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AMASHINと戦慄

~STARLESS & AMASHIN BLOG~
日々ブログレッシヴに生きる

式日

2007年06月18日 | しねしねシネマ
原作『逃避夢』の話ついでに、庵野秀明監督映画『式日』についても語っておきましょうか。

当時あまり邦画に興味がなかった私が、この映画のDVDをレンタルして観てみようと思った動機は極めて不純で、ご存知私の好きなCoccoがこの映画のエンディング・テーマ曲を務めていたという、ミーハーな理由からだけでした。
で、見始めた時はこのマイワールドな女主人公の話についていけそうもなくて、この手の映画はかなり苦手な部類のハズだったんですが、見ているうちになんや映像にグイグイとひきこまれていく、今までに味わったことのないなんとも摩訶不思議な感覚の映画だったのでした。

完全にハマったのが鑑賞2回目で、京都みなみ会館で『岩井俊二ナイト』というオールナイト企画の時に観た時でした。
「なんで庵野監督作品が俊二ナイトでやってんねん?」と思ったのですが、この映画の中で通称“カントク”役を演じていたのが実は岩井氏ということを、その時に初めて気付いたのでした。
そして主人公をこの映画の原作者が演じとるとは「いったいどんな設定の映画やねん!」と、ますますこの映画に対する興味が湧き上がったのでした。

本作は藤谷文子さんが描いた原作をそのまま映像化するのではなく、庵野監督がいったん解体して核となる部分を抜き出し、彼なりの味付けを施し再構築した感じの仕上がりとなっている。
主人公の通称“カノジョ”の人物像を、岩井氏演じる“(庵野)カントク”側から見た解釈で、松尾スズキのナレーションに乗せて描いていくといった、かなり自己解釈的であり、手探りで実験的な印象を受けるのですが、それがこの映画の味であり、魅力であるのだな~と、訳も分からずひとりで納得しておりました。
ストーリー云々よりも、庵野監督の故郷である山口県宇部市の線路道、工場、商店街といった町並みや情景、“カノジョ”の住処であるビルディングの各階に散りばめられた殻に閉じこもる“カノジョ”の内面世界を表したような幻想的な装飾。
そういった素朴さと艶やかさのコントラストの映像美にまずこの庵野監督のアート性の豊かさを感じました。

そしてなんといっても役者陣の生々しくてぎこちない演技にハマった。
藤谷さんの人格がコロコロと変貌し、時折マジギレモードで宇部弁や関西弁(藤谷さんは大阪育ち)で癇癪を起こす“カノジョ”にふりまわされるカントク役の岩井氏の微妙な演技がこれまた大変微笑ましい。
しかしやっぱ素晴らしいのが藤谷さんとベテラン俳優陣、村上淳、大竹しのぶらとの絡みである。
もちろんベテラン勢の演技も素晴らしいのですが、彼らに全く退けをとらない藤谷さんの熱演がマジ凄い!!ホンマに初主演??
特にラスト、大竹しのぶと藤谷さんの母と娘の愛憎乱れるアドリブ全開の鬼気迫る熱演は凄まじいです!!
そのあまりのド迫力さに小生、思わず涙が零れ落ちてしまったくらい。

市販DVDも即購入してしまったのですが、ちょっと納得いかないことが一点。
なんで、下のような安っぽいパッケージにすげかえられたのか???



VHS、レンタルDVDのは写真上のような素晴らしいジャケだったのに・・・
全く理解に苦しむ。

オススメ度:★★★★★



今日の1曲:『Raining』/ Cocco
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主人公は僕だった

2007年05月28日 | しねしねシネマ

久々に面白い映画を見てきました。

作品は、『主人公は僕だった』。

かなりネタばれしてしまいますんで内容知りたくない方はエロサイトでも閲覧してて下さい。

これはもう邦題に惹かれましたね。なんか想像つくようなつかんような、とてもシンプルで素敵なナイスタイトル。
「僕は君のためにこそ死ににいく」とかいう長ったらしい邦題(ってこれは邦画か・・・)とは大違い。
タイトルでそこまで説明してどないすんねん!
そういえば最近、私んとこの近所のシネコンくんだりまで窪塚君が舞台挨拶にきとったみたいだが、今はそれ関係ありませんので。


『主人公は僕だった』ってタイトルを最初聞いたとき、なんかブラピやアルパチーノなどの有名俳優がドンパチアクションを繰り広げる中、無名の脇役俳優がラストにズームアップされて「ええっ!!僕が主人公やったん!?」っていうドッキリサプライズな話を想像してしまったのですが、実際は繰り返しの毎日を過ごしている平凡な国税庁の会計検査官が、ある日突然どこからか彼の行動を文学的な表現で語る女性のナレーションが聞こえてきて、自分が小説の主人公であったことに気づかされる。そして自分に死が近づいていることをほのめかす予告話を聞かされ、自分の人生を見つめ直すといった内容。
まぁ癌宣告を受けた主人公の物語のようなもんですかね。



まず、あまり主人公とかには成りえなさそうなのっぺりとした感じのウィル・フェレルという役者さんのキャスティングが的を得ていたなと思った。いかにも地味~な検査官役を見事に演じておりました。
彼にいちいちまとわりつくナレーション、そして妙なカウンターやアイコンのCGも効果テキメンで楽し過ぎで、もう最初から腹抱えて笑ってしまいました。
もちろん声は押し殺していましたが、観客も私を含めて4人しかいなかったので体をおもっきり隣席によじらせたりもできますし、鼻毛を抜きながらまるで自分の部屋にいるかのようにゆったりと鑑賞できるのです。

まぁこの映画『トゥルーマン・ショー』とかの雰囲気を思わせそうな話なんですが(まだ観てませんが)、なかなか切ないラブ・ストーリーなんかも普通に展開されたりと、こちらの方がより日常的でそれほどカラクリっぽさを感じさせない。
私的には『エターナルサンシャイン』の要素を強く感じたのだけれど、ミッシェル・ゴンドリーやチャーリー・カウフマンが作り出す物語ほど複雑怪奇というわけではなく、結構ストレートな映画でした。

