AMASHINと戦慄

~STARLESS & AMASHIN BLOG~
日々ブログレッシヴに生きる

ブレアの森の選曲テープ(またはMD)

2016年05月28日 | ♪音楽総合♪
先日暗黒バーでの「13日の金曜日」というテーマで催されたDJ大会。
店のモニターには当然のごとく、映画『13日の金曜日』の映像が延々と映し出されていた。
まぁ暗黒系のメタルを好むメタラーというのは、やっぱゾンビものやスプラッター映画を好む傾向が強いというのは感じるが、私自身実はこの手のものが苦手。
基本ビビりだが、なにもゾンビやスプラッター映画が怖くてダメというのではなく、絵面がグロくてヴィジュアル的に好きじゃないのだ。
あと、“見せすぎ”なものにあまりホラーを感じないってのがある。
日本のホラー映画でも『リング』はほんとに怖くて好きだが、『呪怨』はテレビで見てそのお化け屋敷演出に「ドリフか!」と思ったもん。
やはり、H.P.ラヴクラフトの『ダンウィッチの怪』のように、“忍び寄る見えざるものの恐怖”ってのが一番怖い。チラ見せチラ見せで焦らされるあの怖さ。

今まで見たホラー映画でその究極形ともいえるのが『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』なのではないか。
今回のDJ大会で私がチョイスしたスロベニア産インダストリアル系のLaibachの「God IS God」、実は映画『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』のサントラからのナンバーだったりする。
厳格な宗教性、そしてその冷徹なデジタルサウンドは黙示録的な雰囲気を見事に醸し出している。

Laibach - God Is God



『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』(以下BWP)は、新感覚ホラームービーとして2000年頃に大ブームを巻き起こしたフェイクドキュメンタリー映画。
3人の学生がメリーランド州のブレア村の「魔女伝説」のドキュメンタリーを制作するため、その村の森に入って行ってそのまま行方不明となり、後に彼らの撮影したフィルムが発見され、そのフィルムをそのまま映画として上映するという設定の画像ブレまくりのフェイク映画である。
当時務めてた会社の映画好きの同僚とこの映画を劇場まで観に行って、鑑賞後お互い絶句状態で劇場から出てきたってゆーくらいなかなかのトラウマ映画だった。
その3年後くらいにデートした女の子はこの映画を今までで観た映画のワースト3の一本に挙げていた。
ほんでBWP大ヒットのあとから、日本の心霊スポットに潜入して行方不明になりました系のしょーもない青臭い若者向けビデオがレンタル屋の棚に蔓延りだしたっけ。
まぁこの作品も別に怖いというほどの内容ではないが、人間が徐々に極限状態に追い込まれる様がリアリルに映し出されており、なんかハッキリせぬままいや~~な残尿感を残して幕を閉じる感じが尾を引きずって後に色々な形になって頭に浮かび上がってくるという気持ち悪さがある。




ドキュメント撮影という設定なので、最後エンドクレジットで名状しがたくも気色の悪い効果音は鳴るものの、劇中歌などは一切ない。
そんな映画のサントラがあるというのは奇妙な話だが、このサントラ、実は森の入り口付近に乗り捨てられていた行方不明になったメンバーが乗ってきた車のカーステの中にあったオリジナル編集テープの中に収められていた楽曲群という設定。編集者はBWPメンバーのひとりジョシュ。なのでアルバム名は『JOSH'S BLAIR WITCH MIX』。

    


こういったお遊び心のきいた関連アイテムに、当時この映画に感銘を受けた私が思わず購入せずにいられなかったのも無理はない。
が、内容はちょっと薄味のインダストリアルな楽曲が中心で、注目に値したのは上記で紹介したLaibachとMeat Beat Manifestoくらい。
ジョシュとはあまり音楽の嗜好が合わないようである。


このサントラCDの他、BWPの大ヒットを受けてさまざまな関連書も刊行され、私も2冊ほど購入している。
興味深かったのが、『ブレア・ウィッチMANIACS』という解明本。
多くの著名人がBWPに文章を寄せており、中には水木しげる先生のご息嬢、水木花子さんの評論なども掲載されている。



