goo blog サービス終了のお知らせ 

孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

パレスチナ  停戦合意破綻の危機 国連援助も停止

2008-11-17 17:11:02 | 国際情勢

(ガザのどこか児童施設でしょうか 穏やかな時間がながれるひとときもあります。 “flickr”より By freegazaorg
http://www.flickr.com/photos/29205195@N02/2752935261/)

【崩壊する停戦合意】
11月4日夜から5日朝にかけてパレスチナ自治区のガザ地区にイスラエル軍が進入してハマスと戦闘になり、ハマス側発表では戦闘員6人が死亡したとのことです。
その後、イスラエル軍による迫撃砲の攻撃地点を狙った空爆も行われ、更に数人の死者が出たもようです。

これに対し、ハマスは報復として、ガザ地区からイスラエル南部に向けてロケット砲と迫撃砲あわせて53発を発射したと発表しています。
一方イスラエルはガザ地区との境界を一時封鎖し、食料・燃料などの生活必需品を外部からの輸入に頼っているガザ地区への圧力を強めています。

パレスチナとイスラエルの間では今年6月19日以来“停戦”が発効しており、この間ガザ地区からイスラエルに向けて迫撃砲などによる散発的な攻撃はありましたが、この衝突は停戦発効後もっとも規模の大きいものでした。
双方は相手を停戦違反として非難しましたが、この時点ではイスラレル側は、攻撃は限定的で「停戦を崩壊させる意図はない」としていました。【11月5日 毎日】

しかし、状況は次第に悪化しています。
12日にもイスラエル・パレスチナ人武装勢力の間の戦闘がありハマスメンバーと見られるパレスチナ人戦闘員4人が死亡、イスラエル軍兵士1人が負傷しています。
6月の停戦以来5か月近く続いた安定が失われ、支援物資の輸送も危険にさらされる事態となっています。

14日には、ガザ地区からイスラエル南部に向かってロケット弾20発近くが発射され、イスラエルのオルメルト首相はバラク国防相ならびに軍高官と緊急会合を開き、ロケット弾発射は「露骨で根本的な」停戦違反だと非難しています。

****イスラエル軍:ガザ北部を空爆…武装勢力メンバー殺害****
イスラエル軍は16日、パレスチナ自治区ガザ地区北部を空爆し、パレスチナ武装勢力のメンバー4人を殺害した。これに先立ち、イスラエル領内にはガザからロケット弾が撃ち込まれた。
ガザ情勢は6月の停戦(6カ月間)後、平静を保っていたが、今月4日、イスラエル軍がガザに一時侵攻したのを機に流動化。双方の暴力が激化し、これまでにガザ側では少なくとも17人が死亡。イスラエル側にはロケット弾が大量に撃ち込まれ、停戦の維持が危ぶまれている。
イスラエルは今月上旬から境界検問所を完全封鎖し、ガザへの物流を止めている。国連機関の援助物資が底を突き、難民キャンプの住民らに食糧支援ができない状態に陥っている。【11月17日 毎日】
*****************

【途絶する食糧支援】
戦闘の激化に伴い、上記記事にもあるように、国連の食糧支援も中断を余儀なくされています。

*****国連、ガザ地区での食糧支援を一時中止******
国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)は13日、パレスチナ自治区ガザ地区への緊急物資搬入をイスラエル政府が許可しなかったとして、同地区の人口の半数に当たる75万人への食糧支援を一時中止すると発表した。
イスラエル政府は当初、13日に今月5日から封鎖されているガザ地区へ支援物資を積載したトラック30台の通行を許可すると述べていたが、後にガザ地区内の武装勢力の迫撃砲により不可能になったとした。
UNRWAの広報Chris Gunness氏は、「今日は検問所は封鎖されていると告げられた。今日中に食糧配給を一時中止する。倉庫は事実上空だ」と述べた。
一方、赤十字国際委員会(ICRC)は、Kerem Shalomからガザ入りしようとしていたICRCのトラック1台が通行を拒否されたと発表した。

