孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

脱原発の道に山積する難題  廃炉、代替エネルギーの確保、コスト問題など

2013-08-25 22:45:50 | 原発

(“米オレゴン州レーニアのコロンビア川沿いにあるトロージャン原発の冷却塔(高さ151メートル)が解体される瞬間。大規模な商業用原発としては米国で初めて廃炉となった。同原発はオレゴン州の電力会社ポートランド・ゼネラル・エレクトリックが建設した(2006年05月21日)”【AFP=時事】(http://www.jiji.com/jc/d4?p=gen300&d=d4_quake&rel=y&g=int) 冷却塔ならこんな大胆な方法でいいのでしょう。日本なら問題もおきそうですが。)

廃炉:初めて経験することが多く、手探りの作業
脱原発か原発再稼働か・・・難しい選択ですが、脱原発には「原発は危ないから・・・」という漠然とした雰囲気・気分ではなく、高度な技術、膨大な資金、そして何よりも多少のリスク・負担はいとわない固い覚悟・国民的合意が必要です。

先ず、現在存在する原発施設の廃炉が必要ですが、想像以上に難しい作業のようです。
イギリスの事例では、1基廃炉するのに90年を要するとか。建設するより難しそうです。

****英国:原発「解体先進国」 稼働26年、廃炉に90年****
世界で最も廃炉作業が進む原子力発電所の一つ、英ウェールズ地方のトロースフィニッド発電所(出力23.5万キロワット、炭酸ガス冷却炉、2基)の作業現場に入った。

1993年の作業開始から20年。責任者は「既に99%の放射性物質を除去した」と説明するが、施設を完全に解体し終えるまでになお70年の歳月を要する。
「想像以上に時間とコストのかかる作業」(作業責任者)を目の当たりにし、日本が今後、直面する道の険しさを思い知らされた。(中略)

65年に運転を開始し、91年に停止した。
原子炉の使用済み核燃料(燃料棒)は95年に取り出されたが、圧力容器周辺や中間貯蔵施設内の低レベル放射性物質の放射線量は依然高い。

このため2026年にいったん作業を中断し、放射線量が下がるのを待って73年に廃棄物の最終処分など廃炉作業の最終段階に着手する。
「初期に建設された原発は将来の廃炉を想定して設計されていない。初めて経験することが多く、手探りの作業だ」とベルショー計画部長は語る。

原子炉建屋に隣接する放射性汚染水浄化装置(長さ33メートル、幅5メートル、高さ6メートル)では除染作業が行われていた。燃料棒冷却や除染作業で発生した汚染水はすでに抜かれている。別室から遠隔操作する工作機(重量5トン)3機が装置内部の汚染された壁をゆっくりと削り取っていく。

被ばくの危険があるため作業員が内部で作業できるのは短時間で、多くは遠隔操作になる。回収された放射性物質は密封され、敷地内の中間貯蔵施設に運び込まれていった。

廃炉作業には稼働時を上回る約800人が携わる。第1段階だけでも30年以上にわたる作業のため、稼働停止後、敷地内に新たにレクリエーション施設なども設けられた。作業の中断、再開を経て全施設が撤去されるのは2083年。廃炉には稼働期間(26年間)よりもはるかに長い時間がかかるのが現実だ。

この発電所は小規模で、稼働中に大きな事故もなく停止後速やかに廃炉作業に移ることができた。それでも廃炉に90年を要し、総費用は約6億ポンド(約900億円)になる。

フィリップス安全担当部長は、事故の処理も終わっていない福島第1原発の廃炉作業について「ここに比べて作業員が動ける範囲が限定されるため、ロボットを多用することになるだろう。想像できないほど困難な作業になるのは間違いない」と話した。【8月19日 毎日】
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初期の原発は、解体を前提とした構造になっていない、古いものは設計図さえ残っていない(!)といった事情で、解体作業が非常に難しいようです。

ましてや、福島のような事故を起こした施設の処理は、いまだ方法も、要する時間・費用もわからないというところでしょう。

容易に廃炉できないというのは、解決策を模索している廃棄物処理の問題と同様に、原発技術が未完成のものであることの証でもあります。

ただ、廃棄物処理については“どの地域の住民がリスクを負担するのか”という、解決策を見いだせない難題があるのに比べれば、廃炉は今後の経験で技術が進歩することも見込めるところがあります。