中でも興味を惹いたのは、やはり日本怪奇幻想文学の権威、東雅生氏の文章。
東氏はこの映画BWPの大仕掛けのフェイク感は、アメリカの作家H.P.ラヴクラフトが自身の怪奇小説の中で考案した禁断の魔道書『ネクロノミコン』のリアルなフェイクアイテムを彷彿させると説いている。
『ネクロノミコン』に関してはラヴクラフト自身があたかも実在したかのようなもっともらしい由緒書きを遺しており、ついにはコリン・ウィルソンをも巻き込んで『魔道書ネクロノミコン』と題する一冊の奇書までが編み出されるに至ったことを紹介する一方、「魔女伝説」という中世アメリカの魔女裁判という黒歴史と密接に結びついてる欧米人特有の土着思想から、ラヴクラフトの『魔女の家の夢』を紹介している。
私自身この映画に魅力を感じたのは、この「魔女伝説」という部分に由るところが大きかったかもしれない。
禁断の地に踏みいった探索者の、そこに巣食うものどもの怒りに触れて極限状態に追い込まれてんのに、自分の身に災厄が降りかかる寸前までそれを記録にとどめておこうとする当事者の解しがたいジャーナリズム精神なんかも、ラヴクラフトの小説と相通ずるものを感じる。


あと本書でおもしろかったのが、『JOSH'S BLAIR WITCH MIX』にあやかって、“あなたが魔女の森に入るとき、持参する「ブレアの森の選曲テープ」”と題し、各著名人の選曲が紹介されている企画が大変興味深い。
ボアダムスの山塚アイ、少年ナイフの山野直子、Buffalo Daughterの山本ムーグなどのミュージシャンの他、和田ラヂヲ先生なんかもこの企画に参加している。

私も当時この企画に触発され、己が編集した『AMASHIN'S BLAIR WITCH MIX』を自作し、後にMD化もしている。
MD化したのは、MDしか再生できない車に乗っていたからだ。

テープの方は紛失してしまった。



選曲は以下の通り。昔こしらえたHPにコーナー作って掲載したもの。



これを当時BWPを一緒に観に行った同僚の家で流して聴かせたらかなりひかれた思い出がある。
今編集したら、もっと違ったセレクトになるんやろうな。
みなさんも是非(今となってはテーマが古すぎるかもしれんけど)。


今日の1曲:『Bkack Milk』/ Massive Attack
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決戦は13日の金曜日

2016年05月19日 | DJはじめました。
以前から何度か足を運んでるものの、常連というほど通ってはいない大阪の暗黒バー(メタルバー)で、13日の金曜日になると開催されるDJイベントには前々から心騒がされていた。

DEATH,BLACK,GOTHIC,DOOM,INDUSTRIALなど、暗黒系メタル括りのDJイベントで、ま、この辺のジャンルは私の所持してるCDの中でも1割にも満たないくらいに専門外なのであるが、悪魔主義的なバンドやオカルト志向の音楽にはメタルを聴き始めた中坊の頃からいたずらに好む性癖があり、自分の奥底に潜む邪悪な暗黒精神が如何ほどのものか、是非この年に一度くらいしか開催されないDJイベントで試したくて仕方なかったのである。

で、土曜日出勤日であったにも関わらず、イベント当日仕事終わって家で3時間だけ睡眠をとって終電で大阪に向かい、夜中1時頃から(すでに13日の金曜日ではないが)店でオールナイト、そして始発で家に帰り仕事場に向かうという、20代の頃にしかやったらあかんような強硬スケジュールでこの暗黒のDJイベントに参加させてもらったのであった。
今回はすでに本編枠は埋まってて、夜中2時以降からのフリーDJタイムのみの参加となった。

その日のTシャツはもちろんお気に入りのエンジェル・ウィッチ両性神バフォメットT。



天一のこってり食ってから店に向かいドアを開けて愕然としたのが、まず以前よく通っていたメタルバーのDJイベントより確実にギャラリーの年齢層が若い。しかも20代と思わしき女性客がこの時間帯にもかかわらず3人、その内の1人はパツキンの外人さん。
私の若い頃はこの手のイベントでかかるような音楽は女の子から忌み嫌われていたように思われるが、時代は変わったんだなぁと。
まぁゴシックやメロディックデスメタルバンドが台頭してからすでにメタル事情にはめっきり疎くなった私の知るところではないが。

こりゃ今夜は楽しくなりそうだぞ!と一瞬思ったものの、その日私の用意してきたCDはとてもじゃないけど女性ウケするような類のものではないことに気づき、すぐに絶望感でいっぱいになった。



