孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アフリカ  資源バブルが終わり中国のアフリカへの関心も低下? 日本に求められるものは?

2018-01-05 22:21:50 | アフリカ

(中国企業「中国伝声」は「眼」と「歯」によって「顔」を認証する「美黒撮影」などを開発するなど、アフリカの現地ニーズに応えることで急成長したとのこと。【2017年12月7日 「すまほん」】)

現地ニーズに的確に応えてアフリカで急拡大した中国企業も
世界各地で中国製品が氾濫していることは今更の話です。

先月、15年ぶりに観光したカンボジア・シェムリアップに到着した際の街の第一印象は、中国語の看板を掲げた商店が多いことでした。観光客に中国人が多いことは言うまでもないことです。

それでも、シェムリアップに暮らす日本人に聞いた話では「首都プノンペンは中国化が著しくなじめない」とのこと。今回プノンペンは1泊しただけでよくわかりませんでしたが、中国の影響はシェムリアップの比ではないようです。

上記のような話は、アジアでもアフリカでも、その他地域でも同様でしょう。

アフリカについてみると、中国のアフリカ進出は資源確保目的で、現地住民の利益に必ずしもなっていないとか、現地での反発も強まっている・・・云々は、よく聞くところです。

ただ、中国製品がアフリカなど世界各地に浸透しているのは、中国の世界戦略に沿った国際政治的思惑とか、低価格路線だけの話ではないようです。

****美黒撮影」?中国人に無名の中国メーカー、アフリカで大人気****
(中略)
柔軟なローカライズでアフリカ市場で躍り出る
昨年、ある中国製スマホ・ケータイが、価格の安さ・耐久性・「美黒」や「歯と眼へのフォーカス」、「防油指紋識別」といった、柔軟なローカライズ設計により、アフリカ市場への進出に成功しました。
 
今年上半期、この中国メーカーがアフリカで5,000万台を売り上げ、SAMSUNGを追い抜いて、アフリカ市場販売台数第一位に躍り出たとの海外媒体から、「アフリカ人は中国の携帯電話(中国ではスマホもケータイと同じく「手机」と呼ぶ)をこう見ている」という記事が「北京時間」に掲載されました。

アフリカ大人気の中国メーカー、中国国内では無名
「北京時間」によれば、アフリカ市場で販売台数第一位となったのは、「中国传音控股」(中国伝音ホールディングス・Transsion Holdings、以下「中国伝音」)。

今年のグローバル販売目標は、41カ国で1億2千万台、創業者は現在の目標を南アジア市場としており、IDCのデータによれば、昨年第4四半期にインド市場で第2位になっているそうです。

「誰だこいつ?!」という感じですが、中国市場でも販売していないメーカーらしいです。(中略)

深圳の“山寨(パクリ)”から脱却、アフリカで苦節十年
中国伝音は2007年から、激戦地である中国・東南アジア市場でしのぎを削る深圳の同業者を横目に見て、サハラ以南のアフリカ市場に活路を見出したといいます。
 
ちなみに「サハラ以南」は「サブサハラ」とも呼ばれ、「世界最後発地域」の代名詞でもあります。
 
では、中国伝音がアフリカ市場でした努力とは?

成功の秘訣は「眼認証」「歯認証」によるカメラ画質向上
(中略)では、暗いところで黒人をスマホで撮影するとどうなるか?「暗けりゃお前なんて見えねえよ」といわんばかりの写真になってしまいます。「アウトレイジ」みたいですね。
 
これではいかんと、中国伝声は「眼」と「歯」によって「顔」を認証する技術を開発しました。従来の「顔認証」は「顔面」だったんですね。
 
「美白」ならぬ「美黒」の美顔モードを発展させるべく、伝音は特別チームを編成。現地人の写真を大量に収集して、輪郭、露光補正、現像効果について分析。アフリカの消費者が満足できる写真を撮れるようにしたといいます。

アフリカらしい「防汗」「音楽」などの特色
また、灼熱の気候条件では、携帯電話を持つ手がすぐに汗でベチョベチョになることから、中国伝音は防汗、滑り止めなどを具えたスマホを開発したとも。
 
さらに、アフリカ朋友が音楽好きで、リズム感が強いことから、「音楽携帯電話」を開発したとか。「起動音楽は永遠に終わらない」くらい長く、「着信音は全世界に聞こえないのが残念」なくらい大きいようです。(中略)

中国伝音はテレビCMばかりでなく、電柱に広告を貼ったり、壁に直接ペンキで広告を描いているそうです。さらに、なにせ「農村で都市を包囲する」のが好きな中国なので、アフリカ市場でも大都市で販売するだけでなく、販売員に携帯電話を大きな箱に詰めさせ、田舎へやって行商までしているといいます。

