AMASHINと戦慄

~STARLESS & AMASHIN BLOG~
日々ブログレッシヴに生きる

不思議の国のアニー

2020年04月30日 | プログレッシヴ草稿
ついに、シンフォニックプログレッシヴロックバンドRENAISSANCEのヴォーカリスト、アニー・ハズラムの1977年の初ソロ作品を購入してしまった。

多少の不安はありました。
これはルネッサンスやのうて、アニーのソロ作品なので。
けっこうキツいんではないかと。
でも、この邦題なもんだから買わずにはいられなかった。


そのタイトルとは、『不思議の国のアニー』。


お察しの通り、大学の数学講師であったルイス・キャロルことチャールズ・ラトウィッジ・ドジソンが、学寮長の娘アリス・リデルのために書き下ろした童話『不思議の国のアリス』を模したものである。


恥ずかしいのであまり言いたくはないんですが、私は昔からこの『不思議の国のアリス』の童話に興味を抱いている乙女チックな心のオッサンなんです。

まぁ若い頃読んでたミステリー小説やマンガによく『不思議の国のアリス』の場面やフレーズが引用されることが多く、それで原作の内容も知っておかなければと浪人の頃読んだのが最初だったと思うが、物語の不条理でナンセンスなおもしろさもあるけど、なんといってもジョン・テニエルの筆による挿絵がとにかく魅力的で大好きだった。




最初に読んだミステリーオムニバス『アリスミステリー傑作選』には、小栗虫太郎、中井英夫、山田正紀氏などの作家も名を連ねていた。
それだけアリスの物語はミステリー作家にとって魅力的な題材なのだろう。




こういう狂った実験的文章の綴り方も魔術的で好き。



恥ずかしながら海洋堂のフィギアもめっちゃ集めてた。



ところで、アニー・ハズラムのソロアルバムのジャケットのアートワークは、なんと本作のプロデューサーであり(ていうか、演奏含めほとんど彼が作った?)彼女の夫でもあった(現在は離婚)ロイ・ウッドが描いたものだとか。
もちろん『不思議の国のアリス』の構図をパロったもので、よくみると結構チープではあるが、まぁここまで描けたら上等だろう。

おそらくガキの頃のアニーと思われる写真も掲載されている。



で、表ジャケットは、アリスの物語にでてくる有名な”キチガイお茶会”のシーンなのはわかるが、帽子屋がけっこう気持ち悪く描かれていて、三月ウサギの格好が謎すぎる。ネムリネズミ(ヤマネ)が布団敷いて寝てるアレンジはなかなかおもしろい。
まぁ青木雄二画ばりに遠近感はないが。

ところで現在出版されてる『不思議の国のアリス』って、まだ“キチガイお茶会”って表記されてるのかなぁ。
だとしたらけっこう攻めてる感じで好感が持てるんだが。今度本屋行って調べてみよう。
まぁでも、作品の真意とかあんまり理解してないけど、この物語に出てくる魑魅魍魎たちの会話の内容とか、ほんま支離滅裂感がハンパなく、精神病患者同士のタワゴトとしか思えんのよ。

このシーンとか、本当に狂気を感じるし・・・



さて、肝心のアルバムの内容なんですが・・・・・

べつにシロウサギに誘われて、メルヘンチックな不思議の国に迷い込んでしまったかのような感覚には陥りませんでしたね。

「私が音楽でできていたら」、「愛への疑い」、「もしも貴方を愛したら」という曲タイトルを見てみても、べつに幻惑的な童話ファンタジーをテーマとしたコンセプトアルバムっていうわけではなく、ただ有名な童話のタイトルをテキトーに拝借しただけだったんだということがわかって、ちょっと残念な気持ちになった。

正直ほとんどルネッサンスやないけな内容で、まぁそれはレコーディングメンバーにルネッサンスの面々が数名参加しているので必然であったかと。
アニーの歌声にも不思議さや無垢な感じもなく、いつもの母性溢れるアニーで、若干ソプラノがいつもより際立っている気がするかな。

ただ、ルネッサンスよりかは大仰さが若干抑えられてる感じで、楽曲もキャッチーでわかりやすく、アニーの歌声に柔軟性も見受けられる。
本作は『お伽噺』と『四季』との中間で作られた作品らしく、まぁちょっと息抜きがてら気張らずに夫婦仲良く楽しく作り上げたものかと思われる。
だからといって、ルネッサンスの諸作品に見劣りするなんてことは決してなく、各楽曲ともクオリティーが高くよく作り込んである。

とにかく本作はアニーのソプラノが映えている。
特に5曲目のスキャットのみの歌唱の楽曲「ROCKALISE」の神々しいアニーのソプラノは絶品!
そして、カヴァー曲も何曲か収録されていて、おそらく欧米ではスタンダードナンバーなのであろう「NATURE BOY」は、色んなアーティストがカヴァーしているのをどこかで耳にしてきたと思われ、なんか聴き馴染がある。
この曲の後半のアニーのスキャットとエレクトリック・シタールとのユニゾンがもう最高!
ちなみに、この手法の大家であるジョージ・ベンソンも、この「NATURE BOY」をカヴァーしているが、アニーのスキャットユニゾンのアレンジの方が秀逸だと思う。
う~ん、惚れ直した!




ラストは日本でも閉店のテーマでお馴染みドヴォルザークの「家路」でほっこりと。

あたかも「不要不急の外出はその辺で止めにして、早く家へお帰りなさい」と、アニーにやさしく諭されてるかのようである。
コメント
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