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孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

「ポスト成長期」に入った日本 「まだまだ捨てたものではない」という元気が出る指摘

2011-02-19 19:48:26 | 世相

(今後も安心・安全な社会を守れるか・・・ “flickr”より By justindoub
http://www.flickr.com/photos/hikikomori/155438422/ )

近年の日本経済の停滞、中国の経済・政治的台頭に伴う国際的存在感の相対的低下など、日本に関するイメージは国内外を問わずあまり芳しくない・・・というのが大方の見方でしょう。
当面の課題としては巨額の財政赤字をどうするのかという難題があります。

財政改革が成功しなければ格付けにとってマイナス
菅直人首相は1月27日夜、米格付け会社のスタンダード・アンド・プアーズが日本国債の長期格付けを引き下げたことについて、首相官邸で記者団に「そういうことに疎いので、(コメントは)改めてにさせてほしい」と発言、物議をかもしました。

****日本の財政改革、成功しなければ格付けにマイナス=ムーディーズ****
ムーディーズは、日本国債の格付け(Aa2、見通しは安定的)について、日本の債務縮小に向けた財政対応の欠如がネガティブな圧力となるとの見方を示した。そのうえで、日本政府の財政改革が成功しなければ格付けにとってマイナスになると語った。
また日本政府が策定を進めている社会保障・財政改革に注目していると指摘。そのうえで立法化できなければ日本のソブリン格付けのマイナス要因になる可能性があるとの認識を示した。(中略)
(ムーディーズ・インベスターズ・サービスのソブリン・リスク・グループ・シニア・ヴァイスプレジデント、トーマス・バーン氏は)「4月と6月の社会保障・財政改革が立法化できなければ格付けにマイナスの圧迫要因となる。国会を通らなかったといって(すぐさま)格下げすることにはならないが、可能性としては格下げやネガティブ・アウトルック、またネガティブ・アウトルックに近づくことを示唆しているということになる」と述べた。

一方でスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が1月27日に日本の外貨建て・自国通貨建ての長期ソブリン格付けをAAからAA─に引き下げたことに関し、ムーディーズの格付けはS&Pよりも1ノッチ高い「Aa2」であるとしたうえで、これはデフォルトの確率が非常に低いことを意味すると語った。
このほか、日本経済はおそらく回復の方向に向かっているが財政は非常に難しい状況にあるとの認識を示した。【2月9日 ロイター】
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「やれやれ・・・」とため息が出るような話題ばかりですが、「日本もそう捨てたものではない」と元気(カラ元気?)の出る記事も少しはあります。

中国:「日本にはまだ多くの学ぶ点がある」】
****日本尊敬され続ける、くじけるな…シンガポール*****
「日本人はくじけてはならない」――。
シンガポールの有力紙ストレーツ・タイムズ(17日付)は、日本が技術革新を続け、優れた製品やサービスを生み続ける限り、「今後もずっと尊敬される国であり続ける」との東京特派員のコラムを掲載した。
コラムでは、「GDPの順位だけで国の全体像は語れない」と指摘した上で、世界の音楽界最高の栄誉とされるグラミー賞を日本人4人が同時受賞したことに触れ、「音楽でも経済でも日本がこの先見限られることはないと思い知らせた」と評価した。
そして「世界レベルの成果」を生む要因として、勤勉さや仕事への誇り、秩序感覚など数字では表せない日本の国民性をあげた。【1月19日 読売】
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GDPで日本を抜いた中国・人民日報も「日本にはまだ多くの学ぶ点がある」と報じています。
****中国、GDP3位日本に「まだ学ぶ点多い*****
中国が国内総生産(GDP)で日本を抜いて世界第2位になったことを受け、中国共産党機関紙・人民日報(16日付)は「今こそ日本の発展方法を見つめ直そう」と呼びかけ、日本のような社会保障制度の整備を提案する評論員論文を掲載した。
「日本のもう一つの側面」と題する論文は、日本の高度経済成長を「一つの奇跡」と評価し、「奇跡のもう一つの側面は、社会保障の体系も即座に整備したこと」と指摘。「金融危機の影響を、他の先進国より長く受けている日本(社会)が再起不能に陥っていないのは社会保障制度を完成させたためだ」と分析した。
そのうえで、「日本にはまだ多くの学ぶ点がある。学ぶ精神を変えてはならない」と訴えた。【1月19日 読売】
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両報道とも同日の読売ですが、何か意図があったのでしょうか?

