孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ジンバブエ  深刻化する「人的要因による飢餓」 ムガベ時代同様の弾圧も

2019-12-16 23:12:41 | アフリカ

(ジンバブエの首都ハラレで11月6日、賃上げを求める公務員らが計画した政府庁舎へのデモ行進を警官隊が実力で阻止した。警官に連行されるデモ参加者【11月7日 時事】)

 

【「独裁者」ムガベ後も、進まない経済再建・民主化】

ジンバブエでは、37年間にわたり「独裁者」として君臨したムガベ前大統領が2017年11月、事実上の軍事クーデターで辞任、2018年7月に行われた大統領選挙では長年ムガベ氏の側近だったものの、その後対立関係になりムガベ追い落としに関与したとも言われるムナンガグワ大統領が当選しました。

 

その選挙は、多くの途上国の選挙に共通するように、対立候補からは不正集計があったと批判を受けています。

野党側は激しく抗議し、軍の発砲で犠牲者が出る混乱にもなり、民主化や経済回復に踏み出す一歩になるとみられていた選挙は新たな対立の火種ともなりました。

 

ムナンガグワ大統領については、選挙当時の記事で、以下のようにも紹介されています。あまり「新たな時代」にふさわしいイメージでもありませんが・・・。

 

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ムナンガグワ氏は長年ムガベ氏の側近だったが、昨年11月、突然ムガベ氏に副大統領職を解任された。それをきっかけに、ムナンガグワ氏に近い国軍がムガベ氏を自宅に軟禁、ムガベ氏の辞任につながった。

 

ムナンガグワ氏はムガベ氏を追放した立役者として一定の評価はあり、経済回復を期待する経済界の支持を集めているものの、「昨年11月から経済の目立った改善が見られないことに国民から不満の声も高まっている」(外交筋)との指摘もある。

 

また、国家治安相だった1980年代、軍が市民ら約2万人を殺害した虐殺事件に関わった疑惑も影を落としている。【2018年7月29日 読売】

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とにもかくにも、ムナンガグワ大統領のもとでスタートした新生ジンバブエですが、経済再生は進んでいません。

今年1月には燃料費の高騰や日用品の不足をきっかけに混乱が拡大しました。

 

これに対し、治安当局は発砲を含む厳しい鎮圧行動をとり、民主化についても、ムガベ時代とまったく変わらない様相にもなっています。

 

*****ジンバブエ、強硬措置で抗議封じ込め 燃料費高騰や日用品不足で混乱****

深刻な経済危機が続くジンバブエで、燃料費の高騰や日用品の不足をきっかけに混乱が広がっている。ムナンガグワ政権の治安当局は強硬措置で抗議行動を抑え込み、数日間で600人以上を拘束する異常事態となっている。

 

同国政府は12日、ガソリン価格を150%超引き上げて1リットル当たり3.31ドル(約364円)にすると発表。値上げは市民生活を直撃し、労働組合は14日からゼネストを呼びかけた。首都ハラレや第2の都市ブラワヨでは大半の商店や学校が閉鎖。デモ隊の一部が暴徒化し略奪も起きた。

 

これに対し、当局はインターネットを遮断し、野党支持者や人権活動家らを次々と拘束。「当局は市民に対し無差別に発砲、暴行している」(ハラレの弁護士)とされ、17日までに68人が銃撃を受けて病院に運ばれた。

 

同国では長期政権が続いたムガベ前大統領時代の2008年に年率2億%を超えるハイパーインフレを記録した後、自国通貨のジンバブエドルを廃止。代わりに米ドルなどを採用した。

 

だが17年に事実上のクーデターでムナンガグワ氏が大統領に就任した後も物資の輸入に必要な外貨の不足に歯止めがかからず、昨年12月のインフレ率は過去10年間で最も高い42%に達した。

 

会社員のシーラ・グンボさん(29)は「市民がゼネストを支持するのはとても生活できないから。野党関係者を逮捕しても問題は解決しない」と話した。

 

現地からの情報によると、日用品や食料の不足が慢性化し、市民が支払いに使う電子マネーや代用貨幣「ボンドノート」の価値も急落している。ハラレ市内のあるスーパーでは紙おむつのパック(24枚入り)に80ドルという法外な値札が付き、ガソリンスタンドでは給油まで数日待たされることもあるという。

 

