孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ソマリア  イスラム武装組織シャバブ掃討に一定の進展は見られるものの・・・

2012-01-14 22:00:27 | ソマリア

(昨年10月 イスラム系団体によるソマリアでの救援活動 欧米系団体の支援活動を妨害するイスラム武装組織シャバブがこうしたイスラム系団体の救援活動を今も許しているのかどうかはわかりません。 “flickr”より By Al-Mustafa Welfare Trust - Somalia http://www.flickr.com/photos/66384277@N03/6235587034/

赤十字も活動停止
アフリカ東部ソマリアでは、実質的な無政府状態の中でイスラム武装組織シャバブが一定の支配権を有する状況が続く一方で、深刻な飢饉が広がっていること、そしてイスラム武装組織が国際的な救援活動をも妨害しており、飢饉救済が進まないことは、これまでも取り上げてきたところです。

最近になって、食糧配布ができていた数少ない国際機関である赤十字の活動もストップする事態となっています。

****赤十字、ソマリアで食料輸送停止=「品質検査」で妨害****
赤十字国際委員会(ICRC、本部ジュネーブ)は13日、飢餓に見舞われているソマリアで実施していた食料輸送を一時中止する方針を明らかにした。イスラム武装勢力の支配地域でトラックが足止めされるなどし、活動再開のめどが立たないため。

ICRCによると、昨年12月に24万人分の食料を運んでいたトラック140台が一部地域で「品質検査」を理由に足止めされた。ICRCは「食料が放置され品質が悪化するリスクを避けるため当面は運搬を見合わせる」ことを決めた。【1月14日 時事】
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シャバブを追い詰める民心離反と国際包囲網
しかし、こうしたイスラム武装組織の非人道的な対応は地域住民からの反発を買い、イスラム武装組織の勢力を弱める傾向にあるとも報じられています。

また、テロの温床ともなる無政府状態に終止符を打ちたい国際社会も、昨年からイスラム武装勢力掃討に力を入れ始めています。
脆弱な暫定政府を支えているのはアフリカ連合(AU)のPKOですが、アメリカは過去の経緯・失敗から直接介入は避けながらも、暫定政府軍、AU平和維持部隊の中核となるウガンダとブルンジへの民間軍事企業を使った支援を強めており、イスラム武装組織を首都モガディシオから追い出すことに成功しています。

****ソマリア:米が暫定政府支援、情勢転機 過激派を首都から撃退*****
・・・・米政府高官は毎日新聞の取材に「暫定政府と平和維持部隊に武器・弾薬などの供給や軍事訓練を実施した」と明らかにした。軍事訓練を担当するのは、ワシントンに本社を置く民間軍事企業「バンクロフト・グローバル・ディベロップメント」。米政府は平和維持部隊の主力であるウガンダとブルンジに援助資金を提供、支援を受けた両国政府がバンクロフト・グローバル・ディベロップメントに軍事訓練の「代金」を支払う仕組みだ。

米政府高官は「ソマリアへの米軍派遣は考えていない」と軍事介入の可能性を否定する一方、「(暫定政府と平和維持部隊がアルシャバブを首都から追い出した)作戦の成功で、人道支援を展開できる地域が広がった」と成果を強調。今後、ソマリア北部・北東部の自治領に対する援助を充実させ、アルシャバブの封じ込めを図る考えを示した。・・・・・【11年9月15日 毎日】
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アメリカは、隣国エチオピアからの無人機攻撃も行っています。
****米軍、エチオピアに無人機基地 ソマリアの武装勢力攻撃*****
米軍が、アフリカ東部ソマリアのアルカイダ系組織の攻撃を目的に、隣国エチオピア南部に軍事拠点を極秘に開いたことが分かった。米紙ワシントン・ポストが27日、米空軍の話として報じた。エチオピア政府はこの拠点の存在を否定しているという。

同紙によると、軍事拠点は首都アディスアベバから南に約500キロの町にある民間空港の一部を転用。米空軍の要員が駐留して無人機リーパーを運用している。米空軍は「エチオピア政府が受け入れる限り(無人機攻撃を)続ける」と同紙にコメントしている。攻撃対象はソマリア中南部を支配するイスラム武装勢力シャバブ。米軍はこのほかに、東アフリカのジブチや島国セーシェルにも、無人機の運用拠点を設けているという。

オバマ政権はアフガン、イラク、イエメンなど世界の6カ国で無人機による攻撃をしている。テロ容疑者を裁判を経ずに殺害するうえ、民間人の巻き添えも出ていることから、批判が高まっている。【10月28日 朝日】
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また、昨年10月にはイスラム武装勢力による外国人誘拐に手を焼く隣国ケニアが、昨年11月には国境線での民族問題で利害を有するエチオピアも軍事介入を始めており、住民からの支持も失ったイスラム武装組織シャバブは次第に支配エリアを狭めているとも言われています。