イスラエルは通常、ガザ地区への人道支援物資の輸送を一部許可しているが、およそ1週間にわたりそれも禁止している。そのため、人道支援機関関係者は、イスラエルを強く非難している。
また、イスラエルは同日、ガザ地区で唯一の発電所向けの欧州連合が支援する燃料支給も禁止した。
パレスチナのエネルギー当局は、ディーゼル燃料不足のため13日中にも発電所を閉鎖すると警告している。【11月14日 AFP】
*****************

【進まない和平交渉】
エジプト仲介による交渉の結果得られた今年6月の停戦合意の骨子は以下のようなものでした。
・停戦合意は19日午前6時から発効する
・双方はすべての暴力を停止する。3日が経過した後、イスラエルはガザの封鎖を緩和し、生活必需品の供給を認める
・1週間後にイスラエルは貨物輸送の制限を緩和する
・最終段階でラファ検問所の再開や、2年前からハマス系グループが拘束しているイスラエル兵とパレスチナ囚人の交換について協議する

イスラレルにとっては、“ガザ封鎖”を続けてきたもののガザ地区からの攻撃は止まず、国内的に批判が出ていること、また、ガザ地区住民の困窮について国際的批判も強まっていることなどの背景がありました。
一方、ハマスにとっても、封鎖に苦しむガザ住民の不満を抑え込む必要性があり、また、イスラエルに“ハマスの関与なしにパレスチナ情勢の進展はあり得ないこと”を認めさせた意義も大きいと見られていました。

しかし、これまでも“停戦”は失敗を繰り返しており、当初から、長期継続には懐疑的な見方が強いとも報じられていました。
当然のことながら、パレスチナ問題に関する基本的な枠組みを合意する交渉の進展なくしては、現場の停戦も一時的なものに終わってしまいます。
せっかくの停戦が行われているこの時期にこそ、そうした基本的な枠組みに関する交渉が期待されたのですが、それも全く機能しませんでした。

*****来年春にもパレスチナ和平会議=交渉仕切り直しへ-仲介4者*****
パレスチナ和平交渉を仲介する米ロ、EU、国連の4者は9日、エジプトの保養地シャルムエルシェイクで協議を行った。4者はこの中で、ロシアがかねてモスクワでの開催に意欲を示してきた和平推進のための国際会議について、来年春をめどに実施すべきだとの見解で一致した。

イスラエルとパレスチナの2国家共存を目指す和平交渉は昨年11月、米アナポリスで開かれた国際会議を機に再開された。しかし、エルサレムの帰属などの重要な問題で歩み寄りがみられず、仕切り直しを迫られていた。
交渉は当初、ブッシュ米大統領の任期が満了する来年1月までの妥結を目指したが、達成は不可能な情勢で、仲介はオバマ次期大統領に委ねられることになる。イスラエルも来年2月に総選挙を控えており、4者は両国で政権交代が実現した直後に国際会議を開催するのが適切と判断した。【11月10日 時事】
***********************

何らかの実績を歴史に残したいブッシュ大統領指導の形だけのパレスチナ和平交渉は、こちらも当初から期待されてはいませんでしたが、結果は予想どおり・・・といったところです。

更に、パレスチナ内部でのファタハとハマスの確執も解消の目処がたっていません。
ハマスとファタハの会合がエジプト・カイロで10日に予定されていましたが、ハマスが参加拒否を発表したため中止となっています。
ハマス指導者の1人は「今は対話を行う雰囲気ではない」と指摘しているとか。

【捨て置かれる住民】 
昨年11月にアメリカ・アナポリスで中東和平のための国際会議が開催された後だけで、少なくとも545人が死亡しており、そのほとんどがパレスチナ人だそうです。【11月5日 AFP】
ファタハにしても、ハマスにしても、同胞の血を更にどれだけ流すつもりでしょうか?
“対話を行う雰囲気”が出来るまで、ガザ地区住民はどのように暮らせばいいのでしょうか?

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする