孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ルワンダ カガメ大統領は英雄か独裁者か? (Part2)

2010-09-06 23:02:21 | 国際情勢

(選挙前の8月4日 支持者の声援に応えるカガメ大統領 “flickr”より By Paul Kagame 2010
http://www.flickr.com/photos/paulkagame2010/4866282467/)

【大虐殺後の国家再建 アフリカの「模範国」】
94年に大虐殺を経験したアフリカ中部のルワンダ、その大統領選挙については選挙前の8月9日ブログ「ルワンダ大統領選挙 カガメ大統領は英雄か独裁者か? (http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20100809)」で取り上げたところです。

大統領選挙の結果自体は、予想通り現職カガメ大統領の圧勝(得票率93%)でした。
****ルワンダ:現職大差で再選 カガメ氏、大虐殺後の再建尽力*****
アフリカ中部ルワンダの選挙管理委員会は11日、80万~100万人が犠牲となった94年の「ルワンダ大虐殺」後、2度目となる大統領選で、現職のポール・カガメ氏(52)が得票率93%で勝利したと明らかにした。任期は7年。カガメ氏は、大虐殺後の国内の和解推進や好調な経済発展を実現してきており、アフリカの「模範国」構築への国際社会の期待も大きい。

大統領選はカガメ氏の任期満了に伴い、9日に実施。4政党から4候補が立候補していたが、事実上、対立候補不在の選挙だった。カガメ氏は00年4月からの暫定大統領を経て、03年に大虐殺後の初の大統領選で9割を超す得票で大統領に正式就任。今回の当選で2期目となる。
カガメ氏は少数派ツチ系。内戦時、当時の反政府勢力「ルワンダ愛国戦線」を組織し、多数派フツ系の過激派民兵を中心にツチ系住民やフツ系穏健派が襲撃された94年の大虐殺後、フツ系主導の政府軍に勝利し、全土掌握した。

大虐殺を巡って、06年11月から国交断絶が続いたフランスと昨年11月、国交回復に合意。また「フランス不在」の間に英米独との関係構築を強化するなど巧みな外交手腕を見せ、国際支援を背景に経済成長を実現させた。資源に乏しい内陸国の生きる道として「IT(情報技術)立国」を掲げ、国家再建を進めている。

一方、選挙前にはカガメ政権に批判的な野党幹部や記者の襲撃・殺害事件が発覚。政権は関与を否定したが、欧米の人権団体などは「言論の自由が制限されており、民主主義を弱体化させるもの」と批判していた。また、ロイター通信によると11日、首都キガリのバス停に手投げ弾が投げ込まれ、少なくとも7人が負傷、容疑者3人が逮捕される事件があった。選挙との因果関係は不明だが、国内にはカガメ氏の長期政権への不満も存在しており、民主化の進ちょく度が今後、注目される。【8月12日 毎日】
************************************

【「アフリカのシンガポール」】
08年の国内総生産(GDP)の成長率は11.2%と、順調な経済成長を実現しています。
また、記事にもあるような外交手腕や「IT立国」などもありますが、何よりも大虐殺後の住民対立を克服する公正で規律を重んじる政治姿勢、高潔な人柄などのイメージによって、欧米社会でもカガメ大統領は高い評価を得ています。

****大虐殺乗り越え「アフリカのシンガポール」へ、ルワンダの首都キガリ****
ルワンダの首都キガリは、以前は居酒屋でさえ夜9時には閉まる「田舎町」だったが、高層ビルが立ち並ぶオフィス街や24時間営業のショッピングセンターを備えた「アフリカのシンガポール」へ生まれ変わろうとしている。(中略)
■50年間の都市計画
同国では現在、ルワンダ開発局の音頭のもと、国を中所得国に押し上げるための「Vision 2020」プロジェクトが大々的に行われている。
ビルンガ国立公園に生息する絶滅危惧(きぐ)種、マウンテンゴリラをめぐるエコツーリズムの普及活動については、既に効果が表れ始めている。また、ルワンダ産コーヒー豆も認知度が上がり、ブランドとして確立されつつある。
キガリのアイサ・キラボ市長は、「キガリはアフリカで最も成長著しい都市の1つ。成長を確かなものにするには周到に練られた計画が不可欠だ」と話す。
キガリの今後50年間の都市基本計画を練ったのは、米コロラド州に本社を置くOZ Architecture社だ。計画では、新たな国際空港のほか、ショピング街、オフィス街、テクノロジー会社や医療機器会社の企業団地を建設する。 

