AMASHINと戦慄

~STARLESS & AMASHIN BLOG~
日々ブログレッシヴに生きる

THE Young Person's Guide to 人間椅子

2013年03月28日 | やっぱりメタル!!
なんと、人間椅子のOzzfest参加が決定した!
しかも5月12日、BLACK SABBATHが出演するのと同日だ。
まさか海外企画のフェス(?)の大ステージに、しかもサバスと同じ舞台に人間椅子が立つ日がこようとは・・・・
いや、考えれば、日本のバンドで人間椅子ほどこのフェスの舞台にふさわしいバンドもいないのではないか!

正直この度のOzzfest Japanのラインナップは、悲劇的にトンチンカンであると言わざるをえない。無論、V系目当ての女子や、ホルモンとか、マン・ウィズ・ナントカ目当ての若いキッズには、サバスが大トリを務めるメタルフェスのなんたるかを説明したところで鬱陶しがられるのがオチだろう。
そこへ、今回人間椅子の参加が決まったことは、このフェスにとって大いに救いとなったのではないだろうか?

思えば、人間椅子は実に幸薄きバンドであった。唯一無二の実力を誇っているバンドでありながら、日本のメタル専門雑誌B!誌をはじめ、各音楽雑誌に長年シカトされ続け、ラウドパークにも呼ばれたことがない。
従来のジャパメタバンドとは明らかに性質の違うスタイルで、ブラック・サバスをはじめ、レッド・ツェッペリン、キング・クリムゾンなど、70年代ブリティッシュハードロックの精神を受け継ぎながらも、それをあえて土着民的な日本語歌詞で表現してしまう前人未踏のこの奇想天外なオリジナルセンス!
まぁ当時の偏狭なメタル論者は、その外見、そしていか天出身というだけで“色モノ”のレッテルを貼り、理解しようとも思わなかったのだろう。この長年に渡るマスコミの罪は大きい。いや、彼らはハイトーンやグロウルを使わない人間椅子の独特のヴォーカリゼーションの奥ゆかしさが理解できなかったのかもしれない。
確かに、人間椅子の音楽性は知的で難解な要素が多い。保守的で型にハマったスタイルが好きな彼らには、センス・オブ・ユーモアというものを解す感性に欠けていたのだと。

しかし、人間椅子のライブ会場での客層を見ていると、他の古株のバンドと比べて老若男女、実にファン層が幅広いのだ。なので、ハードコアもアイドルもクラブミュージックも受け入れてしまう最近の若い子の寛容な耳にこそ、人間椅子の音楽は受け入れられるのではないかと。
そして、どう見ても異質の存在感を放つ人間椅子のヴィジュアルにもV系好きの女の子には、十二分に刺激的かもしれない。

そこで、デビュー当時からファンを務めるこのオッサンの私が、5月のOzzfestに参加される予定の、まだ人間椅子を知らないっていうヤングな紳士淑女のために(あと4月のARABAKI ROCK FEST参加の方にも)、軽くその人間椅子の歩み及び魅力を紹介しようかと。
まぁ当ブログで散々人間椅子のことは書いてきているので、重複する部分はご了承願いたい。


まず、人間椅子が青森県出身の同級生だった和嶋慎治(G,Vo)と鈴木研一(B,Vo)のふたりが長年支え続けてきたバンドであるということ。
そして、バンドブーム真っ盛りだった90年代初頭に「いかすバンド天国(いか天)」というバンド勝ち抜きバトル番組(関西ではやってなかった)に出演したのがキッカケで世に降臨したバンドであったということである。(他には、Blanky Jet City、BEGINなどもいか天出身)

テレビ初登場の貴重映像。ほとんど色モノ扱いされているフシもあるが、審査員の中にはその演奏力や、コンセプトの凄さを正当に評価している者もいて、いろんな意味でお茶の間に衝撃を与えていたと予想される。

人間椅子イカ天初登場シーン『陰獣』



1990年メルダックよりアルバム『人間失格』で正式デビューを果たす。この頃の笑っていいとものテレフォンショッキングでCharがゲストで出演していた時、タモリが「最近いいバンドとかいる?」という質問に、Charが「人間椅子はいいね」と発言して、タモリがリアクションに困っているところを、私はテレビで偶然目撃している。

