孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中国  猛スピードで進歩する科学技術 頭部移植やヒト受精卵遺伝子編集 顧みられない倫理問題

2016-06-20 21:49:17 | 中国

(頭部移植の実験に使用されたマウス 下の頭部の色が異なるマウスが「結果」でしょうか? 写真は【2015 年 6 月 8 日 WSJ】)

低レベルなパクリ体質からは脱しつつある 先端技術で世界をリード?】
一昔前の中国と言えば、低賃金労働による労働集約型「安かろう、悪かろう」商品の生産といったイメージもありましたが、経済規模であっという間に日本を追い越していったように、科学・最先端技術面での進歩も顕著なものがあります。

以下は、先端技術の実績に関する、中国メディアの“自画自賛”です。
リンクははっていませんが、下記URLで自慢の成果の画像が見られます。

****中国のここ数年の先端技術を総まとめ****
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2000年、中国は衛星測位システム「北斗」を打ち上げた。衛星測位システムを自主開発したのは中国が3国目。

http://j.people.com.cn/NMediaFile/2016/0612/FOREIGN201606120904000269906265841.jpg
2010年、高速鉄道車両CRHの開発に成功。世界で最も多くのテクノロジーが採用された高速鉄道となった。

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2010年7月21日、中国の高速実験炉(CEFR)が初臨界を達成した。同原子力技術を確立している国は、世界でも少ない。

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2011年7月14日、高級乗用車・紅旗HQ3が初めて無人の状態で286キロの走行を行った。無人高速走行の実験としては、世界最先端の技術だ。

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2011年9月、軌道上実験モジュール・天宮一号が酒泉衛星発射センターから発射された。中国初のドッキング目標機と宇宙実験室である。

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2012年7月、有人潜水艇・蛟竜号が水深7062メートルの中国有人潜水記録を樹立した。世界の同類の作業型潜水艇の中でも、最も深く潜った潜水艇となった。

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2015年11月、中国初の中距離ジェット旅客機C919が完成した。大型旅客機の自主開発能力を備える国は世界でも少ない。

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2015年11月、スーパーコンピューター「天河二号」が33.86ペタFLOPSの処理能力で、世界最速6連覇を果たした。

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2016年9月に、電波望遠鏡プロジェクトFAST(口径500メートル)が完成する予定。完成すれば、世界一流の宇宙探査センターとなる。【6月12日 人民網日本語版】
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個々に見ていくといろいろな指摘もあるところかと思いますが、中国技術について一般的に言われる“パクリ”云々につて言えば、日本もかつてアメリカなどの技術をパクリまくって成長した経緯があり、当時は大いに不評を買ったものです。

“パクリ”というか、技術移転は多くの国が成長する過程で通る道であり、それだけをもって非難するのはいかがなものか思います。(もちろん“盗んだ”とか、技術移転の在り様も様々ですから、一概に言えない部分もありますが)

中国の技術進歩については、“中国嫌い”の産経系のメディアも取り上げていますから、一定に認めるべき段階にあるのでしょう。

****中国企業が先端技術で世界をリードする時代がやってきたのか? 中国ファーウェイの特許出願数トヨタの3倍 米アップルからも特許料・・・****
ついにこの日がきてしまった。5月上旬、中国の大手通信機器メーカーの華為科技(ファーウェイ)が、米アップルに特許料を支払うのではなく、受け取る側に回ったことが明らかになった。
また、ファーウェイは同月末、4G技術の特許を侵害したとして韓国サムスン電子を提訴した。

中国企業といえばパクリ、パクリといえば中国企業というのは国際的に半ば常識。だが、その時代は終わりつつあるのか。

少なくともファーウエイは、先端技術で世界をリードしつつあるようだ。「技術力で先行する」という日本企業の枕詞(まくらことば)はそう簡単に揺らぐことはないだろうが…。(中略)

実際、ファーウエイの研究開発への取り組みと意気込みはものすごい。任氏によると、ファーウエイの技術者は世界に約8万人。日本にもいる。

2015年の研究開発は売上高の15%に当たる92億ドル(約1兆円)と、すでにトヨタ自動車と肩を並べる水準だ。同演説で任氏は「今後数年間で200億ドルまで引き上げる」と豪語した。
 