海外大型プロジェクト受注競争の実態
少し元気が出た(?)ところで、大型プロジェクト受注競争の話題。
韓国などの格安攻勢もあって、日本はなかなか思うような実績をあげられずにいますが、これについても「そう悲観することはない」との主旨の記事です。

****インフラ輸出、日本は本当に負けたのか*****
無謀な受注こそ「敗北」
原子力発電プラントや高速鉄道といった社会インフラを主に新興国へ輸出しようという動きが活発化している。特にこの1年あまりは、世界中の大型プロジェクトがメディアを通じて紹介され、その中で日本企業連合がどのような立ち位置にあるかが盛んに報じられている感がある。
さてその報道だが、日本企業連合が受注を獲得すれば“勝ち”、他国の企業に奪われれば“負け”と伝えられるのが大概のパターン。しかし、受注競争の最前線にいる当事者の受け止め方が、この世間の評価と正反対というケースが少なからずある。

破格の超長期保証で受注した韓国
韓国企業連合が受注したアラブ首長国連邦(UAE)での原子力発電所プロジェクトはその1つ。2009年末に実施された入札では日本、フランス、韓国の企業連合が参加、日仏の一騎打ちという下馬評をよそに韓国企業連合が落札した。これをきっかけに、官民が連携してインフラ輸出を図らなければならないという国内世論が急速に高まった。日本勢にとってはいわくつきの案件だ。

「UAEの原発プロジェクト入札前後で韓国勢の様子が違う」と日本の原発関係者は言う。トルコが黒海沿岸のシノプで建設を予定している原発プロジェクトは当初、韓国企業連合が受注するべく交渉が進められていたが暗礁に乗り上げた。その後、トルコ政府は交渉相手を「オールジャパン」に切り替えた。
さらに韓国勢はヨルダンで予定されている原発プロジェクトへの参加も断念。「UAEを取った時の勢いがない」(同)。
UAEプロジェクトの入札価格は日仏の各320億ドルに対し、韓国勢は200億ドルだったと言われる。1兆円近い安値を提案したことに加え、60年間にわたって原発の運転を保証するという条件が韓国勢落札の決め手になったと言われる。だが、ここにきて「破格の条件を提示し過ぎたとの思いから、トルコやヨルダンでは慎重な姿勢を保つようにしているのではないか」と大手プラントメーカー幹部は分析する。

原発関係者が「特に破格」というのが60年間という運転保証だ。(中略)つまり世界中の原発で60年間運転し続けたプラントはない。その後の技術の進展を勘案したとしても、60年という保証期間中に原発プラントを更新する可能性すらあるわけで、冷静に考えれば韓国勢はUAEにかなり思い切った長期保証を約束してしまったと言える。
「UAEでは確かに韓国勢が受注した。しかし破格の条件だったこと、その後のトルコやヨルダンでは日本勢が交渉を有利に進めていることを考えると、『UAEで日本勢は負けた』と言われるのはどうも納得が出来ない。総合的に見れば勝っているのではないか」(電力会社幹部)(中略)
ことほど左様にインフラ輸出に関して、世間でいう「勝ち負け」と当事者の「勝ち負け」は違う。

用地買収まで負わされて…
高速鉄道分野でも同じような現象が起きている。リオデジャネイロ五輪が開催される2016年の開通を目指すブラジル高速鉄道プロジェクト(TAV)。リオデジャネイロ州―サンパウロ州間510kmを1時間半で結ぶ総事業費1兆6000億円のプロジェクトは当初、韓国企業連合の落札が確実視されていた。
ところが昨年末に実施予定だった入札が今春に延期。そこで「日本企業連合も逆転受注に一縷の望みが出てきた」との声が上がるが、入札を検討している当の日本企業連合の関係者は「入札に参加しないことが“勝ち”なのかもしれない」と冷めた口調で語る。
日本企業連合が二の足を踏む理由は主に2つある。1つは1km当たり0.49レアル(約24円)の上限運賃で40年間の運営を求められていること。もう1つは高速鉄道路線を敷く土地の買収は受注した企業連合が責任を持つことが求められているためだ。「運賃に上限が設けられ、なおかつ40年間も運営責任を取らされて採算なんて取れるはずがない」(車両メーカー幹部)。(中略)
無論、当事者の判断がすべて正しいというわけではない。しかし、その行方を見守る立場として、世界中で膨れ上がるインフラ需要を日本企業連合が取り込んだ、あるいは奪われたと一喜一憂する姿勢は改めるべき時期に来ているのではないか。【2月9日 日経ビジネスリポート】
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ブラジル高速鉄道プロジェクト(TAV)で先行していた韓国ですが、韓国高速鉄道(KTX)が開業7年で脱線事故を起こし、一部では「海外輸出はまだ早い」との声も聞かれるとか。
****韓国高速鉄道の脱線事故で波紋 海外輸出にブレーキ? ブラジル鉄道入札控え*****
・・・・10年にも満たない経験で日本の新幹線と売り込み競争という大胆さだが、今回の事故にマスコミは「国民の自尊心が傷つけられた」(文化日報社説)と嘆き「日本の新幹線の脱線事故は47年間で地震の際のわずか一度だけ」と伝えている。【2月18日 産経】
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成熟した経済における成長 (growth)とは腫瘍(growth)】
最後に、ポスト成長期の日本は結構うまくやっている・・・という指摘です。
*****成長するばかりが人生ではないと気づいた日本*****
・・・・日本について悲しげに首を振る人たちの思いの裏には、前提となる思い込みが二つある。うまく行っている経済というのは、外国企業が金儲けし易い環境のことだ——という思い込みがひとつ。その尺度で計れば確かに日本は失敗例で、戦後イラクは輝かしい成功例だ。そしてもう一つ、国家経済の目的とはほかの国との競争に勝つことだ、という思い込みもある。