翌年には2nd『桜の森の満開の下』が発売。その中から『夜叉ヶ池』というシングルCDが発売される。
この曲のPVを見た当時はほんと衝撃だった!
和の耽美性とメタルとが見事に掛け合わさった楽曲のクオリティの高さもさることながら、さらにこれほど妖艶で官能的なアート性溢れる映像を制作しちまうとは!まぁバブル期だったこともあったのだろうが、このPVの作り込みようを見るにつけ、いかに周りのスタッフが人間椅子に惚れ込み本気だったってことが窺い知れるというものである(今の徳間の扱いとはえらい違いだ)。
もうこの時点で人間椅子は、日本ハードロックバンドとしては、前人未到のオリジナリティ溢れる世界観を確立していたといえる。

「夜叉ヶ池」 R-15指定。よい子はみちゃいけません!
(人間椅子初映像作品『遺言状放送』より)



バンドブームが過ぎ去り、初代ドラマー上館徳芳氏も脱退。レコード会社からもドロップアウトされてしまい、一旦インディーズに身を落としてからも、人間椅子は勢力的にライブをこなし、コンスタントに秀逸作を作り続ける。インディーズレーベルから発売された5th『踊る一寸法師』などは秀逸曲ぞろいで、ライブでもいまだここから演奏される曲は多い。

地道な活動を続けていた成果もあってか、各分野にも支持者が多く、人間椅子の熱烈なファンであった漫画家の沙村広明氏に、講談社『アフタヌーン』で連載されていた人気マンガ『無限の住人』のイメージアルバムの制作を依頼されたりもしている。



そして人間椅子には、ひそかに海外からの支持者も少なくない。
まず元OPETHのキーボーディスト、ペル・ヴィベリは熱烈な人間椅子ファンらしく、全作品所持しているそうだ。
あと、元CARCASS、ARCH ENEMYのマイケル・アモットがB!誌に投稿しているコラムのコーナーで、人間椅子の12thアルバム『三悪道中膝栗毛』を大絶賛していたとかいないとか。

この時点で、現在の3人のラインナップが固まる。



そして、デビューから23年経った今でも、驚異的なパワーとクオリティを保持し続けているのが人間椅子の凄いところだ。和嶋慎冶氏などは、そのギタープレイにますます磨きがかかっている。
2011年に発売された人間椅子初のライブアルバム『疾風怒濤~人間椅子ライブ!ライブ!』でも、その衰えを知らぬ強靭なプレイが確認できる。

「深淵」( DVD『疾風怒濤~人間椅子ライブ!ライブ!』より)



人間椅子に関しては、後藤マスヒロ(ex頭脳警察、GERALD)という凄腕ドラマーが在籍していた頃のプログレ中期など、語りたいことは山ほどあるが、イオンにタダ水汲みにもいかんとあかんので、今回はここで筆を置くことにする。あとは各自YOU TUBE視聴してみたり、アルバム買ったりして下さい。
まぁ、ツィッターでもけっこう話題騒然となっとるから、こんな誇大宣伝しなくてもいいのかもな。

今日の1曲:『黄金の夜明け』/ 人間椅子
コメント (4)
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涅槃エレクトロ

2013年03月25日 | ♪音楽総合♪
にしても、FAITHLESSって、どうしてこうも日本では人気がなかったのだろうか?
あまりにもダンス・ミュージックすぎるが故か?まぁ多少なりのロック成分も混じってはいるんだけど、一本筋の通ったちょっと古典的なエレクトロ感が、日本人の感性にはピンとこなかったのかもしれない。

本作は、とうとう日本盤が発売されなかったFAITHLESSの2010年作の6th『THE DANCE』(全英チャートでは第2位)。
個人的には、コール&レスポンスのしつこい♯2や、レゲエ節全開の♯3はいらん気もするが、全体的には中毒性の高い電子音フレーズがこだまする躍動感溢れる、まさにタイトルが『THE DANCE』と銘打っている通り、踊り出さずにはおれないダンサブルな作品に仕上がっている。
敬虔な仏教信者であるマキシ・ジャズの全てを悟りきったかのようなクールなMCに、DJシスター・ブリスの紡ぎ出す女性らしい抱擁力の備わったサウンドスケープ。
特にオープニングを飾る“Not Going Home”、中盤の“Tweak Your Nipple”、そして本編ラストの“Sun To Me”でのドライヴ感&トランス感は極楽浄土もの。
ゲストながら、FAITHLESSのアルバムではほぼレギュラー的存在のロロの妹ダイドの透明感溢れる歌声がループする“Feelin Good”もフィール・グッド!
Massive Attackを彷彿とさせる東洋的なボートラ“Scandalous”も秀逸。