■国を一から作り直す
「彼らはルワンダを、アフリカで最も持続可能で、ハイテクで、ネットワークの整備された国にしようとしています。東南アジアのシンガポールのようにね。国全体を一から作り直そうとしています」と、同社の建築責任者は地元紙に語る。
コンベンションセンターの建設現場では、巨大な黄色いクレーンが何台もせわしなく動いている。センターは2000人以上を収容できる会議施設のほか、300室の高級ホテルも併設される。会議を誘致して参加者を観光に誘導する「カンファレンス観光」は、ルワンダ開発局の推進事項の1つだ。(中略)
2004年以降、ルワンダの国内総生産(GDP)成長率は平均7.1%。世界銀行の調査「Doing Business Survey」で、ルワンダは「事業規制の改革が世界で最も速い国」に選ばれた。背景には、2009年の行政改革と商法などの改正により、起業、雇用、不動産登記、借り入れが容易になったという事実がある。

■環境にも配慮
キガリは、ビニールのレジ袋を禁止した都市としても有名だ。だからこそ、開発においては環境も配慮している。現在のギコンド産業地区は、いずれ湿地帯に戻される予定だ。
キラボ市長は、住民がアフターファイブにスポーツなどのレクリエーションを楽しめるような、「魂と生の喜びにあふれた都市にしたい」とも語った。
16年前の1994年、3か月で推定80万人が殺害された大虐殺がルワンダで起きたことはまだ人々の記憶に新しい。当時のキガリは大虐殺のトラウマ(心的外傷)のただ中にあった。その痕跡は、虐殺記念館や銃弾を浴びて穴だらけになった国会議事堂の壁に見ることができる。この壁は、あえてそのままの姿で残されている。【8月25日 AFP】
**************************

【ルワンダ兵による虐殺の疑惑】
その一方で、記事にあるような、また前回ブログでも触れたような野党弾圧・強権姿勢の批判も最近はあります。
今回選挙についても、カガメ大統領と対立する野党候補らは手続きの不備を理由に出馬を認められず、大統領選を「出来レース」と批判する声もあります。
もっとも、今回選挙は投票率は97.5%で、その93%をカガメ大統領が獲得したということは、国民の大多数はカガメを支持している・・・というふうにもとれます。
もしそうであれば、野党弾圧などする必要もないようにも思えますが・・・。
(数字が高すぎて不自然・・・という感もなくはないでしょうが)

更に、最近報じられているのは、カガメ大統領が指揮するルワンダ軍による報復虐殺の疑惑です。
****「英雄」カガメ大統領が逆虐殺に関与?*****
8月9日のルワンダ大統領選では、現職のカガメが93%という得票率で再選された。カガメは、多数派のフツ人が少数派のツチ人を100万人近く殺害した94年のルワンダ大虐殺で傷ついた国に平和と発展をもたらした人物として高く評価されている。ツチ人出身のカガメの下、ルワンダは安全な国になり、アフリカ有数の汚職の少ない国と見なされている。その結果、国の再建に必要な何億謖もの国際援助も獲得している。
一方で、今回の大統領選ではジャーナリストや野党政治家の投獄、殺害などの事件も報じられた。さらに先週リークされた国連人権高等弁務官事務所(UNHCHR)の未発表報告書で、ルワンダ軍が90年代後半にジェノサイド(大量殺戮)を行った疑いが浮上した。

仏ルモンド紙が入手した報告書によれば、94年とは逆にツチ人部隊がフツ人部隊を追ってザイール(現コンゴ民主共和国)に侵攻した96年、ルワンダ兵らは何百人もの男女や子供を集めてくわやおので虐殺したり、フツ人難民を焼き殺したりしたという。
ルワンダ政府はこの疑惑を否定し、報告書が公表されればスーダンのダルフールでの平和維持活動から撤退すると脅しをかけているという。ルワンダの平和には、まだ不安定な要素がありそうだ。【9月8日号 Newsweek】
*********************************

すさまじい大虐殺の後ですから、報復があったとしても全く不思議ではありませんが、そうした報復行為を禁じて国民融和に尽力してきた・・・というのが「英雄」カガメのイメージです。
ちなみに、Newsweekは一貫してカガメに批判的な記事を掲載しています。
真相は今のところわかりません。


コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« フランスのロマ規制強化 ド... | トップ | ミャンマー軍事政権  中国... »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (Unknown)
2013-01-15 15:08:37
コンゴでポール・カガメが虐殺した人数は、これまた600万人以上っていうから、英雄とは言えない。
Unknown (Unknown)
2016-08-20 22:43:19
そもそもこいつはウガンダ出身でルワンダ人じゃないからな。ツチ族の虐殺自体、
こいつが1990年からツチ族を率いて侵攻を繰り返していたカウンターだし
弾薬の尽きたルワンダに侵入し大統領殺して麻痺させたところを一気に制圧してそのまま独裁者やってるだけ

コメントを投稿

国際情勢」カテゴリの最新記事