孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ロシア  「統一経済圏」、「不良警官」大リストラ計画、そしてまたウクライナ・ガス問題

2009-12-26 21:58:05 | 国際情勢

(モスクワ・赤の広場の交通警官 賄賂か何かの相談・・・というのは偏見です。
まあ、悪徳警官はロシアに限った話ではありません。
“flickr”より By aperrypic
http://www.flickr.com/photos/aperrypic/3056433780/)

【「将来的に参加国は増える」】
たまたまロシア関連の記事がいくつか目についたので、今日はロシアの話。
政治統合を目指すEUから、実態の明らかでない鳩山首相の提唱する東アジア共同体まで、“統合”の動きには様々なものがありますが、ロシアも旧ソ連圏の国々との関係構築に動いているようです。

周辺国や旧ソ連圏の国々からも、過去の経緯やその政治体質から警戒感を持って見られことが多いこともあって、EUの東方拡大政策や増大する中国の存在感の一方で、周辺地域においてもロシアの影響力は限定的なものになりつつあります。
先ずは、旧ソ連圏の国々との経済統合によって、力強さに欠ける経済のてこ入れと、国際的影響力の拡大を目指すというところでしょうか。

****ロシアなど3カ国、「統一経済圏」創設へ まず関税同盟******
旧ソ連のロシアとベラルーシ、カザフスタンの3カ国首脳は、2012年1月1日までに「統一経済圏」を創設することを決めた。まず来年1月から関税同盟を発足させ、経済統合を強化する。ロシアは「ソ連崩壊後で最も重要な決定の一つ」と位置づけており、旧ソ連圏への影響力回復の動きを本格化させている。

ノーボスチ通信などによると、ロシアのメドベージェフ、ベラルーシのルカシェンコ、カザフスタンのナザルバエフ3大統領が19日に旧ソ連構成国でつくる独立国家共同体(CIS)非公式首脳会議が開かれたカザフスタンのアルマトイで会談。統一経済圏作りに合意した。
3大統領は11月末、ベラルーシの首都ミンスクで関税同盟創設の合意文書に署名。来年1月から域内の関税率を統一し、約9割の品目でロシアの関税に合わせる。同7月からロシアとベラルーシ国境での税関検査をなくし、1年後にロシアとカザフ間でも廃止する。ロシア国民経済予測研究所の調査では、関税同盟による経済効果を4千億ドル(約36兆円)と見込んでいる。

ソ連崩壊後、欧州連合(EU)の東方拡大に伴い旧ソ連諸国への影響力を落としたロシアが、欧米に対抗して影響圏の再編を狙った具体的な動きに出た形だ。関税同盟には中央アジアのキルギスも参加の意向を示しており、メドベージェフ大統領は「将来的に参加国は増える」と述べている。【12月26日 朝日】
*********************

ただ、ベラルーシは欧米との関係も天秤にかけていますし、中央アジア各国は欧米だけでなく中国の影響も強まっています。どこまでロシア主導の「統一経済圏」が機能するか注目されます。
北方領土の問題を前進させることができれば、周辺国のひとつ、日本との政治・経済関係も強めることができるはずですが、昨今の情勢ではその方向は期待できません。
ロシアにとってはもったいない話のようですが、領土問題となると民族意識の方が先行するようです。

【「根本的な変化が必要だ」】
2件目の話題は内政問題。
以前、ロシア警察の内部告発ビデオが話題になったことがありました。

****警察の内部告発ビデオが大反響=プーチン首相に直訴-ロシア*****
ロシア南部の警察幹部が上層部の腐敗や職権乱用の実態をプーチン首相に直訴するビデオをインターネットで流し、大反響を呼んでいる。ヌルガリエフ内相は9日までに調査を命令したが、実態解明には早くも暗雲が立ちこめている。

直訴したのはクラスノダール地方ノボロシースク市の警察中堅幹部、アレクセイ・ディモフスキー氏(32)。自作のビデオで、上司に無実の人間の逮捕を命じられたなどと告発。また、1万4000ルーブル(約4万2000円)の月給で土日、祭日も働かされるため、2人の妻に逃げられたとし、「すべてにうんざりした。仕事を辞めたい」とプーチン首相に訴えている。
ビデオはロシア国内で大反響を呼び、8日までに40万人以上が視聴した。
ヌルガリエフ内相は調査を命じるとともに、ディモフスキー氏については結果が出るまで一時職務停止処分にすると発表。しかし、クラスノダール地方警察当局は8日、同氏が虚偽を流布したとして解雇を決定、臭いものにふたで幕引きを図る流れが強まっている。【11月10日 時事】
*******************************

