孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

パレスチナ問題で非妥協的姿勢を強めるイスラエル 解決を遠ざけ、国際的には孤立化も

2015-01-06 22:10:14 | パレスチナ

(“(ガザ地区では)イスラエルの爆撃で自宅を壊され、今も国連の学校で避難生活を送る市民は1万9000人にのぼる。建設資材が搬入されず、市民はがれきの山から鋼材などを収集、家屋再建に役立てようと懸命だ。”【12月28日 毎日】 写真は“flickr”より By mutasem Mesleh https://www.flickr.com/photos/127516842@N07/16194570971/in/photolist-qF4pJT-qnJrQ3-pGsWys-pHis9T-qCTQ4C-qEqNMV-qqahfk-qFVnzr-qpmssC-qFRfbd-qpm5uw-qDBCiJ-qpicJq-qDzC9u-pJS95A-qpiVTh-qFS6dz-pK6mir-qoVCbr-qD5VRS-qD5VNW-qoNv4d-qoNuQN-qoNuxU-qoX7JV-qD5VaG-qFcHMv-qoKXxo-qon78U-pHVXZd-qEVVCR-qovE7g-pJabsc-pJabrF-qokEuU-qEPGHS-qEPGGj-qok1Pw-qENSek-pJ39pi-qond16-qEDdvP-qofFvG-qCwr83-qofFkb-qonaDx-qEtXKV-qoenyi-qEDAZF-qo5R6b)

【“インティファーダ”も想起させる緊張状態
イスラエルとパレスチナの関係は14年秋以降、エルサレムなどを中心として衝突が相次ぎ、“インティファーダ”(抵抗運動)再来をも懸念させる緊張が高まっています。

11月20日ブログ「イスラエル シナゴーグ襲撃、犯人自宅破壊命令・・・・緊張は危機的状況に」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20141120
11月7日ブログ「イスラエル 東エルサレムでパレスチナ住民と治安部隊の衝突 高まる緊張」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20141107

こうした緊張状態のなかでイスラエル軍は12月20日、8月のハマスとの停戦合意以降初めてとなるガザへの空爆も行いました。

****<イスラエル>ガザ空爆、停戦合意後初…負傷者確認されず****
イスラエル軍は20日、パレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラム原理主義組織ハマスの関連拠点を空爆したと発表した。イスラエル軍によるガザ空爆は今年8月末のハマスとの停戦合意以降、初めて。

ガザ地区から19日、イスラエル南部にロケット弾1発が発射されたことに対する報復という。負傷者は確認されていない。

イスラエルとハマスは今夏50日間に及び戦闘。ガザでは2100人以上が犠牲となり、イスラエルでも兵士ら70人以上が死亡した。【12月20日 時事】
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12月24日には、ガザ地区の境界線付近で、イスラエル軍とイスラム原理主義組織ハマスが一時交戦し、イスラエルはハマスが報復に出る可能性があるとして、イスラエル側の住民の一部に避難を呼びかけるなど更に緊張が高まりました。
この戦闘では、ガザを実効支配するハマスの司令官が殺害されました。

イスラエル側の強硬姿勢の背景には、“イスラエルでは12月31日にネタニヤフ首相の率いる右派リクードの党内選挙があるほか、来年3月に総選挙が実施される。これに先立ち、保守系議員らは競ってタカ派的な発言を繰り返している。”【12月25日 毎日】という国内事情もあるようです。

ハマス側は、“弔問に訪れたハマスの軍事部門「カッサム旅団」の戦闘員らは、「突然イスラエルから攻撃を受けた」と主張した。「ガザは今、戦闘に興味はない」とも語り、今後の展開は「イスラエル次第だ」と口をそろえた。”【同上】ということで、反撃は控え、仲介役のエジプトが中断した交渉の再開を望んでいる模様とも報じられています。

実際問題としては、ハマス側は昨年の長期にわたるイスラエルとの戦闘で相当に戦力を消耗していることが背景にあると推測されます。

自治政府は国内不満を受けて外交攻勢 イスラエルはこれに報復
ただ、昨年秋以来の緊張の高まりを受けてパレスチナ内にはイスラエルへの不満も募っており、パレスチナ自治政府はそうした国内圧力に応じる形で、外交攻勢をかけています。