現地のニーズを的確に把握、今後に注目
現地のニーズを研究しつくした商品開発、驚きの低価格、アフリカの田舎まで入り込む販売方針。市場を制覇するためにすべきことを、全部やっているのではないでしょうか。(後略)【2017年12月7日 「すまほん」】
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非常に興味深い記事です。
よく、日本国内でアメリカ車が売れず、アメリカが不満を言い立てることに関し、日本側の反応は「アメリカは日本人のニーズに沿った車を作っておらず、売れないことへの不満ばかり並べている」といったところでしょう。

上記「中国伝音」の開発・販売姿勢を見ると、日本企業も海外で売るための工夫・努力をどれほどしているのか?「いいものを作れば売れるはず」だけでは、アメ車が売れないことに苛立つ米企業と大差ないのかも・・・という感も。

中国の影響力・存在感に比べ、アフリカにおける日本の影の薄さはどうにも否定できないところですが、そもそも日本の場合、本気でアフリカに進出しよという考え自体が希薄だとも思えます。

“広いアフリカ大陸に日本人は8000人しかいませんが、驚くことに中国人は、あくまで推計値にすぎませんが約110万人も進出しているのです。”【1月5日 文春オンライン】

8000人対110万人・・・・話になりません。日本の影の薄さの原因でもあり、結果でもあるのでしょう。

こうした状況で、中国のアフリカへの投資・進出を、やれ資源確保目的だ、政治的思惑だ、「新植民地主義」だ等々言い立てても、“負け犬の遠吠え”でしかないでしょう。

【「アフリカから中国人の帰国ラッシュが始まった」】
「中国伝音」のような努力もあってアフリカに拡散した中国企業ですが、現在はむしろ“アフリカからの撤退”が進んでいるとの指摘もあります。

****中国人が蜜月関係だったアフリカから続々帰国している理由****
中国とアフリカの蜜月時代が変わりつつある
今年9月、英フィナンシャルタイムズは「アフリカから中国人の帰国ラッシュが始まった」と報じた。中国資本によるアフリカへの「走出去(中国企業の対外進出)」と呼ばれた投資や経済活動は、一時のブームに過ぎなかったのだろうか。
 
数年前、世界は中国による積極的な対アフリカ投資を「新植民地主義」だと非難した。とりわけ警戒したのは、中国のアフリカ資源外交だった。

2014年、新年早々に安倍晋三首相はアフリカを歴訪したが、そこにはアフリカにおける中国の影響力に一定の“くさび”を打つ意図があった。
 
中国が、アフリカで展開したのは資源外交だけではなかった。「メード・バイ・チャイナ」がアフリカの国々で瞬く間に普及。街を走るのは中国製の廉価バイク、市民生活に浸透するのは安価な中国の軽工業品、街を歩けば至る所に中国人──。中国による「走出去」の影響力は無視できないものになっていた。

アフリカのマリでは、「この国のコンクリート建造物はすべて中国によるもの」と言われているほどだ。
 
他方、植民地支配を経験したアフリカにとって、「真のパートナー探し」は独立後の一貫したテーマでもあった。中国の台頭とともに、「西欧からの影響を遠ざけ、むしろ手を握るべき相手は中国だ」という機運が高まっていたことは確かである。近年は「中国は敵ではない」という共通認識すら持たれるようになっていた。

アフリカから中央アジアへシフトか
英フィナンシャルタイムズによれば、アフリカには100万人の中国人が生活しており、その大多数が零細企業のため、近年の資源価格の下落に伴うアフリカ経済の落ち込みとともに商売が成り立たなくなってきたという。

あまりの勢いに警戒されていた中国資本の進出だが、アフリカでは今、大きな変化が起こっているようだ。
 
その変化が貿易に現れている。この5年間の中国とアフリカの貿易総額を見ると、2000年当時100億ドル程度だった貿易額は、2013年に2000億ドルと20倍にも増加した。

だが、それも2014年をピークに減少に転じたのである。
 
中国商務部によれば、アフリカにおける中国の貿易パートナーの「トップ10」は、南アフリカ、アンドラ、エジプト、ナイジェリア、アルジェリア、ガーナ、ケニア、エチオピア、タンザニア、モロッコの順であり、その国々の対中輸出の主要産品のほとんどが資源である。(中略)
 
背景には、2005〜2012年にかけての国際商品市場での原油、鉄鉱石、非鉄、穀物などのコモディティ需要の累積的拡大と、2011年以降に顕著となった中国経済の減速がある。(中略)
 