世界知的所有権機関(WIPO)によると、2015年のファーウエイによる特許の国際出願件数は3893件と2年連続の首位。2位の米クアルコムに1000件以上の差をつけているほか、4位のサムスンより2000件以上多く、トヨタの3倍強だ。

脅威の成長計画、日本企業太刀打ちできるか
いまだにディズニーキャラクターや日本のアニメのパクリなど、メディアが飛びつきたくなるトンデモニュースに事欠かない中国だが、こと製造業やIT分野での最近の進歩は目覚ましい。

粗悪品のオートバイに「HONGDA」や「HUNDA」などの“パクリロゴ”を付けて格安で販売するなど、今思えばほほえましいくらいの低レベルなパクリ体質からは脱しつつあるようだ。(中略)

着実に技術力をつけているのに加え、最先端のテクノロジーを手に入れるため、ただパクるのではなく、札束攻勢で根こそぎぶんどることにも余念がない中国製造業。ファーウエイは研究開発費の大盤振る舞いで世界の技術者を引きつけ、2020年には売上高を15年の3倍近い1500億ドルにするという脅威の成長計画を描く。

中国各社が本当にそこまで巨大化した場合、日本企業に対抗するすべは残されているのだろうか。心配だ。【6月19日 産経ニュース】
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近いうちに人間の首すげ替え手術を行う・・・新しい体を持った人はいったい誰なのか?】
中国の科学・最先端技術は、いろいろな問題を孕みながらも驚くべきスピードで進歩しているのは事実ですが、科学技術には原子力技術が核兵器をもたらしたように、本当に人間の生活にとって歓迎すべきものなのか・・・という微妙な判断もつきまといます。

特に、医療面での技術進歩は、人間がそこまでやっていいのか?という倫理的な側面があります。

中国の場合は、政治でも経済でも軍事でも、あるいは個々の個人の行動でも、猪突猛進型で、アクセルだけでブレーキのない車のようなところがあって、大丈夫なのか?という不安もあります。

****全身麻痺の患者を救うため】人間の首すげ替え手術を中国人医師が敢行予定****
中国の整形外科医レン・シャオピンが、近いうちに人間の首すげ替え手術を行うことを発表し、世界の医学会に波紋を起こしている。

全身麻痺の患者を救うため
中国のガス会社員、ワン・フアンミンさん(62才)は、スポーツ中の事故で、首から下の全身が麻痺してしまった。そんな彼が普通の生活を取り戻すために見つけた答えが、首のすげ替え手術だった。
現在、シャオピン医師の首すげ替え手術を希望する患者は、このフアンミンさんを含めて数人いる。

シャオピン医師は、1999年に米国初の人の手の移植手術に助手として参加しており、その後、実験用マウス100匹以上の首すげ替え手術を行なっている。(ただし、首をすげ替えたマウスは1日以上生きられなかったと伝えられている)

ファンミンさんの首すげ替え手術は、中国黒竜江省ハルビン市の病院で行なわれる予定。

生きた頭を死んだドナーの身体に付ける
手術の手順は次のようになる。

まず、死んだばかりのドナーと患者の身体から頭部を切り離す。次に、患者の頭とドナーの身体(首の部分)の血管を繋ぐ。その後、首に金属プレートを挿入して安定させてから、首の切り口の神経の末端に、成長を促すゲル状の薬剤を塗る。そして最後に、首の皮を縫い合わせるという手順だ。

倫理的にも技術的にも疑問が
この手術を敢行するという発表は、世界の医学会に波紋を起こしている。

まず、手術そのものが不可能だという意見が多く上がっている。神経の1、2本を繋ぐのは可能だが、無数の神経が通っている脊髄を切断し、それを繋ぐのは不可能であるという。

また、このような手術が倫理的に許されるのかどうかも問題になっている。ドナーが快く身体を提供したとしても、手術が失敗すれば、患者(の頭部)は確実に死んでしまうからだ。

シャオピン医師は、現在、手術チームを編成中。「準備ができ次第実行に移す」と海外メディアに発表した。【6月14日 Text by Sophokles IROIRO】
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人間の頭部移植技術については、イタリア・トリノ大学のセルジオ・カナヴェロ医学博士と上記記事の中国・シャオピン医師が競い合うように進めてきましたが、ここにきて両者は共同で研究を進めているようにも報じられています。

