孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

福島第1原発事故  「フクシマ」以降、世界で高まる原発論議

2011-05-01 21:16:52 | 世相

(3月20日 台北で行われた反原発デモ「反核大遊行」 “flickr”より By KarlMarx  http://www.flickr.com/photos/karlmarx_75/5553092318/

ロシア:安全利用の厳格化をアピール
3.11「フクシマ」を受けて世界各地で原発の安全性に関する論議が高まっていることは、建設反対運動で死者も出たインドなど、これまでも何回か取り上げてきました。
原発輸出を経済外交の柱に据えているロシアは、反原発の動きを抑える意図もあって、メドベージェフ大統領が国際社会に対し安全利用の厳格化を規定する国際ルールづくりを提案しています。

****ロシア:原発安全利用で提案 「福島事故を考察****
ロシア大統領府は26日、メドベージェフ大統領が国際社会に対して呼びかけた原発の安全利用に関する提案の概要を明らかにした。同府は「福島第1原発事故の結果を考察した」うえで提案をまとめており、安全利用に関する国際協定の締結や、国際原子力機関(IAEA)における規則の追加を呼びかけている。

提案は
▽原発利用国が事故時に迅速に対応する責任を厳格化
▽利用国や国際機関の間で、事故に備えた規定を新設
▽地震の起きやすい地帯などで原発を新設する際の基準の厳格化
▽情報公開基準の設定
などを求める内容。メドベージェフ大統領は5月26日からフランス・ドービルで開かれる主要8カ国(G8)首脳会議で正式提案する考えを示している。

ロシア大統領府は今回の概要について、IAEA、G8各国、インドや中国など新興経済5カ国で形成するBRICSの参加国、旧ソ連諸国による独立国家共同体(CIS)の構成国へ伝えたという。
国営原子力企業ロスアトムによると、ロシアは国内で10基、国外で7基の原発を建設中。国内のインフラ整備のために原発建設を進めるとともに、原発輸出を経済外交の柱に据えている。このため福島原発事故の影響を受けて、国内外で反原発の機運が拡大する前に、安全利用の厳格化をアピールする狙いがありそうだ。【4月27日 毎日】
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フランス、イタリア:福島第1原発事故の「特殊性」を強調
原発に大きく依存するフランス、そのフランスから電力を購入しており、原発建設再開を目論むイタリアは、福島第1原発事故の「特殊性」を強調することで、自国の原発の安全性をアピールしています。

****仏伊首脳:「原発は安全」福島の特殊性強調 共同会見****
イタリアのベルルスコーニ首相は26日、サルコジ仏大統領とローマで共同会見し、福島第1原発事故の「特殊性」を強調、原発そのものの安全性を脅かすものではないとの考えを明らかにした。90年に原発を全廃した伊政府は福島第1原発事故を受けて原発再開計画の無期限凍結を表明したが、ベルルスコーニ首相は、国民の反原発ムードを冷ます措置にすぎず原発を断念する考えはないことを明確にした。

首相は「我々(伊政府)は原子力は全世界にとっての未来だと確信しているが、左翼の環境派のせいで(90年に)停止せざるをえなかった」と指摘。「原子力エネルギーは常に安全だ」と訴えた。
イタリアでは6月に原発の是非などをめぐる国民投票が予定されているが、「日本の事故で驚いた国民が今日にも投票すれば、イタリアは長年、原発を持てなくなる。だから我々(政府)は日本の状況が明らかになり、原発の必要性がわかるまで(原発計画の)凍結を決めた」と語った。

サルコジ大統領も「チェルノブイリは安全管理を欠いた原発事故だったが、福島第1原発は地震ではなく津波による事故だ。大地震ですぐに停止した原子炉に影響はなかったが、津波で冷却機能が止まった」と福島の特殊性を強調。「フランスは原発を安全運転させてきた。代替エネルギーも開発しているが、太陽光や風力が原子力に代わる段階ではない。我々は隣国の安全も考えており、イタリアが原発開発に戻ることを望んでいる」と結んだ。【4月27日 毎日】
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韓国:知事選争点に
一方、隣国の韓国では、原発建設問題が知事選挙の争点に浮上しました。世論は原発に厳しい目を向けるように変化しているようです。

****韓国:知事選争点に原発急浮上 事故後、世論一変*****
(4月)27日に投開票される韓国東部、江原道(カンウォンド)知事選の争点の一つに同道三陟(サムチョク)市が誘致を目指す原子力発電所の是非が急浮上している。
石炭産業の衰退などで過疎化に悩む同市が、大多数の市民の賛同を得て誘致を正式申請したのは、東京電力福島第1原発事故の3カ月前。
しかし、世論は反対に転じ、補助金などで地域再興を目指す市は困惑を隠せない。選挙は、地域振興策を抱き合わせても原発立地が困難になる「フクシマ後の世界」を予兆する可能性がある。(中略)

