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今日は大鹿村中央構造線博物館の開館20周年記念特別企画の第1回目として、産総研の風早康平先生をお迎えして「鹿塩温泉の水と塩はどこから来たのか?」と題した講演が行われた。標高750メートルの山奥で大昔から湧き出ているといわれる鹿塩温泉の塩分濃度は、海水の3.5%よりも高い約4%もあるという。この不思議な塩泉の起源を探るお話だった。鹿塩温泉ということで、会場は公民館鹿塩地区館のホールだったが、遠方からも大勢のお客さんが来られて、かなり専門的な話もあったが熱心に聴講され、講演終了後には、明治時代に黒部銑次郎らが岩塩を探して掘削した坑道や墓所など、鹿塩温泉ゆかりの地を見学した。
一般に温泉というと火山を思い浮かべるが、この地域に火山はない。非火山性の温泉としては、古い天水や海水が地温によって暖められた温泉水が多数存在するが、鹿塩温泉は天水起源ではなく、これらとも違う。もう一つの種類は有馬温泉を典型例として、非火山性で天水起源ではなく、塩分濃度が高く、断層や構造線に沿って湧出するもので、鹿塩温泉もこの仲間なのだそうだ。そして、その水はどこから来たのかというと、フィリピン海プレートがマントル内に沈み込んだときに放出された水で、マグマと同じ起源ではあるけれども、低温のためマグマになれなかったもので、「スラブ起源水」または「スラブ水」というのだそうだ。また、有馬温泉型といっても、高温の有馬温泉と冷泉の鹿塩温泉とは水温のほか水質、成分も違うが、それは鹿塩温泉水の方は長期間、地殻の内部に滞留しているために温度が低下したのではないかとのことだった。特に驚いたのは、最後の方に出てきた話で、大鹿村では1日2000kgもの塩が湧き出しているということ。この深い山奥で、とてつもなく長い時間をかけて湧き出している、これだけ塩分濃度の高い水、やっぱりオリジナリティの高いとても不思議な温泉なのだなと改めて思った。
風早先生
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山塩館の製塩所。
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※博物館の20周年特別企画として、引き続き、8月10日には松島信幸先生による「なぜ大河原から赤石岳が見えるのか」、10月に高木秀雄先生による「中央構造線の始まりから現在まで」という二つの講演会を予定している。