孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中国  “変わる中国”と“変わらぬ中国” 「内政不干渉」外交と天安門事件再評価

2014-06-07 22:32:54 | 中国

(スーダン・ダルフールにおける国際連合とアフリカ連合が共同で行なっている平和維持活動に参加した技術系の中国部隊  “flickr”より By United Nations Photo https://www.flickr.com/photos/un_photo/5839522737/in/photolist-9U25Ev-9RDtMw-dDsBtN-6jK1Xo-9yEXtc-8Mtvt-cA2Lj5-8MvrVH-8Mywa5-8MywhA-8Myw13-8Mvs54-dDsBEf-996Erj-ajVj5o-iMWx8H-eUpzE-eUqNz-gnf29z-boL8hd-4CRuP8-fNgsrq-fNgsny-fMYSpn-fMYS2M-fMYRzX-fMYRGV-fNgrKd-8cYALy-5zxyYC-a8NUSp-7wKQfA-5ndT2P-8cVhGp-8cYAXu-8cYASW-8cVhCD-8cYAWd-gBSZ4T-951stb-5cUwSf-7JGZiU-94XpNF-951sxd-94XpSK-94XpRp-951suG-7JTXb7-9ukCkW-dVzM58)

南スーダン和平交渉に積極関与
中国の国際支援については、“人権侵害が行われている国においても「内政不干渉」の立場からこれを問題視せず、手当たり次第に資源確保に走っている”との批判や“地元の雇用につながらない”といった批判があります。

こうした批判は誤解に基づいている部分が多いとの指摘もあることは、5月12日ブログ“中国李克強首相のアフリカ歴訪で拡大する鉄道建設支援  中国の国際支援に関する「誤解」と問題”(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20140512)で取り上げたことがあります。

ただ、いずれにしても中国外交は「内政不干渉」を建前として、よその国の紛争や人権侵害には関与しないという、ある意味では非常に無責任な対応に終始しているという感はあります。

それは、中国国内に多くの非民主的な問題、人権侵害を抱えており、それらについて欧米から批判されたくないという保身と裏腹の関係です。

しかし、世界各地において中国の関与が大きくなるにつれ、自国権益を守るためにもそうした無責任な対応ばかりも取ってはいられない・・・という面も出てきているようです。

その1例が内戦が続く南スーダンで、大きな石油権益を有する中国が停戦に向けて深く関与し、武器売却を中止をしたそうです。

****中国が「内政不干渉」の原則転換、アフリカ権益保護強化で****
中国は南スーダンの石油産業への最大の出資国だが、その投資を脅かす政府軍と反政府勢力との5カ月以上にわたる戦闘を収束させるため、これまでにない外交アプローチに出ている。

その微妙な変化は、エチオピアの首都アディスアベバで数カ月間行われた和平交渉で顕著に表れている。
複数の外交官は、中国が常に交渉に関与し、南スーダンの支援国である米国、英国、ノルウェーと協議している様子などに、中国のより積極的な姿勢が見て取れると話す。

戦闘開始から1カ月がたった今年1月23日に最初の停戦合意が成立した時、中国の解暁岩・駐エチオピア大使は各国代表団とともに署名の場でスピーチし、中国の関与を印象付けた。

こうした新しい方針は、中国がアフリカの内政に立ち入らないという従来の政策を放棄したというわけではなく、投資拡大とともに利害関係も増える中で、中国が政策を徐々に変更しつつあることを示している。

アフリカ最大の貿易相手国となった今、中国は経済的利益が増大する他のアフリカ地域にも、その新たなアプローチを広げる圧力に直面する可能性もある。

国際政治リスク分析を専門とするコンサルティング会社「ユーラシア・グループ」のアナリスト、クレア・アレンソン氏は、中国が「こうした国々にかなり重要な資産を有し、それらを守る必要が出てきた」と指摘。「内政不干渉のスタンスは維持したいのはやまやまだろうが、思い通りにはいっていない」と分析する。

今のところ、南スーダンには中国が積極的外交を展開する例外的な状況がある。

南スーダンの原油生産がフル稼働した場合、同国からの原油購入は中国の総輸入量の5%に上っていた。また、中国石油天然ガス集団(CNPC)は、ジョイントベンチャーで開発する南スーダンの油田に40%の権益を有している。

原油収入が南スーダンの歳入に占める割合は約98%。米英、ノルウェーは同国の最大の支援国でありながら、原油生産の権益は持っていない。

<平和維持活動>
こうした背景を受け、中国はキール大統領と反政府勢力を率いるマシャール前副大統領の双方に話し合いを要請。 さらに、駐南スーダン大使の馬強氏は双方が衝突した昨年12月15日の直後、政府軍であるスーダン人民解放軍(SPLA)の司令官に対し、武器交渉を中止すると通告した。

東アフリカ諸国の地域機構「政府間開発機構(IGAD)」を中心とした調停に関与した複数の西側高官は、中国が武器売却中止を決断したことは知らなかったとし、政策転換があったのは疑いないと見る。