****ソマリア:エチオピア軍侵攻 過激派への包囲網強化****
アフリカ東部ソマリアに隣国エチオピア軍が侵攻し、国際テロ組織アルカイダ系とされるイスラム過激派組織「アルシャバブ」への包囲網が強化されつつある。アルシャバブは、首都モガディシオでソマリア暫定政府を防衛する「アフリカ連合」(AU)の派遣部隊との戦闘も継続しており、勢力が分散化しだした可能性もある。

ケニア軍は10月中旬、ソマリア南部へと侵攻。今月20日までにエチオピア軍がソマリア中部ベレドウェインなどに進軍した。ロイター通信によると25日、エチオピア政府は越境を認めた。

今月半ばにはケニアとウガンダ、ソマリア暫定政府首脳がケニアの首都ナイロビで非公式会合を開き、アルシャバブ掃討に向けた軍事作戦の協力を確認した。AU部隊の主体となっているウガンダ、ブルンジなどの首脳は部隊増強に向け、緊急的援助をアフリカ各国へと呼びかけた。AU部隊との戦闘でアルシャバブが弱体化しているのを好機とみたケニア、エチオピア両軍が米国など国際社会の意向を受ける形で相次いで侵攻している可能性もある。

ソマリアは中央政府の崩壊した91年以降、事実上の無政府状態にあり、暫定政府が首都モガディシオの一部を統治しているが中・南部はアルシャバブが実効支配してきた。しかし、ここにきて各地での戦闘でアルシャバブ勢力が分散化し、内部抗争や資金不足に直面しているとの観測も流れ始めている。

一方、AUも資金難に直面しており、アルシャバブ掃討に向けて、AUが一枚岩となれるかは不透明なままだ。
エチオピア軍は06年、米国の支持を受け、イスラム原理主義勢力が首都モガディシオを掌握していたソマリアに軍事介入し、エチオピア軍が支援する暫定政府が全土をほぼ制圧したが治安は悪化し、09年に撤退した経緯がある。【11月26日 毎日】
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最近のケニア軍、エチオピア軍の動向はよくわかりませんが、下記のような報道がなされています。
****エチオピア軍、ソマリア侵入=国境の都市を占拠―英BBC****
英BBC放送(電子版)は31日、エチオピア軍が、隣国ソマリア領内の国境の都市ベレトウェインの大半を占拠したと伝えた。同市を支配していたイスラム過激組織アルシャバーブは徹底抗戦を主張している。
エチオピア軍のソマリア侵入は11月以降、繰り返し伝えられた。しかし、エチオピア政府は事実関係を否定し続けている。【11年12月31日 時事】
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****ソマリア空爆、60人殺害=ケニア軍****
AFP通信によると、ケニア軍報道官は7日、同国空軍の戦闘機が6日に隣国ソマリア南部にあるイスラム過激組織アルシャバーブの拠点数カ所に攻撃を加え、武装勢力少なくとも60人を殺害したことを明らかにした。アルシャバーブ側はこれを否定している。【1月7日 時事】 
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シャバブを掃討できても、火種は山積
よくわかりませんが、隣接両国による軍事行動が続いているようです。
なお、BBC報道によれば、エチオピアは占拠したベレトウェインをAUにゆだねる意向であると伝えられています。これを受けてAUは平和維持部隊を拡大させる方針です。
06年にアメリカの支援でソマリアに侵攻し、一旦はソマリアを占拠したものの、住民からの抵抗が強く撤退を余儀なくされた過去の経験から、エチオピアとしても深入りは避けたい思いでしょうか。
ただ、AUに資金・装備などの面で、ソマリアを管理する能力があるかは疑問ではありますが。

ベレトウェインを占拠したエチオピア軍や南部のいくつかの都市に入ったケニア軍は地元住民から温かい歓迎を受けているとも報じられており、イスラム武装勢力からの民心の離反は、ソマリアの現状を打開する絶好の好機とも言えます。

もっとも、仮にイスラム武装勢力を掃討できても、ソマリアでは部族間の争いが絶えないこと、独立を主張している北部ソマリランド、自治を要求しているプントランドとの関係、エチオピア・オガデン地方でのソマリ人の分離主義運動など、紛争の火種には事欠かない状況で、安定が訪れる保証は全くない・・・との指摘もあります。【1月7日号 The Economist誌など】
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