ただよくわからなかったのが、原題は『STRANGER THAN FICTION』で“小説より奇なり”という意なのですが、なぜ小説の主人公が現実の世界と全く同次元に実在しておったのかがよーわからんかった。
彼女が書く小説より“実在の主人公に彼女のナレーションが聞こえてくるという奇妙な現象が起こっている”現実の方が“奇なり”といっているのでしょうか?
じゃあこの女小説家が劇中で執筆している『税金と男(死だったっけ?)』という本はヒルバート教授が「傑作!!」と褒め称えるようにそんなに面白い小説なのか?例えば彼女のナレーションの声に本の中の彼が「誰だ?」と気づくシーンもちゃんと盛り込んであるのか?そのくだりがないと彼はギターを弾くこともなかったろうし、脱税者のパン工房の女性とも恋に落ちることもなかった。そこんところがよーわかりません。

ま、そんなことは別に考えなくても、私が上映前にポイントカードのことで受付嬢とひと悶着あったことさえ忘れさす、本当にハートフルな心温まるコメディー映画でした。

オススメ度:★★★★

今日の1曲:『TAX MAN』/ THE BEATLES
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ラストキング・オブ・スコットランドを観て

2007年04月03日 | しねしねシネマ

てゆーかこの映画、『スケベキング・オブ・スコットランド』と改題した方がええんとちゃいます?
スコットランドの青年医師が大学卒業後、地球儀を回して最初に指差した所を勤め先に決めるみたいなことをやって、最初はカナダだったのをなぜかもう一度回してウガンダを勤め先に決めた時点でなんじゃコイツは?と思った。メチャメチャ適当なやつである。
ほんでこのスコットランド人はドがつくほどのスケベ男!もうエゲつない性欲のカタマリのような人物である。多分行く前からエロいことばかり考えとったんやと思います。
カナダ行きをやめたのも、多分ちょっと白人ばっかで敷居が高いかなぁと思ったか、有色人種の方が刺激的なセックスが出来ると思ったかのどっちかでしょう。

ウガンダに着いて最初に乗ったバスで話しかけた行きずりの女ととりあえず一発。その後勤め先の診療所で働いていた白人医師夫婦の妻を旦那が出張するやいなや即座に誘惑し、見事に拒絶される。つかなんちゅー恩知らずや!
で、なんやかんやあってアミン大統領にとりいって彼の主治医となるのだが、あろうことか今度はアミン大統領の第?夫人に手を出した挙句妊娠までさせてしまう。ブレーキがきかんというか、こいつの性欲には果てがない。
そして結局アミン大統領にバレて夫人は惨殺、このスコットランド間男は拷問リンチされてしまう。
当然やろう。いわゆる姦通罪やねんから。去勢されても仕方がないでこいつは。

この映画はスコットランド人青年医師から、つまり白人から見た“食人大統領”アミンの残虐性や凶暴性を一方的にこれでもかーっつうぐらい描いていて、確かにフォレスト・ウィッテカーの気迫の演技はかなり鬼気迫るもので、あんな巨漢に無理矢理ハグされたら恐怖やろなぁ~ちゅうのは伝わってきました。
でも映画の流れ自体はサイコサスペンスによくある信頼してたやつが急に凶暴な本性をあらわしよったとか、堅気の青年がマフィアのボスに気に入られ深みにハマり、ボスの女に手を出したとか映画ではありふれた話で、あまり実在モノ的なリアリティは感じられなかった。
独裁者告発映画なんやろうけど、まず告発すべきはこのスコットランド人の淫乱さやろうと観ていて思った。

「何よりも恐ろしいのは人間の本性」というより、「何よりもエゲつないのはスコットランド人の性欲」。

オススメ度:★★

今日の1曲:『CANTO DO CABOCLO PEDRA PRETA』/ Smokey and Miho
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匂いコレクター

2007年03月25日 | しねしねシネマ
大阪で恒例の午後の旧連臨時会合があるというので、明日廃車となるプリメーラに1000円分だけガソリンを入れておいたのだが、当日になってドタキャンとなり、雨の中ガソリン消化のため橿原くんだりまで映画を見に行く事にした。とんだ大気汚染である。

めっちゃ観たい映画があるというわけでもなかって、どれにしょーかと悩んだ挙句、結構評判のよかった『パフューム ある人殺しの物語』を観る事に。
久方ぶりの洋画。

舞台は中世フランス。驚異的な嗅覚を持ち一切の体臭を持たない男が、美しい女性の香りを永遠にとどめておく方法を探るため調香師となり、戦慄の連続殺人鬼と化していく男の物語。
魚市場で赤子を産み落とすシーンやら、最初ハリウッド的なコテコテしたヴィジュアルにかなり抵抗を感じたのですが、臭覚で獲物を狙う男の怪物像を見事に描いた新感覚サイコスリラーといった感じでなかなか面白かった。
13種の美女の香りを蒐集するまで殺人をも辞めないこの男の蛇のような執拗さ。
これって触覚芸術を完成させるために女を殺し続けた我が国の触手怪人“盲獣”になんか犯人像が似ておりますな。
何十キロ遠くに逃げようが彼の驚異的な臭覚から逃れることはできません!
で、彼自身体臭が無いので(それが彼のコンプレックスだったんですが)番犬の鼻も役に立たないのだからもう成す術なしといった感じ。いやいや恐ろしい怪物ですよ。
またこの役者がやせ細った野良犬のような容姿で、正に“臭獣”といったところか(全然上手くない!)。

そして13種の美女の香りを集めて調合した究極の香水には一種の幻覚剤のような効力があり、この香水をつけた者は世界をも彼の足元に跪かせてしまうのである。
彼をこの世界に導いた師匠的な存在の調香師も、最初に彼が調合した香水を嗅いで楽園にいるような幻覚を体験するのだが、この調香師役がダスティン・ホフマンであったのが面白かった。監督が彼をこの役に起用した最大ポイントは恐らくあのデカい鼻だったに違いない。
しかし、ラストの大どんでん返しがまさかの乱交パーティーとは・・・目がテンになってしまいましたわ。
いや~西洋的エログロ臭作映画ですな!