ある外交関係者は、「中国は明らかに外交を強化しており、今やより積極的で対応も迅速だ」と話す。
この関係者は、南スーダンがスーダンから独立した翌年の2012年に起きた両国間の衝突に、中国が政策を転換する最初の兆しがあったという。

15カ月続いた衝突を収束させるには、中国の役割が不可欠と見られていた。この問題で、南スーダンの原油生産はストップし、事態は戦争の瀬戸際にまで達した。

この外交関係者は、「この2年で明らかな進展があった」と語る。
南スーダンの原油生産は現在、政府側と反政府勢力が衝突する前の昨年12月の3分の1の水準で推移し、生産量は1日当たり約16万5000バレル。中国人労働者が避難した油田もある。

こうした状況が中国を動かした。中国は衝突当初から積極的な役割を担うと表明。ただ、その対応がどう変わるのかについてははっきりと示さなかった。

中国のアフリカ特使である鐘建華氏は2月、こうした政策が同国にとって新たなチャレンジだとし、「われわれにとって未知のことなので、物事は常に慎重に進めている。私たちは単に参加するだけでなく、学びもしている」と話した。

中国の新たな動きは他にもある。国連の平和維持活動(PKO)のエルベ・ラドゥス局長は、中国がスーダンのPKO活動に兵士を大規模派遣する計画だと明かす。
国連によると、派遣されるのは約850人の歩兵大隊で、中国が同大隊をPKO活動に送るのは初めてとなる。

<直接介入>
南スーダンでは1月の停戦が合意直後に破られ、5月に再び停戦が成立。中国は、この2度目の停戦に違反がないかチェックするIGAD提唱の監視体制にも100万ドル以上拠出している。

馬・駐南スーダン大使は、首都ジュバの大使館で中国の役割についてパソコンを使ってプレゼンテーションしながらこう語る。「南スーダンには大きな利害関係を有していることから、戦闘停止と停戦合意に向けて双方を説得すべく、これまで以上の努力をする必要がある」。

中国による直接的な介入の一例としては、国連が1万5000人規模の避難民キャンプを移設することを、馬大使が南スーダン政府に受け入れさせたことが挙げられる。そこでは、ヌエル族の多くの避難民が洪水の危険に直面していた。

南スーダン政府は当初、移設に反対した上にキャンプを取り壊そうとしていた。しかし、馬大使との協議の結果、中国の国営石油会社がキャンプ新設に約200万ドルを拠出することになり、方針を変更した。

国連のヒルデ・ジョンソン南スーダン担当国連事務総長特別代表は、中国のこうした対応について「非常に大きな助けになった」と話す。

南スーダンの衝突では少なくとも1万人が死亡し、130万人以上が避難を余儀なくされている。戦闘の背景には、キール大統領が属するディンカ族とマシャール前副大統領のヌエル族との民族対立がある。

この対立は、中央アフリカ共和国やコンゴ民主共和国など、既に紛争を抱える周辺地域に新たな衝撃波をもたらした。中国のアプローチは、新たな衝突が難民流出や経済成長の妨げにつながるかもしれないと懸念する周辺諸国からも歓迎されている。

ケニヤのケニヤッタ大統領は、中国の李克強首相が5月にナイロビを訪れた際、「(中国は)政治的、外交的、財政的に大きな資産を有しており、うまく利用すれば、地域の平和と安全を変革させることになる」と持ち上げた。

李首相はアフリカ歴訪中、アフリカ諸国の内政に干渉するつもりはないという中国政府の原則を繰り返したが、一方で支援拡大を約束し、新たな開発計画の契約にも署名した。

中国が外交的に積極的になれば、これまで治安維持で欧米に依存してきたアフリカに、政治的な釣り合いが生まれると歓迎する声も一部にはある。

キール大統領派の部隊を支援するために南スーダンに部隊を派遣し、西側から非難を受けたウガンダ。
その当局者は「中国がアフリカに関与している今、西側は中国の助けを借りてわれわれを人質に取ることはもはやできない」と話す。

南スーダンのベンジャミン外相は、中国がアフリカでけん引力を増していると認め、その背景として国連安全保障理事会における中国のアフリカ支援があると指摘。
「これにより、中国がアフリカで尊敬を得ている。そして、彼らが私たちのもとに来れば、こちらもその話を聞こうとする」と、そのつながりを強調した。【6月7日 Newsweek】
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今のところは、あくまでも自国権益を守るための介入・関与であり、人権・民主化、あるいは紛争による犠牲の軽減といった価値観に基づくものではないようです。

まあ、その点においては欧米諸国も似たり寄ったりの部分はあります。欧米外交もきれいごとだけで動いている訳でもないでしょう。

中国経済の世界各地での影響力が大きくなるにつれ、世界の平和や秩序の維持が結局のところ自国の利益にもなるということから、中国が世界の平和・秩序維持にこれまで以上に積極的になるのであれば、それはよろこばしいことでしょう。