PVがまたカッコいいんだわ。なんだか大阪モード学園のアニメーション科の生徒が作ったような映像だが、アートフルかつ幻想的でFAITHLESSのダンサブルな音楽とサイケデリックにフィットしている。
Tweak Your Nipple


なお、このアニメーションPVはシリーズもので、“Not Going Home”、“Sun To Me”のPVと直結しており、Daft Punkの『インターステラ 5555』など足元にもおよばないほどのアート性があり、エロティックかつ涅槃図的な幻想世界が展開している。

みんなも、ジャリの聴くようなブレイクン・ビーツや邪念の多いR&Bなんか聴いてないで、お経のような洗練されたFAITHLESSの音楽を聴いて、日頃の煩悩を取り払おう。



今日の1曲:『Not Going Home』/ FAITHLESS
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モット演ッテクダサイ

2013年03月16日 | コンサート
やっぱ私はJOURNEYよりこっちの方が性にあってる。

先週の水曜日は、悪天候の中『THE CRIMSON PROJECT』という、元クリムゾンのメンバー+αがクリムゾンの過去の名曲群をやりたくるという、とっても素敵なイベントを見に行ってきました。
ロバート・フリップ翁、ビル・ブラッフォードなどの肝心要のメンバーが不在ってのはどやろか?とも思ったが、エイドリアン・ブリューのトリッキーなギタープレイを一度生で見てみたかったし、トニー・レヴィンのスティックさばきも見たいっつーことで、即座に行くことを決意。

会場は昨年トリオUKを目撃したなんばHatch。難波の船着き場のそばにあるからなんばHatch。
ここらでは驚異的な音響設備を誇っている。地球防衛隊の秘密基地であるという噂も。


トップバッターは、以前から気になってたトニー・レヴィン、パット・マステロットのプロジェクトSTICK MEN。
いきなりクリムゾンナンバー“Vroom Vroom”で始まり、一気に気分を高揚させてくれたが、時差ボケのためか、どうも演奏がおぼついてない様子。トニーはいきなりシールドすっぽ抜けてるし。
しかし、だんだんと歩調が合ってきて、アンサンブル感も増してきた。
STICK MENのオリジナル曲は今回初めてだったが、そこにはしっかりとクリムゾニズムが継承されており、知らない曲でも、2本のスティックが複雑に絡み合う重低音のポリリズムを体感するうち、体がモラホラと疼いてきやがる。そして今回思ったのが、この私の捻じれた性癖に触れてくるのは音の“ヒズミ”なのだと。“ヒズミ”こそクリムゾンの真骨頂なのだと!(クリムゾン・グローリーぢゃないよ)
ラストは出ました“太陽と戦慄pt2”!(冒頭でパットがシーケンサーで“Talking Drum”の語尾のヴァイオリン音を鳴らす演出もナイスだね!)
人間椅子も以前3人で見事にカヴァーしていたが、この3人による重厚な演奏も素晴らしく、見事なトリオ・クリムゾンを見せつけてくれた。
STICK MENのオリジナル作品も要チェックだな。



STICK MENが終わって、間をおかずにエイドリアン・ブリュー率いるADRIEN BELEW POWER TRIOが登場。まぁステージを2バンド左右半分半分という形で予めセッティングしてあったので、セットチェンジの時間が省けたわけだ。
開演早々ブリューのエフェクターのループが鳴らない&止まらないというトラブルが発生する。本人がニコニコしながら「どうなってんだ!」みたいなセリフをボヤいてたので、これも彼得意のコメディ演出なのかなと思ってたら、スタッフが出てきてマジでヤバいことになっていたのだと気づく。この機材トラブルでかなり時間が押したかと思われる。
しかし、ブリューは相変わらずマイペースなファンキーアメリカン野郎だな。かなり自由奔放なインプロヴィゼイションを展開していて正直疲れた。バックのリズム隊は、そんなブリューに的確についていけるかなりのテクニシャン。ドラムはバカテクだし、ちょっと膨っくらとした女性ベーシストのグルーヴ感もすごかった。