セットリストはこんな感じ。

1.Innocence And Wrath~The Usurper / Celtic Frost
2.エイズルコトナキシロモノ / 人間椅子
3.God Is God / Laibach
4.すべての邪な神々よ! / Morbid Angel
5.Psalm 9 / Trouble
6.Sign Of Fear / Destruction
7.来るべき時期 / Meathook Seed
8.Os Abysmi Vel Daath / Celtic Frost
9.Hey Doctor / Witchcraft
10.Angel Of Death / Angel Witch
11.Mourning Of A New Day / Cathedral


『13日の金曜日』というテーマのイベントなので、当然デスメタル、ブラックメタル中心のDJイベントになるということは予想された。
ならば私はミッド&スローのヘヴィでどんよりした楽曲を中心に流そうではないかということで上記のようなセレクトに相成った。
まぁ私の場合、陰鬱で精神を蝕むような絶望感に溢れたどうしようもなく不健全な楽曲に強く“暗黒”を感じてしまう傾向にあるのでこういった選曲になるのは必然なのであるが。
最近の若い女の子が好むようなメロディックで抒情的なものはまずない。

ただ、私が店入りした頃イベント本編は終盤に差し掛かっていて、あと2人のDJさんを残すのみとなっていたが、この2人というのが偶然なのか、店のマスターが意図したものなのか、両者ドゥーミーな(しかも誰も知らんような)ものばかりを流さはる人たちで店の空気はすでにかなり重たいことになっていた。店入ったときWitchcraftの新譜がいきなり流れてて「え?」ってなったもんな。
その後の私のこのセレクトである。もちろん盛り上がるはずもなく回している本人が一番気が滅入る状態になるという。


まず、1曲目はベタながらCeltic Frost。
このような邪悪なイベントにおいて、デスメタル、ブラックメタル、ゴシックメタルなど、全ての暗黒メタルの始祖とされるセルティックを無視することはできない。
暗黒メタルDJの一発目として、邪悪で荘厳なるこのイントロダクションほど相応しいものはないのではないか?




ドゥームメタルといえば、オドロオドロしくヘヴィに展開するこのシカゴ出身のTroubleの1stからのナンバーは今回私の一押しだったが、これ後で調べたらキリスト教賛歌ナンバーらしく(要はストライパー流してるようなもん)このイベントの趣旨にかなり反していたことに気がつきこりゃ失敗したなと。まぁそんなこと誰も気にしてないとは思うが。

PSALM 9



まぁこういうテーマのDJイベントだから、デス、ブラック、ゴシック、ドゥーム系の音源を流しておけば無難なのであるが、やはり私としては一応得意分野であるスラッシュナンバーも流したいところ。
まだデスメタルやブラックメタルなどというスタイルが確立されていなかった時代、音の陰惨さや歌詞の背徳性でブラックメタルと位置付けされていたのが、このDestruction。
不穏なシンセ音で始まり、あやかしのアコースティックが奏でられ、ヘンチクリンな編拍子(つか三拍子か)が展開される中、シュミーアが病的ともいえるヒステリックな歌唱で歌い上げるDestructionの中でもかなり異色でアーティスティックなこの名曲をチョイス。

Sign Of Fear



30分枠で考えていたので予定のプログラムは6曲目までだったが、次回す予定の人が見事に酔いつぶれて伏せっており(私のドゥーミーな選曲がそうさせたのかもしれない)、しかも他にフリーDJに参加しようというおこがましい者がその場にいなかったため、彼が目覚めるまでそのままつなぎで回すことに。
ただ、予備で持ってきていたCDもほぼ若者ウケせぬようなドゥーミーなものばかりで、Meathook Seedなどの変わり種も流してみたものの反応は皆無で、店側にも申し訳なさでいっぱいで気が重くなる一方であった。
セルティックの曲をもう一回流すという自分の流儀から外れるようなことをしたりとほんとネタがなかった。


挙句の果てにはNWBHMのAngel Witchをセレクト。
これかなりサタニックな曲調でこのイベントの趣旨に合ってる気がするんですがねぇ。
最近の若い人はこんなナヨっとしたケヴィンの歌声はおキライ?

Angel Of Death



Cathedralのあまりにもスローで陰鬱な“Mourning Of A New Day ”を〆で流してますますドゥーミーな心情になっているところに、その日最後に入店してきた客が「あ、このカテドラルのCDジャケットは見たことないですねぇ」と食いついてきたではないか!
これは天からの、いや、地獄からの救世主か!?

