「美しい村」の議員日記

南アルプス山麓・大鹿村在住。自給自足農業、在宅ワーカー、2011年春より村議会議員。

講演会など

2012年09月01日 | 地域おこし
 今週は、火曜日に中央大学学術講演会「限界集落は克服できるか―イタリアの小規模山岳自治体がヨーロッパ中から注目される理由―」、金曜日に南アルプスリレー講座第1回「植物から見た南アルプスの魅力」、そして今日は「リニア中央新幹線を見据えた地域づくり講演会」を聞きに行った。

 一つ目の「限界集落は克服できるか」は、イタリアの行政に詳しい中央大学法学部の工藤裕子先生のお話。日本とイタリアは面積も近く、南北に長い国土、背骨に山脈があって、海沿いの都市に人口が集中していることなど、地政学的にも似ている。ただ人口は日本の約半分で、小規模な自治体が多く、人口10万人以上の自治体はわずか0.5%、3000人未満の自治体が全体の6割を占めるという。カンパニリズモ(郷土愛)が強く、例えば自己紹介で自分を「イタリア人」とは言わず、たとえ数百人の村であっても「○○っ子」というのだとか。企業も伝統工芸などの中小企業が非常に元気なのだそうだ。
 日本と同様に、高度成長期には向都離村で、南部から北部の工業地帯へ、山岳地帯から平野部への移民が多く、人口が半減した山岳自治体も珍しくなかった。しかし、80年代以降の新潮流として、都市化に伴う問題点がさまざま浮上する中で、スローフード、キロメートル・ゼロ(生産・消費の移動距離がゼロ、つまり地産地消)、アグリトゥリズモ(アグリツーリズム)といった考え方が広がり、農業・畜産への回帰(Uターン)が起こってきている。またヨーロッパ特有の事情としては、EUの規則とのせめぎ合い、例えば伝統的な自然発酵のチーズがEUの衛生基準に合わないといったことなどから、特産品の付加価値が見直されることになった。スローフードの目指すものも、まさに食を通じた地域の再発見、再評価であり、ライフスタイルの見直しでもある。等々の概括的なお話と、実際のイタリアでの事例をお伺いする。ちょうど大鹿村でも、千葉県の子どもたちの山村留学が行われたばかりで、また、チーズ作りの農場のお話はアルプカーゼのお話を聞いているようでもあった。
 リニアについては「非常に危険です」と一言。陸の孤島のような場所だからこそ、来た人にいかに長く滞在して楽しんでもらえるかという形の観光を考えないといけないというお話だった。

 南アルプスリレー講座は、昨年から大鹿の100年先を育む会の植物調査でお世話になっている飯田美博の蛭間さんのお話。私自身は育む会の調査や講座にかなり参加しているので、その中でお聞きしている話が中心だった。
 南アルプス地域は、(大鹿にはあまりなけれども)標高800m以下の丘陵帯、台地帯の常緑広葉樹林(→アラカシ林、ウラジロガシ林)から、800~1400mの低山帯の落葉広葉樹林、常緑針葉樹林(→イヌブナ林、モミ-ツガ林、クリ林)、1400~2000mの山地帯の落葉広葉樹林、針広混交林(→ウラジロモミ林、ミズナラ林、ブナ林)、2000~2600mの亜高山帯の常緑針葉樹林(→シラビソ林、コメツガ-トウヒ林)、2600m以上の高山帯の常緑針葉低木林(→ハイマツ群落)が垂直分布している。
 その中で、南アルプスの植物の魅力として、蛭間さんは、山体が大きく広大な亜高山帯針葉樹林があること、北岳・仙丈岳など高山植物の宝庫であること、多くの高山植物が分布する最南端の地域であること、ハイマツは世界分布の南限、固有種・隔離分布種や遺存種が多いこと、石灰岩地に特有な植物相があること、地元住民の意識の高さを挙げられて、特に亜高山帯、山地帯、石灰岩地の魅力をアピールしたいとのことだった。なので、南アルプスのかれんな高山植物の話を期待していた人がいたとしたら、ちょっと違う話だったかもしれない。いろいろな針葉樹のまつぼっくりや、話に出てきた植物の標本を回して見せていただく。話に出てきた地元住民うんぬんは、具体的には育む会のことを言っていたと思うけれども、世界自然遺産や世界ジオパーク、エコパークを目指すならば、より広範な地域住民の意識を高めることが必要だろう。

