AMASHINと戦慄

~STARLESS & AMASHIN BLOG~
日々ブログレッシヴに生きる

賞取りスラッシュ

2017年02月18日 | やっぱりメタル!!
上の写真のCDジャケは、1989年にデビューしたアメリカのミネソタ州出身のスラッシュメタルバンドPOWERMADの1stアルバム『ABSOLUTE POWER』である。
見てもらったらわかる通り、スラッシュ史上1、2を争うダサいジャケットの一枚だ。

まぁスラッシュメタルのアルバムジャケットには、他にも数々の粗野で頭の悪そうなジャケットが存在するが、スラッシュってのは、演る側も聴く側も暴力的で下品なジャケほどいい!っていう嗜好があるので、金がないのを逆手にとって安っぽい奇をてらったようなジャケットを起用する傾向が強いのだが、このPOWERMADの謎に満ち溢れたアルバムジャケのダサさ加減は、狙ってできるものじゃないっていうほど群を抜いている。
なんやねん、この浮遊するキューピットちゃんは・・・・

ただその内容は、パワーメタルの流れを汲んだヴォーカルがハイトーンの、演奏もわりとシッカリしている将来性のあるスラッシュメタルを展開していて、スラッシュ好きの間では隠れた名作といわれているが、まぁジャケットがこれなもんだから売れるはずもなく、この一枚を遺してバンドは消滅してしまった。


しかし、日本ではほぼ無名のこのPOWERMADなんであるが、実はデビュー当時はそれなりの脚光を浴びたというか、なかなかの伝説を残したバンドで、まずは下のキャプチャーショットをご覧いただきたい。
とある映画のワンシーンである。



映画作品名は『ワイルド・アット・ハート』。
デヴィッド・リンチ監督が1989年に撮った作品で、ニコラス・ケイジが主役で、その恋人役に『ジュラシック・パーク』で一躍有名になったローラ・ダーンが繰り広げるトチ狂ったラブロマンスロードムービーである。
この映画の冒頭で、ローラ・ダーン演じるルーラが、服役を終えて刑務所から出てきたニコラス・ケイジ演じるセイラーを車で出迎えるシーンで、ルーラが意気揚々と「ケイプ・フィアーに宿をとったわ。
それとね・・・・『ハリケーン』でパワーマッドの演奏があるの!」と、嬉しそうにセイラーに伝えるのである。

パワーマッドとは、もちろんスラッシュメタルバンドのパワーマッドのことである。



デヴィッド・リンチ作品は20代の頃、『ロスト・ハイウェイ』という作品を、30席くらいしかない大阪の場末のボロボロのミニシアターに観にいったことがある。
スクリーンがむちゃくちゃ近くて観づらく、上映中終始ヴヴゥゥゥーーーー・・・というノイズ音が鳴っていて、ほとんど映画に集中できなかった記憶がある。
まぁ映画内容もワケがわからなく、ストーリーはほぼなくて、アート性、トリップ感、狂気みたいなのを最優先に監督がヤクやりながら撮ったとしかいいようのない精神分裂症ぎみのアヴァンギャルドな内容で、友情出演みたいな感じでマリリン・マンソンなんかも出てくるんだが、観終わった後、疲労感がハンパなかったことを記憶している。

ただ、劇中ヤバいシーンのところで、私好みのディストーションリフが刻まれるカッコいい曲が流れた時は「オオっ!」となった。
これが今や大人気のドイツのカルトインダストリアルバンド、ラムシュタインだったのである。

Rammstein - Rammstein



同じ頃に観たデヴィッド・リンチ監督のなんかの映画でも、劇中にどっかのスラッシュメタルバンドが暗闇でひたすら頭を振ってリフを刻んでるシーンがあったように記憶してるが、この監督には以前よりスラッシュ好きの傾向があると見てとっていた。

この『ワイルド・アット・ハート』でもメジャーデビューしたての無名新人スラッシュメタルバンドを起用して、ディスコみたいなところで演奏させるという発想、やっぱりこの監督、ちょっと普通ではない。


モーテルで数年振りに情事を楽しんだ後、セイラーとルーラは町のクラブに出かける。

ステージにはパワーマッド本人らが登場。スラッシングマッドな激しい演奏を繰り広げている。



パワーマッドの名曲「Slaughterhouse」に合わせて、踊り狂うバカップル。



そして、完全に2人だけの世界に入る。なんでやねん!



劇中でパワーマッドとニコラス・ケイジとの絡みもちゃんとある。
他の客とひと悶着あって、セイラーがパワーマッドの演奏をストップさせるのだ。
俺の女にちょっかい出すんじゃねぇみたいな揉め事があって、この白けた場をとりなそうとセイラーがしゃしゃり出る場面である。


一介のスラッシュメタルバンドに向かってこいつ何言うてんのぉ?



挙句の果てにパワーマッドに伴奏をやらせ、エルビスを熱唱。



そして、再び2人だけの世界に浸るバカップル。アホですわ。



従順にラブソングのバックコーラスを務めるパワーマッドのメンバーが健気。
この時ヴォーカルのジョエルがピアノ弾けることが判明。



ちなみにこの映画『ワイルド・アット・ハート』は、1990年のカンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞している。


最後に、本作で一番キレた役を演じてた、タイツ越しでも誰だかわかるウィリアム・デフォーのドアップ顔をどうぞ!