5分休憩を挟んで、両者が合体したクリムゾン・プロジェクトがスタート。ベーシストひとり不要なんじゃないかって気もしたが、ここにダブル・トリオの様相を呈したTHE CRIMSON PROJECTが形成されたのであった。
オープニング“B'Broom”でのドラマー両者の掛け合いはド迫力満点でなかなかの緊張感があり、セトリによると、予定では“Three Of A Perfect Pair”がオープニングだったみたいだが、私としてはこっちで正解。
“RED”のイントロが鳴った時は鳥肌ものだった。そして思ったね。やっぱ“Red”は生で体感するべき重低音の代名詞的ナンバーであると。ほんとこのライブに来てよかった。
ディシプリン・クリムゾン時代の代表曲もほぼ演奏された。“Frame By Frame”の高音のところブリューさんちょっと苦しそうだったなぁ。
で、本編クライマックスはなんといっても“Indiscipline”。この時のドラム両者の掛け合いもまた凄まじかった。シンセパッドでトリッキーなパーカス音を出したり、テルミン技を駆使したりと、昔はブラッフォードの存在がデカすぎてあまり注目してなかったけど、パット・マステロットなかなかやるじゃないか・・・・見直しちまったぜミスターミスター。

セットリスト。


ブリューの機材トラブルのため時間押しで1.“3 Of A Perfect Pair”と2.“Sleepless”はハショられた。どうせハショるならブリューバンドのセトリってのが筋だと思うのだが。
クッソー、トニーのスラップベース見たかったな・・・・



このチラシに書かれてある“「21世紀のスキッツォイド・マン」から「レッド」まで、”という文言は誇大広告もいいところ。まぁこのメンバーだから演らないだろうとは思ってたけど、ちょっと期待してたんだぞ。




今日の1曲:『RED』/ The Crimson Project
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センチメンタル・ジャーニー

2013年03月12日 | コンサート
私が奈良の西大和くんだりのワーナーマイカルシネマまで、衝動的にJOURNEYの日本武道館生中継ライブを見に行くに及んだのは、土曜の朝刊の一面に記載されていた以下の広告を発見してしまったからでした。


といっても小生、JOURNEYはそれほど好きというわけでもなく、せいぜい2、3曲知っている程度。金曜の名古屋公演に行くツレたちを出し抜いてやろうという邪な思いつきと、まぁブログのネタになるのではないかという不純な動機ゆえの決断でした。

WOWOWが、4年ぶりの来日公演が決定したJOURNEYと共同で立ち上げた被災地支援企画らしく、被災地である東北3県(岩手県、宮城県、福島県)の4会場については料金を無料とし、その他14会場で、3月11日の武道館ライブを生中継で放映するというもの。
関西圏では、奈良と滋賀という辺境な場所の2館でしか放映されないという。それでも日本でのJOURNEY人気を考えると、そこそこ座席が埋まるのではないかとにらんでいたのだが、会場入りすると30人程度だった。そりゃそうか。平日だし、こんな近くに駅もないような辺鄙な場所に会社早退してまで見に行こうなんて人はおらんだろう。だいいちJOURNEYファンならライブ会場の方に行って生で見るだろう。

西大和のワーナーはかなり久しぶり。向かいにはなんの改装も施されてない古びたままの2階建てのイオンが聳え立っている。まだ映画をよく見ていた頃、この映画館にもよく足を運んでて、若気のいたりで選んだクソ作品を鑑賞しては、ムシャクシャした気持ちで暗い長い狭い夜道を車で帰ったもんだ。