この内部告発も影響したのでしょうか、不良警官を大量リストラする改革に乗り出すことをメドベージェフ大統領が発表しています。

****ロシアの「不良警官」リストラへ 18万人対象*****
ロシアのメドベージェフ大統領は24日、2012年1月1日までに国内の警察官の数を2割減らす大統領令に署名した。わいろの強要などで市民からの不平が絶えない警察の規律を取り戻すため、内務省のスリム化に乗り出す。ただ、多数の失業者を生む懸念と背中合わせだ。
同大統領は24日に生放送されたテレビ局3社の社長との懇談で、「不満はもっともだ。根本的な変化が必要だ」と発言。その数時間後にクレムリンが署名を発表した。
ロシア国営テレビ「ベスチ」によると、国内の警察官約92万人のうち約18万4千人がリストラの対象になる。「不良警官」など解雇相当とみなされた人員を減らす一方、それを財源に警察官の待遇改善を図るという。
ロシアでは11月、「警察内部の真相をばらす」と地方の警察官がプーチン首相あてのビデオメッセージをネット上で公開し、大騒ぎになった。これが今回の大統領令につながったとの指摘もある。【12月26日 朝日】
***********************

5人に一人をリストラするというのは大改革です。
失業者の増大だけでなく、政権に恨みを抱く旧警官の存在は社会不安の種になりそうな懸念もあります。
それだけ腐敗が根深いということでしょうし、また、財政状況が厳しいということでもあるのでしょう。

「統一経済圏」にしても、警官大リストラにしても、意欲的な取り組みではあります。
アメリカ・オバマ大統領も、国論を二分しながらも医療保険制度改革を進めています。
日本の鳩山政権も、違法献金問題のような話に終始せずに、大胆な改革に取り組んでもらいたいものですが・・・。

【「契約に従う」】
3件目は、ロシア“恒例”の話題です。
天然ガスをめぐり、ウクライナとのトラブルの気配がまたあるようです。

****ウクライナ、ロシアへのガス料金支払いで深刻な資金難 ガスプロム社長*****
ロシアの政府系天然ガス企業ガスプロムのアレクセイ・ミレル社長は25日、ウクライナが12月半ばからロシア産ガスの購入量を減らしており、深刻な資金難にある模様だと述べた。

ロシア通信によると、ミレル氏は露テレビ局Vesti 24に対し、「12月のガス料金の支払いについて、ウクライナが非常に深刻な状況にあることを見聞きしている」と述べた。
ミレル社長によると、ウクライナは1月11日までにガス料金を支払う必要がある。
ガスプロムの広報担当は、ウクライナが期限までに支払いができなければ「契約に従う」と、以前に供給を停止したときと同じ言葉を使って説明した。ガスプロムはこれまでにウクライナの不払いにより、何度もガスの供給を停止している。
今年1月、ロシアとウクライナのガスをめぐる激しい対立により、ウクライナ経由の欧州向けガスの供給が、厳寒の中、2週間にわたって停止された。【12月26日 AFP】
***************************

深刻な経済危機にあるウクライナは、今年1月に結んだロシアとの天然ガス輸出合意の中で約束した分量のガス購入ができなくなって違約金問題が浮上していましたが、先月19日、ロシアのプーチン、ウクライナのティモシェンコ両首相がヤルタで会談し、天然ガス輸出合意を一部修正することで同意しています。
“プーチン首相は共同会見で「従来の合意に融通を利かせることができる」と発言。ティモシェンコ首相も同国を経由するロシア産ガスを支障なく供給すると約束した。”【11月21日 毎日】と報じられていましたが、事態がまた悪化したのでしょうか。

ウクライナ経由の欧州向けガスの供給が再び停止するようなことがあれば、欧州におけるロシアの信用失墜、脱ロシア依存の動き加速など、ロシアにとってのマイナスは非常に大きなものがあります。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ガザ侵攻から27日で1年  ハ... | トップ | インド洋大津波から5年  ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

国際情勢」カテゴリの最新記事