 今日のリニアを見据えた地域づくり講演会は、日本経済研究所の傍士銑太氏の講演と、地域の事例発表、南信州交流の輪、飯田西中、ネスク・イイダ、上郷地域まちづくり委員会の野底山森林公園の取り組みの四つ。
 傍士さんはJリーグの理事をされているそうで、スタジアムの資料があったり、またご当地プレートを提唱されていて、その資料もあった。タイトルに「リニア時代を見据えた」とあったけれども、冒頭、2027年をどう見るかというのは難しい、15年前の1997年はどうだったか、いかに時代が変化するかということ、そして、今は日本の針路が転換を求められているとして、1.経済は目的ではない、2.人口増加時代の価値観から人口減少時代の価値観、3.先進国唯一の中央集権システムから地方分権に変わっていかなくてはならないという3点を挙げられた。地域と国の関係は、中央集権の支配関係ではなく、地域でできないことを国がやると言う補完関係にならなければいけない。そのためには意識改革が必要。また、未来の原動力として、地域意識の表現力(文化)、小さい単位の力(個の自立)、つなげる力・つながる力(連帯・複合)の三つを挙げられた。Homeのある風景、自信と誇りを持てる地域をつくること。飯田の未来を考えるとき、何を変えていかなければならないかという変える勇気とともに、変えてはいけないもの、変えられないことを受け入れる忍耐、その二つを見極める知恵、そしてサイレントタイム、静かに声を聞く時間が必要と締めくくられた。

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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
地域の継続、大丈夫ですか? (GO)
2013-07-31 00:00:29

人口再生のシミュレーションをしている者です。
シミュレート先をネット上で探している際、たまたま大鹿村をみました。
私が計算している地域の中では大変な地域だなという印象です。
ご覧ください。


http://gkmyhn.sub.jp/wp3/?p=1372



政策による人口の積み上げが可能な机上シミュレーションをしています。
もし、上記サイト以外にも、次のようなデータがほしい場合はお声かけください。
ここで計算したようなことや次のような範囲であれば特に経費は発生しません。


・I ターン者が、○年から○才の男(女)を○人ずつ流入した場合の将来効果
・定年者の帰郷が、○年から○才夫、○才妻を何組づつ流入した場合の将来効果・
・移民が、○年から或る年齢構成・男女・人数で流入した場合の将来効果
・集団で、或る年齢構成・男女・人数が移転する場合の将来人口効果
・未婚者の結婚などで出生数が増加した場合の将来人口効果
※これらを全て考慮した場合の将来人口など...
返信する
Unknown (管理人)
2013-07-31 10:27:19
シミュレーションありがとうございます。
おっしゃることはよく分かります。
横ばいうんぬんの記事を書いたのは5年前ですし、もちろん議員もしていなかったので、村長選に向けて勝手なつぶやきを書いたものでした。
先日の将来推計人口で500人を割り込む数字が出ていたのも重々承知しています。国全体で人口減少が進む中で、道州制などで更なる町村合併が進めば、村の消滅はもちろん、地域自体が切り捨てられていく可能性もあり得ると思っています。
それに対して、これまで村を築いてきた人たちがどれほど危機意識を持てるかでしょうね。
返信する
少なくともよいから子ども数の安定を... (GO)
2013-07-31 11:47:30

見ず知らずの方の掲示板に勝手なことを書いてすみませんでした。
半ば、私の古里への想いを掲載してしまいました。

大鹿村も私の古里の佐渡島も、もう...
・人口の多い世代が順番に亡くなっているだけの人口減少数に目を向けるのではなく...
・少なくともよいから子ども数を安定させることに焦点をあて...
・そのためには、まず女性が安心して産み、育てられる環境をつくり...
・どうせ、今施策をしても50数年は人口は減少するから...
・逆にいえば、養う人口が減れば見合う産業も今よりも小さくてよいのだから...
・産業の規模よりも、たとえ無人になっても手を加えれば残れる事業の質づくりをして...
・それは、農業でも林業でも製造業でも観光でもあるはずだから...
・巣立ち本能のある若者が流出しても、労働力の流入ができる産業に育て...
・それができれば、後は更に大きくしようと挑戦すればよい...

このように思います。
そのイメージ図が次です。
http://gkmyhn.sub.jp/wp3/wp-content/uploads/zinkou-core.gif


最近は、人口問題研究所の推計を予言書みたいに捉えている感じがします。
再生可能な地域でさえ、「日本の人口が減少するので、わが町も...」とあります。日本全体の人口が下がるのと、古里の人口が下がるのは関係ありません。各地域の人口が下がるから合

計としての日本の人口がさがるのでしょう。確か、人口問題研究所も、各地域の人口推計をして、その合計を都道府県の人口にする方法に変えたと思います。

シミュレーションをしてみると、いろいろなことがわかります。
伝説?みたいに伝えられている人口はどこかで横ばいになる...その夢が消えることもありますが...
政策による人口積み上げに対する具体的なヒント...などもわかります。
私は、中小企業診断士ですが、教科書的にはもうダメと判断したところが蘇るところがあります。
共通するのは、生き残るための執念と知恵でした。
そう簡単に諦められないということがスタート地点です。
何かシミュレーションする材料がありましたら、お声かけください。

※長文すみません。お返事は結構です(笑い)
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Unknown (管理人)
2013-07-31 12:02:37
そう簡単に諦めません(笑)。
だから議員になったとも言えますし。
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