別の観点に立つなら、つまり国家の役割とは自国民に奉仕することだという立場に立つなら、かなり違う光景が見えてくる。たとえ最も狭義の経済的視点から眺めたとしても。日本の本当の業績はデフレや人口停滞の裏に隠れてしまっているのだが、一人当たりの実質国民所得を見れば(国民が本当に気にしているのはここだ)、事態はそれほど暗いものではなくなる。

野村証券のチーフエコノミスト、ポール・シアード氏がまとめたデータによると、一人当たりの実質所得で計った日本は過去5年の間に年率0.3%で成長しているのだ。大した数字には聞こえないかもしれないが、アメリカの数字はもっと悪い。同期間の一人当たり実質国民所得は0.0%しか伸びていないのだ。(中略)日本が約20年にわたって苦しんでいる間、アメリカは富の創出においては日本を上回ったが、その差はさほどではなかった。

GDPだけが豊かさの物差しではないと、日本人もよく言いたがる。たとえば日本がどれだけ安全で清潔で、世界でも一流の料理が食べられる、社会的対立の少ない国かを、日本人自身が言うのだ。そんなことにこだわる日本人(と筆者)は、ぐずぐず煮え切らないだけだと言われないためにも、かっちりした確かなデータをいくつかお教えしよう。日本人はほかのどの大きな国の国民よりも長く生きる。平均寿命は実に82.17歳で、アメリカ人の78歳よりずっと長い。失業率5%というのは日本の水準からすると高いが、多くの欧米諸国の半分だ。日本が刑務所に収監する人数は相対的に比較するとアメリカの20分の1でしかないが、それでも日本は世界でもきわめて犯罪の少ない国だ。

昨年の『ニューヨーク・タイムズ』に文芸評論家の加藤典洋教授が興味深い記事を寄稿していた。加藤氏は日本が「ポスト成長期」に入ったのだと提案する。ポスト成長期の日本では無限の拡大という幻想は消え去り、代わりにもっと深遠で大事な価値観がもたらされたのだと言うのだ。消費行動をとらない日本の若者たちは「ダウンサイズ運動の先頭に立っている」のだと。加藤氏の主張は、ジョナサン・フランゼンの小説『Freedom(自由)』に登場する変人の物言いに少し似ている。ウォルター・バーグランドという勇気ある変人は、成熟した経済における成長 (growth)とは成熟した生命体における腫瘍(growth)と同じで、それは健康なものではなくガンなのだと主張するのだ。「日本は世界2位でなくてもいい。5位でなくても15位でなくてもいい。もっと大事なことに目を向ける時だ」と加藤教授は書いている。

日本は出遅れた国というよりはむしろモデルケースなのだという意見に、アジア専門家のパトリック・スミス氏も賛成する。「近代化のためには必然的に、急激に欧米化しなくてはならないという衝動を、日本は克服した。中国はまだこの点で遅れているので、追いつかなくてはならない」。スミス氏は、非西洋の先進国の中で独自の文化や生活習慣をもっとも守って来たのは日本だとも言う。

ただし、強弁は禁物だ。日本は自殺率が高く、女性の役割が限られている国なのだから。加えて、日本人が自分たちの幸福についてアンケートされて返す答えは、21世紀を迎えてすっかり安穏としている国民のものでは決してない。日本はもしかすると、残り少ない時間を削って過ごしている国なのかもしれない。公的債務は世界最高レベルなのだし(ただし外国への借財がほとんどないのは大事なことだが)。今の日本は巨額な預貯金の上でぐーぐー居眠りをしているのだが、給料の安い今の若者世代がそれだけの金を貯めるには、さぞ苦労することだろう。

経済の活力を内外に示すことが国家の仕事だというなら、日本国家の仕事ぶりはお粗末きわまりない。しかし、仕事がある、安全に暮らせる、経済的にもそれなりで長生きができる——という状態を国民に与えるのが国家の仕事だというならば、日本はそれほどひどいことにはなっていないのだ。【フィナンシャル・タイムズ 2011年1月5日初出 翻訳gooニュース】
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それにしても、最近の日本政治の混迷ぶりは目を覆うものがあります。「退陣か、総選挙か・・・」などといった事態になっているようですが、少しはまともな仕事をしてもらいたいものです。

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