世界的には、ドイツのような脱原発を進める国もありますが、流れとしては新興国を中心に今後ますます多くの原発が建設・計画されています。

そうした原発推進の国々においても、古い原発施設は一定の年月が経過すれば更新・廃炉が必要になるでしょうから、廃炉技術は早急に確立される必要があるのと同時に、膨大な需要が見込める技術とも言えます。

もし日本が脱原発を進め、本気で廃炉に取り組むのであれば、その過程で蓄積さる廃炉技術は、原発建設技術同様に、世界市場に提供しうる“成長戦略”のひとつにもなるのではないでしょうか。

【「世界がドイツを見ている」】
脱原発で減少するエネルギーをどういう形で補うか、安定的に供給できるのか、コスト的に負担が増えないのか・・・という問題も出てきます。

脱原発を進めるドイツは、“チェルノブイリ原発事故などの影響を受け、2000年に中道左派のシュレーダー政権が20年ごろまでの原発全廃を決めた。これに対し、09年の総選挙で勝利した中道右派のメルケル政権は運転延長を決定。しかし、福島第一原発事故後の11年6月、「脱原発」にかじを切った。”【8月25日 朝日】という経緯があります。

現在、強い脱原発の国民的合意で自然エネルギーを推進していますが、それでも電気代に跳ね返るコストの問題は議論を呼んでいます。

****独、ブレない脱原発 総選挙、与野党とも自然エネ推進 課題は膨らむ電気代****
東京電力福島第一原発の事故を受け、「原発ゼロ」を目指す方針を決めたドイツ。再稼働に向けて動き出した日本とは対照的に、9月の総選挙ではこの目標に争いはなく、与野党ともに自然エネルギーの推進を訴えている。ただ、自然エネの普及に伴って電気料金は値上がりが続いており、対策に苦労している。

ドイツは福島事故後に超党派で「脱原発」を決めた。事故前に17基あった原発のうち8基を閉鎖し、残る9基を2022年までに順次閉鎖。自然エネルギーによる電力の比率を20年までに35%、30年までに50%へ増やす目標を立てた。

自然エネは想定以上のペースで拡大し、事故前の10年に電力の22・4%をまかなっていた原子力の比率は12年に16・1%まで低下。一方、自然エネは16・4%から22・1%まで増えた。
懸念された電力不足も起きず、天気の良い時には自然エネの発電量が火力や原子力などの総発電量を上回る日も出てきた。

メルケル首相は7月、「エネルギー政策の目標を達成できると確信している」と、脱原発の方針を確認。9月22日にある選挙の公約でも、最大与党のキリスト教民主同盟(CDU)が「強い決意でエネルギー政策の大転換を前進させる」、最大野党の社会民主党(SPD)も「世界がドイツを見ている。エネルギー政策の大転換が成功すれば、中国のような新興国にとっても成長モデルとなる」と方向は一致している。(中略)

 ■買い取り制度、見直し策争点
ただ、課題は山積している。最大の問題は電気料金値上がりだ。平均家庭の電気料金は月69・10ユーロ(10年)から83・80ユーロ(13年)へと2千円近く増えた。自然エネの普及を促すための固定価格買い取り制度による、電気料金への上乗せ分が増え続けているためだ。

そのため、メルケル政権のアルトマイヤー環境相(CDU)が買い取り価格の大幅削減を訴えるなど、制度の見直しが議論に上っている。だが、自然エネの普及ペースを減速させる可能性があり、野党は反対している。

SPDは、電気にかかる税金の減税を主張。野党・緑の党は、メルケル政権が進めた固定価格買い取り制度の大企業への優遇拡大をやめ、一般家庭の値上げを抑えるべきだと主張している。現状では、年1ギガワット時以上使う企業の電気料金への上乗せ分は家庭の10%以下に優遇されている。【8月25日 朝日】
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断ち切れない石炭依存
ドイツの場合、原子力エネルギーにかえて自然エネルギーを推進してはいますが、一方で、石炭火力発電所稼働も増加し、2012年の総電力にしめるエネルギー源の内訳でみると、原子力:16.1%、再生可能エネルギー22.1%に対し、石炭:44.8%と、CO2排出で問題が多い石炭に依存する形にもなっています。

****ドイツ:脱原発 増えるCO2 メルケル政権ジレンマ****
・・・2011年3月の東京電力福島第1原発の事故後、22年までの段階的な「脱原発」を決めたドイツ。
発電量に占める原子力の割合は減り、逆に風力や太陽光など再生可能エネルギーの割合が増えている。