彼は香水をつけることでしか人々に自分の存在を認識してもらえない事にたとえようもない孤独と虚しさを感じていたのだが、半径10メートル以内に近づくとその存在にすぐ気付かれる体臭の持ち主とではどっちが不幸なのだろう?
いずれにせよ両者とも香水の力に頼らざるを得ないだろうが・・・
ちなみに私は周囲でワキガと噂されてる人の臭気にも全く気付かない鈍感な鼻の持ち主である。

オススメ度:★★★★

今日の1曲:『Smells Like Teen Spirit』/ NIRVANA
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乱歩地獄再び

2007年03月22日 | しねしねシネマ
ヤッターイ!
『乱歩地獄~DVD初回限定特典特製アウターケース&美麗解説書付のデラックス版~』を結構なお手頃値段で競り落とせましてん!

アウターケースは黒地に蜘蛛の巣がはってるという図柄でそこそこデラックス!
しかし、この解説書のどの辺が美麗なのか?
監督、キャスト、スタッフのプロフィールがズラーっと紹介されてるだけって、これ別にパンフレット見ればわかることでしょう。
最後にエンディングテーマ曲のゆらゆら帝国の“ボーンズ”の歌詞が掲載されてあるのだが、これも2nd「ミーのカー」の歌詞カード見れば載っとるし。
背表紙にカネコアツシ氏による猟奇的なイラストが描かれてあるのはまぁまぁ嬉しかったけど、ホンマそれだけですわ。

そして絢爛豪華なこの映像世界を再びTVで味わってみたのですが、よく考えたらこの映画って確かに映画館で見た時は衝撃的でしたけど、何回も見て楽しめるような内容ではなかったことに今さらながら気付かされました。
まぁ乱歩ファンなら持っておきたいコレクターズアイテムのひとつとして、書架に飾っておきたい一品といったところですかな。
まぁ本ディスクには、劇場公開に際して再編集された「R-15版」とは別の“刺激的な性的描写の含まれる”オリジナル版の『地獄鏡』が収録されておるんです。
ちなみにこのDVDは18歳未満の方への販売を禁じているんだとか。

竹内スグル監督の『火星の運河』はやっぱりワケわからんし、ピンク映画出身の佐藤寿保監督の『芋虫』はやっぱ鑑賞に堪えないエロ気持ち悪さである。
平井太郎(乱歩の本名)演じる松田龍平はなんかイマイチぱっとしない。“原作とは違う”オリジナルなオチはまぁまぁだが、『屋根裏部屋の散歩者』やら『怪人二十面相』やら『パノラマ島』など、他の諸作品を中途半端に盛り込み過ぎてて散漫となった感じ。

やっぱ私のフェイバリット作品は漫画家カネコアツシ監督の『蟲』ですな。
実に気色の良い蟲のCG効果、カサカサカサカサカサッと蠢く蟲のSE効果、ユーモラスで喜劇タッチなBGM。
そしてなんといっても浅野忠信のぶっ飛んだ演出が最高。

それと、ウルトラマンで有名な実相寺昭雄監督の『地獄鏡』はやっぱ鏡だらけの舞台設定が魔術的な映像効果をもたらしており、本当にウットリさせられます。
問題の蝋燭タラタラなエログロシーンも火影が醸しだす映像美が妖艶すぎて、SM嫌いの私でも目をそむけずに見ていられるのです。
実相寺監督はほんと映像の魔術師ですな。

そういえば、実相寺監督は昨年11月に胃癌のため亡くなられたそうですね。
ほんで今週の土曜日に京都みなみ会館で、『実相寺昭雄追悼オールナイト上映会』があるみたいです。
『ウルトラマン』や『ウルトラセブン』などの他、江戸川乱歩原作の『D坂の殺人事件』(1997年)とかも上映されるそうです。
D坂だけどんなものかちょっと見てみたい。



今日の1曲:『蟲』/ 人間椅子
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AIO AOI NIGHT ~ユリイカ編~

2007年03月20日 | しねしねシネマ
「AOI AOI NIGHT」続き。

『EUREKA ユリイカ』は青山真治監督の2000年作品で、宮崎あおい初出演作。
上映当時チケット代が2500円っちゅー高額設定だったため鑑賞を断念した映画なんですが、その一年後くらいにWOWOWで放映されたのを観て、やはり大変感銘を受けずにはいられない作品でした。
私の今までに見た日本映画の中で、5本の指に入るかも。

全編セピア映像で約3時間半もある映画なのに、全く無駄を感じさせず、最後まで退屈させないところが凄い。
BGMといえば、時々流れるピアノ伴奏くらい(これがとても効果的なのだ)。
この監督は編集カットという事を知らないのかと思わせるほど、どこどこまでも続く長編ロードムービーとなっている。

話は大変ショッキングなバス・ジャック事件のシーンから始まり、そこから辛くも生き延びたバス運転手の沢井(役所広司)と、乗客だった直樹(宮崎将)、梢(宮崎あおい)の兄妹(この2人のキャストは実際本当の兄妹)は、事件から2年後に偶然再会したのを機に共同生活を始めるようになり、こころの再生を求めやがて中古バスに飛び乗って旅に出る・・・・・・

というのがこの映画の全体のあらすじだが、とにかく3時間半もあるのに会話というものが全くない。宮崎あおいなどは終盤に2行くらいのセリフがあっただけでっせ。それで第11回日本映画プロフェッショナル大賞新人奨励賞を受賞したのだからすごい。