今年1月にはカナヴェロ博士が「サルの頭部移植実験に成功した」ことを発表しましたが、メスを握ったのは中国のレン・シャオピン博士であり、手術後のサルは安楽死させられるまで約20時間を生き抜いたとのことです。

今年5月には、カナヴェロ博士が「(それまでのロシア人から)患者は中国人に変更された。手術は17年末にも行われる」と発表されたのに対し、レン・シャオピン博士は「まったくのでたらめだ。手術の時間も、手術を行う国も決まっていない。この研究にはまだ時間がかかる」と完全否定した・・・との報道があり、両者の関係はわかりません。

わかりませんが、レン・シャオピン博士も5月に「この研究にはまだ時間がかかる」と言っていた割には、近いうちに人間の首すげ替え手術を行うことを発表というのも・・・これもよくわかりません。熾烈な競争があるのでしょうか。

当然ながら、この種の技術には「新しい体を持った人はいったい誰なのか?」といった倫理問題がつきまといます。
レン・シャオピン博士も中国政府も、そうした問題はあまり気に留めないようで、一番乗り目指して突き進んでいます。

****中国で進む頭部移植の研究―倫理問題惹起も****
・・・・中国政府は1990年代半ば以降、画期的な成果を上げられそうなプロジェクトを中心に、科学研究分野に資金を投じている。

同博士は、「中国はトップになりたいと願っている。研究で大きな利益を得られると思えば、支援資金を提供する」と話す。

中国の最終的な目標は、科学大国として認められることだと専門家らは指摘する。英ノッティンガム大学のカオ・コン教授(現代中国論)は、「中国の政治指導者は中国人がノーベル賞を受賞することを望んでいる」と話す。
 
中国の研究には、論争を巻き起こすものがある。4月には広東省の科学者チームが、ヒト受精卵の遺伝子を改変するゲノム編集を行ったと発表し、西側の倫理専門家や科学者はヒトのゲノム編集を中止するよう呼びかけた。レン博士の研究も議論を呼ぶ可能性がある。

同博士はハルビン生まれで、15年以上米国で研究生活を送り、シンシナティ医科大学の研究員となったが、3年前にハルビンに戻った。妻と2人の娘は米国にとどまり、博士が年に数回帰米している。レン博士がハルビンに戻った理由としては、中国政府が潤沢な資金援助を申し出たほか、米国で頭部移植の研究を進められるか疑問を持ったことがある。
 
ヒトの頭部移植は、前代未聞の倫理上の問題を提起するだろう。新しい体を持った人はいったい誰なのか。ヒトの頭部移植が可能になったとしても、何人にも臓器移植ができるのに、1人がドナーの臓器をすべて受け取ることは正しいのか。
 
ハーバード大学医学大学院生命倫理センターのロバート・トゥルーグ所長は、頭部移植は「個人のアイデンティティという重大な問題を伴う」としながらも、「将来的には海外で実際に行われると思う」と予想する。

頭部移植などぞっとすることだと言う専門家もいる。ニューヨーク医科大学の生物倫理学者アーサー・キャプラン氏は「ばかげたことだ」とし、動物を犠牲にして実験を行う価値はないと一蹴する。(中略)

レン博士は「米国だったら、人々は大きな衝撃を受けていただろう」と話した。同博士は1990年代終わりに行われたルイビル医科大学のチームなどによる手の移植や、その後に行われた顔の移植で、倫理学者からの批判が相次いだことを覚えていた。(中略)

中国では頭部移植のための資金を集めたり、承認を受けたりするのが簡単なだけでなく、実験用の動物の入手も簡単だ。(中略)

この研究に対する臓器移植専門家の意見は分かれている。ルイビル大学時代にレン博士の同僚だったジョン・H・バーカー博士は、レン博士が有能な外科医だとし、人間の頭部移植は理論上可能だと述べている。現在ドイツ・フランクフルトにあるJ.W.ゲーテ大学に在籍するバーカー博士は、免疫学と倫理的な見地からすると、手や顔の移植に似ていると指摘した。
 