今年1月に市が行った世論調査では誘致賛成が80%、反対15%だった。
ところがフクシマ後に地元メディアが実施した世論調査で、市とその周辺地域では反対が60%、賛成30%に。韓国水力原子力社の予定地選定作業もストップした状態だ。(中略)

韓国では現在、原子炉21基が稼働し、政府は昨年末に2024年までに14基を新設する計画を発表。輸出にも力を注いでいる。
しかし、福島第1原発事故後、老朽化した原発の運転中止を求める運動も起きている。選挙は、韓国で原発の安全性を問い直す動きを加速させることになりそうだ。【4月26日 毎日】
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この知事選挙は原発誘致問題意外にも重要争点がありましたが、結果は、誘致反対を訴えた民主党の候補が、反対を明言しなかったハンナラ党候補らを破り、初当選しています。

台湾:大規模反原発デモ
台湾では、大規模な反原発デモが実施されています。
****台湾:反原発デモ…台北など4カ所で数万人 東電事故受け****
福島第1原発の事故を受け、台北や台湾南部・高雄など4カ所で30日、計数万人規模の反原発デモが行われた。台北から約30キロの新北市で進む第4原発の建設中止を訴え、「福島のような事故を起こさないため立ち上がる」と叫んだ。(中略)
第4原発は台湾電力が独自で設計した初の原発で98年に着工。原子炉2基は日立製作所と東芝、タービンは三菱重工業が受注し、日本初の原子炉輸出として注目された。だが完成が遅れ、福島の事故もあって、今年末に予定された運転開始は1年先送りとなった。
台湾原子力委員会第4原発安全監督委員会の林宗尭委員は、福島の事故を受け「第4原発も技術・安全面で相当大がかりな再検討と修正を行う必要がある」と話している。【4月30日 毎日】
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カナダ:政治・経済の中心地に集中する原発
カナダでも原発論議が高まっています。
****カナダ、原発議論が白熱 大都市から1時間、10基運転*****
カナダ最大の州オンタリオで、原子力発電所の安全性をめぐる議論がにわかに活気づいてきた。理由は二つ、長引く福島第一の事故と、2日に迫った総選挙だ。

「日本を襲った巨大津波がわがカナダ五大湖圏では絶対に起きない? そんな保証はどこにあるんだ」「福島第一の事故の解明が済むまで、この公聴会は中断すべきだ」
トロント近郊の町コーティスで最近、原発をめぐる地元公聴会が開かれ、そんなやりとりが続いた。焦点は、五大湖のひとつオンタリオ湖畔に4基の原子炉を新たに建設するかどうか。3月下旬に始まった公聴会は早くも17回を数え、出席者によると、「フクシマ」という言葉を聞かない回はまったくないという。

過疎圏にばかり原発を建ててきた日本のような国々と違って、カナダでは、政治と経済の中心地オンタリオ州に原発が集中している。全国で稼働中の17基のうち16基が同州にあり、250万の人口を抱える最大都市トロントから車で1時間の圏内で10基が運転している。東京に置き換えれば近県の川崎市や千葉県船橋市に原発が並ぶような近さだ。
カナダでは電力事業が州単位で運営され、発電から送電まで州内で完結するのが原則とされてきた。水力発電が盛んな州、火力発電に頼る州もある中、オンタリオ州では供給電力の半分を原子力に依存している。

2年半ぶりの総選挙を間近にひかえ、原発を抱える選挙区では論戦が激しくなってきた。「日本の惨劇を見てなお原発新設に賛成する候補は無責任」「いやカナダの重水炉原発は日本の軽水炉とは違って安全だ」。討論会では、候補がぶつかり合う。

福島の事故を受けて、カナダ世論は大きく揺れ、今では国民の6割が原発新設に反対している。それでも国政レベルで見ると、原発は総選挙の中心争点にはなっていない。
野党・自由党のイグナティエフ党首は「フクシマが世界の目を覚ました。発電問題でまったくの無為無策だったハーパー首相と私は違う。私が首相になれば、波力など他の技術での発電量を増やし、州間の電力融通を活発化させる」と批判する。だが、与党保守党を率いるハーパー首相は挑発に乗らない。「発電政策はしょせん州案件」とかわし、有権者の関心を「景気」に向かわせるよう腐心してきた。好調なカナダ経済を背に3期目の政権維持を狙う。【5月1日 朝日】
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私の地元にも原発があり、先の統一地方選挙の県議選では、増設反対を訴える社民党候補が自民党独占を阻む形で議席を獲得しています。
ただ、福島第1原発事故自体をどうするかで手いっぱいで、原発問題についても全国レベルでは、まだその時期にない状況です。これだけの事故を起こした以上、今後の原発増設はかなり厳しく、既存施設の廃炉・代替エネルギーを求める声が強まることは確かでしょう。



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