国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」のデワ・マビンガ氏は「政府は不満に耳を傾けるどころか、平和的な抗議行動まで弾圧している」と指摘。ムナンガグワ氏は経済再生に向けて外資誘致を図るが「人権侵害が横行する国にだれが投資するのか」と述べ、旧態依然とした政府対応を批判した。【1月19日 毎日】

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****ジンバブエで起きている苛烈な弾圧****

(中略)治安当局はインターネットを遮断し、労組や野党関係者らに対する激しい弾圧を開始。被害者の治療に当たった「ジンバブエ人権のための医師の会」などによると、少なくとも12人が死亡し、300人以上が負傷、78人が銃撃を受けて病院に運ばれた。このうち半数近くは抗議行動とは無関係で、帰宅途中などに流れ弾に当たって重傷を負ったという。 

 

「中には1〜2メートルの至近距離から頭部を撃たれた犠牲者もいて、殺意があったのは明らか」(同会のノーマン・マトラ医師)。

 

ハラレ市内の低所得者居住区などの状況について、マトラ医師は「兵士や警察官がしらみつぶしに民家を捜索し、住民を引きずり出して暴行している」と語る。

 

摘発を恐れて隣国南アフリカに逃れたマトラ医師が記者に示した写真には、ムチや棒で殴打されて背中がどす黒く腫れ上がったり、割れたボトルを足に突き刺されたという被害者の姿が写っていた。(後略)【1月26日 毎日】

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【多くを輸入に頼る経済構造 資源はあるがインフラ未整備で輸出できない 慢性的な外貨不足 もの不足・インフレ】

その後も、もの不足・価格高騰・財政難・高い失業率というジンバブエの状況は変わっていません。

 

****新しいジンバブエ、不満蓄積 物が不足・高騰、新政権の国造り難航****

アフリカ南部ジンバブエで、「独裁者」と呼ばれたムガベ大統領が2017年に失脚した後の国造りが難航している。後継のムナンガグワ大統領(76)は「経済再生」を唱えているが、財政難や高い失業率を解決できず、暮らしは厳しいまま。頼みとする日本などからの外資呼び込みも道半ばだ。

 

首都ハラレのガソリンスタンドには1月下旬、100メートル以上にわたる給油待ちの車列があった。自営業のイルビネ・チナカさん(28)は「6時間は待っている。本当に無駄な時間だ」。

 

食料品なども、この半年で軒並み値上がりした。地元紙によると、今年1月のインフレ率は56・9%。食用油は5倍になった。

 

物不足と物価高騰の主な原因は、日用品など暮らしにかかわる製品の多くを輸入に頼る経済構造にある。

 

ジンバブエにはプラチナをはじめとする豊富な地下資源があるが、採掘や精製に必要なインフラが整備されていない。輸出して外貨を稼げず、国全体でみると、輸入額の2週間分ほどに相当する外貨しか保有していない深刻な状態だ。

 

そもそもインフラ整備や産業を発展させる政策を進められないのは、国の財政が厳しいからだ。歳出の約8割を公務員の人件費に充てており、他に回すことができていない。

 

政府はガソリン税で歳入の増加を図ろうと、今年に入り、従来の約3倍近い1リットル3・31ドル(363円)に引き上げた。これに国民は「世界一高いガソリン代だ」と反発した。スーパー店員のタクズワ・チケさん(21)は「物の値段は上がったのに、毎月の給料は変わらない。ムガベ政権時代に戻してほしい」と語る。

 

1月以降、抗議デモが続発。国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」によると、デモでは少なくとも12人が当局の発砲などで死亡し、約600人が拘束されたという。同団体でアフリカ南部を担当するデワ・マブヒンガ氏は「ムガベ政権と比べても、兵士が市民に平然と発砲するようになっている」と懸念する。(後略)【2月19日 朝日】

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とりあえずは外資頼りということにもなります。ムナンガグワ政権はムガベ政権が敵対していた欧米諸国との関係改善に乗り出し、外資による経済再建をめざしています。

 

ムガベ時代にジンバブエを支援していたのは中国ですが、現在の中国との関係はよく知りません。ちょっと理解に苦しむ記事も。

 

*****中国の援助、少ない? 両国主張の額に40倍の差―ジンバブエ****

アフリカ南部ジンバブエのヌーベ財務相が先週、中国からの今年の援助額は360万ドル(約4億円)と公表した。

 