ただただこの4人の奇妙な共同生活が延々と映し出される中、事件のショックで言葉を失ってしまったこの兄妹が、突然の訪問者の沢井に微妙に心を開いていく様子が丁寧に描かれており、なんとも奥ゆかしくてたまらないのだ。
妹の梢はもう前半から殆ど沢井に心を全開にしていたが、兄の方は半開きという微妙な差も面白かった。
けれど途中参加の東京出身の従兄弟の秋彦には両人とも殆ど心を許さず。ぎこちなくただ黙々と彼らの身の回りの世話をする沢井とは対照的に、何でもわかってるかのように押し付けがましく面倒を見ようとする秋彦とは生理的に肌が合わないといった感じ。
もうこのしゃべりすぎる東京男のキャラクターは見てる側も嫌悪感を募らせずにはおれない。とにかく秋彦の存在は、他の映画やトレンディードラマでは普通なのかもしれないが、この映画の中では空回りの浮いた存在に映ってしまう。
多くを語らない男のカッコよさ、そしてダメ人間なりに不器用にも過去のシガラミから逃れようとする沢井の健気さがクローズアップされ、見てる側は自然と彼に感情移入してしまうのである。
説教がましいことを言わない沢井が後半に言い放つ「生きろとは言わん!死なんでくれ!」というセリフは凄く重みがあり印象的だ。
まぁ意味はよくわからないのだけれど。

そして、ラストに映し出される壮大な大観峰の絶景を大スクリーンで見ることができただけでも、今回映画館で再鑑賞した価値があったなぁ~と思いました。


最期に今回来場してた客に一言。

>気管支炎を患っていたと思われる私の斜め後ろの席の客。
「咳するなとはいわん!出ていってくれ!!」
(沢井も気管支炎キャラだったので、感染ったのかもしれん)

>上映中に熟睡していた客。
「寝るなとはいわん!イビキかかんでくれ!」

オススメ度:★★★★★

今日の1曲:『再生』/ Salyu
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AIO AOI NIGHT ~エリ・エリ編~

2007年03月18日 | しねしねシネマ
昨夜、京都みなみ会館毎週土曜恒例のオールナイト企画「AIO AOI NIGHT」に行ってまいりました。

ふたりのAOIをヒューチャリングし、2回に渡ってその作品群を夜通し上映しまくるという趣旨のもので、私が今回参加したのは今やNHK連続ドラマやアフラックのCMなどで大活躍中の“宮崎AOI NIGHT”の方。

つーか私はてっきり“AOI”とは青山真治の“青”のことだと勘違いしておったんです。
というのも、今回上映されたのは『エリ・エリ・レマ・サバクタニ』『EUREKA ユリイカ』の2本立てで、その両作品とも青山真治監督作品やったからです。
まさか今をときめく宮崎あおいさんがこの両作品ともに出演していたなんていう事を最初に上映された『エリ・エリ~』を見終わるまで全然預かり知らんことでありまして。


まず、以前よりちょっと気になっていた映画『エリ・エリ・レマ・サバクダニ』の方なんですが、2005年作と結構最近の映画でこれは“音響の映画”という感じでした。
劇中で浅野忠信と中原昌也が組んだノイズ系ユニットの音採集(風の音、打ち寄せる波の音、貝殻の触れ合う音)や、音作りなどの滑稽な音楽活動シーンが大半を占めている。
まぁ実際浅野氏はギター弾けるし、中原氏もサウンドクリエイターの人だからまさにうってつけの役柄、ちゅーかほとんどこの人らの音楽映画っつー感じ。


あらすじは・・・西暦2015年。日本をはじめ世界中に“レミング病”と呼ばれる致死ウィルスが蔓延していた。感染者は自殺という方法で死に至るこの病。唯一の抑制方法が“日本のあるミュージシャンが奏でる音”を聴くことだという。

もうこの近未来的な舞台設定だけで、『スワロウテイル』的な俗っぽさと安っぽさを感じてしまった。
私の場合まず、音楽に共感できんのでダメでしたね。浅野ファンやノイズ系音楽大好きな人にはたまらん映画なのでしょうけど。
ギターのハウリング音とかメッチャ好きなんですけど、ラストの浅野氏のギター演奏シーンは見事!というより、正直「早よ終わってくれ」みたいな気ダルさを禁じ得ず、目蓋が非常に重たいことになってた。
ホースをグルグル回してホーホーと音を出すやつ、あれ子供の頃持っててよく振り回して遊んでたなー、なつかしい。


いや、こんな音楽より私ならキング・クリムゾンの『太陽と戦慄 パート1』をおススメする。
これの方が絶対病魔に効くと思うのだが。




まぁ病魔が町に蔓延してるかのような雰囲気の不気味なバックサウンドと、青山監督らしいエンディング・テーマはかなりいい感じやった。


ちなみにタイトルの“エリ・エリ・サバクタニ”はヘブライ語で「神よ、何ゆえに 我を見捨てたもうや?」という意味。
主イエスが十字架に貼り付けられながら唱えた最期の言葉。(マタイ27章 46節)

終末思想映画?


『ユリイカ』の感想はまた次回にて・・・


今日の1曲:『貫通』/ ゆらゆら帝国
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幻魔大戦

2007年03月07日 | しねしねシネマ
小学低学年の時からずっと気になってて観てなかった『幻魔大戦』を、先日ようやくレンタルでかりてきて観ました。

『幻魔大戦』は、1983年に公開された日本のSFアニメーション映画。
平井和正と石森章太郎の共作による漫画『幻魔大戦』、および平井和正による小説『幻魔大戦』を原作とした幻魔大戦シリーズの映像化作品。
監督はりん・たろう氏で、キャラクターデザイン・原画はあの大友克洋。


実は家に、誰が買ったが知らないが、この映画のテーマソングのシングルドーナツ盤があって、小学生の頃、洋間の親父のステレオでよく聴いてたんです。
これ聴いていると、なんか闘志が湧いてくるというか。
この曲を聴きながら、地球を守るため、サイキックエースたちが闘志を燃やし幻魔と戦うシーンをイメージしてたんだと思います。




主題歌は『光の天使』。
歌はローズマリー・バトラーという女性シンガーが歌っており、作曲はなんとキース・エマーソン!!
プログレッシヴロックにハマりだした高校生の時に、後からこの事実を知ってビックラこいたことは言うまでもありません。




主題歌も感動的だが、私はとりわけB面のインスト曲『地球を護る者』を好んで聴いておりました。
幼少の頃から、エマーソンの奏でるスペイシーなシンセ音に、なにかしらいいしれぬ魅力を感じていたのかもしれません。
まぁ今聴くとサビの部分などはバカバカしくも幼稚くさいフレーズですが、ちょっとグルーヴ感がでるパートのところはかなりカッコいいです。