そしてその後、彼とはCathedralとTroubleはどっちがヘヴィか、そしてMorbid Angel、人間椅子の話題(彼は喫茶ナザレス参加経験者らしい)からのクトゥルー神話のディープな語らいで大いに盛り上がり、私にとってこの部分がこのイーヴルな夜のハイライトであり、一番の収穫となった。


今日の1曲:『決戦は金曜日』/ Dreams Come True
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路地裏の散歩者 ~乱歩先生を訪ねて~ 夜編

2016年05月08日 | 名所ガイド、巡礼記
名張行く前に、以前に江戸川乱歩生誕地碑を巡礼された方のブログをいくつか参照したのであるが、みなさんだいたい私が前記事で載せたような(写真ポイントもだいたい一緒)昼間の名張をレポ―トしてるものばかりで、夜間レポというのは見かけなかった。
まぁみなさん私みたいにヒマやないからさっさと帰らはるんやろうけど。
そこで昼間、怪人二十面相のパネルの付いた街灯を撮影している時にふと思ったのである。
これは夜暗くなってからだと、また違った名張の貌が浮かび上がってくるのではないかと。

私は夜の名張を徘徊するべく、とりあえず足がヤバいことなっていたので町の中心部にあるじいさんばあさんしかいてないショッピングセンターでメシを食いながら足の回復、そして夜の帳が下りるのを待った。


やはり夜の名張は昼間とは一味違っていた。
古い旧家が多く並ぶ(中には廃屋同然のボロ屋敷も所々に点在していた)忘れ去られ時の止まったこの夜の名張は、乱歩先生が小説の中で描いた大正~昭和初期にかけての猟奇的な犯罪が起こることを予兆させる、あのあやかしの舞台そのものの雰囲気をとどめており、そのただなかをひとり徘徊する気分というのは、あたかも自分が乱歩先生の小説の中の妖しげな犯罪事件に自ら巻き込まれようとする好奇心旺盛な主人公になったかのようでございました。
いや~しかし、これはちょっとしたトワイライト体験でしたぜ。


昭和初期ぐらいに開業して、現在はすでに廃業したと思しきこの古色蒼然たる写真舘は、中でも実にいい雰囲気を醸し出していた。
ここはひょっとして今でも怪人二十面相の秘密のアジトなのではあるまいかとさえ思えてくる。



ここを通る時は、何度も何度も屋根の上を確認しないではいられなかった。
だってこの長屋伝いに今にも屋根の上を飛び跳ねる子供の体に大人の顔をくっつけた醜怪な不具者の姿が現れるのではないかと、気が気でなかったからだ。


実際この人気のない通りの向こうから小っさいオッサンが歩いてくる影が現れた時は、「出たーーっ!!一寸法師だぁーっ!」って、全身戦慄が走ったもんな。


名張地区では建物と建物の間の細い路地空間を『ひやわい』と呼ぶ。
そのひやわいを通って、まさに民家の路地裏に『江戸川乱歩生誕地碑』がひっそりと設けられているのである。



突如壁伝いに猫が現れたので、飛び上がらんばかりにビックリした。
この画像のブレはその動揺のためだ。
いけない。私は名張の夜の人外境のせいで、一種異様な妄想に捕われているのだ。
そして路地に怪しい人影が!!って、俺やんけ。ビビらせんな。




夜の江戸川乱歩生誕地碑広場。
ここには夜になると、地獄の道化師、夜光人間、青銅の魔人、電人M、黄金仮面、人間豹、鉄人Q、盲獣などの類がどこからともなくゾロゾロと集まってくるなんて奇譚がありそうではないか。



とまぁ、このように、同じ巡礼地を昼と夜と二回に分けてわざわざレポートするなんてのは、おそらく私が初めてであろう。
せっかく写真撮ったんで載せたかったってのもある。

でも、これからこの地を訪れようと思う乱歩ファンの方には、是非夜の名張を体感することをオススメしておきます。
さすれば、天井の節穴から毒を垂らして殺人に及んだ屋根裏の散歩者、内壁全面が鏡で覆われた球体の中に入って発狂した男、椅子の中に身を投じて奥さまのふくよかな体の感触を密かに味わっていた変態椅子職人などの犯罪的な心情心理がふつふつと感じとれるやもしれません。


それと、『二銭銅貨煎餅』。
この乱歩の処女作品名を拝借したシャレの利いたゴジョウダンのような煎餅は、山本松寿堂という由緒正しき和菓子屋で売られております。
(煎餅には小さな紙片が添えられていますが、「南無阿弥陀仏」の謎めいた暗号文は記されておりませんのであしからず。)