【「一党独裁体制をやめるという決心がなければ、天安門事件の見直しは残念ながら、ない」】
しかし、欧米的価値観と大きく異なる、非民主的な一党独裁という根幹部分においては、変化は期待できないようです。

天安門事件から25年を迎え、習近平政権の人権・民主化活動家らへの締め付けがこれまでになく強化され、事件の再評価という期待は遠のいています。

参考:6月1日ブログ“各地で噴出す形骸化した代議制民主主義への怒り そもそも民主主義が存在しない中国で天安門事件から25年”(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20140601

****打ち砕かれた希望「天安門事件の見直し」 活動家らを次々と拘束****
2014年6月7日(土)19:36
中国で民主化運動が弾圧された1989年の天安門事件が4日で25年を迎えた。

習近平(しゅうきんぺい)政権は事件の再評価を求める動きを広がることを警戒し、全国で事件の遺族や人権、民主化活動家らを次々と拘束し、その数はすでに100人を超えたといわれ、近年で最も厳しい強い締め付けを行っている。

習政権が発足した直後、「弾圧に関わっていない新しい指導部が党の負の遺産を清算してくれる」と関係者の間で期待されたが、その希望が打ち砕かれた。

 ■例年以上の締め付け
(中略)
しかし、今年は例年と違った。北京市警察当局は4月末から5月初めにかけて、事件の遺族の多くを北京市以外の都市に連行したほか、外国人記者らと普段連絡を取っている民主活動家、人権派弁護士らを拘束した。米国に拠点を持つ人権団体の統計によると、拘束者は100人を超えたという。

遺族らが毎年発表する声明文も今年は当局の妨害を受け、発表できなかったという。外国メディアに対する取材妨害も近年で最も激しく、事前に関係者と会っただけで拘束された外国メディア関係者も複数いた。

「習近平体制の下で事件の見直しが進むと期待したのに、逆に締め付けが厳しくなった」
多くの遺族が落胆した。

 ■期待抱かせた新指導部
2012年11月に習近平体制が発足した直後、遺族たちが高い期待を寄せたのには、それなりに理由があった。

新政権の最高指導部(中国共産党中央政治局常務委員)のメンバー7人は事件当時、ほとんど課長、局長級の地方幹部だったため、武力弾圧との関わりはない。事件の責任者を追及しても、彼ら自身にその責任が及ぶことはないわけだ。

習近平国家主席(61)の父親で、党長老だった習仲勲(しゅうちゅうくん)氏(1913~2002年)は事件当時、全人代常務副委員長(国会副議長)を務めていたが、学生に同情的な言動を取ったため最高実力者の●(=登におおざと)小平(とうしょうへい)氏(1904~97年)に嫌われ、権力中枢から追われたことはよく知られている。

また、現政権ナンバー2の李克強(りこくきょう)首相(58)は、党の下部組織で長年、青少年教育の仕事を担当し、天安門広場に陣取った多くの学生リーダーとも交流があった。事件当初、大学生らのデモに理解を示していたともいわれる。

「習主席と李首相が協力して、共産党の負の遺産を清算してくれるに違いない」。そんな希望的観測が関係者の間で流れるのはたやすいことだった。

習政権が1989年の武力弾圧について謝罪すれば、国内外で高い評価を受けるのは間違いなく、政権にもプラスになるだろう-多くの人がそう考えたのだ。

 ■再評価を拒む3つの理由
しかし、習政権は天安門事件を再評価するどころか、胡錦濤(こきんとう)前政権よりも厳しい姿勢をとった。その理由として、改革派の党古参幹部は以下の3つを挙げる。

 (1)天安門事件について謝罪すれば、民主化を求める大学生らの主張を認めることになる。習氏本人もその家族も、共産党一党独裁政権の恩恵を受けた特権階級であり、そもそも民主化を受け入れるはずがない。

 (2)習主席は保守派と軍に主な支持基盤を持つ。江沢民(こうたくみん)氏(87)、李鵬(りほう)氏(85)ら天安門事件当時の指導者の支援をも受けている。事件を見直せば、長老や軍の反発は必至で、習氏の支持基盤の弱体化につながりかねない。

 (3)党が持つ負の遺産は天安門事件だけではない。反右派闘争、大躍進、文化大革命、少数民族弾圧など数多い。1つについて謝罪すれば他のことに必ず飛び火し、ドミノ現象のようなことが起き、共産党の歴史が全部否定されかねない-。

 この古参幹部は「一党独裁体制をやめるという決心がなければ、天安門事件の見直しは残念ながら、ない」と言い切った。【6月7日 産経】
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6月1日ブログで、「天安門事件を再評価し、当時の共産党政権の対応の間違いを明らかにすることなしに、中国の民主化はあり得ません」と書きましたが、それは「一党独裁体制をやめるという決心がなければ、天安門事件の見直しは残念ながら、ない」ということでもあり、政権内部からの変革は期待できません。

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