上映は予定の7:00キッカリに始まったが、最初はニール・ショーンの息子のユニットの前座ライブ模様が映し出された。
そして、ほどなくしてJOURNEYのライブがスタート。いきなり超有名なあの曲のイントロで武道館は歓喜に沸く。しかし、あれやね。スクリーンでは全くその熱気ちゅうもんが直に伝わってくることはなく、なんかただDVD映像を大画面で見さされてるようで、音響もイマイチだし、ライブ感も臨場感もクソもありまてん。
現在のJOURNEYのヴォーカルを務めるのは、メンバーがYOU TUBEの投稿動画で発掘したフィリピン人のアーネル・ピネダ。小柄ながら、全身を使っての情熱溢れる元気いっぱいのパフォーマンスに好感が持てました。まぁスティーヴ・ペリーもどきだが、彼の疲れを知らぬ歌唱力はモノホン!JOURNEYの歌を本物のJOURNEYの生演奏で歌えるという喜びみたいのに満ち溢れてて、本人が一番気持ちよさそうって感じ。
しかし、ステージ上をピョンピョン駆け回ったり、アンプによじのぼったりと、そのすばしこいちょこまかした動はき、時折猫ひろしを彷彿させないでもなかった。
長丁場になることを覚悟してたんだが、アンコールは1曲のみで、9:00キッカリに終演。

劇場を出て、映画見終わった後に必ず寄っていたブックマーケットに行ったら、いつの間にやらつぶれてしまっていて、悲しい気持ちで暗い長い狭い夜道を車で帰った。



今日の1曲:『Don't Stop Believin' 』/ Journey
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インリンどん

2013年03月07日 | まったり邦楽
パッケージのかわゆさに思わずポチってしまった、Perfumeの最新シングル『未来のミュージアム』。
んー、私はいつからこんな浅はかなコレクターになり下がってしまったのか!?ん、前からか・・・・

今回のは、今週末ロードショーのドラえもん映画『のび太のひみつの道具博物館』のテーマソング。
Perfumeの持つ健全かつポップなテクノ感と、藤子・F・不二雄マンガの未来的ファンタジー世界がほどよく融合した、お子様も安心して聴ける当たり障りのないポップソングに仕上がっている。
テクノ的にはかなりモノ足りないが、ま、子供向け映画の営業ソングなんだからこんなもんだろう。
一方、カップリング曲“だいじょばない”は、表題曲とは対照的に、ヤスタカ氏のサンプリング技が爆発した“セラミックガール”あたりを彷彿とさせる無機質なテクノナンバー。

初回限定盤は、コミック本仕様となっており、藤子・F・不二雄タッチにマンガ化されたPerfumeがヒト型ロボットとして登場する、ドラえもん風冒険ストーリーが展開している。あくまでドラえもん風であり、内容は面白くもクソもなく、のび太もどきのかぶり物キャラクターもかなりイケてない。せめてイラストは藤子・F・不二雄先生が描いて、『のび太の海底鬼岩城』ばりのドキドキワクワク大長編だったらなぁ・・・って、それじゃCDケースが分厚くなってしゃーないか。
“Per・f・ume”という表記はなんのこっちゃい?と思っていたが、“藤子・F・不二雄”の表記を模したものらしい。こういったところの芸は細かい。



特典DVDには、コミックと同内容のコマ式アニメーションで展開するPVが収録されており、メンバーたちがマンガ世界を駆け巡るファンタジックな内容となっている。
“Spring of Life”のPVで使用された研究室シーンや、モンスターを撃退するシーンでは、かしゆかが“Spending all my time”のPVで行っていた同じサイコキネシス技を繰り出すなど、ファンなら思わずほくそ笑んでしまうギミックが所々で確認できる。




とまぁ、こういったマンガ風ジャケットや、付録つきの遊び心のいき届いたアイテムは、このデータ化されてゆく世の中において、私のようなコレクターにとっては、購買意欲を大いにそそられ、この荒んだ物欲心を十分に満たしてくれる。
もちろんこういったものは、自分の好きなアーティストに限定されるが。

コミックジャケットの傑作といえば、やはりBIG BROTHER & THE HOLDING COMPANYの『CHEAP THRILLS』。
このジャケットアートを手掛けたのは、アメリカの破廉恥アングラ作家ロバート・クラム氏。
1コマ1コマにメンバー紹介や、曲タイトルにちなんだイラストが描かれていて、見ていて楽しいことこの上ない。



あと、ジャーマンスラッシュメタルバンドHOLY MOSESのSFコンセプトアルバム『THE NEW MACHINE OF LIECHTENSTEN』には、バンドメンバーたちが登場するミニチュアコミック冊子が付録で付いていた。2000円という廉価な紙ジャケリマスター盤にして、にくい心意気である。



