えました。

イランはことし4月にもシリアにあるイラン大使館が攻撃されたあと、多数のミサイルや無人機による報復を行いましたが、当局者はイランが、後ろ盾になっている武装勢力と連携することで、より大規模で複雑な攻撃になる可能性があるとも指摘しています。

アメリカ国防総省は、イスラエルへの支援を強化するため、国防長官が巡洋艦などの追加派遣を指示したことを明らかにしていて、イランなどからの報復をめぐり中東の緊張が続いています。

専門家「あと1日か2日の間に」
イラン情勢に詳しい慶應義塾大学の田中浩一郎教授はイランの出方について「ことし4月のイスラエルに対しての報復攻撃よりも大規模な動きが軍に見られる。報復は確実に行う、しかもあと1日か2日の間に起きるだろうという兆候に見える」と分析しています。

イランはことし4月、シリアにあるイラン大使館が攻撃を受けた報復として、イスラエルへの多数の無人機やミサイルによる大規模な攻撃に踏み切っています。

田中教授は、より大規模な報復が予測される理由として「前回の攻撃ではイスラエルに対して十分な警告が届いていないということで、より激しい形での報復を行うことが不可欠であると結論づけた。

今回、賓客として招いた要人が首都で重要な政治イベントの流れのなかで殺害された。イスラエルへの怒りだけでなくイランが沈黙すると、ハマスなどとの信頼関係が損なわれる危険性があり、積極的な行動を示す結論が導きだされた」との見方を示しました。

どのような報復攻撃を行うかについては「イランからの直接攻撃は不可欠で、弾道ミサイルなどの飛しょう体の数は前回を確実に上回る。イスラエルの軍関係施設を中心に狙うと見られる」としています。

そのうえで「今回はヒズボラの司令官も殺害されている。イランも撃つ、ヒズボラも撃つ、イエメンのフーシ派やイラク国内の民兵組織の一部も加勢し、飽和攻撃のような形で、最終的にイスラエルの防空能力を損なう形にもっていくのが狙いだと見られる」と分析しています。【8月3日 NHK】
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イスラエルはアイアンドームという優れた防空システムを有していますが、多数のミサイルを同時に撃ち込む飽和攻撃にあうと防ぎきれない可能性もあります。

イランがそうした飽和攻撃を行うのか? その結果イスラエル側に被害が出た場合、イスラエルはどのように反応するのか?

【自制要請が無視されたアメリカ イスラエル防衛姿勢は維持、中東に米軍追加派遣】
アメリカ・ブリンケン国務長官は、ハニヤ氏殺害について「米国は関与しておらず、事前通告も受けていない」と説明しています。

アメリカはハリス副大統領が、7月下旬に訪米したイスラエルのネタニヤフ首相と会談し、強いトーンで停戦協議の早期妥結を求めるなど、イスラエルに攻撃の自制・停戦交渉促進を求めていましたが、それが無視された形にもなっています。

****バイデン大統領がネタニヤフ首相に不満か ハマス指導者暗殺巡り****
パレスチナ自治区ガザ地区のイスラム組織ハマスの最高指導者ハニヤ氏が滞在先のイランで暗殺されたことを巡り、バイデン米大統領が暗殺に関わったとみられるイスラエルのネタニヤフ首相に不満を募らせている模様だ。仲介してきたイスラエルとハマスとの停戦案の合意の障害になりかねないためで、イスラエル側に自制を求めている。

米ニュースサイト「アクシオス」によると、バイデン氏は1日にネタニヤフ氏と電話協議した際、想定されるイラン側からの攻撃に対する防衛支援を伝える一方、イスラエルがその後再び緊張を高める行動を取った場合には、米国の支援を期待しないよう警告。停戦合意に向けて早急に取り組むよう求めた。

バイデン氏は5月に人質の解放などを含む包括的な停戦案を発表し、イスラエルとハマスの合意に向けてカタールやエジプトと仲介に取り組んできた。11月の大統領選への出馬を断念したバイデン氏は、来年1月までの任期中に停戦と人質の解放を実現し、「レガシー(遺産)」としたい意向も透ける。

ネタニヤフ氏は暗殺事件前の7月下旬にホワイトハウスでバイデン氏と会談し、停戦について協議していた。アクシオスは関係者の話として、バイデン氏が1日の電話協議でネタニヤフ氏に対して、「会談で停戦合意について話したにもかかわらず、暗殺に踏み切った」と不満を示したという。

ネタニヤフ氏を巡っては自身の政治的な保身のために、戦闘を続けているとの見方が根強くある。バイデン氏は1日に記者団に、「(ハニヤ氏の暗殺は)停戦交渉の役には立たない」と述べ、いらだちを隠さなかった。

一方で、バイデン政権は現状では、イスラエルの防衛に関与する姿勢を変えていない。イランやレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラからの「報復」が懸念される中、米国防総省は2日、中東に艦艇や戦闘機を追加で派遣すると発表した。弾道ミサイルの迎撃能力を持つ巡洋艦や駆逐艦を追加配備し、戦闘機部隊も追加で派遣する。また、空母「セオドア・ルーズベルト」に代わって、空母「エーブラハム・リンカーン」の派遣も決めた。【8月3日 毎日】
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米軍の艦艇や戦闘機の追加派遣は、イスラエルの防衛に関与するアメリカの基本姿勢堅持を示すものであると同時に、イラン側の報復に対する牽制でもあるでしょう。

かねてよりイスラエル・ネタニヤフ首相は自らの政権・政治生命延命のために戦闘拡大を望んでいると言われていますが、そうだとしたら、その思惑によって中東は危険な状況に引きずり込まれます。その影響は日本を含む世界に及びます。
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