今日の1曲:『Slaughterhouse』/ POWERMAD
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星ひとつない、聖なる闇

2017年02月06日 | プログレッシヴ草稿
グレッグの次はウェットンもかよ!!

なんなんだ?
あの世のプログレ界で、腕利きのメンバー集めて壮大なスーパープログレバンドプロジェクトでも推進してるのか?
にしてはベーシストに偏っている気もするが・・・
カールは呼ばなくていいのか?

それにしても、プログレファン、いや、ロックファンにとって、ジョン・ウェットン逝去による喪失感は計り知れないものがあると思う。
なんせこの人、節操がないくらいあらゆるバンドを渡り歩いてきた引っ張りダコミュージシャンだからね。

KING CRIMSON、UK、ASIAはもちろんのこと、FAMILY、BRYAN FERRY、とまぁこのへんまではわかる。
WISHBONE ASHとかURIAH HEEPとかになってくると、この人単なる誘われたら断れないいい人ミュージシャンとしか思えないんよね。

    


だから、プログレ好きならジョン参加の作品はかなりの枚数所持してると思うし、その周辺のブリティッシュロック好きもウェットンのベースはよく耳にしてると思うんだ。
まぁ私なんかは追求しきれてないとはいえ、クリムゾン作品をまぁまぁ蒐集してるから、関わりが多いのは必然になってくる。



私がジョン・ウェットンの音楽に最初に触れたのは、やっぱりエイジア。
姉が2nd『Alpha』のLPを持っていたので。
まぁ80'sポップ真っ盛りの頃だったとはいえ、ウェットンのさわやかポップな楽曲は生意気盛りな小学生の私の感性にはあまり響いてこなかった。
それにこのころはジョン・ウェットンの存在なんてまだ知らないしね。

私がウェットンが関わってる音楽に興味持ち出したのは、やはりキング・クリムゾン在籍時の作品。
高校の時、『宮殿』でクリムゾンにウワァーーッ!!っと目覚めて次に購入したのが『太陽と戦慄』だった。
ただ、ウェットンの抒情的な歌が数曲入ってるとはいえ、このあまりにアヴァンギャルドで破壊的な内容の作品を聴いて、私はこの歌とベースを担当してるのが、あの小学生の時聴いたエイジアで歌っている人と同一人物であることにまだ気づかないでいた。
その後、『RED』とUKの『憂国の四士』はたぶん同じ時期に聴いたように思うが、どっちが先だったかは記憶が曖昧。
ただ、UKを聴いて、私はようやくジョン・ウェットンなる人物が、実はプログレ界でかなり重要な人物であるということに気づきはじめるのである。


ジョン・ウェットンは、優れたベースプレイヤーとしての側面、甘い歌声とメロディーメイカーとしての側面と、評価する所は人それぞれだと思う。
まぁこんなこと言ったらまたいつかの記事へのコメントみたいに「耳の腐った変人め!!」などとプチ炎上するかもしれないが、UKの時点で既に思ってたんだが、ウェットンはベース弾くついでにヴォーカルを無難にこなす適任者って感じで、時折歌い方によっては「ダサいな」と思う瞬間も否めない。
まぁUKは超がつくスーパーバンドの形態で、複雑な楽曲の中でもウェットンのメロディーメイカーとしての役割がバランス良く機能していたし、「瞑想療法」などで聴かせる流麗なベースワークも耳を惹くものがある。
イエス、ELP、クリムゾンのメンバーが大集結したエイジアもスーパーバンドの様相を呈してはいるが、UKとは随分事情が違っていてウェットンのポップシンガーとしての側面が前面に出てしまって、どうも私の感性にはピンとくるものがない。
だから、ソロ作品など、ウェットン色の強そうなアルバムには全くといっていいほど手をつけてこなかった。

それでも一度くらいはエイジアのライブに行くべきだったと思う。
メンバーが在籍してたバンドの持ち曲をけっこう披露してくれてたみたいだし、ウェットンはもちろんクリムゾン、UKの名曲の数々を披露したとか。
一度でいいからウェットンの歌う「Starless」を生で聴きたかった・・・・・

思えば5年前、あの3人が奇跡的に再集結したトリオUK大阪公演が、ウェットンの生の姿を見た最初で最後のライブとなってしまった。
まぁ、テリーがあのドラムセットを持ち込んだせいで、ウェットンの演奏がイマイチ印象に残ってないのだが、あの甘い歌声がほとんど衰えてなかったことは覚えている。
とにかくあのライブを見れたことはほんとラッキーだった。



個人的には、やはりウェットンを一番魅力的に感じれるのは、クリムゾンにいた時。
まぁこのバンドでやっていくには、そうとうの精神力が必要になってくるので、誰もが“漢”になるんだよね。
エイジアでは考えられないくらいベースがガリガリしててうねっているし、「太陽と戦慄」ん時、ベースにワウペダルをブチ込んだのはウェットンが最初だっていうヤンチャ伝説もあるし。
そして、なによりも70'sクリムゾンの終焉を想わせる「Starless」の、あの沈鬱で深遠なる哀愁の歌メロを思いついたウェットンのメロディーメイカーとしての資質は、やはり天才的と言いうほかないのである。


もう涙なくして聴けないよね。



今日の1曲:『Starless』/ King Crimson
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