AMASHINと戦慄

~STARLESS & AMASHIN BLOG~
日々ブログレッシヴに生きる

星に願いを

2024年01月21日 | ルルイエ異本
久方ぶりに、ちょっと心が離れていたクトゥルー(クトゥルフ)神話作品を昨年末から読み出し、そして読了した。


作品は、朝松健著の『弧の増殖 夜刀浦鬼譚』。


千葉県の夜刀浦市にあるメガサーバー施設の、近隣の住民の健康をも損なわす超強力な電磁波で、暗黒星ユゴスにいる邪悪な存在<ィルェヰック>を召喚するといった話。




本作を刊行当初本屋に並んでいるのを見かけたのはずいぶん昔のことだと思ってたが、13年前と意外と最近であったのはちょっと驚きだった。
13年前といえば、ちょうどスマホが普及し出した頃で、本書ではすでにそのアイテムが取り入れられている。
朝松健氏の描くクトゥルー神話といえば、近代テクノロジーとの融合が実に巧みであるという特徴を持っていて、本作でもサーバーシステムが邪神を召喚する重要なアイテムとなっている。

邪悪さ漲る黒魔術的プロローグは心騒がされるものがあったが、終始不気味な着信音が鳴り響くといった、『着信アリ』などの、中田秀夫監督の『リング』が大ヒットして以降に横行した古臭い女子高生向け日本ホラー映画のような稚拙な心霊現象や、常に首のない男の子の幽霊が昼夜問わず徘徊するといった節操のない演出に読んでて辟易してしまった。
まぁでも主人公が女子高生向けの都市伝説を扱う情報サイト(『夜刀浦Watcher』)の管理経営者という設定なので、もともとティーンエイジ向けに書かれたクトゥルー神話だったのかもしれない。

で、後半はやっぱりホラーアクション作家たる朝松氏ならではの、触手のたくる阿鼻叫喚のグチャグチャ展開。
後半部分なんて、ゾンビ映画の展開にかなり近いものがあったな。

 
この物語には、民族学専攻の真嶋守衛教授という人物が出てくるのだが、彼が「相続した武家屋敷の書庫から発見したユゴスにまつわる暗黒の教義が内包された『Aの書』、それは書物ではなく、線条模様の刻まれた半円形の石器で、霊的アンテナを持った人間だけがそれを受信できるUSBメモリーのようなもの」であることを解明するところは、これぞクトゥルー神話だと、読んでて心騒がされた。

ちなみにこの真嶋守衛教授、実はなんと北海道の肝盗村の出身だということ。
朝松健氏が1976年頃?に執筆し、後に角川ホラー文庫から刊行された『肝盗村鬼譚』は、10年以上前に読んだ。
アーカムやブリチェスターのように浸透はしていないものの、かのものどもが巣くう因習めいた暗黒地を、この日本の各地に点在させるといった創作は、日本人として大変興味深くて楽しい。
“夜刀浦(やとううら)”とか、“肝盗村(きもとりむら)”といった不穏な語感を持つ響きも素晴らしい。
(残念ながら『クトゥルー神話大辞典』にも掲載されていないが)




ところで、本書を熟読しているとき、実はゾッとしたことが起こったのであるが。
昨年末、近場のドトールにてスマホでランダム再生で音楽聴きながら本書を読んでたのであるが、下の章を読んでる時にたまたま流れてたのがCoccoの「星に願いを」で、なにかしらゾッとする名状しがたい一種異様な戦慄を感じないではいられなかった。




Cocco「星に願いを」



ところで”ユゴス”(ユッグゴトフとも)っつーのは、クトゥルー神話に精通している者なら知っているとは思うが、冥王星のことで、かつては太陽系の最果ての星、第九惑星に数えられていたのだが、惑星と呼ぶには小さすぎるということで(月よりも小さいらしい)、2006年に準惑星に格下げされてしまった不憫な星である。




この冥王星には、<ユゴスよりのもの>と呼ばれる知的生物の居留地があり、無限宇宙の彼方から太陽系に飛来し、暗黒星ユゴスを本拠地とし、かつてヴァーモント州の山岳地帯で密かに地球でしか採れない貴重な鉱物の採集に従事していた。
その姿は薄桃色の蟹を思わせる外見で、甲殻類の胴体に膜状の翼、何対かの脚がついており、頭部には短いアンテナ状の多数の突起物のある渦巻状の楕円体がついているが、その実体は一種の菌類だという。
驚異的な外科医術的技倆を有しており、人間の脳髄を摘出して、金属の円筒容器に入れたまま生かし続けることもできる。

<ユゴスよりのもの>をテーマとしたクトゥルフ神話カードゲーム『ミ=ゴの脳みそハント!』




で、本書を読んだあと、またこの冥王星のことが気になりだし、ヨウツベで「冥王星の本当の姿」という高画質映像を鑑賞していたのだが、そこに思いもよらぬワードが出てきて、正気を失いかけた!

冥王星の赤道域には、幅約300km、長さ約3000kmにおよぶクジラ模様の暗い褐色の領域が見受けられる。
かつて原始惑星が冥王星に衝突したジャイアント・インパクト(巨大天体衝突)によりできた黄斑だということらしいが、その領域の名前がなんと、「クトゥルフ黄斑(領域)」というのだそうだ!
動画ではっきりとそう言うてはる。




確かに衛星から見たこの領域のヴィジュアル、ゾッとするような邪悪さが漲っている。
クジラというよりは、こちらをねめつける、深海に潜む蛸のようなぎらついた目・・・・
まるでクトゥルフじゃないか・・・・

ダゴン、あるいはディープワンズっぽい貌も浮かび上がってるよな・・・



まぁこの「クトゥルフ黄斑」というのは、2015年に暫定的に付けられた名称だそうで、クトゥルフファンの方々には、「何を今さら・・・・やれやれ・・・」と言われてるかもしれない。

そしてこの「クトゥルフ黄斑」って呼び名、どうやら昨年また変更されたとかいないとか・・・


準惑星に格下げされた時といい、また今夜、うちの庭がガヤガヤしそうである。


【実写】冥王星の本当の姿
コメント
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