これに対し、中国が「大間違いだ」と激怒、在ジンバブエ中国大使館は19日、声明を出し「中国の記録によれば今年1~9月だけの実績で1億3680万ドル(約150億円)の対ジンバブエ支援を行っている」と反論した。

 

40倍近い差がなぜ生じるのかは分かっていない。中国はジンバブエに対し「2国間支援の統計を全て再検証し、現状を反映させる」ことを要求。ジンバブエ政府も「共通の立場を確立するため必要な協議が進行中だ」と釈明している。

 

故ムガベ大統領の時代に欧米との関係が悪化したジンバブエだが、ヌーベ氏によれば、それでも米英両国からは各5000万ドル(約54億円)、欧州連合(EU)からも4100万ドル(約45億円)の支援を受け取っている。【11月20日 AFP】

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【干ばつで深刻化する「人的要因による飢餓」】

上記の年初の混乱以降のジンバブエ関連記事はあまり目にしていなかったのですが、事態は改善していない・・・と言うか、深刻化しているようです。

 

*****ジンバブエ国民の60%が食料不足 「人的要因の飢餓」迫る****

国連のヒラール・エルバー特別報告者(食料の権利担当)は28日、アフリカ南部ジンバブエで記者会見し、同国では基礎的な食料ニーズが満たされていない人が国民の60%に上り、「人的要因による飢餓」が近づいていると述べた。また、同国は紛争地域を除き食料不安の最も深刻な4か国に入るとした。

 

エルバー氏は11日間の視察を終え、首都ハラレで会見した。同氏は「ジンバブエの人々は人的要因による飢餓の段階に徐々に近づいている」と語り、年内に800万人が影響を受けると警告。物価上昇率490%のハイパーインフレと不作が合わさったことを要因に挙げた。

 

同氏によると、地方では農作物が干ばつの影響を受け、現時点で「550万人という驚くべき規模の人々」が食料不安に見舞われている。都市部でも220万人が食料不足に直面するとともに、保健・医療や安全な水など最低限の公共サービスを受けられていないとした。

 

ジンバブエ経済はロバート・ムガベ前大統領の数十年に及ぶ失政で機能不全に陥り、軍主導のクーデターで2017年に後任に就いたエマーソン・ムナンガグワ大統領の下でも立て直しは実現していない。【11月30日 AFP】

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ジンバブエの干ばつ被害について、昨日も取り上げた「気候アパルトヘイト」的な観点から、“温暖化ガスの排出量が最も少ない地域が、気候変動の最も大きな影響を受けている現実”との指摘もなされています。

 

****ビクトリア滝も枯渇、数千万人を襲う飢え アフリカが目の当たりにする気候変動の影響****

アフリカ南部ジンバブエとザンビアの国境にあるビクトリアの滝。かつては切り立った崖を大瀑布(ばくふ)が流れ落ち、辺り一体が水煙に覆われていた。

 

ところが何年も続いた干ばつの影響で、滝はほとんどが弱々しい小川のような流れと化し、かつて生い茂っていた豊かな植生は枯れ果てた。

 

世界食糧計画によると、ジンバブエだけでも700万人以上が飢えにさらされ、アフリカ南部ではさらに4500万人が飢えのリスクに直面している。(中略)

 

ジンバブエ西部で自給自足農業を営む女性は、「私たちは農業で一家を支えている。このままの気候が続けばやっていけなくなる」と危機感を募らせる。

 

この女性が子どものころは、降雨に頼ってトウモロコシや、家畜の餌にする穀類を育てることができたが、それももうできなくなった。

 

今は食糧援助に頼る生活だが、それでも自分と2人の孫は、1日1回の食事しかできないという。子どもたちの両親は、農業が立ち行かなくなったために南アフリカへ行った。

 

インフレの上昇と政治改革の失敗による景気の悪化が拍車をかけ、ジンバブエ国民の生活はかつてなく過酷な環境に置かれている。

 

しかし富裕国と違ってアフリカ諸国は、気候変動に備えるための資金力も組織力もない。

「このままの状況が続けば、大気中の温暖化ガスが増え続け、50年後のアフリカ南部は今とは似ても似つかない姿になるだろう」とエンゲルブレヒト氏は予想する。

 