手の外科医で、レン博士の訓練を行ったシンシナティ大学のピーター・スターン教授(整形外科学)はレン博士の研究について、「興味深く、超未来的だが、非常に多くの点で難題を抱えた分野だ。倫理的問題や免疫拒絶のほか、頭部は非常に複雑な臓器であるため、技術的な問題、とりわけ神経再生の問題もある」と指摘した。
 
レン博士は自分が死ぬまでに頭部移植が人間の医療手段になるかは分からないとしながらも、少なくとも大きく前進させて、次世代の科学者がそれを基に研究できるようにしたいと語る。

今は不可能だが、将来可能になれば、脊髄損傷やがん、筋萎縮性側索硬化症(ALS)など病気やけがで頭部以外の部分に障害を抱える患者を救えるようにるかもしれないという。【2015 年 6 月 8 日 WSJ】
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治療的有用性は、いかなる良心の呵責をも上回る・・・・
不治の病に苦しむ多くの患者にとって「福音」となるであろうことは事実です。ただ整理すべき問題もあります。そこらを脇に置いて、技術だけが先行するというのは困った事態です。

上記WSJ記事にも挙げられている、同種の倫理問題を伴う技術がヒト受精卵の遺伝子操作です。

****ヒト受精卵の遺伝子操作をした中国チーム、倫理上の懸念に反論****
ヒトの受精卵の遺伝子を改変したとする論文を発表した中国の遺伝子研究チームは13日、この論文が物議を醸していることを受けて、倫理的な懸念から高度な研究を先延ばしすべきではないと反論した。
 
中国の広州医科大の研究チームは先週、ヒトの細胞内で人工的に変異を誘発する遺伝子編集技術「クリスパー(CRISPR)」を用いて、AIDS(エイズ、後天性免疫不全症候群)の原因となるHIV(ヒト免疫不全ウイルス)への耐性を持たせたとする研究論文を米国の生殖医学会誌「Journal of Assisted Reproduction and Genetics」に発表した。
 
ヒトの受精卵の遺伝子編集はこれまでに、今回の研究を含め世界で2件しか報告されていない。
 
批評家らは、原理を証明するための実験だとする同研究について、医学的理由が欠如した不必要なものであり、危険性をはらむヒトのゲノム編集の倫理的意味を拡大解釈しないよう強く警告した。
 
研究が行われた病院が発表した声明の中で、研究チームはこうした懸念を一蹴し、遺伝子編集による将来の疾病治療市場の「計り知れない」大きさ重視を表明。

最も重要なのは、信じる道をひたすら進んで研究を全うし、独立した知的所有権を獲得することであり、他人に従う必要はないと述べた。その上で、こうした忍耐力が「国際社会での地位」確保につながるとしている。
 
論文の主執筆者であるファン・ヨン氏は、中国の国営英字紙・環球時報に対し、「この分野のルールを作るのは、先駆者だ」と語った。
 
また、中国の国立遺伝子研究センター所長は同紙に対し、遺伝子変異を原因とするがんなどのあらゆる病気に対してこの技術が持つであろう治療的有用性は、いかなる良心の呵責(かしゃく)をも上回るとの見方を示し、他の国々の倫理的スタンスに追随するのではなく、中国は独自の基準や規定を設けるべきだと述べた。
 
広州医科大の研究では、不妊治療に使うことのできない異常な受精卵が使用され、同大学の倫理委員会から承認も受けていた。受精卵26個のうち4個の改変に成功したが、その一方で予測しなかった変異も多数みられ、3日後にすべての受精卵を破棄したという。
 
生殖医学会誌によると、研究の目的は、ヒトの初期の受精卵の遺伝子を狙い通りに改変するために、技術を評価し原理を構築することだったという。
 
ヒトの受精卵の研究についての規定は国によって異なり、国際的なコンセンサスはない。【4月14日 AFP】
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「この分野のルールを作るのは、先駆者だ」「中国は独自の基準や規定を設けるべきだ」・・・・中国共産党主導で反体制分子とされる法輪功学習者の身体から臓器を切り出し販売しているという「疑惑」が存在するように、医療倫理とか人権とかには全く関心がない国だけに心配です。
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