その一方で、柴田氏は「『一帯一路』における中国の開発発展の主軸が、資源ブームに乗ったアフリカから中央アジアに移ったのではないか」と分析している。

確かに、中国の「第13次五ヵ年計画(2016〜2020年)」が打ち出した「一帯一路」の主要6大ルートには、アフリカが含まれていない。(中略)

資源バブルが終わりアフリカブームは終わったか
アフリカ経済は、資源価格の落ち込みで大打撃を受けている。これに伴う本国通貨の下落を阻止するため、現地では外貨管理を統制したり、脱税を摘発したりするなど、規制強化に乗り出しているようだ。多くの中国人が帰国の途に就いているのは、治安悪化のためだとも言われている。
 
他方、「一帯一路」の参加国として中国と協議を結んだ国もジブチ、エジプト、エチオピア、ケニアの4ヵ国にとどまる。(中略)

中国の電子メディアには、金融の専門家が書いた「過去10年にわたってアフリカに対して行われた融資も、近年は『一帯一路』の参加国に振り向けられるようになった」とするコラムが掲載されている。中国の企業は新たに資金が向かう先へと、すでに投資の目的地を変更してしまった可能性がある。
 
アフリカも時々刻々と変化する。2015年から2016年にかけて、多くのアフリカの国々が発展計画を打ち出し、同時に貿易政策の見直しを図った。キーワードに据えられたのが「環境保護」と「品質重視」だったことからも、アフリカ諸国は従来行ってきた“選択”を見直したことがうかがえる。(中略)

アフリカの景気悪化とともに、「一帯一路」の政策外にアフリカが置かれたことで、対アフリカの“走出去熱”は冷めてしまったのだろうか。
 
また、「一帯一路」という長期的な発展を目指す枠組みを前に、アフリカの士気が落ちているのは注目に値する。アフリカは資源開発バブルがはじけた今、冷静さを取り戻し、国益とは何なのかを思考し始めた可能性は否定できない。
 
他方、「自由で開かれたインド太平洋戦略」、「アジア・アフリカ成長回廊」など、日本やインドが中心となって新たな外交戦略を打ち出した。こうした中で、「中国主導」が真に持続可能なものなのか、関係国が中国を選ぶのか否かは引き続き注視する必要がある。【2017年12月1日 姫田小夏氏 DIAMOND online】
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アフリカでの中国人を狙った犯罪の多発については、以下のような記事も。

****ザンビアで中国企業への襲撃、ナミビアでも事件多発で大使館が喚起****
人民日報系の海外情報サイト、海外網によるとアフリカ南部のザンビアで19日、中国企業が銃などで武装したグループに襲撃され、1人が死亡した。同じくアフリカ南部のナミビアでは中国人や中国人住宅が襲われる事件が多発しているとして、現地の中国大使館が注意を喚起した。(後略)【11月21日 Record china】
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中国へのアフリカ諸国からの資源輸出低迷は、資源価格低迷や中国経済の減速だけでなく、中国経済の重心がサービス業に移動していることも影響していると思われます。中国の資源需要低下は対中国貿易に依存しているアフリカ諸国にとって大きなリスクとなっています。

****サハラ以南アフリカ諸国、対中貿易依存度の高さが裏目に 報告書****
輸出市場として中国への依存度を高めているサハラ以南のアフリカ諸国が、中国経済の重心がサービス業にシフトしつつある現状に大きな打撃を受けているとの報告書が7日、発表された。
 
フランスの金融サービス企業コファスのエコノミストでサハラ以南のアフリカ諸国問題の専門家であるルーベン・ニザール氏は、中国とアフリカ諸国のここ数年の貿易関係を分析した報告書の共著者の一人。「原油と鉱物の生産諸国が中国に著しく依存していることは疑う余地がない」と主張する。
 
同報告書は、中国経済が原料へのニーズによってアフリカ大陸への関心を大幅に高めた期間について分析している。中国経済の比重がサービス業に再び移ったことにより浮き彫りにされたのは、中国への過度の依存によるリスクだ。(中略)
 
ニザール氏は、最も打撃が大きいのは原油輸出国だと指摘。コファスが分析したアフリカ諸国の対中依存度ランキングの1位は南スーダン、2位はアンゴラでいずれも原油を輸出している。3位は木材を輸出するガンビア、4位は原油を輸出するコンゴ、5位は銅鉱を輸出するエリトリア。【2017年11月8日 AFP】
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国内市場が縮小している分野ほど、アフリカで勝負すべき 中国との協調も
こうした状況にあって、日本に求められているアフリカ支援は?