同氏によると、干ばつや熱波は今後も続き、今年3月にモザンビークとジンバブエを襲ったような大型サイクロンの勢力は一層強まり、南アフリカのケープタウンで水がほぼ底を突きかけたような極端な水不足は3倍の頻度で起きるようになる。

 

気候変動モデルでは、トウモロコシのような主食となる作物が育たなくなり、何百万人もの家計を支える牧畜も不可能になると予想されている。【12月16日 CNN】

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ただ、ビクトリアの滝が本当に干上がったのか? それは気候変動・温暖化の結果なのか? といった点については異論もあるようです。

 

****【検証】ビクトリアの滝は干上がってしまったのか?****

アフリカ南部がここ数十年で最悪の干ばつに見舞われるなか、ジンバブエとザンビアの国境に位置する「ビクトリアの滝」が干上がりつつあると多くのメディアが報道し、不安が広がっている。

 

この騒動のきっかけとなったのは、ユーチューブに投稿された動画だ。動画にはザンビアのリビングストンから見たビクトリアの滝の長く続く断崖の地肌がむき出しになっている様子や、雨乞いをしているという女性の姿が捉えられていた。

 

しかし、この動画とその後のメディアの報道は例年水流に影響を与えている乾季についてきちんと伝えておらず、滝の水流はジンバブエ側の方がずっと多いという事実もないがしろにしている。(中略)

 

実際、滝の水量は決まって季節的な降雨の影響を受けており、また動画が投稿された9月以降は改善の兆候も現れている。(中略)

 

■気候変動?

ザンビア気象庁の過去40年にわたるデータを基に昨年発表された南アフリカのある研究によると、リビングストンでは「統計的に有意な気温変化」があったものの、「年間平均降雨量には統計的に有意な変化はなかった」という。

 

その一方、研究共著者でバール工科大学の研究者であるカイタノ・デュベ氏は、滝が干上がるのか、またそれがいつなのかを知るのは困難だとし、「動向を見れば水位はますます低くなっており、干ばつはさらに過酷になっているのは確かだ」と述べている。 【12月13日 AFP】AFPBB News

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「ビクトリアの滝が干上がったのか? 気候変動・温暖化の結果なのか?」という点はともかく、ジンバブエで干ばつが深刻化しているのは事実であり、政府の無策という「人的要因による飢餓」が懸念されています。

 

農業生産だけでなく、混乱は社会全体にも広がっています。

 

*****ジンバブエ、修羅場の出産風景 病院ストで素人が決死の助産****

(中略)2歳の助産師エスター・ジニョーロ・グウェナの助けを得て、この1週間でほかにも数十人の赤ちゃんが産まれた。

 

深刻な経済危機が10年以上続くアフリカ南部の国ジンバブエにおいて、グウェナは地元で英雄視され始めている。差し迫った状況のなかで、女性たちは伝統的な助産師を探し求めることを余儀なくされている。その多くが素手で分娩を介助し、消毒や産後ケアを施さない。

 

かつてはアフリカで最も評判の良かったジンバブエの保健セクターの退廃している現状が、グウェナの活動によって浮き彫りになるばかりだと危機感を抱く人もいる。

 

医師は、およそ100ドルの月給より良い待遇を求め、2ヶ月以上にわたりストライキ中である。そして、ハラレの看護師と助産師は2週間前にストライキに参入した。

 

それ以来、グウェナは100人以上の赤ちゃんを取り上げ、母親が亡くなったケースは1度もないという。グウェナは出産介助費用を請求することはない。行き場を失った妊婦を助けることに心を砕いている。(後略)【11月27日 NewSphere】

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上記グウェナさんの尽力はともかく、素人が多くの赤ちゃんの助産を行うことは多くの危険を伴います。

しかし、それを云々していられない・・・というのがジンバブエの現状です。

  

そんなジンバブエでグラフィックデザインの先生として生活する日本人女性のブログ「Kちゃん l ジンバブエ生活@毎日更新中 」も、現地状況を知る参考になります。

 

“ジンバブエに来て9ヶ月がたち、この国の経済状況はますます悪くなるばかり。ほとんどのものを輸入に依存しているため、外貨が必要で、現地通貨の価値は下がるばかり。これは、生活していると肌で感じられるのだけど、なかなか説明が難しい。来た当初、8ドルだったタクシー代。この9ヶ月で今では55ドルだ。”

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