孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

チベット  中国:ダライ・ラマの肖像写真掲示を一部容認 姿勢に変化?それとも従来どおり?

2013-07-11 23:28:55 | チベット

(五体投地で祈るチベット族 “flickr”より By Jérémy http://www.flickr.com/photos/79406194@N05/9113932717/in/photolist-eTnhEZ-eTyVVW-eTAo1j-eTx77Q-eVUdkr-eVmwSD-eVmSNv-f1D8AH-f1ToD9-f1Tt6Q-f1Da2R-f1Ddda-eVyfRq-eVn2Sp-eVypME-eVmx6g-eVypxG-eVmSei-eVn1B2-eVmT3T-eVmRNk-eVn2Fp-eVyfAG-eVyhzm-eVmyZ6-eVyrx5-f1TsHd-f1Tqx9-f1Tq4y-f1Deun-f1D7ER-f1Dfw4-f1TvzA-f1D5mH-f1TtEW-f1To6f-f1Tngh-f1D5Mt-f1D9xF-f1D7oz-f1TmJS-f1Tx5A-f1Tt15-f1TrB9-f1TpLN-f1Twus-f1Tns7-f1Dgng-f1DcNv-f1Tsvo-f1D7y2)

アメとムチ?】
中国・チベットでは中国共産党支配に対する抗議活動として、09年2月以降で117人(4月24日時点)の焼身自殺が行われており、まったく出口が見えない状況にあります。

こうした抵抗の背景には、チベット住民の伝統文化や生活様式を認めない中国政府の強硬な姿勢がると指摘されています。

****チベット人200万人以上が強制移動、人権団体報告****
国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(Human Rights Watch、HRW)は27日、中国政府による代替住宅の提供および強制的な移住政策により、チベット人200万人以上が移動を余儀なくされており、その影響から伝統文化や生活様式が著しく失われていると警告した。

HRWの報告書「They Say We Should Be Grateful': Mass Rehousing and Relocation in Tibetan Areas of China(彼らは私たちに感謝すべきだと言う:中国のチベット人居住区における大量住宅提供および移住政策)」は、中国政府の公式統計を根拠に、2006~12年の間に200万人を超えるチベット人が新しい住居への転居を強いられたとしている。これはチベット自治区に住むチベット人の約3分の2に相当するという。

HRWで中国部門を担当するソフィー・リチャードソン氏によると、チベット人に対するこれらの住宅関連政策は、その規模と速さにおいて毛沢東時代以降では前例をみないものだという。
さらにリチャードソン氏は、すでに厳しい弾圧下にあるチベット人たちは、政府の政策によって生活様式が劇的に変えられても異議を唱えたり反発する術がないことを指摘した。【6月28日 AFP】
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“200万人”“チベット自治区に住むチベット人の約3分の2に相当”という数字の真偽はわかりませんが、中国政府の強圧的な姿勢をうかがわせるものでしょう。

チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世は、そうした抑圧されたチベット族にとっては精神的支えであると同時に、中国政府からは「チベット独立を図り、暴力行為を扇動している」と、抵抗の象徴・根幹とみなされていますので、これまでその肖像写真の掲示は認められていませんでした。

そうしたなかで、中国政府が一部ではありますが、ダライ・ラマ14世の写真掲示を認め始めたという非常に興味深い報道があります。

****ダライ・ラマ崇拝を中国が認めた理由****
チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世は、チベットの独立を掲げて暴力行為を扇動する存在として長年、中国から敵視されてきた。

だが中国当局は先月下旬、チベット自治区ラサのガンデン寺に対し、ダライ・ラマの肖像写真を掲げることを許可すると通達。チベット仏教を代表する重要拠点であるガンデン寺でダライーラマの写真掲示が認められるのは、96年以来17年ぶりのことだ。

チベットヘの抑圧政策に抗議する僧侶の焼身自殺が相次ぐなかで発表された今回の方針転換は、中国が宗教的弾圧を緩和し、融和路線に転じるサインなのかもしれない。
青海省や四川省などのチベット族居住区でもダライ・ラマの写真掲示を認め、チベット寺院に対する監視を緩める動きが報告されている。

事実だとすれば、チベットの人々にとっては大きな前進だ。
ただし、ロンドンに本拠を置くチベット支援団体「フリー・チベット」は慎重な見方を崩していない。ダライ・ラマ崇拝の容認が本当にガンデン寺以外の場所にも広がるかどうかは未知数。
これまでの経緯を考えれば、単独の寺院への方針変更だけを根拠に中国の真意を臆測するのは時期尚早だろう。【7月16日号 Newsweek】
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これが中国政府の方針変更を示すものかは即断できません。
従来の強硬な姿勢そのままの事件も報じられています。

****チベット族に発砲、7人負傷=ダライ・ラマ誕生日に当局―中国四川省****
英BBC放送(中国語版)などが9日報じたところによると、中国四川省カンゼ・チベット族自治州タウ県で6日、チベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世の78歳の誕生日を祝う祝賀活動の際、参加していたチベット僧や民衆に治安当局が発砲した。少なくとも7人が負傷した。

治安部隊を乗せた4台の警察車両と7台の軍車両が祝賀現場に来て、チベット族住民に活動を停止し、解散・帰宅するよう要求。住民が拒否したため、治安当局は催涙弾を発射したほか発砲した。7人のうち3人は重傷だという。【7月9日 時事】 
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中国政府は「アメとムチ」の両方で臨む・・・ということでしょうか。もう少し様子を注視する必要がありそうです。

ダライ・ラマ、焼身自殺について発言
なお、誕生日を迎えたダライ・ラマ14世は相次ぐ焼身自殺について、その効果を疑問視する発言を行っています。
これまで自制を求める明確なメッセージを発してこなかったことへの批判を意識したものでしょう。

焼身自殺はチベット族の現状において可能な唯一の抗議手段ですが、仏教指導者として、民族の精神的指導者として自殺を助長することはできない・・・難しい立場です。

****チベット人の焼身自殺、ダライ・ラマ「効果ほどんどない****
オーストラリアを訪問中のチベット仏教最高指導者のダライ・ラマ14世(77)は13日、焼身自殺による中国統治への抗議は、中国政府の政策にほとんど影響を与えていないと語った。

焼身自殺についてダライ・ラマは、「もちろんとても悲しいことだ。ただそれと同時に、そのような思い切った行動が効果を及ぼしているかには疑問を感じている」と記者団に述べた。

一方でダライ・ラマは、「中国当局者が引き金となっている兆候がある。当局者は焼身自殺の原因を調べるべきだ」と訴え、チベット人が単に社会的な抗議のためだけに命を犠牲にしている訳ではないと強調した。

2009年以来、四川省や甘粛省、青海省などで少なくとも117人のチベット人が、中国政府のチベット政策に抗議して焼身自殺を図っている。

チベット研究者らからは、ダライ・ラマが自制を求めていないことが焼身自殺による抗議を助長しているとして、ダライ・ラマの姿勢を批判する声も出ている【6月㏬ ロイター】
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もし、中国政府にダライ・ラマの肖像写真掲示を容認するような変化があるとしたら、117人にも及ぶ焼身自殺が頑なな中国政府の姿勢を動かした・・・とも言えます。

だからと言って、こうした焼身自殺を助長することもできませんので、抗議行動の沈静化を図るため中国政府とダライ・ラマ側のなんらかの妥協が生まれるといいのですが・・・・。

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