前ログ(『路地裏の散歩者』昼編)に掲載した名張の中心部の写真で、鳥居門の左横の紫ののれんがかかっている店が山本松寿堂さんです。


今日の1曲:『夜歩く』/ 筋肉少女帯
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路地裏の散歩者 ~乱歩先生を訪ねて~ 昼編

2016年05月06日 | 名所ガイド、巡礼記
赤目四十八滝巡りで大理石のようになり果てた重い足を引きずって次に向かった先は、ひとつ先の名張駅。
どうしてこのような辺鄙な処に向かったのかと言うと、それは江戸川乱歩先生に会いに行ったからにほかならない。
ハハ、滝巡りなどはついでのことだったのだよ。

そう、ここ三重県名張市は、かの猟奇探偵作家の江戸川乱歩先生がお生まれになった地。
つまり、この地に乱歩先生の白昼夢のような猟奇のルーツが隠されているってわけだ。
愛読者ならここを訪れないでどおする!

と、豪語してみたものの、私も実は最初はそれほど乗り気じゃなかった。
この地を探索した人(これがことごとくそれほど乱歩ファンでない人)のブログなどを参照に、名張の乱歩スポットをリサーチしていたのだが、あまりにも情報が乏しいのだ。
というか、何もなさそうな雰囲気なのだ。
まぁゆうたら生まれた地というだけで、乱歩先生自身ここで過ごした思い出は全然記憶に残ってなくて、先生にとっては「見知らぬふるさと」だったわけであります。
だから名張まで行ってあまりにもショボかったらあれなんで、今回むりくり滝巡りツアーを組み込んだわけである。


名張駅を降りて改札口を出ると、駅のすぐ真ん前に乱歩先生はたたずんでいた。



しかし、この名張という町はあまりといえば活気がない。
平日の3時過ぎってのもあったのだろうが、人がいなさすぎる。
駅前に一応乱歩像を立ててはいるが、その高名なる乱歩先生の名を借りて市民総出で町おこしをしようなどという野心は微塵も感じられなかった。

とにかく『江戸川乱歩生誕地碑』という記念碑がこの町のどこかに立っていると言うので、さっそく探索することに。
いちおうマップ画像を探偵手帳に保存してきたが、道が思いのほか入り組んでてわかりずらい。
なのでBDバッヂを来た道ごとに大量にばら撒かなくてはならないことになりそうだった。


どうやらここが街の中心部のようであるが、車はけっこう走ってるが人が全然歩いていない。



人が住んでいる気配すらない。



アーケード商店街の店の看板もボロボロで、その店名をとどめていないのがほとんど。
その荒びっぷりは、国から見捨てられた町といったところである。
ほんと人っ子ひとり歩いてない。もうほとんどゴーストタウン。


なんという心細さ・・・・・
私はまさに、見知らぬ惑星にひとり降り立ったストレンジャーの心情になっていた。
それにしても、さっきの余計な滝巡りで、あ、足が・・・足が・・・・


こ、この土蔵は・・・
乱歩先生が蝋燭灯して執筆作業にいそしんでいたという、あの土蔵でねべが?!
(乱歩先生が名張に住んでたのは生まれてから2年間だけです)



街灯二十面相を発見!
いくらやる気が感じられないとはいえ、こういうの見るとテンション上がってくるね。



案内看板を発見!もうすぐだ!
せやけど、どうも二十面相とアルセーヌ・ルパンをゴッチャにしてる節があるんよね。
まぁ一緒みたいなもんやけど。



第二の看板!もうちょいか?しっかしこれほんまわかりにくいわ。
最初見逃してだいぶ行きすぎてもてさっきの鳥居のとこ戻ってもーてたからな。



ついにきた!
ワー、なーんもあらへん広い空き地。



ほんまに民家の密集する路地裏にひっそりとある、なんや忘れ去られた広場って感じ。
たぶん本日(いや、今月?)の来訪者は私一人であろう。

まぁでも後ろの古家(多分誰も住んでへん)がいい味出してるじゃねぇか。



さて、どうしたものか。
とりあえず人間椅子Tに着替えて(誰に見られてる気配もなかったので)自撮りなどしてみた。



裏へまわると・・・・
オオ!乱歩先生のあのあまりにも有名な文言が!!