国連安全保障理事会の非常任理事国ヨルダンはパレスチナ自治政府の意を受ける形で12月29日、パレスチナとイスラエルの2国家共存につながる和平案を1年以内にまとめるよう求めるという期限を明示した決議案を提出しました。
拒否権を持つアメリカの対応が注目されていましたが、そこまでに至らず決議案は否決されました。

****<国連安保理>イスラエル撤退求める決議案否決****
国連安全保障理事会(15カ国)は2014年12月30日、イスラエルとパレスチナによる和平交渉の1年以内の合意を目指し、イスラエルに対しては17年末までの占領地からの撤退を求める決議案の採決を行った。

賛成は8カ国で、採択必要な過半数プラス1カ国の計9カ国に届かず、否決された。

反対は米国とオーストラリアの2カ国のみで、棄権は英国など5カ国。フランスやルクセンブルクは賛成しており、欧米諸国でも対応が割れた。

決議案はパレスチナが主導し、非常任理事国のヨルダンが提出。東エルサレムを将来のパレスチナ国家の首都と位置づける表現もあった。イスラエルはエルサレム全域を「永久不可分の首都」と主張している。

否決後、パワー米国連大使は「決議案は著しくバランスを欠く」と強調し、「イスラエルの安全保障上の懸念を考慮せずに撤退期限を設定することは、非建設的だ」と反対の理由を述べた。採決で9カ国以上が賛成したとしても、常任理事国の米国の拒否権行使で廃案は確実だった。

一方、パレスチナのマンスール国連大使は、欧州各国の議会でパレスチナ国家を承認する動きが出ていることを踏まえ、「イスラエルによる占領の終結を求める声は世界中で明らかだ」と主張。15年も安保理への働きかけを継続する姿勢を強調した。

イスラエルのネタニヤフ首相は14年12月31日、反対票を投じた米国などに「感謝の意を表する」と述べた。また棄権したルワンダ、ナイジェリアの両大統領とは事前に電話で話し「決議案は支持しないと約束してくれていた」と語り、自ら理事国への説得活動を行っていたことを明らかにした。(後略)【12月31日 毎日】
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アメリカは、恣意的な期限設定が交渉に悪影響を及ぼすという立場で、パワー米国連大使は採決後「(決議案は)2国家共存を実現するための機運を取り戻す努力を損なうものだ」と反対理由を述べています。

また、棄権したイギリスのライアルグラント大使は「パレスチナ指導部が(行動するよう内部の)圧力にさらされているのは理解するが、通常かつ必要な交渉がなかったことに失望している」と述べ、パレスチナ側の安保理メンバー国との調整不足も指摘されています。【12月31日 時事より】

パレスチナ自治政府は今回の否決への対抗措置として、国際刑事裁判所(ICC)を規定するローマ条約に加盟しイスラエルの「戦争犯罪」を追及することなども検討しています。

****パレスチナ、国際刑事裁条約に署名=イスラエルと米国は反発****
パレスチナ自治政府のアッバス議長は31日、国際刑事裁判所(ICC)設立条約に署名した。地元メディアが伝えた。

パレスチナ問題に関する国連安保理決議案が否決されたことを受けた措置で、イスラエルとの対立がさらに先鋭化する恐れがある。

パレスチナがICCに加盟すれば、ICCがイスラエル指導者の「戦争犯罪」などを追及することが可能になる。しかし、同様に、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム原理主義組織ハマスのイスラエルに対する無差別ロケット弾攻撃も捜査対象となり、戦争犯罪と見なされる可能性が高い。

イスラエルのネタニヤフ首相は「ICCについて心配しているのは、ハマスとの統一政権下にあるパレスチナ自治政府の方だ」と主張。対応措置を取ると宣言した。

また、イスラエルの同盟国である米国も声明で、今回のパレスチナの行動は「完全に逆効果」だと非難。イスラエルとパレスチナの2国家共存の実現に寄与しないと強調した。

2014年4月にイスラエルとの和平交渉が中断して以降、ガザの戦闘、エルサレムの聖地をめぐる対立などを受け、緊張が激化。交渉再開のめども立たない中、パレスチナ内部から、現状打破に向けた行動を取るようアッバス議長に対する圧力が強まっていた。【1月1日 時事】
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イスラエルは、パレスチナに代わり代理徴収する税金の送金を停止するという報復措置に出ています。

