「美しい村」の議員日記

南アルプス山麓・大鹿村在住。自給自足農業、在宅ワーカー、2011年春より村議会議員。

リニア環境影響評価方法書

2011年09月28日 | リニア新幹線
 10月ぐらいと思われていたリニア新幹線の環境アセスメントの方法書が、昨日もう出されてしまった。つい先日、長野県分の環境配慮書についての意見を出したばかりのような気がするのに、意見書の締め切りからわずか1か月だ。昨日から村役場でも縦覧が始まり、様子を見にいったら、村民対話室に長野県版の方法書、要約版、図面集が2部ずつ置いてあった(JR東海のホームページでも見られる)。
 村からも意見を出したし、長野県や環境省、自分でも出した意見に対して、一体どのように答えられているのかと思って、まず要約版の第6章を見た。ここには行政からの意見として、(環境省の意見を勘案した)国交省からの意見、地方自治体からの意見と、それに対する事業者の見解が記載されている。
 しかし、例えば大鹿村で出した小渋川をトンネルでという意見には、「小渋川付近における坑口の設置にあたっては、地すべりの誘発や落石の危険など周辺地域の防災対策に大きな影響を及ぼすことのないように計画を深度化します」と、村からの意見をおうむ返しにして、ただ「計画を深度化します」という全く具体性がなく意味不明の言葉を付け加えてあるだけ。温泉源泉の調査を公開で実施願いたいという意見には全く答えていないし、残土処理概要の早期提示による検討を求める意見に対しては、配慮書にあった「本事業内での再利用・・・」という文言の繰り返しと、「具体的な残土処理計画は、工事計画の策定段階」として、具体的な記載は何もなかった。
 要約版ではない本編の方には、一般からの意見の概要とそれについての事業者の見解が記載されているけれども、やはり「十分配慮して計画します」といったような、具体性のない漠然とした文言ばかりが並んでいる。東海地震で大きな揺れが予測されている防災対策強化地域を通るのでバイパスの意味をなさないのではという意見などにも、審議会の答申どおりの内容で、つまり何も答えていない。
 第3章には対象事業の目的及び内容として、リニアの施設・設備のイメージ図や、構造物施工順序のイメージ図がある。山岳トンネル部の施工イメージを見ると、やはり工事施工ヤードとしてかなりのスペースが要るような感じだ。受変電設備や濁水処理施設、コンクリートプラント、資材置場、発生土仮置場、工事用道路、こうした工事に付帯するものをすべて含めて環境影響評価すべきだと思うけど、方法書にはイメージ図だけで、具体的な記載はない。
 第7章には肝心の調査、予測及び評価の手法の選定並びにその選定理由が記載されている。以前、松島先生から水文調査は数年かかると言われていたけれども、例えば地下水の水質及び水位の項目の調査の基本的な手法のところでは、「調査期間等、現地調査;地下水位:4季、地下水質:1回」、予測の基本的な手法のところでは、「予測対象期間、工事期間中とする」となっていて、これで十分とは到底思えない。動植物の調査なども、文献調査と現地調査となっていて、現地調査は4季などと書いてあるけれども、これって春夏秋冬ひととおり調べたらOKということなのだろうか。何せ2013年中には次の準備書を出したいというのだから、実際の調査期間は2年もないことになってしまう。その他もろもろ、素人がざっと眺めただけでも疑問だらけの方法書。
 
 それにしても、東京から名古屋まで大深度地下トンネルや南アルプス長大山岳トンネルなどを掘っていくという、本当に巨大な開発事業の環境アセスの手続きが始まるというのに、信毎では1面に記事が出ているけれども、朝日では長野版のページに小さく出ているだけだった。