(シリア・ラッカ近郊にある避難民キャンプで暮らす女性と少女(2022年12月19日撮影)【12月29日 AFP】)
【停戦はおおむね維持されているが、小規模な衝突は続く】
上記2回に続き、3回目の同じ書き出し。
“以前は国際問題の中心課題のひとつであったシリア情勢については、反体制派が北部イドリブに拠点をもつものの、現地での内戦が小康状態にあることやウクライナでの新たな問題の発生などで、あまり大きな扱いをされることがなくなりました。ただ、衝突がなくなっている訳でもありません。・・・・”
そして、下記は11月13日ブログで紹介した記事。
****死が死を呼ぶ報復の連鎖、シリア北西部****
在英NGOのシリア人権監視団によると今月6日の朝、政権側のロケット弾攻撃があり、子ども3人を含む10人が死亡、77人が負傷した。
国内避難民キャンプなど複数の地点で30発以上のロケット弾が爆発。ロケット弾攻撃はしばらく続き、反体制派は報復として砲撃を行った。政権側は午後遅くにもイドリブ県南部のカフルラタへの攻撃を行い、1人が死亡、3人が負傷した。死傷者はオリーブを収穫している最中だった。
前日の5日には、イスラム過激派組織「タハリール・アルシャーム機構」系組織による砲撃でシリア軍に5人の死者が出ていた。
政府が民主化運動を弾圧したことを受けて2011年に始まったシリア内戦では、これまでに数百万人が国内外に避難し、50万人近くが死亡。
ロシアとイランから支援を受けたバッシャール・アサド政権は、反体制派が一時支配下に置いた地域の大半を奪い返した。
シリア北西部は時折戦闘があるものの、ロシアと反体制派を支援するトルコが2020年に合意した停戦がおおむね維持されている。 【2022年11月13日 AFP】
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【ガソリン等燃料の不足と頻繁な停電で困窮する市民生活 背景にアメリカの対イラン制裁】
最近の動きとしては、シリア南部での生活苦住民による異例の反政府デモが報じられています。
****シリア南部で反政府デモ 2人死亡 独裁体制・アサド政権の恐怖政治下では異例****
強権的なアサド政権によって反政府活動が実質的にほぼ封じ込められている中東・シリアで、異例ともいえる反政府デモが起き、治安部隊が実弾を使って鎮圧しました。
シリアでは2011年に反政府デモが拡大し、大規模な内戦に発展しましたが、その後、シリア政府軍と同盟国のロシアによる武力弾圧によって、反政府活動は北部の一部地域をのぞき、ほぼ抑え込まれていました。
こうしたなか、ロイター通信や人権団体・シリア人権監視団によりますと、南部のスワイダで4日、アサド政権の打倒を訴えるデモ隊が県知事公舎に乱入。アサド大統領のポスターを破るなどしたうえ、治安当局の車両に火を放ったということです。疲弊した国内経済に起因する生活苦が原因とみられますが、詳しい動機は分かっていません。
当局側はデモを実弾を使って鎮圧し、AP通信によりますと、デモ参加者と警察官の2人が死亡、7人がけがをしました。
アサド大統領が独裁体制を固め、恐怖政治による統治を推し進めるシリアで、近年、こうしたデモや衝突は異例で、市民の不満が広がれば、再び緊張が高まる可能性があります。【12月5日 TBS NEWS DIG】
シリアでは2011年に反政府デモが拡大し、大規模な内戦に発展しましたが、その後、シリア政府軍と同盟国のロシアによる武力弾圧によって、反政府活動は北部の一部地域をのぞき、ほぼ抑え込まれていました。
こうしたなか、ロイター通信や人権団体・シリア人権監視団によりますと、南部のスワイダで4日、アサド政権の打倒を訴えるデモ隊が県知事公舎に乱入。アサド大統領のポスターを破るなどしたうえ、治安当局の車両に火を放ったということです。疲弊した国内経済に起因する生活苦が原因とみられますが、詳しい動機は分かっていません。
当局側はデモを実弾を使って鎮圧し、AP通信によりますと、デモ参加者と警察官の2人が死亡、7人がけがをしました。
アサド大統領が独裁体制を固め、恐怖政治による統治を推し進めるシリアで、近年、こうしたデモや衝突は異例で、市民の不満が広がれば、再び緊張が高まる可能性があります。【12月5日 TBS NEWS DIG】
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上記反政府デモの背景にはガソリン等燃料の不足と頻繁な停電による生活苦があるようです。
****シリアの燃料危機****
シリアのダマスに近いスウェイダで騒擾があり、民衆が経済状況の悪化と生活苦について抗議したとのニュースを報告したかと思います、
おそらくこの話は、政府支配地域におけるガソリン等燃料の不足と頻繁な停電による生活苦から来たもので、al jazeera netの報じるところが事実なら、状況はかなり深刻な模様です。
