「美しい村」の議員日記

南アルプス山麓・大鹿村在住。自給自足農業、在宅ワーカー、2011年春より村議会議員。

世界自然遺産とユネスコエコパーク

2013年02月02日 | 自然・環境
 今日は韮崎市で開催された「南アルプスフォーラムinやまなし~南アルプスのユネスコエコパーク登録に向けて~」という催しに行ってきた。パネルディスカッションの中で大鹿の100年先を育む会の植生調査の取り組みについての報告があり、役場から車が出るとのことで同乗させていただくことにした。南アルプスを世界自然遺産にという取り組みの中で、中央構造線エリアについては4年前から日本ジオパークに認定されているが、今度はエコパークにという話になっている。ジオパークも先日何とか再認定はされたものの、地域内での周知も不足しているし課題がたくさんある状況で、さらにエコパークといわれても、それが何を目指すのか、世界遺産とはどう違うのかとか、よく分からないところが多いので話を聞きたいと思った。
 第1部の基調講演では、まず「ユネスコエコパークの魅力と各地の取り組みについて」ということで、MAB計画委員会副委員長で横浜国立大学准教授の酒井暁子さんからお話があった。MABとはMan and the Biosphereの略で「人間と生物圏」と訳される。MAB計画とはユネスコが1970年から始めた生態系の保全と利用の調和を図る国際的な取り組みで、世界自然遺産が手つかずの自然を守ることが原則であるのに対して、ユネスコエコパーク(生物圏保存地域、Biosphere Reserves)は保護と利用ということで、生物多様性の保全と人間生活の調和を図り、地域社会の持続的発展を実現する場とのこと。そして厳重に保護すべき核心地域、環境教育や野外活動、調査研究、観光、レジャーなどに利用できる緩衝地域、人が暮らしを営み社会活動ができる移行地域の三つにゾーニングする。手つかずの自然を絶対視するのでなく、むしろ主体的に守るような意識を醸成する、それによって文化的な多様性を守ることにもつながるという言い方をされていた。日本では1980年に登録された屋久島、志賀高原、大峰山と大台ケ原、白山と、去年登録された綾の5か所あるそうだ。
 また保全と利用ということで、このユネスコブランドを観光や地域活性化に生かしている事例として、ドイツのレーン地方が紹介された。モザイク様の畑の景観が美しいところ。ここでは激減していたレーン羊という固有種を復活させたり、多品種のリンゴの特性を生かした加工品を開発したりといった形で、ブランド価値を創成しつつ地域アイデンティティの醸成を図り、地域活性化につなげているという。世界自然遺産は価値を「保存」するためのものだが、ユネスコエコパークは価値を「創造」するためのもので、「自然と共生する持続社会の世界的モデル」という言い方もされていた。
 次にMAB計画委員会委員で日本自然保護協会の朱宮丈晴さんから、綾ユネスコエコパークの取り組みについて紹介いただいた。綾町は照葉樹林プロジェクトもそうだけど、町ぐるみの有機農業でも有名なところで、美しい村連合の一員でもある。ここがユニークなまちづくりを進めてきた背景にあるのは、1966年に始まった自治公民館制度という地域との合意形成の場ができていることだという。などなど、いろいろヒントになる話があった。
 第2部のパネルディスカッションでは各地の取り組みということで、芦安ファンクラブ、南アルプス高山植物保護ボランティアネットワーク、大鹿の100年先を育む会からの取り組み紹介があった。第1部で時間がだいぶ押していたため、パネルといっても、3人からの報告だけでほとんど時間がなくなった。 
 今度2月23日には、伊那市長谷にて、やはりユネスコエコパークに向けたフォーラムが開催される。