一応当時除幕式に参加したらしい乱歩先生と奥さんの写真も展示してあった。



広場のベンチに腰をおろししばらく足を休めながら、「ああ、俺はGWのさなか、何もないとわかっていて、なんでこんな広場にひとりで来たのだろう?まだ乱歩好き、あるいは人間椅子好きの彼女でもいれば同行してもらって乱歩デートなんて洒落たことができたのかもしれない。この広場で芋虫ゴ~ロゴロ遊びや人間椅子ゴッコなどという変態遊戯に興じれたかもしれない。
この数日間、中華食いに行ったり、シェフが狩猟した鹿の肉のパスタ食いに行ったり、島ヶ原の温泉行ったり、伊賀の忍者見たり、サンショウウオ見たり、滝巡りしたりしたけど、なにひとつとして心より面白いことはなかった。

うつし世はゆめ、よるの夢こそまことちゃん。

乱歩先生、私をあなたの想像した幻夢郷、パノラマ島に連れて行って下さい!」

などと、ひとり心の中でボヤきながら虚無感に耽った後、相変わらず人気のない町中の路地を重い足を引きずりながらトボトボ引き返していったのでした。




今日の1曲:『芋虫』/ 人間椅子
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滝川クリステル

2016年05月05日 | 名所ガイド、巡礼記
GW突入寸前にいきなり7連休を与えられ「ヤハァーーーっ!!」となったものの、これといって行きたいところもやりたいことも思い浮かばず、ま、とりあえず東京でも行くかと思い立ったものの、格安夜行バスはほぼ席が埋まっており、高い交通費払って東京行くにはあまりにも動機が乏しすぎた。

で、結局東京行きは断念し、意外と近場の名張(大阪出るのとたいして変わらん)の赤目四十八滝巡りでもしようかと思い立ったわけだが。

10時過ぎくらいに赤目口駅に到着。
ほんまなーーんもない見事な田舎。バスのりばには何組かのカップルや一匹青年、サラリーマン風の中年、外人など数人がいた。
まぁ全員滝巡り参加者の面々だ。だってそれしかない。




バスで約10分で赤目四十八滝門前に到着。
上へあがっていくと、まずタッキー&さんちゃんが我々を迎えてくれた。



日本サンショウウオセンター入口が入山口となっており、入山料をちゃっかり払わされた。



まぁでも世にも珍しいオオサンショウウオなどを間近で見れたのでよしとした。
いや~のそろのそりとした太古からのこいつら見てるとほんと心癒されますよ。
もう滝巡りなんかしなくてもいいんじゃねぇかと。Vektorのメンバーにも教えてやりたい。



そうも言ってられず、センターを出てとにかく山道をいく。
ほぼ石畳の山道は、私のEDWINの安物のカジュアルシューズには決してやさしくはなかった。



タキーーーっ!いや、キターーーっ!
赤目五瀑とされる最初のひとつ不動滝。



赤目牛を拝んで旅の安全と金運と女運を祈る。
この牛と赤目滝に関しての言い伝えみたいなんが書いてあったが、時間なかったんで読まずに先へと急ぐ。



赤目五瀑の次のポイント千手滝地点で早くも昼食に。にぎりめしをほおばる。
さっきバスに同乗してたお客さんらが次々に追い越して先へ先へと進んでいく。
いや、朝あんま食べてきてなかったんで。



次なる赤目五瀑ポイントは布曳滝。一筋の白い布のような滝だ。
さっき追い越された客どもをここで一気に抜き去りズンズン先へ進んでいった。
俺を見くびるんじゃねぇ!



これを登るのかよ!マジか!?まぁ滝は上から下に落ちるものだからね。



これも滝なのか?雨降滝ですって。
ここでなら修行も可能か。というより拷問か。北斗の拳でハーン兄弟が受けてた水滴のやつ。



こういう苔むした岩に密集して咲いている花に心癒されるのも一興かと。



スタンプラリーはやらなかった。
もれなくではなく抽選30名様プレゼントだったので。
入山料とって急斜面歩かされて、せめてさんちゃんクリアファイルぐらいくれてもええやろ。



滝川クリステル(コメントするの面倒くさくなってきてる)。



赤目五瀑最終ポイント琵琶滝。
ここでみんなだいたい足をとめて弁当食ったりしてた。
確かにここは秘境めいていて一番清涼感があって居心地がよかった。



14時台のバス到着までまだ余裕があったのでその先の四十八最終滝も一応拝みにいったが、見どころは琵琶滝までだった。
帰り道は下り坂多めなのに行きしにとばし過ぎたのがいけなかった。もう足が重くて重くて・・・さっき追い越した客にもどんどん抜かされていって。
中学の時の体育祭の400メートル走で最初に飛ばしすぎて後半えらい目にあったあの時の教訓を全く活かせなかったのを心から情けなく思った。

まぁでも、ロジャー・ディーンのジャケ絵を彷彿とさせる幻想的な滝のフォーリン、そして私の身体の中の邪悪なもの、不浄なる魂を洗い流すかのような、この絶大なる清涼感・・・・・・・・

ほとんど登山したみたいなもんで足パンパンなって精魂尽き果て、ほんま思いつきで滝巡りなんかするもんやおまへんわ。


お土産にサンショウウオのホルマリン漬け。かーちゃんよろこぶぞ!