同記事によるとダマス等、政府支配下のシリアでは、ガソリン等燃料不足が深刻化していて、何処のガソリンスタンドも車の長い列が並んでいるが、なかなか順番が来ずに生活は麻痺状態である由。
おそらくこの話は、政府支配地域におけるガソリン等燃料の不足と頻繁な停電による生活苦から来たもので、al jazeera netの報じるところが事実なら、状況はかなり深刻な模様です。
同記事によるとダマス等、政府支配下のシリアでは、ガソリン等燃料不足が深刻化していて、何処のガソリンスタンドも車の長い列が並んでいるが、なかなか順番が来ずに生活は麻痺状態である由。
またガソリンの公定値段は、最近リッターあたり、3400から4900リラに値上げされたが、闇市ではリッターあたり10000リラとなっている由
このためサラリーマンや学生は乗り合いタクシーの順番を待つか、トボトボと家に帰るしかないが、やっと摑まった乗り合いタクシーの料金も、これまでの倍以上になっている由。
また軽油についても状況は同じで、また電気の供給についても一日10時間の停電など普通になりつつある模様。
さらに携帯電話が不通になる状況も増えている由。
その最大の原因は原料の石油不足で、最大の供給国イランはシリア向けの石油供給を最優先にするとしているが、イランからの石油が米国等の制裁に引っかかったりで、思うように供給されていない模様。
(政府軍が支配して比較的秩序が保たれているダマスや周辺でさえ、この状況とすれば、未だ戦闘の続いているシリア平原等の状況は更に深刻かと思われるも、あまりニュースはない)(後略)【12月6日 中東の窓】
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アメリカの対イラン制裁で、イランだけでなくシリアにも深刻な影響が出ているようです。
「イランにしてもシリアにしても“ならず者国家”だから、一石二鳥でいいじゃないか」という考えもあるでしょうが、苦しむのは一般民衆であるということをどのように考えるべきか・・・
【アメリカはIS掃討作戦を継続 クルド人勢力が米軍に協力】
イランのシリアでの活動全般について言えば、これまでロシアとともにアサド政権を支援しており、一時は反体制派によって追い込まれたアサド政権の反転攻勢を可能にしたのもイランの支援でしたが、制裁に苦しむ今のイランにはシリアなど国外で積極的活動を行う余裕はないでしょう。
そのイランに制裁圧力をかけるアメリカ。
(私的には意外でしたが)アメリカはシリアではIS掃討作戦を今も続けているようです。
そして相変わらずアメリカの作戦の地上実行部隊となっているのがクルド人勢力です。
****米軍、22年にIS686人殺害 イラクとシリアで作戦313回****
米中央軍は29日、2022年にイラクとシリアで過激派組織「イスラム国」(IS)に対し米軍やイラクの部隊、シリア民兵組織が実施した作戦は計313回で、686人を殺害し、374人を拘束したと発表した。クリラ米中央軍司令官は「ISを大幅に弱体化させたが、卑劣な思想は野放しのままだ」とし、作戦を続ける必要性を訴えた。
イラクで191回の作戦を通じて159人を拘束し、少なくとも220人を殺害。シリアでは122回で、うち14回が米軍単独。残りは少数民族クルド人主体の民兵組織「シリア民主軍」と実施した。215人を拘束し、466人を殺害したとしている。【12月30日 共同】
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シリア北部のクルド人勢力に対しては、トルコが国内クルド人テロ組織と同じだとしてしばしば越境攻撃を仕掛けていますが、上記のような米軍とクルド人勢力の協力関係を背景に、アメリカはトルコを牽制しています。
【アメリカはクルド人勢力を見捨て、トルコが同勢力を叩き、トルコ・ロシア・アサド政権の関係改善・・・という関係の変化の兆し】
一方、シリアではロシアがアサド政権を支援し、トルコが反体制派を支援するという構図が続いていますが、年末にトルコとシリアがロシア・モスクワで会談したとか。関係正常化の兆し・・・とも。
****トルコとシリアの高官がモスクワで会談、関係正常化の兆し****
トルコのアカル国防相と国家情報機構(MIT)のフィダン長官が28日、モスクワでシリアの高官と会談したと、トルコ国防省が発表した。10年におよぶシリア内戦を巡るトルコ・シリア間の関係正常化の明確な兆しが示された。
トルコ国防省の発表によると、会談にはシリアのアッバス国防相およびアリ・マムルーク情報局長のほか、ロシアのショイグ国防相が参加。声明で「シリア危機、難民問題、シリア国内の全てのテロ組織に対する共同戦線の取り組みが建設的な会談で議論された」とした。