で、肝心の映画の内容はというと・・・

正直しんどかった。今じゃこんなストーリーはまず通用せんでしょう。
単純明快なサイキックパワーというものをテーマとした勧善懲悪モノで、ヒネリもヘッタクレもない。
アニメーションは当時としてはまぁまぁな緻密さではあるんですが、静止画な風景がけっこう目立つ。
最初に登場したグリーンスレイドのジャケに描かれてそうな預言者みたいなやつが語りながら奇妙な舞を踊ってるシーンからして、ちょっとやってしもーた感が漂ってたが、世界各地からいつのまにか集まった「アンタ誰?」みたいなサイキック仲間たちの、いつのまにか深まっていた結束力の説明不足さ、主人公の異常なまでのシスコン振りは見ていてゲンナリさせられます。
原作は小説で20巻もあるらしいので、それを2時間ちょいのサイズに落とし込むのはちょっと無理があったのかもしれない。

ところで、キャラクターデザインは大友克洋が担当しているが、サイボーグのベガだけはよかったけど、あの女戦士のリマールのような髪染めの趣味の悪さはなんとかならなかったのか。
まぁああいうのが80年代ファッション的にナウかったんだろう。
う~ん、小学生の頃に観ていれば感動してたんかなぁ~・・・




この5年後に『AKIRA』が上映されるわけだが、この間にアニメ界にどんな変革が起こったのだろうか?


『幻魔大戦』劇場予告編


今日の1曲:『奈落のボレロ』/ EMERSON LAKE & PALMER
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盲獣と触覚芸術論

2006年12月20日 | しねしねシネマ
アウアウアアア~~~

海女にポーズをとらせて“触覚芸術”の構想に耽る盲獣。変態である。

日曜日に『盲獣VS一寸法師』を見てから3日たちましたが、今度は自分自身の中で妄想が始まり出しております。
毎日あのシーンやら、このシーンやらモワモワ~~と浮かんでは消えてゆきます。

で、盲獣の最期のシーンでちょっと気になった事があります。
盲獣が海辺で海女3人にアワビを採る時のポーズをさせながら、彼の言う“触覚芸術”をアウアウアアア~~と考えてる想像の中の変態映像が映し出されるシーンがあります。
そこには彼が今まで手にかけた女たちが続々と出てきて、とてもドロンドロンなキチガイめいた変態世界が展開されているのですが、彼は目が見えないのに、なぜこうもハッキリと彼女たちの顔を思い浮かべることが出来たのでしょうか?
ひょっとしたらまだ目が見える頃に彼女たちを見たことがあったのかもしれません。しかし海女たちは恐らくその時が初めてだったハズです。
まぁ彼のことですから触手とその人の声を聞いただけで、どんな人物であるかは大体想像が出来たのでしょう。それほど彼は鋭い感覚を持っていたに違いありません。
でも想像の範囲なのですから、もうちょっと美しくて色っぽい女を想像してしまうのが男の性じゃあござぁませんでしょうか?
まぁ水木蘭子と海女たちは百歩譲ってそこそこ色っぽい女でしたが、あの真珠婦人の女力士みたいなプロポーションはちょっと頂けないでしょう。
想像通りでも想像したくありません。

だからこの想像シーンはもうちょっと色っぽい女優に演じさせてもよかったんじゃあないかと思ってしまうわけであります。
例えば、ほしのあき、小阪由佳、井上和香、トレイシー・ローズなどなど(ってそりゃオマエの希望やろが!)
まぁそれじゃあ見てる側が混乱してしまうので、やっぱあのシーンはあのままでよいのでしょう。

しかし、江戸川乱歩先生も海女さんからインスパイアされてこのようなエロティシズムを想像して描くとは・・・・
彼の妄想世界は宇宙のように計り知れません。

今日の1曲:『悪魔大いに笑う』 / 人間椅子
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盲獣VS一寸法師

2006年12月18日 | しねしねシネマ
近所のツタヤが100円セールをやっていたのでDVDを10本程かりてきました。
その中でめっちゃ私の興味をそそった邦画がありました。
その作品とは『盲獣VS一寸法師』
いや、このタイトルを見たらもう乱歩ファンやったらかりずにはおられんでしょう。
監督は石井輝男という方。

ここでいう“盲獣”というのは、盲目のあんま師のことで、いやらしい触手で相手を快楽地獄へと導く怪人です。
そして“一寸法師”というのは、曲馬団や見世物小屋なんかで見かける子供の体に大人の顔をくっつけたすばしっこい不具者のこと。
この両者が相争うっていうんですから私はもうこの作品に対する期待感でいっぱいで、あられもない妄想を膨らませたことは言うまでもありません。

家に帰ってさっそく鑑賞してみたのですが・・・唖然呆然リジー・ボーデン!!
別に怪人両者がガチンコ対決しているわけではありませんでした。
しかしこういうのが正真正銘の“エログロナンセンス映画”であるのだな~と。
ストーリーは乱歩作品『盲獣』と『踊る一寸法師』をうま~く掛け合わせたミックスものでかなり原作に忠実。
まぁこのような身体障害者を犯罪者に見立てた映画を一般映画館で上映したら物議をかもし出すことは間違いないでしょう。
まず冒頭の竹中英太郎氏描く幻想怪奇を極めた挿絵を背景に、気持ちの悪~いBGMとこの世のものとは思えない気色悪~いうめき声が聞こえるオープニングにヤラれました。
ほんで映画サークルの学生の作品かいな!ちゅーぐらいチープな映像(撮影期間は1ヵ月だったらしい)、日活ロマンポルノばりの昭和テイストな女優陣に目が点になりました。
この映画に出てくる女優たちは惜しげもなく裸体を晒しておるのです!唯一の美人モデルの橋本麗香さんのヌードを期待したけどそれはありませんでした。
役者の演技もセリフもめっちゃトウシロ感満開やなぁと思っていたら、主人公の作家先生役はイラストレーターのリリー・フランキー。明智小五郎役には映画監督の塚本晋也氏と、映画同好会、単なる乱歩好きを寄せ集めたかのようなキャスティング。
しかし、この吹き替えたような違和感のあるセリフの音声はなんなのか?!まるで紙芝居を聞いているようである。

