AMASHINと戦慄

~STARLESS & AMASHIN BLOG~
日々ブログレッシヴに生きる

できればいい曲を

2016年08月17日 | まったり邦楽
最近お気にのアーティストの新譜を聴いてもなかなかピンとくるものがない。
まぁこれは歳とってだんだん感性が鈍っているのが大きな要因かと思われるが。
昔ほど音楽に対する探求心も薄らいだので新しいアーティストの音楽にもなかなか興味が湧かない。
だから毎年発表していたAMASHINレコード大賞も2015年はベスト5枚選出できずついに途絶えてしまった(まぁこの企画は数年前からすでに無理があった)。
ここ数年、昔から好きだったバンドがやっと人気が出て売れだしたりもしたけど、出す新譜はちっともおもしろくない。20数年ぶりに復活して気合のはいった新作をリリースしたバンドなんかもあったけど、どうにもつまらない(クリエイターをテキトーに指名してテキトーに作らせたジャケットもショボい)。もうレビューすら書く気がおこりませんよ。
それを「最高傑作だ!!」なんて息巻いてるライターの評価を読むと、「いつまでも感性若くっていいねぇ」なんて思ってしまう。
まぁもっと繰り返し聴けばよくなってくる可能性はあるんだが、ダメなものはダメだし、最近では3回くらい聴いたら気持ちが萎えてしまい「音楽を楽しむのにそこまでせんといかんか?」とも思ってしまう。


そんな折、坂本慎太郎くんは本当にいい作品を作って出してくれるなぁって、ほんとありがたく思ってしまう。
この絶妙なユルさ加減、不可思議ながら頭にスッと入ってくるポップでセンス・オブ・ユーモア溢れる歌、気持ちいいことを信条とするサウンドへのこだわり。
もう完璧すぎるほど完璧。
前作は全体的にストーリー性のある一貫した見事なコンセプトアルバムであったのに対し、今回のは「とりあえず10曲できたんで出しました」的なユルい感じ。
一応「顕微鏡でのぞいたLOVE」をテーマとしているようであるが、ゆらゆら帝国時代から人間の性や行動を動物的に、あるいは物質的に喩えてシンプルな形容詞で表現するといった感じ。

DU特典も顕微鏡のイラストのトートバッグ。



今回も坂本くん奏でるスティールギターがとてつもない効果を発揮している。
楽曲それぞれに独特のポップ感があり、M3「べつの星」であれば後ろの素朴なフルートの音色が、M5「動物らしく」であればループする無表情なベース音がその楽曲の雰囲気を決定づけている。
そういった楽曲のアレンジも実に洗練されていて、坂本くんって本当にセンスの人だなって。
個人的にはM7「他人」のなんともいえない悩ましい歌の雰囲気と、後半のサックスソロがツボ。


本作を聴いていると、坂本くんは本当に無理なく自分のペースでアルバムを作っているなぁということがわかる。
それもそのはず、ゆらゆら帝国解散後、坂本くんは自身のレーベルZelone Recordsを立ち上げる。
そこで自分の思い描くままの歌詞、音像をゆ~るくマイペースで丁寧に練り上げていき、作品の音に見合ったプレイヤーを召喚し、必要な音をつけ足したり引いたりして理想の楽曲を完成させていく。
そこにはレコード会社側からの制約も決まったメンバー編成でのバンド間のエゴや気遣いや限界もない。
あと「以前のよりもっといい作品を作ってやる!」なんていう気負いや力み、ファンへの意識なんかもない。
だから坂本くんの持つ研ぎ澄まされたポップセンスがありのままトータル的に際限なくこの作品で発揮されているのだ。


もちろんジャケットや歌詞カード内のイラストも坂本くん画。
今回はアナログ盤はもちろん、なんとテープ盤も発売されている。自由だなぁ。



もちろん坂本くんみたいな境遇のアーティストは例外中の例外で、誰もが坂本くんみたいな立場になれるわけじゃないし、これほど自由な環境を与えられたからといっていい作品が作れるわけじゃない。
だからアーティストにとって、坂本くんはほんと羨ましい存在なんじゃないかな。




今日の1曲:『できれば愛を』/ 坂本慎太郎
コメント
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