****<イスラエル>送金凍結 代理徴収の税金、パレスチナに報復****
イスラエルのネタニヤフ首相は3日までに、パレスチナに代わり代理徴収する税金約5億シェケル(約150億円)の送金を凍結することに決めた。地元メディアが伝えた。

パレスチナ自治政府が国際刑事裁判所(ICC)への加盟を申請し、イスラエルの「戦争犯罪」を追及するとしたことへの報復措置という。

パレスチナ自治政府の財政難を加速させるのは確実で、パレスチナ内部で対イスラエル強硬策を求める声がさらに高まりそうだ。

イスラエルは1994年にパレスチナと交わしたパリ協定などに基づき、パレスチナに入る関税や税金を代理徴収し、毎月送金している。

ただ、イスラエルは和平交渉推進の一環としてこれらの合意を履行しているという理解で、パレスチナ側が交渉継続を損なう「一方的な行為」をした場合、その意思がないとみなし、送金を一時的に凍結可能との見解でこれまでも断続的に同様の措置を繰り返してきた。

しかしこうした対応は国際法で禁じられた「集団的懲罰」にあたるとの批判もある。

イスラエルのネタニヤフ首相は4日、閣議前の会見で「イスラエル軍兵士や司令官がICCに召喚される事態は許さない」と述べ、対決姿勢を鮮明にした。

パレスチナ解放機構(PLO)のエラカト交渉局長は3日、ICC加盟という合法的な手続きに、イスラエルが「国際法に反する略奪行為」で応じたとする非難声明を発表。4日には、送金が凍結されれば「職員の給料も学校や病院の維持も不可能になる」と述べた。

一方、米議会の歳出法は、パレスチナがイスラエルを「戦争犯罪」でICCに訴えた場合には支援を制限するなどと定めており、米国の今後の対応も注目される。米国は毎年、計4億ドル(約480億円)のパレスチナ支援金を拠出している。【1月4日 毎日】
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また、ロイターによると、イスラエルは、親イスラエル団体を通じ、自治政府のアッバス議長らを米国などで刑事告発することも検討しているもようとも報じられています。

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アッバス氏が率いる自治政府主流派ファタハが昨年、イスラエルが「テロリスト」とみなすイスラム原理主義組織ハマスとの間で、統一政府樹立で合意したことを念頭に置いた動きとみられる。

パレスチナのICC加盟が実現した場合、イスラエル側を戦争犯罪の罪などで訴える道が開かれる。イスラエル側もこれに対抗し、民間人へのロケット弾攻撃を行うハマスと「協力関係にある」との論理でアッバス氏らを告発し得ると牽制(けんせい)した形だ。【1月4日 産経】
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イスラエルの自信から生まれた独善が、今や中東の新たな紛争の源に
アメリカは、自治政府・イスラエルの双方に自重を要請していますが、関係は険悪になる一方です。

****<米国>援助の影響言及 パレスチナ国際刑事裁加盟申請で****
パレスチナ自治政府がイスラエルの戦争犯罪追及を目指し国際刑事裁判所(ICC)への加盟申請を国連に提出したことに関し、米国務省のサキ報道官は5日、「深く困惑している」と述べ、米国の対パレスチナ援助に影響が出る可能性に言及した。

一方で、イスラエルが代理徴収した税金のパレスチナへの送金凍結を決めたことも「緊張を高める」と批判。両陣営に対し直接の和平交渉再開に向け緊張緩和に取り組むよう改めて求めた。(中略)

サキ報道官によると、ケリー米国務長官は週末にネタニヤフ首相と電話協議、両陣営の措置に「強い反対」を表明し、緊張緩和を求めた。【1月6日 毎日】
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3月に予定されているイスラエルの議会選挙では右派勢力の優勢が見込まれており、今後イスラエル側の対応は一層強硬なものになることが想定されます。

しかし、昨年後半にはスウェーデンの「パレスチナ国家」正式承認に続いて、イギリス、フランス、スペインなどEU加盟国の議会が「政府に承認を求める」動議を相次いで採択。12月17日には欧州議会まで、承認原則支持の決議を採択するなど、イスラエルに厳しい流れも強まっており、イスラエルの強硬姿勢固執は国際的孤立化を招くことにもなります。

