孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

EUと中国のオンライン形式首脳会談 懸案の投資協定の結論出せず 「人権」で中国不快感

2020-09-21 23:34:11 | 欧州情勢

(14日、中国の習近平国家主席(左上)やドイツのメルケル首相(左下)、EUのミシェル首脳会議常任議長(右上)らが出席し、オンライン形式で開かれた会議の模様【9月16日 朝日】)

 

【欧州側の「人権」言及に、習近平主席は強い不快感】

今月14日、EUと中国によるオンライン形式での首脳会談が行われました。

 

米中対立が深まる中で、欧州としてはアメリカの対決姿勢とは一線を画して、中国との独自の関係を構築するのが狙いです。

 

****EU、中国と首脳会談 警戒と協力のバランス外交探る 米国の封じ込め策とは距離****

欧州連合(EU)は14日、中国とオンライン形式での首脳会談を行う。EU側からは議長国ドイツのメルケル首相、フォンデアライエン欧州委員長ら、中国側は習近平国家主席が出席する。

 

香港問題や巨大経済圏構想「一帯一路」による投資攻勢などで、EUは対中警戒を強めている。だが環境問題や経済関係では「中国との協力は不可欠」との立場だ。米国の中国封じ込め策と一線を画し、バランス外交を探る機会となる。

 

EU筋によるとEUは会談で人権問題を提起し、国家安全維持法が施行された香港も議題する。さらに南シナ海情勢で、中国の海洋進出に懸念を表明する。

 

しかし、最大の課題は双方が年内合意を目指す投資協定の行方だ。交渉は2013年から続いている。

 

10日にデジタル問題のハイレベル対話が行われ、EUはデータ保護などで「透明でオープンな制度」を中国側に要求した。中国が8日、米国の封じ込め策に対抗し、データ管理の世界基準作りを目指す姿勢を示したことへの懸念がある。

 

EUは今夏、欧州に投資攻勢をかける中国企業の規制案作りに着手した。第5世代(5G)移動通信システムで安全保障を理由に華為技術(ファーウェイ)製品の採用に、慎重姿勢を示す加盟国も増えている。

 

中国は米国の圧力が強まる中で欧州に活路を見いだす戦術だ。EUとの首脳会談を前に中国外交トップの楊潔●(=簾の广を厂に、兼を虎に)(よう・けつち)共産党政治局員と、王毅(おう・き)国務委員兼外相が相次ぎ欧州を歴訪した。

 

王氏はフランスでの講演で米国の中国たたきを「歴史的誤り」と批判し、イラン核合意や環境問題で欧州と中国の協力を訴えた。【9月14日 産経】

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首脳会議にはEU側から議長国ドイツのメルケル首相、フォンデアライエン欧州委員長ら、中国側は習近平国家主席が出席しました。

 

ミシェルEU大統領は、交渉中の投資協定をめぐり、「われわれは公平で、対等な関係を要求した」と述べ、結論に至らなかったと明らかにしています。

 

****EU、中国に「利用されず」 首脳会談で公平な貿易関係要求****

欧州連合(EU)は14日、中国とオンライン形式で首脳会談を行った。ミシェル大統領は中国に「利用されない」と述べ、一段と公平な貿易関係を要求した。

ミシェル氏は会談後、記者団に対し「欧州には競技場ではなくプレーヤーが必要だ」とした上で、「われわれはもっと公平で、よりバランスの取れた関係を望んでいる。それは互恵関係と公平な競争環境を意味する」と語った。

ドイツのメルケル首相は、EU・中国間の投資協定の締結に向け、交渉を急ぐよう中国側に圧力をかけたと明らかにし、「全体として、中国との協力は互恵主義や公正な競争といった一定の原則に基づく必要がある。われわれの社会システムは異なっており、多国間主義にコミットしてはいるが、ルールに基づくことが前提だ」と述べた。

欧州委員会のフォンデアライエン委員長は、中国の強制的な技術移転などの問題で進歩が見られるものの、投資協定を結ぶには中国が市場を一段と開放する必要があると指摘。中国は鉄鋼などの伝統的な分野にとどまらず、ハイテク分野でも過剰な生産能力に対処すべきとした。

中国の習近平国家主席は会談後の会見に参加せず、共同声明も出されなかった。

国営新華社通信によると、習氏は会談で中国の問題、特に人権に関する干渉を拒否。「中国人民は人権に関する『指図」を受け入れず、『二重基準』に反対する。中国は相互尊重の原則に基づいて欧州側との交流を強化し、双方が共に前進できるよう望む」と発言したという。【9月15日 ロイター】

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習近平国家主席は会談後の会見に参加せず、共同声明も出されなかった・・・和気あいあいという雰囲気ではなかったようです。

 

中国・習近平主席の側には、投資協定がまとまらなかったのもさることながら、欧州側が「人権」を持ち出すことへの苛立ちがあったのでしょう。

 

“中国人民は人権に関する『指図』を受け入れず”・・・下世話な言い方をすれば「教師づらするんじゃねえ!」といいたところでしょう。

 