今日の1曲:『山椒魚』 / 人間椅子
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猟奇パーティー

2016年05月04日 | カテゴライズできない
夜がひしめき犯罪が近づいている。
こういう晩は、体が熱く火照って眠れそうもない。

先月の話になるが、最近馴染みになった西天満の乱歩バー(少なくとも私にとってはそうだ)に寄った時、マスターから来週店の6周年イベントをやるので是非と招待された。
通常営業ではあるが、いつもとは違ったテイストでおもてなしをするのでということだったが、まるで想像がつかなかった。
言われたのは、三輪明宏主演の映画『黒蜥蜴』をコンセプトに盛り上がるというので、この作品はDVD化はされていないがYOU TUBEにあがっているので是非観といてくれとのことだった。
https://www.youtube.com/watch?v=pyJgu3ClTYw


映画のチラシはうちにあった。乱歩企画で再上映されたときのやつだ。


『黒蜥蜴』
1968年作。三輪明宏がまだ丸山明宏と名乗っていた頃の作品で、監督は深作欣二。
三島由紀夫が友情出演しているが、彼はこの原作を戯曲化した張本人。
もちろん江戸川乱歩の『黒蜥蜴』を映画化したもので、私も浪人か大学生かの若い頃に全集で読んでいるハズだが細かい内容は忘れてしまっていた。
女賊“黒蜥蜴”と探偵明智小五郎の愛憎もつれる二大ナルシスト対決といったところで、今回のイベントを機に読み返そうと思ってさわりだけ読んでみたが、今となってはちょっとバカバカしくてしんどい内容だ。
ただ、映画は今回初めて鑑賞してみて、やはり三島氏の戯曲のエッセンスがフンダンに盛り込まれており、この演出がかったセリフ回しのナルシスト感が舞台劇を見てるようで(てゆーか、もともと舞台化してたものを後で映画化したみたいね)、『ピストルオペラ』同様なかなかクセになってくる。
三輪明宏のセリフ回しも、ニューハーフならではの彼女独特のナルシス美学を伴って、とてつもない世界観を表現している。
この作品は今でも舞台劇として、色んな劇団や女優さんが題材に取り上げて演じていて、やっぱそっち方面でなにか特別な魅力があるんでしょうな。
マスターお気に入りの一本であり、彼曰く、数ある乱歩映画の中でもかなり原作に忠実であるとこのこと。




この犯罪的で怪しげな周年祭には、今回たまたま大阪で別用で会っていたサムソンも同行した。
ちなみに彼は最近夢野久作の『ドグラ・マグラ』は読破したらしいが意外にも乱歩ヴァージン。
比較的健全な精神の持ち主なのでほんまに連れてってええんやろかと。


店の階段を上がっていくと、赤い壁には三島由紀夫、三輪明宏のピンナップ写真に紛れて、マスターが黒蜥蜴に扮している写真も貼り付けられていた。
やっぱこの人はナルだと思う。



こういう夜はいつもと違うようだ。
ドアを開けると普段より客が多く、店内はなんか猥雑なピンク色の照明に染まっていた。
男装をしたボーイッシュな女助手がひとり。マスター曰く私の“奴隷”(三日間限定)とのこと。
BGMは三輪明宏のベストヒット集。
秘密クラブさながらで、やはり変な気分になってくる。




いつもは12時過ぎてから店に寄っているので、他の常連客は皆目知らなかったが、カウンターは女性客多めで占められていてワイワイガヤガヤ盛り上がっていた。
黒いドレスの女装したマスターが女言葉で我々を迎えてくれた(この人一応新婚です)。