んで、アーティストがマンガの中に入ってしまうというPVの先駆けといえばコレ!
このPVは今見てもよくデキた傑作映像ですわなぁ。


今日の1曲:『Take On Me』/ a-ha
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誰が殺したクットゥルー神

2013年03月05日 | ルルイエ異本
ああ、クトゥルー神話探究心が嵩じて、まさかブックオフで立ち読みしてる女の子に交じって、少女マンガ本まで買い漁ることになろうとは・・・・

白泉社の“花とゆめCOMICS”レーベルより刊行され、80年代に絶大なる人気を博した魔夜峰央先生の長寿サスペンスギャグ漫画『パタリロ!』は、アラフォー世代の方には馴染み深いかと。私も幼少の頃、夕方に放映されていた『パタリロ』のアニメをよく見ていて、笑い転げていた記憶がある。放送コードスレスレのホモセクシャルなシーンも、幼心に直視してられぬ禁断的な刺激があったし、クックロビン音頭もよく真似したっけか。
実はこの『パタリロ!』の作者である魔夜峰央先生は、大のクトゥルー神話好きで有名で(てゆーか怪奇・ミステリー小説全般の愛読者なのであろう)、『新編 真ク・リトル・リトル神話体系 6』の巻末に先生のインタビュー記事が掲載されているほどである。

今回105円コーナーで入手したのは、『パタリロ! 第69巻』。本巻には、「バンコランVSベールゼブブ」という、パタリロたちが魔界の大公爵と対決する長編ゴシックホラーものが掲載されているのだ。
ここでパタリロが、彼の先祖パタリロ6世が記した日記を取り出してきて、その内容を紹介している。なんでも彼の祖先はお金欲しさに悪魔に魂を売り渡し、この日記は、パタリロ6世が魔界で大公爵の下僕となって働いていた頃に書いた魔界の記録なのだとか。



以前、第62巻に掲載されている「再び東カリマンタン」の巻では、パタリロが「いや、取り越し苦労はやめにしよう。クトゥルーの邪神が宇宙の深淵から攻めてきたらどうしようと心配するようなもので、可能性はほとんどゼロに等しい。」と、クトゥルーの実在を否定するかのようなひとり言を漏らしているが、本編では完全にクトゥルーの邪神と人間との関わりを容認している。
パタリロ6世の日記によると、人間とはクトゥルーの邪神どもが地球に送り込んだ夜鬼どもを駆逐するために、<旧神>が送り込んだ創造物であるということがほのめかされている。う~む、『狂気の山脈にて』では、地球の先住種族である<古のもの>が造り出した失敗作だとされているが、魔夜先生は<古のもの>=<旧神>という論説をお持ちなのであろうか。
いずれにせよ、不思議な復元能力を持つパタリロは、魔界からのなにか、クトゥルー神のなんらかの能力を受け継いだものであることは確かなようである。


魔夜峰央先生の作品でもうひとつ、プリンセス・コミックスから刊行された『アスタロト外伝』という幻の著作があるが、これは魔夜先生のクトゥルー趣味が爆発した、禁断の闇黒神話マンガと呼ぶべき奇作。
主人公のアスタロト公爵は、バンコラン風の美男子キャラクターであり、美少年たちをかこって少年男娼を営む魔界から地上に降り立った大悪魔。ま、飽くまでノリはコメディータッチで『パタリロ!』と大差はない。



クトゥルー神話体系の教義は随所に渡って言及されており、『アッシュールバニパルの写本』、『ネクロノミコン』(バチカン宮殿付属図書館の禁書室に所蔵)など、続々と闇黒魔書も登場する。そして、この魔界の大公爵と対峙するは、這い寄る混沌“ナイアルラトテップ”!
残念ながら、両者の決着はつかぬまま未完となってしまっている。おそらくテーマがマニアックすぎるため打ち切られたのであろう。
まぁ、2ページにも渡って何の挿絵もはさまず(いや、あんたマンガ家だろ!)ダラダラとわけのわからん闇黒神話の教義をたれ流されたら、そりゃ普通の読者はついけいけまへんで。
私としても、少女マンガの線の細い描写(切り絵っぽい)は苦手で、クトゥルーものとしてはちと迫力に欠ける。
ただ、一世を風靡した人気マンガ家であったにもかかわらず、これほどまでに踏み込んだコズミックホラーマンガに挑んだ先生の、クトゥルー愛とその意気込みには敬意を表したい。