****産業の多角化が急務のアフリカでは、日本に何が求められているのか****
(中略)
(1)不安要素はテロとリーダーシップ不在(中略
(2)資源価格の低迷で急務になっている産業の多角化
本来ならば、経済成長が政治の安定性を底支えするものですが、サブサハラ・アフリカ(サハラ以南49カ国)の経済は、資源輸出国を中心に停滞しています。2003〜2012年の10年間、アフリカ諸国は平均すると年間6%近い経済成長を遂げてきました。ところが、2017年はおそらく2%台で終わってしまう。(中略)

日本人の感覚からすると「3%も成長すれば万々歳だ」と思えますが、前提が大きく異なっているのです。日本の人口は減っていますが、アフリカの人口は年間2.7%前後で増加しています。つまり、日本は経済成長率0%でも1人あたりのGDPは増えますが、アフリカでは常に2.7%以上の成長を続けなければ1人あたりの所得は増えない。(中
 
そもそも、21世紀に入ってからのアフリカの急成長は、石油や鉄鉱石などの資源価格の高騰による恩恵を最大限に受けたものでした。(中略)

今後、アフリカ諸国に求められるのは産業の多角化ですが、結果的に中国の影響力がますます強まっていくことが予想されます。

というのも、アフリカ側のニーズは製造業、農業生産性の向上への投資と援助にあり、中国はこうしたアフリカ側のニーズに応える姿勢を鮮明にしているからです。中国の支援によってアフリカの人々の購買力は上がり、アフリカはこれまで以上に中国製品の有力な輸出先になっていくでしょう。

「アメリカ・ファースト」を掲げるトランプ大統領のもと、アメリカが世界に関する関心を失っているという現実もあります。(中略)

(3)少子高齢化の日本だからこそ、アフリカにビジネスチャンスがある
(中略)
日本政府は、アフリカ各国の首脳と日本の総理大臣が出席するアフリカ開発会議(TICAD)を1993年から開催しています。最初は5年に1度でしたが、2013年からは3年に1度になり、2016年には初めてアフリカ(ケニアの首都・ナイロビ)で行われました。

ここで安倍首相は「日本企業は、アフリカ全体に3年間で3兆円の投資をします」と宣言しました。しかし、残念ながらこの達成は厳しい状況にあると言わざるを得ません。

というのも、日本企業がアフリカはもとより、世界に打って出ていく体力を失っているからです。原発ビジネスは、3.11以降はとても外国に売れる状態ではない。家電メーカーも経営状況が厳しく、中韓相手には競争できないのは周知の通りです。通信も、保険・金融もガラパゴス状態です。世界で競争力を持っている日本製品は、自動車、半導体、工作機械など限られたものしかない状態です。

とはいえ、日本企業にもビジネスチャンスはあります。日本は少子高齢化社会に突入し国内の消費性向も変わってきているので、日本の国内需要に依存していたのでは立ち行かない企業が増えてきています。そうした状況を打開するためにアフリカに真っ先に進出した日本企業に味の素があります。(中略)

人口が増え、胃袋が増え、さらに所得水準が上がることで新たなニーズが生まれてくる。アフリカのマーケットには、現代の日本社会にはない特性があります。今後は、医薬品や紙おむつ、トイレットペーパーなども需要が増してくるでしょう。国内市場が縮小している分野ほど、逆に言えばアフリカで勝負すべきなのです。(後略)【1月5日 白戸 圭一氏 文春オンライン】
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やはり、今後も中国を軸にした展開となりそうですが、その中国と日本の協力も。

****アフリカ支援、中国構想に協調…日中協力提案へ****
政府が、基幹道路整備など日本が実施している複数のアフリカ開発事業で、中国に参入を呼びかける方針であることがわかった。
 
外務省幹部によると、日本が資金支援するアフリカの事業で中国に協力を提案するのは初めて。習近平(シージンピン)国家主席は、アジアからアフリカにまたがる巨大経済圏構想「一帯一路」を掲げており、同構想への協調姿勢を示すことで、北朝鮮の核・ミサイル開発阻止に向けた中国の努力を引き出したい考えだ。
 
日中協力を検討している主な事業は〈1〉西アフリカ諸国を基幹道路で結ぶ「成長の環(わ)」計画〈2〉ケニアの道路や橋の整備〈3〉カメルーンとコンゴ共和国を結ぶ道路「国際回廊」の整備〈4〉ルワンダの道路改良整備――の四つ。【2017年12月31日 読売】
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