「あら、あましんさんのお連れ?そちらの方、こんな夜はお嫌い?」

乱歩作品を全く読んだことがなく、ましてや『黒蜥蜴』を見てないツレはどう反応していいかわからず若干困惑してる様子だった。
私も普段とは違う、黒蜥蜴に完全に成りきっているマスターにちょいひきぎみだった。
そしてその演出はなんだかオカマバーにいるような感覚に近く、あまり心地のいいものとは言えなかった。
それとも、美しいものを見ても素直に酔えない私の持って生まれた批評家ぶった感覚がそうさせるのであろうか?
ただ「ちゃんと“エジプトの星”もあるのよ」って、宝石のレプリカを取り出したときは吹き出してしまった。
まぁ今朝鑑賞したばかりやったからな。
BOX席をあてがわれ、相席になった向かいに座っていたカップルの女性にも「あら、あなた弾みのいい均整のとれた美しい体をしているわね。あとで私のお人形にしたいくらい」とカラんでいた。

この演出がここにいるどれだけの人に伝わっているのかは甚だ疑問だった。
相席の私より10ほど若そうな男性の客も聞くと乱歩作品は読んだことがないらしい。
でもそれをやりきっちゃうマスターの心臓の強さに感心してしまった。
まぁこの人根っからのエンターテイナーでこういうのがやりたくて仕方がないのだろう。


指紋よりも確かなもの。このやさしい二の腕の黒蜥蜴(どう見てもオッサンの腕だが)。
この6周年記念の特製黒蜥蜴タトゥーシールは来客者全員に配布された。



私はと言えば・・・
このイベントでなら相応しいだろうと、人間椅子のこの“屋根裏部屋の散歩者”ツアーTを初に着れたことを嬉しく思っていた。



ただ、今回私はひとつ大きな失敗をやらかしてしまった。
最初大阪でサムソンとあった時は実は人間椅子のTシャツを着てはおらず(あんなTシャツで大阪の繁華街ウロウロできまっかいな)、電気グルーヴのカジュアルなデザインのTシャツを着ていたのだ。
で、バーの周年祭に行く寸前にどこかの便所で椅子Tに着替えるつもりが、予定外にもサムソンが店に行くといったので来る途中いろいろ話し込んでて着替えることをすっかり忘れてしまっていたのだ。
店に入ってBOX席に座ったとたんそのことに気が付き、今ならまだ間に合うとすぐに立ち上がってトイレに駆け込み椅子Tに着替えた次第である。
で、戻って再びBOX席に腰を下ろすと、向かいに座っていた男性客が「あれ?さっき電気グルーヴのTシャツ着てませんでした?」と不思議そうに話しかけてきたではないか!
この妖しい薄暗い照明の中、あんな一瞬の間に私の着ていたTシャツを記憶にとどめているとは!!この男、タダものではないな!!
ひょっとして、明智!?

バツの悪いままお茶を濁してよくよく話していたら、実はその男性、かなりの電グル好きだというのがわかった。
だからすぐにTシャツの電グルのロゴが目に入り「うわ、電グル好きの客が来た!」って気づいたのだ。
まぁその後、彼とは電グル話で大いに盛り上がり結果オーライ?


ちなみにこちらは燻製にされた三島由紀夫らしい。
マスターの家にあったGI人形の軍服をひっぺがしてお手製のフンドシを巻いたとか。
ほんとうに細かいところまで演出が凝っている。



0時を過ぎて、サムソンも帰宅し客もだいぶひいてカウンター席に移ってからはぼっちな状態になりがちだったが、隣にいた女性客と筋少や空手バカボンの濃い話ができたのはまぁよかった。
まさか「バカボンと戦慄-Staress&バカボンBlack-」の歌を知ってる人に出会うとは思わなんだ。
とまぁトータル的にはナゴム系列趣味の話で盛り上がったナゴやかな?夜となった。
私としてはオシャレな店を見つけたという感じだったが、やはりちょっと風変わりで一種異様な感覚の持ち主の人間が引き寄せられる店なのかしら?


マジックハンドを手に黒蜥蜴クライマックスのキメのポーズをとり悦に浸るマスター。
やっぱナルだこの人。



決して気持ちのいいものではなかったが、いやいや、なかなかこのバーの店名に相応しい妖艶で犯罪的な周年祭であった。
もっと早く映画『黒蜥蜴』を鑑賞して精観しておれば、三島由紀夫をイメージした裸人形を見て、「おや、不思議不思議!この人形にはウブ毛が生えている!」みたいな気の利いたツッコミをかますこともできたろうにと今更ながら悔んでいる。


さて、来年はどんな犯罪的な周年祭が待ちうけているのか?
今から楽しみである。




今日の1曲:『黒蜥蜴の唄』/ 三輪明宏
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