ただ、盲獣役と一寸法師役はこれ以上はないだろうというくらいナイスなキャスティングだった。特に盲獣役を怪演した平山久能氏のキャラは強烈だった。
ヒョロっとした肉体美と不気味にしゃがれた声で見事な変態怪人を演じきっている。これであの原作で盲獣が歌う「イモムシご~ろごろ♪」の唄を歌ってくれていたならほんとたまらなかっただろう。

ラストになんと丹波哲郎氏が博士役で登場し、盲獣が海女で作った「触覚芸術作品」を見て「こんなものは・・・芸術ではぬわーい!!」と言ってステッキでぶっ壊すシーンは思わず爆笑してもーた。
『乱歩地獄』同様、オーソドックスな人にあまりオススメできる映画ではないけれど、非常に衝撃的且つアヴァンギャルドな変態映画であった。

盲獣。アウアウアアア~~~~~~ゆうてます。


オススメ度:★★★★★

今日の1曲:『踊る一寸法師』/ 人間椅子
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グエムル ー漢江の怪物ー

2006年10月02日 | しねしねシネマ
映画の日だったので、6ヵ月振りに映画館まで映画を見に行きました。
最近ホンマに見たいと思う映画がなくて、なかなか映画館まで足を運ぶ気になりませんでしたが、スクリーンで是非見なければという韓国映画があって、奈良近郊の映画館では全てこの作品の上映が終了していたので、雨の中を梅田の三番街シネマまで赴いたというわけです。


その映画作品とは、ポン・ ジュノ監督作『グエムル ー漢江の怪物ー』。

ネット検索したら、“グエムル”を“グエルム”と勘違いして覚えてしまってる人が結構いらっしゃいますね。
そういう私も最初“グエルム”と思ってて、このキーワードで検索しててわかったことなんですけど。


ジュノ監督の作品は、以前『殺人の追憶』という作品を見て、「いや~韓国映画もなかなかあなどれまへんな~」と私が初めて韓国映画に興味を示したこともあって、彼がどんな描写でモンスター映画を撮ったのかと大いに期待が持てました。




で、やっぱりおもしろかった。
まぁストーリー自体は韓国版ジュラシックパークといったところだろうか。

怪物の高度なVFX映像に驚かされたが、なんのことはない、『ロード・オブ・ザ・リング』や『ハリー・ポッター』の制作チームが手掛けているので、この点に関しては別に韓国映画として褒められる点ではありません。

やっぱ彼の作品の魅力は人物描写にある。
うだつの上がらない駄菓子屋の親父と『殺人の追憶』でも主演を務めた実力者俳優のソン・ガンホ演じる長男のドラ息子(店番バツイチ)、大学出だが未だフリーターの活動家の弟、アーチェリー全国3位という微妙な地位のある妹という、平凡といえば平凡(妹は凄いが)なデコボコ家族が、一致団結して長男の1人娘をさらった突然変異の人食い怪物“グエムル”に立ち向かうという設定にまずグッときた。




もうのっけから惜しげもなく闇雲に暴れまくる怪物を、ドクタースランプよろしくドドドドドドーーーーッと登場させてるところがあまりにも乱暴すぎて笑えた。
客席でもけっこう笑いが起こっていた。
この思い切りのよさは痛快!いきなりそんな修羅場を見せて、その先の展開どないするんやー!てつっこみたくなった。

そしてこのデコボコ家族のやり取りがなんかコントみたいで笑いをさそう。
とにかく怪物に立ち向かうこの家族の無計画さったらないです。もうただ娘を助けたい一心なんですね。そこらへんの家族愛の描写が非常に面白い。
親父の絶体絶命の場面で、死を覚悟した瞬間のニヒルなあきらめの表情は印象深かったな。

とにかくなんのヒネリもない内容のようで、なぜか展開の予想がつかずワクワクしてしまう。
それとあと韓国映画特有のクサさがない。この映画には笑いと同時に非情さも同居しているのだ。決してハッピーエンドな映画ではない。
またしてもジュノ監督にやられたって感じです。


ハリウッドでこの作品のリメイクを検討中とのことだが、興味が沸かない。
この作品は舞台が韓国、そして役者が韓国人やからこそユーモアがあって、その情緒深さが興味深いのだ。
毛唐が演じてもなんの新鮮味もないし、結局ベタなアメリカ万歳アホ映画に終わるのは目に見えている。

それに、ソン・ガンホほどのトボけた演技をできる役者はまずおらんだろう。



オススメ度:★★★★
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ピストルオペラ

2006年09月24日 | しねしねシネマ
先週オークションで、巨匠鈴木清順監督作『ピストルオペラ』という邦画のDVD(コレクターズ・エディション)を結構なお手頃価格で競り落としました。


鈴木清順監督の映画は見たことありませんでしたが、78歳の大ベテランで数々の役者たちからリスペクトされているそうですが、まさか自分がこんな前衛的な映画にハマるとは夢にも思ってませんでした。




きっかけはこの映画のテーマソング「野良猫のテーマ」をエゴ・ラッピンのVo中納良江さんと、日本ダブ界の重鎮こだま和文さんとがコラボってたので興味を持ったっちゅーミーハーな動機ですわ。
まぁエゴの歌がからんでいるからといって、そのストーリーが絶対優れてるっちゅーわけではないのは、数年前放映されたTVドラマ『探偵濱マイク』が証明しとることではありますが、そういう動機でもなければ、なかなかこの辺の邦画には巡り合えんですからね。そういう意味ではエゴが好きなおかげでこんなぶっ飛んだ映画に出会えたことを非常にラッキーだと思いました。



話は簡単に言うと、殺し屋の巨大組織“ギルド”の内部で、プロの殺し屋たちがランキングナンバー1を争って殺し合うっちゅーものなのだが、いや、これがまた普通のアクション映画じゃない!
てかこの作品はアクション映画の部類じゃないか・・・

