「美しい村」の議員日記

南アルプス山麓・大鹿村在住。自給自足農業、在宅ワーカー、2011年春より村議会議員。

原発震災から1年

2012年03月17日 | 脱原発
 今日は久しぶりにカレンダーに何も予定のない一日。朝から雨降りなので、家でゆっくりしている。去年のあの衝撃的な原発震災から1年たった。1年たっても、原発の状況はいまだに収束には程遠いし、原発事故さえなければもっと復興が進んでいるはずなのに、いつまでも先の見えない避難生活を強いられている大勢の人たち。そして、食品汚染やがれき処理の問題など、放射能への不安は事故による放射性物質がほとんど飛来しなかった地域にまで広がっている。原発は電力の3分の1を占めているから原発がないと電気が足りなくなると、これまでさんざん脅されていた割には、今、稼働中の原発は2基になったけれども、別にみんな普通に生活できている。先日の朝日の世論調査でも定期点検で止まっている原発の再稼働に57%の人が反対していて、特に女性は賛成15%に対して、反対が67%にもなっている。にもかかわらず、政府は何とか再稼働を図ろうとしている。
 この1年、原発がこれまでいかに安全性をないがしろにして進められてきたかということが次々に明らかになってきた。先日も、文科省の地震調査研究推進本部で、宮城県沖では貞観地震津波のような巨大津波が繰り返されてきた可能性を指摘する評価が完了していたのを、3月11日の地震の直前に事務局が電力会社と会合を持って、電力会社の要望によって表現を修正していたことが明るみに出た。もしこの評価結果が地震前に公表されていれば、原発の津波対策は間に合わないにしても、もっと高い所に逃げて助かった人もいたことだろう。今日の東京新聞では、原発事故に備えた防災重点区域の拡大を検討していた原子力安全委員会に、保安院長が直接圧力をかけていたという話が報じられていた。
 あるいは、今回の原発震災で特にひどいと思ったのは、SPEEDIで北西方向に放射能が拡散することが予測できていたにもかかわらず、知らされなかったために、かえって放射能汚染の深刻なところに逃げてしまった人たちさえいたこと。チェルノブイリのときに情報が隠されていたために被曝量を多くしてしまった経験が何も生かされなかった。本当に何のためにSPEEDIにお金をつぎ込んだのかと思う。(R-DANはそうした事態を見越して、自分たちで放射線を測定するネットワークを持とうとしたわけだけれども、残念ながら圧倒的に少数だった)。政府や原子力村、マスコミ等々への不信が膨らむばかりの1年だった。
 
 一方、各地の脱原発デモには、これまでデモなどに参加したことのない人もたくさん集まっている。世界各地と比べれば、まだまだ少ないと思うけど、東京の杉並のデモなど、子どもたちからお年寄りまで、右翼も左翼も無党派も、脱原発の一点で本当に多様な人たちが集まり、多様な形で脱原発の思いを表現していたみたいだ。長野県でも松本、長野では、市民団体が前面に出る形で、原水禁系と原水協系の人たちが一緒に参加したとか。「さようなら原発1000万人アクション」の署名はまだ目標数に達しないため、5月まで継続することになったそうだが、やはり、いろいろな立場の違いを超えて「脱原発」の一点で思いを合わせていかないと、本当に原発を止めるための大きな力にはなっていけないだろうと思う。

 村では、ちょうど3月11日に「福祉と健康の集い」で放射線の健康への影響についての講演会が行われた。講師はベラルーシへ医療支援に行かれてもいる長野県立こども病院副院長の中村先生。放射線はDNAを傷つけたり、体内の水分子に当たると活性酸素を発生させる。DNAは特に細胞分裂のため二重鎖が1本になっているときに危険が大きいので、細胞分裂が盛んな胎児や子どもは影響を受けやすい。南アルプスに遮られて放射性物質はほとんど飛来していないと思われるこの地にあっても、検査体制の粗い網をくぐり抜けて、広域流通網に乗って汚染食品が出回っている可能性はある。妊婦や子ども、授乳中のお母さんには、現在の測定体制では、安全を期すには産地で選ぶしかないので、地元産の安心なものを食べさせたい。子どもを守ることは日本や地球の未来を守ることだと強調されていた。
 今、問題になるのは主にセシウムだが、セシウムは体が必要とするものではないので、排せつされる。セシウム137の物質的半減期は30年だけれども、体内半減期は109日。放射性物質を外部から取り込まないようにするには、手洗い、うがいなど冬の感染症の予防と同じ、あるいは、野菜をよく洗い、皮をむくなど、農薬の害を減らす方法と同じといった分かりやすい説明。あと、内部被曝の影響を減らすためには、セシウムはカリウムと似た性質を持っているので、カリウムが不足していると、セシウムを取り込みやすい。あるいは、ストロンチウムはカルシウムと似ているので、カルシウム不足だとストロンチウムを取り込みやすい。カリウムを多く含む野菜や果物、食物繊維をたっぷり含むもの、カルシウムをたくさん含む物を食べるとよいというお話だった。りんご2個分のペクチンは放射性セシウムを4.5倍排泄するとも。
 農地についても、やはりカリウム不足の田んぼで汚染米が出ているというお話を紹介いただいたが、ちょうど講演会前日のETVで放映していた農業再生の話(「放射能汚染からの農業再生~福島・南相馬市~」)でも、チェルノブイリ救援中部の河田昌東さんの助言で稲への放射性物質の移行を減らす取り組みを行ってきたことが紹介されていた。その中でも、カリウム肥料をまいたり、また用水の取り入れ口にゼオライトを置いたりしていた(これは後ほどリポートとして詳しい内容が載るみたいだ)。
 夢なら覚めてほしいと思うけど、現実に3・11が起こってしまったわけで、日本に住む私たちは多かれ少なかれ放射性物質と向き合って生きていかざるを得ない状況に置かれている。そのことを、1年たった今、あらためて重い現実として受け止めつつ、決してこれ以上、処理のめどのたっていない放射性廃棄物を増やしてはいけないし、そのためにも原発をもう動かしてはならないと強く思う日々です。
 

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