社会現象にまでなった「クックロビン音頭」


今日の1曲:『Beelzebub』/ Bill Bruford
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東亜九頭龍絵巻

2013年03月01日 | ルルイエ異本
現在、熟読中の書き下ろし<クトゥルー神話>アンソロジー『秘神界』であるが、入手困難であったこの稀覯書を手にした時の感激とは裏腹に、なかなか読み進めないでいる。
これまで幾編かの日本人作家によるクトゥルー作品を読み漁ってきたけど、まぁ最初の頃は和風テイストを暗黒神話に盛り込む作家のギミックの妙を大いに楽しませていただいていたが、今となってはその新鮮さも驚きも減退してきている。
本書でも、『ネクロノミコン』を『涅久録之密経』といった程度のあて字遊びが随所に出てくるが、そういうのにも飽きた。

歴史編は先月読了したが、様々な舞台、時代のクトゥルー神話が掲載されていた。
『邪宗門伝来秘史(序)』という物語では、キリスト教を布教しに日本に渡来したフランシスコ・ザビエルが、突如「ダニチ(大日如来)」なる邪教に帰依し、日本各地で暗黒の布教活動を行う話であるが、アイデアとしては面白いし、歴史資料などを丹念にリサーチして、史実に沿ってうまい具合にクトゥルーテイストを盛り込む作者の努力は認めるが、いかんせん、ストーリー展開が単調かつ稚拙でつまらない。



本書中、最も始末に負えなかったのが、『五瓶劇場 戯場国邪神封陣』という歌舞伎作家を主人公とした江戸物クトゥルー話。まず漢字の多さに辟易させられる。顔見世興行のシステムやうんちくをイヤというほど説明され、葛飾北斎や森島中良、十返舎一九などの江戸時代に活躍した著名な浮世絵師や浄瑠璃作家などが節操なく続々と登場し、その著作をダラダラと並べたてるという・・・いや、禁断の書物を並べたてるってのは、クトゥルーもんの慣習ではあるが、日本文学史の講釈聞きたいのとちゃいまんねん!
そのくどくどしさに、何度も本を床に叩き付けたくなる衝動にかられたが、なんとか正気を保っていた。で、肝心の邪神退治の場面は、緊張感もクソもなくアッサリとかたづけられるという、知識は残らないが、疲労感だけが残る駄作。

ツイッターで偶然見つけた『九頭龍浮世絵図』。あまりのセンスの良さに正気を失いかけた。
http://cybernetic.blog.shinobi.jp/



ただ、中には暗黒神話慣れしきった私の下劣な好奇心を大いに満たしてくれる作品も何編かあって、『西遊記』をベースにした『苦思楽西遊傳(クスルウーさいゆうでん)』は、大いにこころ騒がされる傑作であった。
古代中国を舞台としたこの物語は、「孫悟空の述懐」、「緒悟能の記憶」、「沙悟浄の物語」という、三つの章から構成されており、各章で3キャラクターが語り部として物語が進んでいく。各々の語り口調や語気にもそれなりの個性や迫力があって、本格的な中国伝奇小説を読んでるかのような雰囲気が楽しめる。
彼らが目指すは、超知識の宝庫、全ての事柄を記した図書館と言われる“無名都市”。ま、西遊記でいう“天竺”だ。五感を敏感にする“遼丹”、黄金の蜜酒+横笛+呪文でもってして出で現れる“白竜”(バイアクヘー?)など、気のきいた神話的小道具も随所に出てくる。
そして彼らが師匠、三蔵法師玄奘の双眼には、ポッカリと黒い穴が穿たれていたのであった!
ここまで説明したら、この物語がなんのパロディか、もうおわかりですね。
まぁ、ダーレス原作の元ネタ作品はダラダラと退屈な話であったが、クトゥルー神話を体系化させるにあたって、確かにあれはクトゥルーネタの宝庫的作品であったことを再認識。
でも、こっちの『苦思楽西遊傳』の方が、スマートにまとめられていて好み。



今日の1曲:『MONKEY MAGIC』/ ゴダイゴ
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