世界殺し屋ランキング番付表。



なんちゅーか、まるで舞台演劇を見てる感覚で、不条理な舞台設定、アバンギャルドなストーリー展開、戯曲にも似たセリフ回し、もう全てが常軌を逸しているのだ。
ストーリーは行き当たりばったり感が凄まじく、この場面をどう装飾するかとか終始そういうことばっかり撮ってるインプロ映画という感じ。

殺し屋のキャラ、死に方にしたってそう。
冒頭で東京駅の屋根の上でキリストみたいに釣り下がって笑みを浮かべたまま死ぬ沢田研二扮する“昼行灯の萬”、車椅子に座ったまま海岸に入水していく“生活指導の先生”、舞台の上で舞いながら可憐に倒れる“百目”・・・

芝居じみてて大仰と言えば大仰なのだが、この映画ではそうすることが目的みたいな世界なので、見てる側はなぜそういう展開になる?と考える暇もなく、目くるめくこの色彩豊かな映像世界にだんだんと引き込まれていってしまうのである。




そして出演してる役者陣も素晴らしい。
主役の女殺し屋通称“野良猫”の“皆月美有紀”(レズ)を演じる未納女優江角マキコは、セリフ回しはちとクサく感じるが、黒の和服にブーツというスタイルが見事にハマっていてカッコいい!オマケにひとりエッチシーンまで見せてくれるという、江角ファンには正にヨダレものの演出なんじゃないか?
この映画初出演でヌードまで披露してしまった撮影当時まだ10才の韓英恵演じる不思議少女“小夜子”の存在感もいい。
あまり感情的な演技を要求されてないあどけないセリフ回しが、この謎めいた少女の雰囲気にピッタリあてはまっている。
あと樹木希林の脇役所もいいし、昔の栄光にすがる哀れな殺し屋を演じる平幹二朗のセリフ回しは秀逸!この映画の中で一番演技力が光ってたんじゃないかな。
最期のストップモーションで「バカーー!!」って叫んで終るシーンが最高です。





そして、この映画のもうひとつの魅力となっている必要不可欠な要素はズバリ音楽でしょう!
抜群に洒落てるオープニングタイトルで挿入されるエゴ・ラッピンの“サイコアナルシス”。劇中でもTICOのスティール・パンが場面にとてつもない“和”の雰囲気を与えているし、なんつっても皆月と小夜子がE.T.みたいに人差し指を合わせるシーンで絶妙なタイミングで挿入されるこだま和文のダブナンバーがたまりませんわ。



この映画、まぁ違うかもしれないが、タランティーノの『キル・ビル』に近いといえば近いかな。監督の好きなものをひっくるめて映画にブチ込んだといいましょうか、ちょっとエゴのきつい。まぁ本作は『キル・ビル』ほどポップではないし、もっと変態的ですが。
とにかくオーソドックスな映画が好きな人にはとてもじゃないけどススメられない。もうハリウッド映画とかCG映画とかに見飽きた人とか、前衛的な演劇が好きな人向きかもしれません。
つっても私自身は金払って劇場まで劇団四季などを見に行くような人間ではございませんが。


ついでといってはなんですが、この映画のパンフとオフィシャルハンドブックも格安セット価格で競り落としときました。
パンフはショボかったけど、ガイドブックはパンフの20倍充実した内容。
メイキング、オフショットや各役者のインタビューなどもテンコ盛り。いや~いい買い物したなぁ。




サントラも以前買って所持しており、軽いコレクター趣味に走っています。
ハマると物欲が沸いちまうのがどうも私の悪いクセです。

オフィシャルハンドブックの映画評論家たちの対談を読んだけど、全然参考にはなりませんでした。

ま、この映画に意味とか求めるだけ無駄ってことですわな。

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パズズ神を召喚す

2006年07月11日 | しねしねシネマ
お試し期間1週間過ぎてたのにまだスカパーが映ってたのでラッキーと思っていたら、後で聞いてみると2週間タダ見期間があったようだ。

なので『エクソシスト ビギニング』がやっていたのでせっかくやし見てみました。




オープニングのローマ兵士達の死体が逆十字に縛り付けられているシーンを見た時はサタニックな雰囲気があってなかなか期待がもてたのですが、全くもって怖くない映画でした。
CG全開の蝿とかがたかるシーンなんて『ハムナプトラ』のノリやし、神殿に入っていくシーンなどは『インディ・ジョーンズ』を思い浮かべてしまいました。
しかし今回のエクソシストさんはなんか地下の魔神殿とか平気でズカズカ入っていくところに全く緊張感が感じられなかった。普通あんな真っ暗闇にひとりで入っていくのはビビるやろ!!今にも出るぞぉ~出るぞぉ~っていう恐怖感がこの映画にはあまりにもなさすぎる。

私はホラー映画には視覚的な怖さより心理的な怖さの方を求める方で、1作目ではそういった部分がよく描かれていたように思います。もう内容はほとんど忘れてしまいましたが。
今回もメリン神父(この作品ではまだ神父ではないが)がトラウマに悩む心理的にダークな一面も描かれているが、それをナチスのユダヤ人虐殺と結び付けてしまっているところがなんか安易というか、ハリウッド映画的セコさを感じましたね。

そして今回はパズズさんの攻撃がなんか地味・・・
やはりビギニングなので1作目の時みたいに首を180度回転させたり、ブリッジ歩行するような凄技はまだ身につけてなかったみたいですね。

まぁ今回は1作目への橋渡し、謎解きみたいな部分がふんだんに盛り込まれているようで、漠然とホラー映画を楽しめるようにはできてなかったみたいです。
こちらの方↓のHPに完璧過ぎるほどの解説が述べられているので、この作品をより深く理解したい方は↓を読んでみてください。
エクソシスト ビギニング 完全解読編


そして私はこの物足りない内容の作品を見終わった後、久々にモービッド・エンジェルのビギニング(1st)『狂える聖壇』を引っぱりだして、この満たし得なかったブラスフェミーな心情を満足させることにしたのでした。




「ニンギジッダ-我が瞳を開け給え!!」という冒頭で始まる“すべての邪な神々よ!”のリリックには何をかくそう、あの疫病の主パズズ神が登場するのである!