またトルコ、ロシア、シリアは3カ国間協議の継続にも合意したという。
トルコのエルドアン大統領は今月、トルコ・シリア間の外交加速に向け、ロシアおよびシリアとの3カ国間の機構設立をロシアのプーチン大統領に提案したと発表。また、シリアのアサド大統領との会談を望んでいるとしていた。【12月29日 ロイター】
トルコ国防省の発表によると、会談にはシリアのアッバス国防相およびアリ・マムルーク情報局長のほか、ロシアのショイグ国防相が参加。声明で「シリア危機、難民問題、シリア国内の全てのテロ組織に対する共同戦線の取り組みが建設的な会談で議論された」とした。
またトルコ、ロシア、シリアは3カ国間協議の継続にも合意したという。
トルコのエルドアン大統領は今月、トルコ・シリア間の外交加速に向け、ロシアおよびシリアとの3カ国間の機構設立をロシアのプーチン大統領に提案したと発表。また、シリアのアサド大統領との会談を望んでいるとしていた。【12月29日 ロイター】
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アサド政権、ロシア、イラン、トルコ、クルド人勢力、アメリカ・・・といった関係国・関係組織の関係が変わりつつあるのかも。
****シリア・トルコ関係****
ロシアの仲介の下、トルコがシリア政府との関係改善を図っていることは昨日報告しましたが、本日はこの問題について2つの興味ある記事がアラビア語メディアに出ています。
一つはal qods al arabi net で、記事はこれまでトルコは米欧の支援するシリア民主軍というクルド勢力の排除をシリア政策の最大戦略として、追及してきたが、これまでは米欧は、対IS等イスラム過激派掃討作戦の主力部隊として、その手に乗らず、トルコの戦略は必ずしも成功していないとしています。
一つはal qods al arabi net で、記事はこれまでトルコは米欧の支援するシリア民主軍というクルド勢力の排除をシリア政策の最大戦略として、追及してきたが、これまでは米欧は、対IS等イスラム過激派掃討作戦の主力部隊として、その手に乗らず、トルコの戦略は必ずしも成功していないとしています。
然し、最近の国際情勢の変遷に伴い、米国はクルドへの関与を減らし、むしろギリシャ(トルコに取っての歴史的潜在敵)に対する支援を強化し、ロシアがトルコとシリア政府との関係改善に熱意を示してきたので、トルコはこれに乗り、YPG等の国境方面からの排除を狙っているとしています。
他方、同ネットの別の記事は、このような情勢とどこまで直接関係あるかは不明ですが、30日、シリアの北西部のトルコとの国境地帯の各地で、トルコ・シリア政府接近に反対する抗議があったと報じています。
デモは、idrib ,al bab ,ifrin .iazaz,tel abyadh 等のアレッポ周辺とラッカ県などで行われ、参加者は独裁者アサドとの和解に反対した由 (彼らの主要部分がシリアの反政府主義者かクルド系か等は不明)
とりあえずのところ以上ですが、どうやららトルコ・シリア国境方面情勢は、国際的にも現地でも、混沌としてきた模様です。
それにしてもやはり、米国等はシリアのクルド勢力を見捨てるということなのでしょうかね?【12月31日 中東の窓】
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問題は最後の指摘、「アメリカはアフガニスタンに続き、また協力者を見捨てるのか?」というところ。
アメリカはこれまでもトルコのクルド人勢力への攻撃を十分には止めてきていませんが、更に関与を減らし、最終的には“見捨てる”のか?
ISの脅威は少なくともシリアにおいては相当に低下しているでしょうから、「もうクルド人勢力は用済み」と言えばそうなんでしょうが、釈然としないところも。
【イスラエル「史上最も右寄りの政権」は親イラン組織の施設を攻撃】
あともう1か国、シリアでのプレーヤーを忘れていました。それはイスラエル。
****シリア空港攻撃2人死亡 イスラエルか****
シリアの国営通信は2日、首都ダマスカスの国際空港とその付近に同日未明に攻撃があり、兵士2人が死亡、2人が負傷したと伝えた。イスラエルによる攻撃だとしている。シリア人権監視団(英国)は、死者は4人で、親イラン組織の施設が標的となったと伝えた。
空港機能は一時停止した。イスラエルは、シリアのアサド政権を支援してシリア国内で活動する親イラン組織の施設への攻撃を続けている。今回の攻撃についてコメントしていない。【1月2日 共同】
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ネタニヤフ氏が首相に復権し、「史上最も右寄りの政権」となったイスラエルは、ヤル気満々のようです。