孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

タイ・ロシア  二人の“後継者”

2008-02-16 16:13:14 | 国際情勢
近頃気になるふたりの後継者。
ひとりはタイのサマック新首相、もうひとりはロシア大統領が内定しているメドベージェフ第1副首相。

軍部クーデターで国外追放中のタクシン前首相に代わって、昨年からタクシン派を率いて総選挙に勝利し、新内閣を組閣したサマック首相。
今月2日の当ブログでも触れたように、もともとはタクシン前首相とは政敵の関係にもあった大物政治家で、過去に大臣、副首相を歴任した前バンコク知事でもあります。

恐らく二人の関係は“後継者”という言葉はふさわしくないのでしょう。
お互いに相手を利用して当面の利益を得るため、とりあえずサマック首相は“タクシン前首相の政策継承”を掲げて選挙を戦った・・・ということで、選挙勝利後はどちらが実権を握るのか、第二ラウンドの開始。
選挙戦では「タクシン氏の代理人」と称したサマック首相ですが、最近は「わたしがタイの真の首相で、タクシン氏の操り人形ではない」と不快感をあらわにするなど、タクシン氏と距離を置く発言が目立ち始めているそうです。

新内閣の運輸相人事で確執があったようですが、これは結局タクシン前首相が押し切るかたちで決着。
しかし、サマック首相は新内閣発足前の段階で、「(今度の内閣は)少し不格好だ」と述べ、早くも内閣を改造する考えを口にしたとも伝えられています。
また、選挙期間中は「資産調査委員会によるタクシン氏の汚職疑惑調査をやめさせる」主張し、5年間の公民権停止を命じられているタクシン氏らに対する恩赦も訴えていましたが、首相に就任すると「汚職調査には介入しない」と態度を一変。
恩赦も「急ぐ必要はない」と軌道修正し、タクシン氏の影響力排除に躍起になっているとか。【2月12日 時事】

一方のタクシン前首相はクーデター首謀者のソンティ前陸軍司令官とも緊密な電話とりあっているようで、軍部との“和解”を進めているようです。
5月には帰国との報道もされています。
タクシン前首相とサマック新首相、いささか“狸”と“狐”という感がありますが・・・。

プーチン大統領の次の大統領に就任する予定のメドベージェフ第1副首相ですが、こちらもタイとは別な意味で、“後継者”という言葉はあてはまらないようです。
なにしろ、プーチン大統領が現役首相として権力を握り続けるつもりですので、“後継”もなにもありません。

プーチン大統領は、NATOの東方拡大や、アメリカが東欧諸国に配備を計画するミサイル防衛(MD)システムを改めて批判し、「世界で新しい軍拡競争が始まっている」と警告。
“新軍拡競争”について、「我々のせいではない」と述べた上で、「こうした新たな挑戦に対し、ロシアはいつでも対応策を示すことができる」と、ハイテク兵器などで対抗する考えを示しています。
特にNATO加盟を目指すウクライナや、アメリカのミサイル防衛基地の受け入れを計画しているチェコやポーランドについて「脅威」とみなすことができる国だとして、“ミサイル攻撃も辞さない”と警告したそうです。【2月15日 AFP】

穏やかならざる表現ですが、今後アメリカの独走を阻止し、ロシアの国際的復権を目指して取り組む方向で、やる気満々のようです。
比較的リベラルとも言われるメドベージェフ氏ですが、プーチン大統領の敷いた“新軍拡競争”、“新たな米ロ対立”の方向で進んで行くことになるのでしょう。

ロシアでは、慣例として全国の政府関連施設に新大統領の肖像写真が飾られるそうです。
しかし、プーチン大統領は、大統領の写真を掲げて忠誠を示す慣習について肯定しつつも、「メドベージェフ氏が大統領に当選した場合、彼との関係を築くために彼の写真を掲げる必要は特にない」と述べ、新大統領の写真を自身の首相執務室には掲げない考えを示唆したそうです。【2月15日 AFP】

プーチンは本当にそのような趣旨で発言したのでしょうか?
そうだとすれば、“そこまで言うかな・・・”という感じで、日本人的感覚としては“奢れる者は久しからず・・・”なんて思ってしまいますが。
プーチン大統領は、後継候補にメドベージェフ氏を選んだ理由について「ロシアの指導者として恥ずかしくない人物である」と述べると同時に、「怖くない人物だからだ」とも語ったそうですが【2月15日 産経】、“怖くない人物”というのはどういう趣旨でしょうか?。

メドベージェフ次期大統領は、向こう4年間の任期中に技術革新や投資拡大を促す七つの政策を列挙しています。
石油、天然ガス部門では、近代技術を導入してエネルギーの安定供給に努める。
各種公共事業の民営化を進める一方で、原子力、航空、造船部門などで政府系企業の効率経営を図り、国際市場に進出する。
潤沢な石油、ガス収入を背景に、ロシア金融市場を「世界の金融センターの一角」に成長させると宣言し、通貨ルーブルの国際的な信用力を高める。
等々。
ただ、政策の中身はプーチン政権の政策を踏襲しているものだそうです。【2月15日 読売】

一方、官僚組織に巣くう腐敗一掃へ向けた「真の戦闘をしかける」と表明し、これは政権内で汚職に染まっていると度々批判される「シロビキ」(治安・情報機関出身者)派への攻撃開始宣言ともみられています。
特に、プーチン大統領の側近の一人で、シロビキ派トップのセチン大統領府副長官への攻撃が念頭にあるものと理解されており、今後の権力闘争が予想されます。【2月15日 毎日】
これも、プーチン大統領のシナリオなのでしょうか?

“偉大なプーチン”の影で“やりにくいのでは・・・”と思いますが、もともとプーチン大統領の子飼いの存在ですから、あまりそのあたりは気にならないのかも。
ただそうは言っても、ここまで上り詰める人ですから、それなりに能力も見識も野心もある人物なのでしょう。
今後常々“プーチンの操り人形”と揶揄されることについてどう思うでしょうか。
やがて、自分独自の思い・政策を主張する日も・・・どうでしょうか?
コメント
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