パズズ神を召喚す
疫病の主を召喚す
我は敗者の生まれ
憎悪のはらごから生まれた
あえぐ大地を喜とし
裂けた大空を讃える
目覚めよ 病苦をまき散らせ
奴等のつまらぬ魂を貪るのだ


この邪悪なる歪みきった演奏、そしてVoデヴィッド・ヴィンセントが暗黒神を召喚するべく叫びまくる呪文!!

イア!!イアク・サカク イアク・サカクス!!
イア・シャグズル!!

まさにモービッド・エンジェルの最も冒涜にして最高傑作ナンバーである。



オススメ度:★★
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エターナル・サンシャイン

2006年06月01日 | しねしねシネマ
思い出したくもない恥ずかしい過去やイヤ~な記憶だけを頭の中から消し去りたい!!

皆さんもこんな願望ありまっしゃろ?
例えば失恋した人のこととか、ひとりエッチを親に見られたこととか。


先日私が中古で買ったDVD『エターナル・サンシャイン』は、そんな都合のいい願いを叶えてくれる、切なくも心温まる奇想天外なラブストーリー映画です。
この映画は去年映画館にひとりで見に行って「これは女の子と見にいくべきだな」と思わすくらいラブストーリーとしては傑作と呼べる映画だったのだが、決してチャラチャラした内容ではない。

主演はジム・キャリー、ケイト・ウィンスレットというちょっと意外な組み合わせ。
脚本は『マルコヴィッチの穴』、『ヒューマン・ネイチュア』、『アダプテーション』などで数々の奇想天外ストーリーを輩出している天才作家チャーリー・カウフマン。
そして監督はビョーク、ダフト・パンクなどを手掛けた奇天烈なPVディレクターで名高い変人フランス人映像クリエイターのミッシェル・ゴンドリー。
中でもダフト・パンクの“Around the World”のPVは傑作である。
映画監督としては前作『ヒューマン・ネイチュア』で既にデビューを果たしている。




内容はジム・キャリー扮するジョエルという冴えない青年が、辛い失恋の思い出を忘れるためにラクーナ社に“記憶除去手術”を依頼するというお話。
いつもとちがってかなり根暗なキャラ設定なんだが、ジョエルが自分の記憶の中に入り込んでしまい、消去されていく自分の記憶の中を右往左往する息もつかせぬドタバタ劇はいつもの彼らしさが表れていた。
このシーンは映像的に見ていて非常に楽しくて、ゴンドリー監督のイマジネーション、奇抜な発想力には改めて感服してしまう。
あとスパイダーマンのヒロイン役でも二股アバズレ的な役柄を演じたキルスティン・ダンストは、ここでもやっぱり二股アバズレ役なんですが、今回は白衣姿と下着姿が妙に色っぽくて、予想外の結末で魅せる彼女のシリアスな演技が光っており、ただのアバズレ役では終わっていません。
ちなみにロード・オブ・ザ・リングのフロド少年は、この作品ではかわいそうなくらい情けない役をやらされており、男女関係の卑しい部分を一手に担っているという感じ。



あとコテコテのCG映画と違って、必要最低限のCGしか使ってないのがこの映画の魅力でもあり、見ていてなんか温かみを感じるところでもあります。
大きいケイトと小さいジムが同居しているシーンも、実はCGではなくカメラ映像による人の目の錯覚を上手く利用した、遠近法的なテクニックと舞台セットで撮影してはるんです。




さすが映像のカラクリ人、いや、魔術師といったところでしょうか。
場面場面に挿入されるBGMもかなりよくて、自然と映像に惹き込ませる絶大な効果を担っている。


もしラクーナ社が実在し、そんな便利な記憶除去装置があるなら、この映画の記憶を消してもらってまたこの映画を楽しむというのもいいかもしれません。

オススメ度:★★★★★
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チームアメリカ ワールドポリス

2006年04月22日 | しねしねシネマ
アニメ『サウスパーク』の監督が、サンダーバード風のパペットを駆使して撮影したブラックユーモア映画『チームアメリカ ワールドポリス』のDVDを返却日にようやく鑑賞した。

まぁ期待していたほど面白くは無かった。
出だしは大量破壊兵器をもったアラブ人を退治するためパリのエッフェル塔や凱旋門を容赦なく破壊したり、エジプトのピラミッドやスフィンクスなども徹底的に破壊しつくすシーンなど、アメリカ国家に対する皮肉が利いていてよかったのだが、思ったより笑えるシーンが少なかった。
アメリカのお笑い映画って、結局は露骨な下ネタに走りがちでマジで品位を疑ってしまう。
金正日の“独りぼっちの歌”もゲンナリさせられたが、最後の「チ○コはマ○コよりいい~♪」みたいな歌は「コイツら頭おかしいんちゃうか!?」というぐらい失笑ものの歌だった。
これがアメリカ文化というものだろうか?そういえばアメリカに行った時もお土産屋には局部な商品が平然と棚に並べてあったな。

褒められるべき点は、そのミニチュアセットの緻密なまでの懲りようだ。金正日の宮殿なんかは本物の金の写真や銅像などが飾られてあったり、NYのタイムズスクエアのセットなんかも見ていてかなり楽しい。
黒ヒョウを黒猫に演じさせてるところなど、CGを使わないパペット世界ならではのチープなこだわり、工夫がとても感じられました。
あとパペットの表情がかなり豊かだったな。

この映画って実は『アルマゲドン』、『パールハーバー』などのアメリカ万歳的ゴミ映画を製作し続けているブラッカイマーの作品を痛烈に皮肉った映画みたいだが、確かにミュージカルシーンで「『パールハーバー』は失敗~♪ベン・アフレックは演技学校に行くべき~♪”」みたいな歌詞が出てくる。そこは評価に値する。
でもなんか中途半端なストーリー展開で皮肉りきれてなかったように思う。
映像がよかっただけに非常に期待ハズレで残念な作品だ。

オススメ度:★★

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