だが原発を減らす分の「穴埋め」として、地球温暖化の原因とされるCO2排出増加につながる石炭依存が進むのも事実だ。
欧州連合(EU)によると昨年、加盟27カ国(当時)中23カ国が前年比でCO2排出量を減らしたのに対し、ドイツは逆に約640万トンの増加だった。

国際会議などでアンゲラ・メルケル首相(59)は世界的な「CO2削減」を訴えるが、ドイツ自身が石炭依存を断ち切れない。
米国で新型天然ガス「シェールガス」の生産が拡大していることなどから石炭価格は世界的に下落傾向にあり、「安く買える」利便性も背景にある。

9月22日の連邦議会選(総選挙)では、脱原発に伴うこうした矛盾解消も争点の一つ。特に熱心に対策の必要性を訴えているのが環境政党・緑の党だ。

シュレーダー政権(1998〜2005年)で緑の党は社会民主党と連立与党を組み、02年の脱原発法制化を実現させた実績がある。
ドイツはその後メルケル政権が一度は原発延長に転じたが、福島事故後に再び脱原発に落ち着いた。

だが皮肉なことに、脱原発決定後は緑の党の「存在意義」が有権者に見えにくくなった側面もある。
福島事故直後の11年4月の世論調査で一時28%まで上昇した緑の党の支持率は現在、14%前後止まり。
そこで今、公約に掲げるのが30年までの電源における「脱・石炭」だ。

「野心的だが、再生エネルギーのダイナミックな増加率を見れば可能な案だ。(全発電量に占める)再生エネの割合は数年前はわずか10%台だったが、昨年は25%近くまで上昇している。やがては石炭に代わることができる」。緑の党で環境政策に携わるベルベル・ヘーン議員(61)は、再生エネ普及のペースを上げることで石炭の代替は実現可能と分析する。

一方、メルケル首相率いるキリスト教民主・社会同盟は、選挙公約で石炭削減には踏み込んでいない。「再生エネの不安定性を埋め合わせるため、近代的で効率の良い石炭・ガス発電所は必要」と指摘し、急激な再生エネへの移行を避け、今後も石炭を使う立場だ。

「エネルギー転換は長期戦だ」。ベルリン自由大学のルッツ・メッツ博士(エネルギー政策)は話す。「最近の議論は発電ばかりに目を奪われがちだが、ドイツでは暖房と給湯がエネルギー消費の大部分を占める。まずはこの消費をいかに抑えるか。長期的な省エネやエネルギー効率化が重要だ」

電気料金の高騰や送電網の未整備など多くの課題に直面するドイツ。11年の脱原発決定以降、初となる国政選挙には「長期戦」となるエネルギー政策の次の一手がかかっている。【8月24日 毎日】
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【「市民送電線」】
ドイツが目標通りに自然エネルギーを伸ばすには、風力に適した海岸地帯などから大都市や産業地帯へ送電網を強化する必要があります。
そこで、送電事業者が建設費の一部を予定路線の近くに住む市民からの投資でまかなおうとする試みも行われています。

しかし、電磁波の健康への影響や景観破壊を懸念する市民の反対運動も起きています。

****風力送電網の投資巡り賛否****
・・・・送電事業者テネットは、シュレスビヒホルシュタイン州西海岸を走る新たな送電線約150キロの建設費の一部を、予定路線の近くに住む市民からの投資でまかなおうとしている。

沿線の両側5キロ以内の住民が同社の社債に1万ユーロ(約130万円)まで投資できる。約束された利回りは年3~5%。通常の銀行預金に比べればかなりの高利だ。(中略)

だが、巨大な送電線や鉄塔には、電磁波の健康への影響や景観破壊を懸念する市民の反対運動が各地で起き、建設は遅れている。

「市民送電線」とテネット社が呼ぶ試みは、住民にとって迷惑施設の送電線から利益を提供することで反対を少しでも和らげる狙いだ。ドイツ政府もこの初めての取り組みを「試験的プロジェクト」として注目している。

しかし、狙い通りに行くかどうかは不透明だ。「テネットは住民の賛同を金で買おうとしているが、私たちは自分を売るつもりはない」。フーズム郊外の17世紀の建物でレストランを営むユルゲン・レックさん(56)は送電線の必要性は認めつつも、観光や渡り鳥への悪影響を懸念している。正式に建設が決まれば、裁判を起こすつもりだ。【8月25日 朝日】
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脱原発は容易ではありません。繰り返しになりますが、多少のリスク・負担はいとわない固い覚悟・国民的合意が必要です。
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