****第三次インティファーダ」が始まった****
米国の無策が招くイスラエルの「混沌」
イスラエルが占領するヨルダン川西岸と東エルサレムのアラブ人居住地域で、暴力事件が相次ぎ、「第三次インティファーダ」の様相を強めている。

今年三月十七日に国会(クネセト)選挙を控えるイスラエルでは、反アラブ色の強い右派勢力が一段と力をつけており、今年のイスラエル情勢は、「イスラム国(IS)」など国際的な過激派組織も巻き込んで、大きな焦点になりそうだ。

「目には目を」の報復を呼びかけ
(中略)
今回の暴力の波は、中東和平交渉の失敗とイスラエル政治・社会の右傾化に原因がある。

六年前にオバマ大統領が就任した後、米政府は「今こそ対話を」と、ネタニヤフ首相とパレスチナ自治政府のアッバス議長を、和平交渉の場に引っ張り出した。

だが、ネタニヤフは、パレスチナ国家を樹立してイスラエルとの共存を図る「二国家解決」に最初から懐疑的で、交渉は結局頓挫した。

その間、ユダヤ人の西岸への入植は続き、昨年の入植者人口は三十五万五千人で、〇八年より六万五千人以上も増えた。

「パレスチナ人にとって、和平交渉は『入植地拡大をするためのごまかし』に見える。『二国家解決』案への不信も高まっている」と前出特派員は言う。

イスラエルはタブーの領域にも踏み込んだ。

エルサレム旧市街にある、イスラム教徒の聖域「ハラム・シャリーフ(ユダヤ教では『神殿の丘』)」は、「岩のドーム」と「アル・アクサ・モスク」を擁し、国際的合意でイスラム教徒の礼拝のみ認められていた。ユダヤ教徒は、ハラムの外の「嘆きの壁」で礼拝する。

ところが、ユダヤ教徒は聖域内でも礼拝する権利を求め、昨年十月末には、ニル・バラカト・エルサレム市長がハラムを訪れて、イスラム教徒に衝撃を与えた。

市長はウイルス対策ソフトの会社で財を成した実業家。エルサレムを「ユダヤ人の西、アラブ人の東」に分割することに反対し、入植地建設の熱心な擁護者としても知られ、今のユダヤ政界の大衆迎合主義を代表する政治家だ。

イスラム教徒が怒りの集会を開く中、当局は一時的にハラムを完全封鎖した。これは第二次インティファーダが始まった二〇〇〇年以来のことだ。

国際社会から同情されない
イスラエルとパレスチナが聖地をめぐって、危険な駆け引きを繰り広げる一方で、国を取り巻く環境は、着実に悪化している。

不倶戴天の敵であるイスラム原理主義組織「ハマス」と、レバノン拠点の「ヒズボラ」は過去数年で劇的に武力を整えた。「どちらとの戦争も、『時間の問題』でしかない」とイスラエル外交筋は言う。(中略)

政治的には、「パレスチナ国家承認」の波がさらに強まりそうだ。アラブ各国を中心に百三十以上の国が承認しているのに加え、昨年後半にはスウェーデンの正式承認に続いて、英国、フランス、スペインなど欧州連合(EU)加盟国の議会が「政府に承認を求める」動議を相次いで採択。十二月十七日には欧州議会まで、承認原則支持の決議を採択した。

中東情勢が悪化する中、イスラエル政治は一段と右旋回しそうだ。解散前の内閣には、中道派のヤイル・ラピド財務相とツィピ・リブニ法相が加わっていたが、ネタニヤフ首相は二人を解任して「右派だけの内閣」を作るために、国会を解散した。

最新の世論調査によると、この賭けは見事に当たりそうだ。首相率いる「リクード」を筆頭に、「イスラエル我が家」や「ユダヤ人の家」など右派政党が軒並み議席を増やして、百二十議席のうち過半数を獲得する勢いだ。このため選挙戦は、各党がいかに「ユダヤ人中心」であるかを競う展開になっている。

オンライン新聞「タイムズ・オブ・イスラエル」のデビッド・ホロビッツ編集長は、最新の論説の中で「次期政権は、パレスチナ問題でタカ派。非妥協的になり、入植地拡大を全面的に推し進めるだろう。もしヒズボラ、ハマスから攻撃を受けても、イスラエルは国際社会からあまり同情されないだろう」と予測した。

ホロコースト生存者の国、イスラエルは力で国家存続を守ってきた。その自信から生まれた独善が、今や中東の新たな紛争の源になっている。【1月号 選択】
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