実際、他の記事では「指図」ではなく、「教師ずら」「先生」といった言葉になっています。

習近平主席がどのような表現を使ったかは知りませんが、相当に強い不快感の表明であることには変わりありません。

 

****EU、中国へ強まる警戒 コロナ・米中対立経て…距離感に変化 首脳会談****

欧州連合(EU)と中国の首脳による14日のオンライン会談で、EU側は香港情勢やウイグル族をめぐる問題などへの強い懸念を表明した。

 

経済を軸に結びついてきた両者だが、米中対立や新型コロナウイルスも背景に、すきま風が吹き始めた。

 

 ■ウイグル監視団、受け入れを要求

新型コロナの影響でオンラインで行われた会談は、緊迫する場面もあった。

 

EU側によると、ミシェル首脳会議常任議長(大統領に相当)が人権問題を提起。少数民族への抑圧が指摘される新疆ウイグル自治区への監視団を受け入れるよう求めた。香港情勢にも言及し、「深い懸念」を伝えたという。

 

中国外務省によると、習近平(シーチンピン)国家主席は「中国は人権で『教師づら』する者を受け入れない」と強い言葉で反発した。

 

EUがあえて敏感な話題を強調した背景には、中国への警戒感の高まりがある。技術覇権や安全保障など、米中対立で米国が強調する懸念をEU側も共有するからだ。

 

たとえば、ドイツは今月、インド太平洋地域に関する政策指針を発表し、「自由で民主的な価値観を共有する国々との協力を強化する」とした。中国包囲網を築こうとする米国と完全に同調するわけではないが、「中国一辺倒」ではないとの姿勢を見せたと受け止められている。

 

 ■経済での協力は続く

ただ、ドイツをはじめとするEU側にとって、中国は米国に次ぐ貿易相手国。急激に経済関係を冷え込ませるつもりはない。人権問題を提起しつつも、投資協定などを通じて中国の市場開放を淡々と求めていくという姿勢だ。

 

その点で、対中圧力を強める米国との温度差は大きい。(中略)

 

EU議長国のトップとして出席したドイツメルケル首相は会談後の記者会見で、「中国と戦略的関係を築くことは重要と信じる」と述べる一方、中国との関係に「幻想を抱かず現実に照らしてみなければならない」と語った。

 

 ■依存するリスク、認識

一方、欧州をつなぎとめておきたい中国の習氏は会談で、「中国とEUは互いに重要なパートナーだ」と強調。「EUが公正で差別のないビジネス環境を築くことを望む」と語り、米国が各国に求める中国製品の排除に同調しないよう求めた。

 

中国人民大学EU研究センター主任の王義キ教授はEU側の態度の変化について、新型コロナで中国のサプライチェーン(供給網)に依存することへのリスクを自覚したことが影響していると指摘。中国と良好な関係を築いてきたメルケル氏が来年秋に退任する見通しである点も含め、「中独、中欧関係は不確実性に直面している」と話す。【9月16日 朝日】

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【力関係の変化で行き詰まるEUの対中戦略】

「人権」で“緊迫する場面もあった”とのことですが、欧州側は中国側の反発を考慮して、一定に抑制した対応だったとも。

 

それでも中国側の強い不快感を招いたということで、中国が今後ますます経済力・技術力を強めるなかで、“公平で、よりバランスの取れた関係”(ミシェルEU大統領)の構築は現実問題としては難しいものがあります。

 

****EUの対中戦略行き詰まり 強気の中国に人権で強く出られず****

米中対立の陰で、欧州連合(EU)の対中戦略が行き詰まっている。

 

EUは米国のように中国を真正面から攻撃せず、投資や環境の分野で対中協力を模索してきたが、習近平国家主席は14日のEU・中国首脳会談でEUの懐柔策を受け入れなかった。新型コロナウイルス流行後の中国、EU間の力関係の変化も背景にある。

 

 ◇人権「封印」も空振り

首脳会談で最大の課題は過去7年、交渉を続けてきた投資協定だった。過去の貿易で中国から技術移転ばかり迫られたEUは情報通信やバイオ産業の市場開放を要求する一方、香港や新疆ウイグル自治区などの人権問題では、「懸念」を表明するのにとどめた。

 

それでも、習氏は「中国は人権問題の『先生』を受け入れない」と反発し、会談は投資協定の「年内合意」の目標を確認しただけで終わった。EUのミシェル大統領は「われわれは中国に利用されない」といらだちを示した。

 

 ◇形勢逆転

EUが第5世代(5G)移動通信システムや人工知能(AI)、エネルギーなど戦略分野で大きく後れをとっていることは交渉上の弱みになっている。

 

5Gではデンマークやスロベニアが安全保障上の懸念から中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)製品採用を見送ったが、EUですぐに取って代われる企業は多くない。電気自動車(EV)でも欧州自動車大手は中国企業のバッテリーが頼みだ。中国は技術力でEUを凌駕しつつある。

 

中国は米国に対抗するため自国産業の育成に熱をあげ、投資協定が目指す市場開放どころか保護主義色を強める。北京の欧州商工会議所は今月、「中国の外資規制は強まり、欧州の競合企業を締め出そうとしている」と懸念を示した。

 

 ◇EU内で批判も

中国は新型コロナ流行後、EUへの態度を変えた。医療用品の不足に苦しんだEUは供給を中国に頼ったが、中国は「感謝せよ」と迫った。

 

これが欧州では居丈高な態度と映り、世論調査で「中国への見方が悪化した」と答えた人はフランスで62%、ドイツで48%にのぼった。

 

EUは昨年春の対中方針で中国を「競争相手」と位置付けた。米国が離脱したイラン核合意や地球温暖化対策で協力しつつ中国市場の開放で譲歩を狙ったが、出口の見えない戦略を産業界は疑問視する。ドイツ機械工業連盟は「投資協定が年内に合意できない場合、EUは状況を見直すべきだ」と声明で促した。

 

 ◇人権制裁法

欧州ではEUが「人権で弱腰」であるとの批判も強まる。フォンデアライエン欧州委員長は16日の演説で、迅速な制裁を可能にするため、「米マグニツキー法の『欧州版』導入に取り組む」と述べた。首脳会談の不調を受け、中国側に圧力をかけようとした。

 

この法は人権侵害に関わった外国人の資産凍結、渡航禁止などを定め、米政権は香港政府や新疆ウイグル自治区の高官に制裁をかける根拠とした。だが、EU議長国ドイツは制裁に否定的で、「欧州版」実現の見込みは乏しいのが現状だ。【9月20日 産経】

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欧州、そして世界が直面しているのは、一言で言えば、「力関係」の変化、ますます強まる中国の経済力・技術力ということでしょう。

 

日本では、経済力について「なんだかんだ言っても中国はアメリカに及ばない」という認識が主流ですが、そうした認識は世界的には“少数派”となっているようです。

 

****世界経済のリーダーはどの国?日韓だけが「米国」、残りは…****

2020年9月16日、韓国・ソウル新聞は、米機関が世界各国を対象に行った世論調査で、「世界経済のリーダーはどの国か」との質問に対し、日韓だけが「米国」と回答したことに注目した。

記事は、米ピュー・リサーチ・センターが15日(現地時間)、同盟国13カ国の成人1万3273人を対象に電話調査(6月10日〜8月3日)した結果を伝えている。

 

それによると、「世界経済のリーダー」を問う質問に対し、日本は53%が米国、31%が中国と回答。韓国は77%が米国、16%が中国と回答した。

 

この他、ドイツ、英国、スペイン、イタリアなど欧州諸国10カ国では中国が最多、米国と隣接するカナダも中国が47%で米国(36%)より多かった。

 

なお13カ国の平均は中国が48%、米国が34%だった。「多国間貿易を守る中国と、保護貿易を中心に新しい貿易秩序をつくろうとする米国の対外経済政策の違いが反映された結果」とみられているという。(後略)【9月17日 レコードチャイナ】

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日韓の対中国評価が低いのは、両国が中国事情に比較的詳しいためか、利中国との間に多くの問題を抱えているためか、あるいは、アメリカ中心の世界観から抜け出せないためか・・・・。

 

中国製品に対するイメージも変化しているようです。

 

****「中国製=模倣、パクリ」は昔のこと、ドイツで中国製に対するイメージ向上―独誌****

2020年9月17日、環球時報はドイツ誌の記事を引用し、ドイツでは中国製品に対するイメージが向上していると伝えた。

記事は、「国際製品を比較した時にドイツは最も人気のある生産国の1つだ」と紹介。「しかし、『メイド・イン・ジャーマニー』はもともと、英国がドイツ製品の質の悪さを警告するためにつけたもので、日本製品や韓国製品もかつては同様に西洋諸国から質の劣る製品と見なされていた。ところが、今では自動車や電子機器の分野で『1等席』を占めるようになっており、『メイド・イン・チャイナ』についても同様の変化が見られる」とした。

その上で、「華為技術(ファーウェイ)が12年から16年に発表したドイツにおける中国のイメージ調査では、半数以上のドイツ人が『メイド・イン・チャイナ』を粗悪品と見なしていた。中国製品と『模倣』『パクリ』を結び付ける人がほとんどで、これがドイツメディアの伝える中国のイメージだった」と説明した。

一方で、「この数年後の各種調査によると、中国製品の使用者と魅力が安定して増している」と指摘し、「ファーウェイや小米(シャオミ)などの中国ブランドはドイツで人気が高まっている」とした。

 

また、ドイツ品質協会が17年に行った研究で、中国の電子機器に対してポジティブな見方をしている人が7割に達したことに言及し、「多くの若者がファーウェイやTikTokなどのブランドと共に成長しており、中国製品を受け入れる割合が増加し続けている」とした。

この他にも、「ビジネスパートナーとしての中国のイメージも改善している」と紹介。19年の調査では、半数近くのドイツ人が「米国よりも中国の方が信頼できる」と回答していたことを挙げた。

記事は、「高品質製品の生産国でありビジネスパートナーである中国のイメージがドイツで向上していることは、中独関係においてグッドニュースである。しかし、中国製品の競争力が高まるにつれ、ドイツ製品が直面するプレッシャーもまた大きくなっている」と結んだ。【9月18日 レコードチャイナ】

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